読書感想「歴史の視力 太平洋戦争前夜、日英米は世界をどう見たのか」


【評価】★★★
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松本正さんの本です。この人の本ははじめてですね。
太平洋戦争に至るまでの考察がなされている本です。
まずは、国民性の分析から。
「国民性」とは?という基礎的なことから、
イギリス、アメリカ、日本の国民性について、詳細に分析していきます。
さらに、歴史を動かす動力源について、個人のエネルギーは「パーソナル・フォーシズ」、集団のエネルギーを「インパーソナル・フォーシズ」と定義します。この「インパーソナル・フォーシズ」は、パーソナル・フォーシズが結集される社会・政治・経済条件のことで、人間個人に影響を与えている習慣、慣習、国家権力、階級、宗教教義、自然環境なども、インパーソナル・フォーシズだといいます。
このインパーソナル・フォーシズは、いわゆる「空気」ですね。
みんながよく言う「空気読めよ」の「空気」。同調圧力、共同幻想と言っても良い。
太平洋戦争前の、日本のインパーソナル・フォーシズの分析にすすみ、どうして負けるとわかっている戦争に突き進んでいったのか、ということや、また米英が日本をどう見ていたのか、ということも示されていきます。
実は、米英にとっては、日本はほとんど視野に入ってなかった、というか、
泥沼の日中戦争も、地域紛争レベルで考えていて、
むしろ、米英にとっての脅威は、ドイツだったんですね。
ドイツとイタリアの軍事同盟とか、これが安全保障上の大問題だったところに、なんと日本がホイホイとその軍事同盟に加わってきたために、「じゃあ、日本もシメとくか」という流れになってしまった、という指摘がなされています。
というのも、この時代は、「ヨーロッパを制するのはドイツだべ」という、
ドイツがイケイケドンドンのアゲアゲで、その勢いに飲まれちゃった、いわゆる「ドイツ病」に罹ってしまった、日本首脳の馬鹿さ加減が問題だった、というわけですね。
むしろ、ドイツなんかと組まないで、米英にある程度の妥協をして、「ウチはあくまでドイツとは組みませんよ、ナチなんてキ印でしょ?」という姿勢を見せておいて、隠忍自重して第二次大戦の嵐をやりすごしておけば、日本に対する潮目が変わっていた可能性もあるわけです。
ちゃんと情況を読む力さえあれば、そういう対応もできたんですが、ここで問題になってくるのが、「日本人の国民性」でして、客観的な観察眼をなくして、怒りにかられて「やったろやんけ!」と、アメリカと喧嘩をはじめてしまった、という流れなわけです。
ポイントは、「ドイツとさえ組まなければ…」というところなんですが、
日本の首脳部がいかに「ドイツ病」に罹っていたかが、これもまたちゃんと分析されています。

この本は、ちゃんと原典まで当たっているというか、よく勉強していることが、よくわかるんですよ。
というのも、学術書のように、ちゃんと出典が示されていて、誠実に歴史と向き合っていることがわかります。
こういう筆者の姿勢があるために、非常に説得力のある本となっています。

ただ、いくつかの歴史の岐路があったけど、日本はことごとく外れてきて、敗戦に至ったことが、よくわかりまして、
これを読んで、「ああ、やはり、日本は負けるべくして負けたんだ」ということが、説得させられる本でした。
そして、現在の日本人の国民性も、昔とあんま変わってねーよな、ということがわかりますね。
ノリとアゲアゲな気分でガツンとやったれば、なんとかなるべ、というヤンキーっぽい精神主義は、戦前から変わらないのだなぁ。



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