永遠の僕たち

 若い頃には死に魅せられることがあると思う。
 まだ遠くにあると思っているからこそ興味を持ち、それを覗きこんでみたくもなる。死というものが身近でないからこそ探求したくなる。
 命あるものが命なくなるその瞬間。そこでは一体何が起きるのか?
 その問いに関しては34歳になろうとしている自分にも未だ答えられません。だからこそその答えを求めて、こういったタイプの映画に惹きつけられる傾向にあるのだと思う。
 ってことでガス・ヴァン・サント監督の『永遠の僕たち』です。

 イーノック(ヘンリー・ホッパー)は自動車事故により臨死体験をし、目が覚めると両親を亡くしていた。その事件をキッカケに彼は特攻隊姿の日本人幽霊であるヒロシ(加瀬亮)の姿が見えるようになったり、誰とも知らぬ人の葬儀へ出かけることを趣味とするようになる。
 ある葬儀場で彼はアナベル(ミア・ワシコウスカ)という少女と出会い、次第に打ち解けていく。しかし、アナベルは脳腫瘍により余命が三カ月間しか残されていないことを知り・・・。

 地面にチョークで自分の人型を描き、そこに横たわるイーノック。事故現場で被害者がどこでどのような体勢で横たわっていたのかをチョーク等で記すことがありますが、これを自らが好んで行っていることから考えて、完全に死に取り憑かれている。
 彼は交通事故で両親を亡くし、父母の葬儀には病院で昏睡状態だったため参列できなかった。このことからまだ両親の死というものを受け止めきれていない。また自らが臨死体験という生と死の間の境目を彷徨ったことから死というものに強く惹きつかれている。

 彼が唯一心を打ち明けられる存在が特攻隊員の日本兵だったり、葬儀巡りが趣味だったりすることからも彼の周りには常に死が付き纏う。そして初めて好きになった女性が難病で余命いくばくもない事を知るに至っては、死の符号がここぞとばかりに揃いあがる。

 そんな死に囲まれた中で描かれくイーノックとアナベルの初めての恋は本当に瑞々しい。
 初めてのキス、初めて二人で過ごしたハロウィン、そして初体験。
 全てが初めてづくしの二人だけの世界は本当に光り輝いているかのよう。しかし、それは永遠には続かない。アナベルの病のせいもあって三カ月という期間が限られてしまっている。その楽しい二人だけの時間に終わりを告げるものは無論アナベルの死であり、それが時々二人の関係に暗い翳を落とすことになる。

 兎に角、アナベルを演じたミア・ワシコウスカが良かった!
 病気により死の宣告がなされて、本当は怖いのでしょう。でも、そんな悲壮感はおくびにも出さない。逆に周りが彼女に気を使ってアタフタとしているのを笑ってたしなめる。それくらい肝っ玉が座っているというか、達観しているというか・・・(病気の割に元気すぎる??)。
 イーノックと一緒にいる際に常に絶やさない彼女の笑顔が劇中で鮮烈な光を放っており、この輝きが無限ではなく有限のものだと思うと胸が詰まってくる思いがします。

 でもこの笑顔があるからこそ、ラストはああいった展開になるのでしょうね。
 限られた二人だけの時間、彼女の肌のぬくもり、そして彼女の笑顔・・・などを回想して、彼女の葬儀会場でスピーチをするために壇上に上がった際、思わず笑みを浮かべてしまう。
 もしこの光景を参列者が見たら「不謹慎な奴だ」と思うのかもしれません。
 しかしこの映画を観ている僕たちには、あの壇上での笑顔がイーノックとアナベルが二人で築き上げてきた思い出から来るものだと知っています。だからこそ何よりも楽しかった日々を雄弁に語っているのだろうし、きっとこの想い出は永遠に彼の胸の中で生き続けるのだろうと予感させる。
 また、劇中の寸劇にもあったように彼まで後を追って死んでしまったら、この想い出が暗い闇の中へと葬り去られてしまうわけですから、彼は生きなければならないのだということも強く感じさせるのです。

 初めは死について考えさせられるような映画かと思っていましたが、純粋なラブストーリーといった印象の方が強かったかな。ただ難病ものに良くあるあざとさは皆無なので、素直に感情に訴えかけてくる映画ではないでしょうか。
 ガス・ヴァン・サント監督の映画はあまり観ていないけれど(『エレファント』と『サイコ』のりメイクくらい)、多分感性が随分と若い人なんでしょうね。もうじき還暦という人が撮った映画だとは思えないなぁ〜。

 ★★★★

 2012 #3  センチュリーシネマにて

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