言の葉の庭


 僕は晴れ渡った日よりも、どちらかというと雨の日の方が好き。
 多くの荷物を抱えて仕事に出かけようと思った瞬間、雨に降られて「鬱陶しいな」と思う事は確かにあります。しかし、あの雨の日に薫る何処か土臭い感じはとても好き。雨が降った時にだけ漂ってくる大地の薫りなんて表すると格好良すぎなのかもしれませんが、晴れた日には姿を見せない一面が、雨の日にだけ顔を覗かせる。そういった意味で、雨の日を特別な日だと感じられる時も有ります。
 あと、学生時代には雨の日が嬉しかったですね。例えば体育の授業が雨で潰れたとか・・・まさに恵みの雨といった感じ。「体育祭なんか全部雨で流れれば良い」と思ってましたからね。
 しかし、このようなジメッとした性格にも関わらず、意外と僕は晴れ男だったりもするわけですが・・・。

 ってことで、新海誠監督作品『言の葉の庭』です。

 タカオ(声:入野自由)は雨の日には学校をさぼって、新宿御苑で彼の夢である靴職人になるための妄想を膨らませていた。そんなある雨の日、彼がいつも通りに学校をさぼっていたところ、昼間からビールを飲んでいる女性ユキノ(声 :花澤香菜)と出会う。
 次第に仲が良くなり、雨の日限定の逢瀬を楽しむ二人だったが・・・。

 雨の日限定で行われる逢瀬。待ち合わせ場所は、新宿御苑。
 新宿御苑と言えば、数年前に某ブロガー様とのオフ会でお花見をした場所になります。確か新宿伊勢丹の酒売り場で神童という日本酒を買って、参加したように記憶しています。この酒を選んだ理由は、単純に成海璃子&松山ケンイチ主演の『神童』が公開されるかどうかって頃だったから。という事は、2007年の出来事って事になりますね。月日が流れるのは早い!

 という事で新宿御苑には出かけた事があるわけですが、この映画で描かれている新宿御苑とは随分とイメージが違っていまして、僕なんか正直「池なんかあったかな?」と頭を傾げるほど。
 おそらくは酒を呑むことに精一杯で、都会の真ん中に残されたオアシスのような光景を愛でる雰囲気ではなかったのでしょうね。べろべろ状態だったらその池に入ろうとしたりして・・・ヤバい、ヤバい。

 主人公は靴職人になる夢を持つ高校生タカオ。彼が梅雨のある日に学校をさぼって訪れた新宿御苑で、昼間からビールとチョコレートというトンでもない喰い合わせをしている女性ユキノに出会う所から話は始まります。二人は少しずつ会話を交わすようになり、雨の日限定の逢瀬は続く。
 しかし夏が来て、雨が降る事はあまり無くなってしまう。空を見上げれば、青く澄み渡った空。こういった光景を目の当たりにすると、普通は清々しく感じるものなのかもしれません。しかし、タカオは雨を願う。晴れ渡る空に何か物足りなさを感じるかのように。

 こういった設定が僕は好きですが、あざとく感じる人がいてもおかしくはないかな。
 現代社会において考えれば、おそらく男女の仲が深まっていけば、最初に電話番号やメールアドレスを教え合って、携帯電話なりスマホなりで連絡をいつでも取りあう事が出来る。そんな環境が築き上げられるはずです。しかし、この映画ではそうはならない。
 ユキノは万葉集の短歌 「雷神(なるかみ)の 少し響みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」 なんて短歌を思わせぶりに口にし、雨の日だけ会う事を仄めかす。そしてタカオもまたそれに従い、雨を待ち望む。しかし、その短歌には返し歌があって・・・そんな現代社会で起きている話とは思えない浮世離れしたストーリーを構築するなんて、この新海誠監督はよほどのロマンチストなのではないでしょうか?

 タカオが靴職人というこれまた奇妙な職種を目指しているという設定も変わっていて、それが結局「2人とも歩く練習をしていた」という部分に繋がっていく。この辺りの展開もまた、話があまりに上手く出来過ぎといった感じがしないでもない。しないでもないのだが、僕は決して嫌いではない。
 ただ、ストーリーに嘘臭さを少し感じてしまったのも事実で、映画を最後まで観てもモヤッとした消化不良の感情だけが残ってしまったのは、ここら辺の嘘っぽさが影響しているのかもしれません。

 実写と見間違えるかのような風景描写には圧倒されるばかりでありますが、何処か現代社会を舞台にしたファンタジーのような感覚が最初から最後まで付きまとう。
 冒頭に書いたような雨の日に感じる大地の匂い。そのようなものが映画の中から少しでも感じられればなお良かったと思うのですが、雨を美化して描きすぎたせいでリアリティといった面では欠如している部分が少なからずあったように思えました。

 ★★★☆

 2014 #10

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