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 今年のアカデミー賞作品賞を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(結局、映画館で鑑賞する事もないまま上映終了を迎えそう)で大きな話題になったのが、ワンカット撮影というフレーズ。実際、どの程度の長回しを描いていたのか?観ていない僕には解りません。
 長回しという言葉を聞くと、ブライアン・デ・パルマ(『スネーク・アイズ』!)やPTA(『ブギーナイツ』や『マグノリア』)の映画を思い浮かべてしまいます。そしてもう一人。白石晃士監督だって「その部分に関しては負けないぞ」ときっと自負しているのではないでしょうか?

 『バードマン』がアカデミー賞を取る事が出来るのであれば、本作だって日本アカデミー賞を受賞する資格は十分なはず。ただ日アカは大手三社の持ち回りで作品賞が決められているのかな?あまりに興味が沸かないせいか、近年どの作品が受賞したのかすら知りませんが。

 つまり僕が言いたい事は、白石監督は日本でまともな評価を得られないのであれば、海外に進出してしまえば良いって事。アレハンドロ・ゴンザレス・イリャニトゥなんてブッ飛ばしちゃえよ・・・などと『バードマン』を観ていないにも関わらずディスってみました。『バードマン』を観たら掌クルッと反してしまう可能性だってありますが、白石監督のドキュメンタリータッチのホラー映画はどの作品も面白い!
 これだけは間違いがありません。無論、御多分に漏れず「本作も!」です。

 ってことで、白石晃士監督作品『ある優しき殺人者の記録』です。

 25人もの人を殺害したというサンジュン(ヨン・ジェウク)へのインタビュアーとして選ばれたソヨン(キム・コッピ)。彼女は日本人カメラマン(白石晃士)を帯同して、彼の指定したアパートへと出かける。
 サンジュンとソヨンは、実は幼馴染。そんな彼女に包丁を突き付け、「自分は神の啓示を受けて人を殺している。そして後二人殺害した時、幼い頃に交通事故で亡くなった友人が復活する。そして自分が殺してきた人たちも復活する」と語り始めるのだった。インタビューの一部始終を撮影しろと命ぜられた二人は、訝しみながらも話を聞き続けるが・・・。

 『ノロイ』『オカルト』『カルト』・・・どれを取っても白石晃士監督にしか撮れないであろうドキュメンタリータッチのホラー映画で、僕の大好物。なぜなら、どの作品も観終わった後に嫌な余韻が残るから。「何だかいけない世界を覗いてしまったのではないか?」といったドンヨリとした気分になるのです。
 それは所々で描かれるディテール。これが妙にリアルだからこそ「観てはいけない物を観てしまった」と感じるワケです。でも最終的にはそれを(良い意味で)出来の悪いCG描写で木端微塵に破壊する。

 『オカルト』のラストは悪ふざけのようなCG映像で締め括られます。あんな電波系のキ〇ガイが渋谷でテロを起こす物語をドキュメンタリータッチでずっと観る訳ですから、流石に気分が凹みます。でもその後に登場する馬鹿げたCG映像で上手くお茶を濁している。これが一服の清涼剤。
 しかし、その直後に「もしかしたらこの映画の中に本物が紛れ込んでいたとしたら?あの下手なCG描写は真実を隠すためのサインではないか?」などと僕のムー的思考が刺激され、気が付けば忘れられない一本となっている。大体、白石監督のドキュメンタリータッチのホラー映画は、このような構成となっているのではないでしょうか。

 今回の映画に関しても、その後多分に漏れずといった所があります。しかし、この映画には先に挙げた僕の大好きな三作品のように電波ギンギンのキ〇ガイ度マックス(まさにマッドマックス!)で突き抜ける映画ではなく、そこに優しさというスパイスが混ぜ込まれているのです。それにより映画から受ける印象は大分違ってくる。泣けるホラー映画…まさに今までの作品からの進化系と言えるでしょう。
 
 上映時間は86分。それが全てワンカットで納められている・・・と言いたいところですが、おそらく編集点は存在します。時々、真っ暗な玄関扉が映し出されますが、おそらくはここが編集点となっているのではないかと僕は思うのです。でも、「全てがワンカット撮影でないからダメ」というのは大きな間違いでして、やはりこの異常なまでに張り詰めた緊張感は他の人では表現しえないでしょうし、「何かを信じる」という事は難しいし、多くの血が流れるものであると痛感するわけです。

 舞台はほぼすべてマンションの一室となりますが、そこで繰り広げられる混沌とした命のやり取り。異常な性格(性癖?)を持つ日本人カップルが登場し、観る者に誰を信じれば良いのか?誰が狂っているのか?その選択を突き付ける。
 そして多くの暴力と血で占められた窮屈な空間を散々体験させた後に映し出される、ビルの屋上から広がる韓国の町並み。ハッキリ言って、街並み自体は綺麗じゃありません。でも、この混沌としたやり取りの後に映し出される風景自体は汚いけれど、美しい。いや、神々しい。
 きっと世界は汚い部分が多くあり、正義が全てと言う訳でもありません。不正も横行している。でも、醜さの中にも美しいと感じる部分がきっと存在すると思いました。
 ただここで例のごとく変なCG映像が飛び出して・・・といった展開になるのは、相変わらずの白石映画といった所でしょうか?

 ★★★★

 2015 #33

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