読書感想「海賊とよばれた男 下」
海賊とよばれた男 下
百田 尚樹
講談社
2012-07-12


【評価】★★★
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第三章が昭和二十二年から昭和二十八年。第四章が昭和二十八年から昭和四十九年まで、国岡鐵造の石油をめぐる闘いが描かれています。
第三章は、いわゆる「日章丸事件」がメインになっています。イランに原油を直接買い付けに行く、という話ですね。ただ、イランの石油はアングロ・イラニアンのもの、とイギリスが強く主張し、輸送船を拿捕したりしています。石油メジャーは、イギリスに遠慮して、イランには手を出していない。その間隙をぬって、田岡商店がかっぱぐ、という話であります。
といっても、よーく考えれば、この事件、田岡商店が大もうけって話であって、日本の利益というわけじゃないような気がしないでもないのですが、いつのまにか「日本万歳」「日本やったった」的な話に置き換えられて、田岡商店萌え、という落ちでおわります。
第四章は、政府が田岡商店を締め付けようとするのに対して、製油所を短期間で作ったり、ソ連から原油を輸入したりと、メジャーも手が出せないほどのビッグになる田岡商店、という話でした。
この話に一貫して流れるものは、「石油」ですね。
石油の欠乏のため負けた日本が、いかに石油を確保し、発展したか、そして、それを支えていたのは、田岡鐵造の田岡商店(=出光)なんだよ、という話ですね。
近代の高度経済成長は、石油と切っても切れない関係にあるわけで、日本の石油は輸入に頼るしかなく、いかに安く原油をゲットするか、ということが最重要課題であり、それを田岡鐵造はずっと考えていた、すなわち日本という国家のことを田岡鐵造は常に考えていたのだ、ということで、
田岡鐵造の偉大さを賞揚する、という内容でした。
ただ、個人的には、むしろ田岡鐵造のダークな面というのも見てみたい気がするんですよね。
満鉄に食い込んだのは、もちろん田岡鐵造の開発した機械油ということもあるのでしょうが、満鉄経由で、いかにうまい汁を吸ったのかだとか、
満鉄系の「黒い人脈」を使ったことはないのか、だとか、
そういう側面も描いてほしかった、と思わないではないです。
戦後の急速な経済発展ってのは、満州で培った国家社会主義の統制経済のノウハウを日本に導入してもたらされた、と言われているわけですが、
戦後に急成長した企業というのは、大なり小なりそういう満州でのブラックな側面をうまく取り入れたという面もあるはずで、そこいらへんまで踏み込んでほしいな、と思わないではないです。
また、ちょっと気になったのは、官僚と同級生だっただとか、同じ学校の先輩後輩だったから、田岡に有利なふうに取りはからってもらった、もしくはいち早く情報をゲットできたり、ということが書かれているんですが、
私のように茨城県のビーバップハイスクール→三流大学という出身の人からすると、うらやまけしからんので、不愉快でしたね。
もちろん、現実世界では、そういうことが大きなウエイトを占めたりしていまして、「おぅ、君も稲門なのか、ガハハ」と、急にフレンドリーになったり、なんてことは日常茶飯事でございますが、私のように「三流大学出身です〜」と言って鼻もひっかけてもらえない人間からすると、「それって運だけやん」と思ってしまいますので、いくら偉大なことをやってても「結局、コネなわけだ」と幻滅してしまいます。
コネも実力のうちとは言いますが、でも、それだけじゃなんかなぁ、という気もするのですよ。
とりあえず、なかなか楽しめたのですが、田岡鐵造の清廉潔白すぎる描き方は、いささか疑問なしとはしません。ちゃんと負の部分を描いてほしいです。なんか勧善懲悪の物語にしか見えず、「ほんまかいな」としか思えないんですよねぇ。



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