発禁本「美人乱舞」より責める


 緊縛。人が人を縛る。日常生活でそんな瞬間に出くわすことは滅多にありませんが、一度だけ生で人が縛られるところを観た事があります。それはSMバーでの話なんですが・・・。

 実は友人と一度だけSMバーに行ったことがあります。そこで初めて緊縛なるものを生で観ることが出来ました。その感想はというと、ただただ圧倒されました。
 男性が女性を縛るというシチュエーションでしたが、一本の縄がまるで自分で意志を持っているかのように女体に食い込んでいく様に見惚れてしまった。そして縛られている女性が徐々に恍惚とした表情を浮かべていく様を見て、素直に綺麗だと思ったし、美しいとも思った。
 呑み代込みで5000円くらいの支払いだったと思うけれど、それだけの価値は十分にあったと思う。機会があればまた行きたいと思っているくらいですから。

 そんな緊縛画・責め画の大家でもある伊藤晴雨。彼と妻になった女性との関係を描いた日活ロマンポルノ作品が、田中登監督の『発禁本「美人乱舞」より 責める!』です。

 発禁本の「美人乱舞」ってどんな書籍?それをまず調べてみた。
 これは伊藤晴雨の著作でして、国立国会図書館にデジタル化資料として残されているのを発見しました。これを観て頂ければ大体の内容を知ることが出来るかと思います。
 欠損ページが多い点が残念ですが、伊藤晴雨のデッサン&エッセイ集といった内容のようで、「発禁本」と言われると「そこまで過激な内容かな?」と疑問に思ってしまいますが・・・「欠損したページの内容が、凄い内容だったかもしれない」なんて想像すると、完全版を観たいと思うのが男の性。

 ということで、欠損ページについては、本の代わりにこの映画で補完することにしましょう。

 責め画の大家でもある伊藤晴雨(山谷初男)。彼には妻がいたのだが、あまりに過酷な責めにより三行半を突き付けられた挙句、警察沙汰にまでなってしまう。釈放された晴雨はカフェで女給をしているタエ(宮下順子)という女性に出会い、共同生活を開始するのだが・・・。

 まずこの映画を観て驚かされたのが、責めの描写の過酷さですね。
 例えば髪の毛を縄と結びつけ、女性を常に爪先立ちの体勢になるように縛り上げる。そうすると当然足が疲れてくるので、踵を地面に下します。すると今度は髪の毛が引っ張られる。
 そのような一瞬たりとも気を抜けない永遠の責め苦を味わせる縛り方が登場します。鬼の所業としか思えない・・・。でも最も過酷なのは、観ているだけで寒気が走る雪責めの描写ですかね。

 文字通り緋襦袢一枚だけを羽織った女性に雪の中を歩かせたり、雪に埋めようとしてみたり、はたまた凍った池の氷を割り、その中に沈めてみたりする。
 当然あまりの寒さに体が芯から冷え、一歩間違えば凍死してしまいます。その一歩手前になるまで放置し、責め続ける。当然「寒いから止めて」と言えばそれで終わりなのですが、女は惚れた男のためにその言葉をグッと呑みこむ。その限界まで耐えようとする姿と責めの過酷さを訴える様な目つき。女性が持つ強さと弱さがない交ぜになったその表情が、何とも艶めかしいと思った。

 演じた宮下順子は、本当に凄いと思ます。おそらく、これらのシーンの撮影のために自らの体を死の淵にまでとことん追いつめたはず。だからこそ出せる演技を超越した本物の表情!
 ここまで行ってしまうと、劇映画という形を借りたSMドキュメンタリーに思えてきます。緊縛のシーンなんかでは、実際に女体に食い込んだ縄の跡が妙に艶めかしく、そしてさり気なく映しだされたりもします。この事からも自らが体を張って責めの描写に臨んでいたことは明らか。
 宮下順子の女優魂には、ただただ驚かされるばかり

 田中登監督の演出も冴えわたる。
 雪原にポツンと立つ一本の木に縛られた緋襦袢の女性とそれを見つめる晴雨の構図など、美しい映像も随所に盛り込んでいき、観る者をただただ圧倒していく。
 また、先天的な脳の病気に侵されて、狂っていく女。しかし、例え頭はおかしくなったとしても、体は縛られていた頃の感覚を覚えているのでしょう。晴雨に向けて手を後ろ手に差し出す描写なんかには、ゾッとするほどの色気があったように思えます。上手いね。

 女は縛られ、割竹で殴られするなど、晴雨の手によって一方的に責められ続ける。
 確かに酷い描写ばかりだと思うけれど、女がことごとく前妻と自分を比較しようとするところから、晴雨の心を自分の方に向けようとする健気な女心が垣間見える。
 まさに体を張った求愛行動!人はここまで耐えられるものなんですね。

 ★★★★☆

 2013 #38

 ↓少しでも心に響くものがあるようでしたらクリックを↓
 人気blogランキングへ