読書感想「オーデュボンの祈り」
オーデュボンの祈り (新潮文庫)オーデュボンの祈り (新潮文庫)
著者:伊坂 幸太郎
販売元:新潮社
発売日:2003-11
おすすめ度:4.0
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【評価】★★★
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伊坂幸太郎の本は初めてなんですが、なかなか良かったですよ。

コンビニ強盗に失敗し、逃走していた伊藤。ところが、その伊藤、目が覚めると、見知らぬ島に来ていました。
その荻島は、江戸時代以来の百年以上、外からは遮断されているのです。
いわば、鎖国状態。生活必需品その他もろもろは、荻島と日本を行き来する職業の轟さんが運んでくるので、とくに困ったことはありません。
その島には、奇妙な人がたくさん住んでいます。
奥さんが殺されて以来、嘘しか言わない園山という画家やら、
島のルールとして、殺人を許された桜という美男子やら。
きわめつけは、人語を操るカカシ。
このカカシは憂午という名前で、未来が見えるのです。
ところが、伊藤が荻島にやってきた次の日に、憂午はバラバラにされていました。
伊藤は「未来が見えるはずのカカシが、どうして自分の死を予見できなかったんだ?」と疑問に思い、独自に調査を開始。

伊藤が、荻島で変人たちとたわむれている時、城山という冷酷非情な警察官が、伊藤の行方を執拗に追っています。
やがて、捜査線上に伊藤の元恋人、静香が浮上。静香を毒牙にかけようとします。

カカシの憂午を殺した人物はだれか?どうして憂午は自分の未来を予見できなかった?はたして静香は城山の手から逃れられるのか?


すっとぼけたような緩い感じの小説ですね。
個人の好みがありますが、僕はこういう小説は嫌いではないです。
きっと、村上春樹が推理小説書かなきゃいけなくなったら、こういうの書くと思います。(笑)

基本的な設定が似ているんですよね、村上春樹に。
「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」でも明らかですけど、
村上春樹って、こちら側の世界とあちら側の世界、というふうに、二つの世界を別々にするじゃないですか。
んで、だいたいこちら側の世界から、あちらの世界に足を踏み入れる/踏み入れない、という話の展開になっています。
あちら側というのは、別のいい方をすれば異界だとか彼岸だとか、異世界なのです。
その世界では、我々の常識というのは通用しない、我々とは微妙に異なる世界が広がっているんだよ、というわけです。
妻だとかが、あちら側の世界に行ってしまう、どうしよう…。
んで、そうこうするうちに、こちら側とあちら側が繋がっていく…みたいな話ですよね、村上春樹って。

伊坂さんの小説でも、やはり世界が二つにわかれていて、「あちら側」=荻島なわけです。
あちら側、すなわち荻島では、我々の知っている歴史とは微妙に違う歴史が支配している世界であり、
我々の常識とは微妙に違う世界が広がっている、というわけです。
で、こちら側の人間として、城山と静香の話があるわけですね。
それで、やがてこの二つの世界が交わっていく、というような話なんですね。
ちなみに、この二つの異なる世界をもとにして、その二つの世界が交わる、という話は、古くは「竹取物語」がその元祖と言えます。
「竹取物語」のかぐや姫は、月の世界で罪を犯し、我々の世界で贖罪をするわけです。それで、また再び月の世界へ帰って行く、という内容です。
すなわち月の世界と我々の世界、という二つの世界に基づいています。
これは、「物語」というものが、そもそもは「神々の世界」を語るということに主眼があったからでしょう。

それはともかくとして、読者側としては、「いつこの二つの世界が交わるんだろう…」と思いながら読んでいくわけで、逆に言えば、創作する側としては、二つの世界を巧く結びつけて大団円にしなければいけないわけです。
伊坂さんは、かなりそこいらへんは巧く結びつけたなー、という感じがしました。
ただ、ミステリーとしては、あまり面白くは感じませんでした。
憂午がどうして未来を予見できなかったのか、というのも、ちょっとルール違反のような気もしましたし。
僕個人としては「まさかそんなオチじゃないよねー」と想定の範囲内だったので、
そういうオチだったら、夢オチでもいいじゃん、と思ってしまいましたよ。(笑)

ちょっとミステリーとしてはちょっとなー、と思ったんですが、
伊坂さんの作り出した小説の世界観は、面白いですね。
緩やかな感じの異界は、シュールで新しさを感じました。
また、こちら側とあちら側を繋ぐ、おばあさんの警句めいた言葉やリョコウバトなども、なかなか効果的でした。

また、城山がキレてましたね。
僕は城山みたいな超絶的な悪というのは割と好きなんですよね。
だって、城山って弁解の余地がないほどの悪じゃないですか。
こういう悪というのは、わかりやすいので良いです。
個人的には城山に、荻島を「バトルロワイヤル」ばりに殺戮の島にして欲しかったんですが、
さすがにそこまで伊坂さんは荒んでなかったようです。(笑)


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