読書感想「天皇たちの孤独 玉座から見た王朝時代」
天皇たちの孤独―玉座から見た王朝時代 (角川選書)天皇たちの孤独―玉座から見た王朝時代 (角川選書)
著者:繁田 信一
販売元:角川学芸出版
発売日:2006-12
おすすめ度:3.0
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【評価】★★★
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繁田信一さんの本なんですが、なかなか面白かったですね。
繁田さんは、いつも藤原実資の『小右記』をネタもとにしつつ、わかりやすく噛み砕いた平安時代の歴史の本を出している人です。
今回は、『小右記』のみならず、『枕草子』も多く出てきていました。

一条天皇、円融天皇、花山天皇、三条天皇、この四人の天皇と、円融天皇の妃として一条天皇を産んだ藤原詮子、一条天皇の妃藤原彰子、二人の天皇の妃が、それぞれの章で取り上げられています。
いずれの天皇や妃にしても、藤原氏の権力のためのオモチャという感じで、利用されるだけ利用される、という感じの話でした。
しかも、これらの天皇や妃たちは、だいたい例外なく孤独なんですよね。
それで、いろいろとぼやいていたり、周りに気をつかったりしています。
そうしたことが、『小右記』を中心とした歴史資料をベースとして、『枕草子』などの文学作品も要所に出てきて、説得力あるように描かれていきます。

この人たちが活躍した時代って、「平安王朝」と言われているけど、
「王朝」というと、王様=天皇が、ワガママし放題だった、というわけではなく、天皇は天皇なりに、それぞれ苦労していたみたいです。
というのも、この時代の天皇って、いわば連立政権に担ぎだされた御輿にしかすぎないわけで、
それぞれの貴族たちの機嫌を損ねると、たちまち政局が止まってしまうわけですよ。
だから、それなりに苦労するわけね。
しかも、天皇の周りには、自分の利益しか考えないような藤原氏のタヌキがいて、天皇を騙したりしているんですよね。
円融天皇や花山天皇は、藤原兼家にずいぶんと痛い目をあわされているし、
一条天皇、三条天皇は藤原道長に悩まされています。

僕は、たまたま大学で平安文学を勉強していた過去があり、この時代の歴史についてはある程度は知識がありました。
王朝時代の天皇は、藤原氏たちにとっては連立政権の御輿にすぎず、独裁的な政治権力を持っていない、ということはよく知っていたので、
天皇が邪険に扱われていても、「まあ、兼家とか道長だったら、それくらいのことはするだろうな」としか思わなかったのですが、
あるいは一般の人たちとしたら、この事実は衝撃なのかもしれません。
この時代の天皇の奥さんは、ほぼ藤原氏出身で、子供を産む時は実家に帰っちゃうわけですよ。
養育権も母親にあるために、産まれた子供は母方の屋敷、つまり藤原氏のもとで育つわけですから、
となると、その親王さんたちは、藤原氏の屋敷で、藤原氏たちによって洗脳されてしまうわけで、
天皇になっている時には、すっかり母方の実家の藤原氏には逆らえねえ、という状況が整えられてしまうわけです。

まぁ、それにしても、兼家と道長、えらくえげつない人間だったんだなー、という感じですね。
王朝時代に天皇となっていたとしても、やはり生きるってのはつらいことなんですねー。
平安時代の天皇の孤独が、よく描かれていた本でした。



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