映画感想「ロード・オブ・ウォー」
【評価】★★★★
【反戦】★★★★★
【不条理】★★★
【ブラック】★★★★
【笑い】★★★★
【エロ】★★
試写会で見たのですが、ひさしぶりに良い映画でした。
僕は個人的にニコラス・ケイジはあまり好きじゃないので、「ケッ」って感じでしたが、印象が一変しました。
この役者さん、日本のパチンコメーカーのCMに出ていて、「サンキョー」とかって絶叫しているイメージしかなかったんですけど、
いや、良い役者さんだなぁ、と感心しました。
あまりパッとしない役どころが、彼には似合うと思います。
今回のユーリー役も、世界を股にかけた武器商人なのですが、外見の頼りなさそうなところが、精神的な弱さをあらわしていて、よかったと思います。
でもさ、なんかニコラス・ケイジって、ハゲってイメージがあったのですが、この映画ではフサフサですね。リーブ21とかの力でしょうか?
姉歯さんのようなバレバレのヅラではなかったことは確かです。(笑)
ウクライナからの移民、ユーリー(ニコラス・ケイジ)。
あるきっかけから、武器の密売をはじめます。
弟ヴィタリー(ジャレッド・レト)と組んで、ガンガンと武器を売ります。
とはいっても、合法的な武器の売買は、政府と組んだ武器商人の独壇場でした。
そこに食い込めないユーリーは、非合法な武器売買をおこないます。
アメリカ軍は、紛争地帯で使った武器弾薬等は、その土地に捨てていくそうです。
アメリカ本国へ送り返すには、コストがかかりすぎるのです。
その破棄された武器弾薬を、ユーリーはタダ同然で譲り受け、キロ単位で量り売りなんかをして、巨万の富を築きます。
本当にでかい秤とかで売っているんです。なかなかシュールな場面でしたよ。
そんなユーリーは、インターポールのバレンタイン(イーサン・ホーク)にも、武器商人としてマークされ、執拗な追及を受けます。

時代は冷戦の最中ですから、面白いように儲かります。
アフガンでも暗躍し、ビン・ラディンにも武器を売ろうとしたようです。(結局、金払いが悪いため、売らなかったようですが)
世界の紛争地帯を、命がけでヴィタリーと一緒に駆け回り、バシバシと武器を売りまくるユーリー。
ところが、自分の売った武器で、人が殺されまくる現場を見たヴィタリーは、精神の均衡を崩し、ドラック漬けになってしまいます。
ヴィタリーをリハビリ施設に入院させ、一人で世界を駆け回り、ユーリーは武器を売ります。
また、美人の奥さんもゲットし、セレブな生活をするようになります。
そのため、金が必要。ますます武器を売りまくります。
ユーリーは、合法と非合法の綱渡りをしながら、合法と非合法の間、グレーゾーンを見つけ出し、それを商売に活かすのが天才的に巧かったようです。
合法ではない、しかし非合法とも言い切れない、そういうあやうい中で、商売をしていきます。
ここいらへんは、やはり彼の才能なんでしょうね。

やがて、冷戦が終結します。
ユーリーは大喜び。
とはいっても、世間の人とはまったく違った喜び方でした。
ユーリーの故郷、ウクライナでは、旧ソビエト時代に蓄えた武器弾薬がたくさん眠っています。
叔父が軍人の要職についているため、ユーリーはコネをいかして、ウクライナへ乗り込み、武器を大量に買い付け、それを海外へ売りとばします。
自動小銃のAK47はもちろんのこと、戦車、対戦ヘリなんかを大量にゲット。
倒されたレーニン像に肘をつけて、電卓で値段をはじき出すユーリー。
ソビエト崩壊によって、ウクライナは混乱しており、それに乗じた商売でした。
これによって、ユーリーは武器商人の大物にのしあがっていきます。

また、アフリカの紛争地帯でも、ユーリーは大儲けをします。
アフリカでは、金のかわりにダイヤモンドを通貨として使用します。
笑ったのが、そこの大統領のどら息子が、金色の自動小銃を持って、アメ車をのりまわして、ヒップホップをがんがんにかけて、アフリカの舗装されていない道路をゲラゲラ笑いながら、銃を乱射していたところです。
こんなどら息子、いたらやだなぁ。
大統領も大統領で、すこしでも気にいらない人間は銃殺ですよ。
秩序なんて皆無です。
トンデモな大統領とその息子。
ユーリーはそんな大統領父子に気に入られ、黒人のスタイルが良い女をあてがわれます。
んが、しかし、エイズ多発地帯で、かなり微妙なユーリー。
ナオミばりの、スタイルの良い女が、二人、誘惑しまくりです。
ユーリーは、せめてゴムだけでも、と思うのですが、ナマでやろうと言う女。
煩悩に負けそうなユーリー。はたして…?
みたいなところが面白かったですね。エロがほどほどあって、ところどころで笑わせてくれます。

