『シッコ』 今年は一度だけ病院へ行った。熱病に魘されたとかそういった理由でではなく、腰痛が酷くなった時期があったからです。椅子から立ち上がるたびに腰にピリッと痛みが走る。「これはイカン!」ってことで人生初の整形外科へと出かけました。
 初診という事でレントゲンを撮ったりしてもらいましたが、診察はものの5分で終了。「椎間板ヘルニアかも」とのことでしたが、大したことは無いらしい。
 診察後、窓口でお金を払う。大体1500円くらいだったかな?そして隣接された薬局に処方箋を出し、薬と大量の湿布をもらってまた2000円くらい飛んでいった。思った以上に高い・・・。
 そのすぐ後に痛い出費の憂さ晴らしに「あんな金取られるなら痛み止めで酒呑んでいた方がよっぽどマシだぜ!」なんて飲み屋で愚痴った結果、また3000円が遠くの空へ消えていったわけです。我ながら効率の悪い体だ。

 でも病院と薬局で払った3500円の負担は全体の3割です。本当なら約12000円かかる診察だけど、健康保険に入っているおかげでその7割は保険で賄えたわけです。そう考えるとチョッピリ得した気分にもなりますが、毎月給与から引かれている健康保険料と比べてみると採算がありません。僕の場合は保険料払いすぎです。

 でもこの映画を観ていると確かに損する人と得する人はいるけれど、国民皆保険制度自体はそれほど悪くないのかなと思ったりするわけです。自分だっていきなり大病を患って長期入院なんて運命に陥らないとも限らないですから。
 やっぱり国民の生命に直接関わるような事は国である程度までは面倒見なきゃならないのではないかな?
 ってことでマイケル・ムーア監督の『シッコ』です。
 恥ずかしながらアメリカに国民皆保険制度が無いこと自体をこの映画で初めて知りました。アメリカでは個人個人が勝手に入る医療保険がその代わりをなしていて、保険に入っていない人や医療保険に加入するお金の無い人は怪我をしたら自分で治すか死を覚悟するといった図式が成り立っているようです。
 でも医療保険に入っていれば安心かというと決してそんなことはありません。実験的な治療だという事で保険給付を断られたり、医者と保険会社が癒着してまともな医療を受けられないなどといったアメリカの医療制度が持つ病巣が次々と描かれていくわけです。

 一方、フランスやイギリスなどの国民皆保険制度が実施されている国はどうかといいますと、アメリカと比べれば至れり尽くせりのまるで天国のような描かれ方をされていきます。
 医療費は無料だし、低所得者には病院までの交通費までが支給される。療養後のリハビリのために1ヶ月以上の有給休暇まで取る事が出来てしまうのですから・・・これが全部法令に定められているというのだから更に驚きです。
 アメリカ人だけでなく、日本人の僕だってこんな素晴らしい生活が出来るのならば病気になったらイギリスやフランスで暮らしたいと思いますよ。

 でもちょっと疑問に思ったのですが、この映画ってアメリカをあまりに悲惨に描きすぎてないですかね?その代わりにフランスやイギリスの医療制度の良い面だけをピックアップしすぎじゃないかなって気はしました。
 例えば紹介されるアメリカ人はどう見ても富裕層には見えない人ばかりである反面、イギリスやフランス人として登場する人物は年収1000万以上で高級車を乗り回すような金持ちばかりが登場する。根本的に差を持って描きすぎじゃない?

 それにイギリスやフランスの医療制度は素晴らしいのは良く解りましたが、給与から税金などを差し引いた可処分所得の割合はどうなんでしょう?あれだけの医療制度を支えようと思えば当然財源という物が必要になってくるわけで、給料から天引きされる税金や保険料(向こうで給与天引き制度があるのかどうかは知らないけど)などの割合はかなり高いはずだと思うのです。
 そうなってくると高負担で高サービスを受けようと思うのか、それとも低負担で自分で何とかやりくりしようと考えるのか。人それぞれ色んな考え方が出てくるのではないかなって気はしました。
 単純に各国の医療制度だけを横一列に並べて比較してもあまり意味が無い気もするのですが・・・確かにアメリカの医療保険会社と医者が癒着してまともな診療すら受けられない環境は俎上に乗せる以前の異常な話ですし、保険会社と政府の癒着という病巣は早々に取り除く必要はあると思いますけど。

 さて、この映画には登場しなかった日本について考えますと、国民皆保険制度は存在します。ですが医療費は全額無料ってことは無く、基本的には3割負担です(一部、1割・2割負担の人もいますけど)。でも健康保険制度においてはちょっと前まで個人負担割合は2割だったはず。それが3割に引き上げられた。
 じゃあ保険料が下がったかというとそんなことは無く、上昇傾向にあります(総報酬制導入時にちょっと保険料率は下がったけど、保険料の徴収方法が今までとガラッと変わった訳だからなぁ〜)。おまけに介護保険制度が設立され、40歳以上の方は更に可処分所得が少なくなりました。年金保険料に関してもご存知のように毎年毎年少しづつ上昇しております。給付は減少傾向なのに。
 そうやって考えると今の日本は高負担・低福祉の傾向にあるようで「決して皆保険だから心配ない」なんて事は言えないのかもしれません。
 高齢者の医療保険を新設して自己負担割合が引き上げるなんて話もあるようですし、住みにくい世の中になっている事は確かですね。近い将来、低負担で高い医療を求める人たちが海外へと出て行く医療難民なんて呼ばれる人たちが出てくるのかも。
 
 ★★★★

 2007 #68

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