悪魔の追跡

 おせちに飽きたらホラーもね。
 近々公開の『フライトナイト』のラジオCMがこの言葉で締めくくられていましたが、正月三ヶ日を締めくくる意味合いで観た映画がこの『悪魔の追跡』です。
 これにて正月気分も終了!・・・といってもまだまだゴロ寝したい気持ちに変わりは無いけれど。
 因みに、おせち料理では一番田作りが好きです。ちょっと甘辛くて、わたの部分がほろ苦い。酒のつまみとしてははなかなか良いですからね。

 バイク仲間のフランク(ウォーレン・オーツ)とロジャー(ピーター・フォンダ)はそれぞれの嫁さんを連れてヴァカンスに出かける。
 フランクが新しく買ったキャンピングカーを走らせ、一夜を過ごすために川辺に車を停車して酒を呑んでいる時の事です。フランクとロジャーは向こう岸で火の手が上がったのを目撃します。不審に思った二人が双眼鏡でその光景を覗きこむと、そこにはカルト教団による異様な宗教儀式が行われていた。
 そしてそれが最高潮となった時、裸の女性の胸にナイフが突き立てられる。その瞬間、覗き見していることがバレてしまい・・・。

 宗教の秘義と言いますか、そういったものってあまり見たいものではないですよね。
 映画の中で悪魔崇拝者が生贄を捧げたりといった描写は数多くありますが、もしこれを自分の目で本当に目撃したとなると、信仰心の無いものにとっては「ただただ何だか嫌なものを見てしまった」と暗澹たる気分になる事と思います。
 そんな恐怖が少しづつ膨れ上がってくるところがこの映画の面白いところ。

 事件を警察に通報したとしても、適当な捜査をするだけでまともに取り合ってくれません。それどころか街を歩くと監視&聞き耳を立てられているような空気が張り詰めているし、何者かが後を付けている空気すら漂ってくる。
 挙句の果てにキャンピングカーの中にガラガラヘビが仕込まれるなどの嫌がらせ。たまたま偶然見てしまった宗教儀式のせいで、楽しいはずのヴァカンスが台無しになってしまう。おまけに新車のキャンピングカーも傷つけられたりと本当に嫌な目にしか遭いません。
 まさに百害あって一利なし!!

 そして最終的には命まで狙われることとなり、怒涛のカーチェイスに突入!
 キャンピングカー内に侵入しようとする信者をショットガンで狙撃するアクションを盛り込みながら、ラストに待っている嫌な気分にしかならない絶望的なオチに向かって加速していく。
 カーチェイスシーンで見られる車の片輪走行など、最近の映画ではあまり観られなくなったような描写も用意されていたる辺りには、少しばかり懐かしさを感じますがね。

 でもこの映画の一番怖い点は敵の顔が見えないことに尽きます。警察にしろ、車の整備工にしろ、ガソリンスタンドの親父にしろ道路工事のおっちゃんにしろ何処に敵、つまりそのカルト教団の信者が混じっているのかが分からないところがとても恐ろしい。
 実際、今の世の中でも誰が何を信じているのかなんて表面だけでは分からないので、ウッカリ下手なことを口にしようものなら・・・って事はあると思います。
 そういった意味では1975年に製作されたこの映画で描かれる恐怖には現在に通じるものもあるのではないかなと、オウム事件の指名手配犯が突然の自首なんてニュースを聞くと思ってしまうのでした。

 ★★★

 2012 #4

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