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読書感想「王朝貴族の悪だくみ」
王朝貴族の悪だくみ―清少納言、危機一髪王朝貴族の悪だくみ―清少納言、危機一髪
著者:繁田 信一
販売元:柏書房
発売日:2007-04
おすすめ度:2.5
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【評価】★★★
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繁田信一さんの本です。
副題が「清少納言、危機一髪」で、序章は「清少納言の実兄、白昼の平安京にて射殺される」とありまして、
清少納言の実の兄清原到信が殺されるんですが、実はこの清原到信はえげつない貴族で、殺されてもしょうがない犯罪を犯していた、というようなところから話をはじめています。
他にも、和泉式部の夫が殺人を指示していた、など、
優雅な王朝文学の作者たちの夫や兄が、犯罪行為に手を染めていたという事実から指摘しており、
「つかみはオッケー」というところでしょうか。
そこから、平安貴族のえげつない犯罪行為を羅列していく、という展開なんですがね。

とりあえず、横領から売官、殺人まで、王朝貴族が手を染めた犯罪行為を指摘しており、
それも『小右記』などの古記録を証拠にしているので、資料の確実性というところでも、おそらく真実であろうと考えられます。

まあ、ただ、どうも繁田信一さんは、現在の価値観で、貴族の犯罪を糾弾しているところがなきにしもあらずって感じでしたね。
昔の受領は、横領なんかは当たり前だったわけで、それが今日の「横領」とはかなり違ったニュアンスがあるんじゃないか、と思うんだけどね。
今日の刑法の「横領」と、この時代の「横領」って、感覚としてかなり違いがあるように思えるのよね。
受領の横領ってのも、一種の「役得」なわけで、それは現代の見方によっては「役得」はあってはならない、という価値観だから、糾弾されるわけですよ。

また「殺人」というのも、現代は、一人一人には人格があるという人権思想がありますから、
どんな人間でも、殺されれば「殺人」なんだけど、
平安時代には近代的思想はあるはずもないわけで、下手すると身分の低い人間なんか、人間じゃねえ、という価値観だったわけだろうから、
そんな人間は死んでも関係ないね、という感覚だったのかもしれません。
そこいらへんの、平安時代の「感覚」については、あまり触れられていないように感じました。

現代の価値観で、平安時代の貴族の悪行を斬る、というようなところがあって、
ちょっと違和感を感じましたね。
現代の価値観で1000年前の世界を批評すれば、そりゃあ違和感ありまくりは当然なわけで、
それを大仰に「けしからん」と斬って捨てるのは、現代人のエゴにほかならないじゃないですか。
1000年前の人間は、現代とは別の倫理にそって懸命に生きているのですから、
それを指弾しても意味がないような…。
例えるならば、近代ヨーロッパ人が、アフリカの原住民の生活を「上から目線」で難癖つけるような居心地の悪さを感じました。
ことさら王朝貴族の「えげつなさ」を書き立てているだけなんじゃないか、という気がしないでもないんですね。

なんというか、古記録のセンセーショナルなところを切り接ぎして書いたような本だと感じました。

ただ、平安貴族って、やっぱりえげつなかったんだなぁ、ということは、すごく勉強になりましたね。



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