また、笑えたところは、アフリカで武器を空輸していたところ、インターポールのバレンタインが、戦闘機で追いかけてきます。
ユーリーは、アフリカの道路へ強制着陸。
飛行機の中の武器を、このままにしておくと、インターポールの証拠となってしまいます。
しょうがないので、そこいらへんを歩いているアフリカ人たちに「タダであげる!持ってけ!」と声をかけます。
すると、砂糖に群がる蟻のように、次々とアフリカ人たちは機関銃やら手榴弾やらを持っていきます。
空港だったら2時間かかる仕事を、わずか10分で終了。
みーーんなきれいに持っていってくれました。
その後、バレンタインが現場に急行し、ユーリーを捕捉するのですが、証拠が何もなくて(住民がみんな持っていってしまったため)、やむをえず、バレンタインはユーリーに手錠をかけ、その場に放置。
飛行機もその場に放置。
すると、逞しい住民たちは、次は一晩かけて飛行機を解体。
ぜーーんぶ持っていってしまいます。(笑)
ここいらへんは、アフリカ人の逞しさがでていますね。

バレンタインとユーリーの追い駆けっこは、ルパン三世と銭形警部の追い駆けっこと同じで、我々に笑いを提供するためにあるんでしょうね。

そんなこんなで、巨万の富を築くユーリーですが、妻に自分の商売がバレてしまいます。
「そんな商売は辞めて!」と、美人妻に言われるユーリー。
果たして、ユーリーは…?

なかなか楽しませてくれる映画ですね。また、考えさせてくれる映画です。
戦争って、大義名分があるとか言ってるけど、利権で動いているわけじゃないですか。
政府などは国家ぐるみで武器を売ったり買ったりしているわけで、軍人にも利権はあるわけで、そういう利権とも結びついているわけです。
なんということはない、戦争は実は事業であって、みんな甘い汁を得たいためにやってることです。
そういう、構造がよく見えた映画でした。

実は、そういう戦争関係の利権って、あまり表沙汰にならないので、わかりづらいんですよね。
僕は、基本的に戦争は利権争いなんだろうと思っています。
アメリカの戦争だって、イラクの石油利権が欲しかったんでしょ?
日本の第二次世界大戦も、大きな目で見れば、中国の権益を争っていた、その利権争いが大きな原因だったと思います。
ただ、日本の歴史では、そうした「利権から見た戦争」という視点を欠いているような気がします。
誰か、歴史家の人が、「利権争いとしての太平洋戦争」とかって書いてくれないかなぁ。って、書いても命の保障はしませんけど。


ユーリーは、武器を売る、特に非合法の抜け道を見つけ、合法にしたてあげる特別な才能がありました。
まさに、武器商人とは彼の天職でした。
その「才能」ゆえに、彼は武器を売るしか生活の道はないのです。
彼は、弟を亡くしても、妻に離別されても、武器を憎んでいても、両親に義絶されても、良心の呵責があっても、生きるために武器を売り続けるしかない人生なんです。
まさに、「才能」に呪われている存在なんです。
彼は不幸です。
いくらお金を稼いでも、いくら美女を抱いても、いくら麻薬をやっても、それは決して満たされることはありません。
彼は、その「才能」ゆえに苦しみ続けなければなりません。
そうした矛盾や葛藤が、見事に描き出されています。
「才能」を、神から贈られるというのは、幸福なことなのか、不幸なことなのか、わかりませんね。
また、お金があるからといって、必ずしも幸福とは限らないんだなぁ、とユーリーを見て思いました。
…っていっても、お金は邪魔にならないから、欲しいなぁ。(笑)


この映画には関係ないんですけど、世界の紛争地帯で非常に良く使われている、AK47を題材にした、松本仁一「カラシニコフ」という本を思い出してしまいました。
アフリカというのは、「近代国家」という概念がないために、「国家」として成立することは難しいみたいです。
ですから、この映画にトンデモな大統領とその息子みたいなことはありうることです。

この映画は、僕は半分は嘘(虚構)で、半分は真実だろうと思います。
これが全て真実というと、そりゃ嘘だよ、と思ってしまいます。
明らかにネタとわかるところもあります。
そうした嘘っぽさというのは、アメリカでこの種の映画を公開するときには、どうしても必要なんだろうと思います。
だって、マジのガチンコで武器商人の映画なんて撮ったら、撮影スタッフは残らずハドソン川に浮いていますよ。(笑)
この映画は、わざとレベルを落としたり、語らなかったところも相当あるでしょう。

なるべく多くの人に見てもらいたい映画です。
今の我々が住んでいる世界の真実を、ほんの少し描いていることは間違いがありません。
一面の真実かもしれませんが、しかし我々が知らなければならない真実を、確実に描いている映画です。