読書感想「赤目四十八瀧心中未遂」
赤目四十八瀧心中未遂
車谷 長吉
文藝春秋
1998-01


【評価】★★★
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車谷長吉先生の本でございます。
エリートの生島が転落し、尼崎で臓物を串にさすバイトをする毎日。
貧民街なので、どいつもこいつもあくの強い人間ばかり。
そんななか、アヤちゃんという美人と不倫おセクス。
アヤちゃんには、彫眉さんという入墨彫りの男がついている、そいつがコワモテなので、ガクブル。
そんなコワモテの彫眉から、生島は箱を預かることに。
どうやら、そうとうにまずいものが入っているらしい。
ある日、その箱を届けるようにと告げられたりする。
どうやら、拳銃が入っているらしい。
そんな日々、生島は、アヤちゃんをつれて、尼崎脱出を企てるものの、
アヤちゃんが途中で逃走、生島一人で尼崎を脱出する…というような感じの本でした。

尼崎の貧民街の雰囲気や、そこに住む香ばしい人々などがリアルに描かれていて、
珍獣動物園ふうの趣で、それなりに面白いですね。
私も茨城県の貧民街出身でございますから、貧民街の雰囲気の悪さというのはよくわかるんですが、
ただ、尼崎は独特らしいですねぇ。

なんか、主人公の選民思想といいますか、
「こんなところに落ちぶれてるけど、オレは慶應出のエリートなんやで」
という慶應出身者によくみられる選民思想ぶりが、ちょっと鼻につくかなぁ、なんて思わないではないです。
登場人物たちから、主人公は「あんたはこんなところにいるべき人間じゃない」とか言われたりしてまして、
やっぱりエリート様は違った雰囲気をまとっているんだろうなぁ、なんて感じてしまいました。

また、車谷先生の文章力はよろしいですねぇ。
特に、アヤちゃんとおセクスにおよぶ場面は、ずいぶんと筆に力が入ってまして、
「あッ。」
という小さな声が洩れた。その勢いでアヤちゃんは私の手を振りほどくや、向き直り、一瞬、あの猛禽のような凄い目の光を放って、私を烈しく抱きしめた。気が狂うたように二人は接吻した。も早この牝と牡の霊の炎は、より烈しく、熱い舌が熱い舌を求め合わないではいられなかった。アヤちゃんの心臓の慄えがそのまま私の心臓に伝わった。私の心臓の戦きもそのままアヤちゃんの心臓に伝わるに違いなかった。大阪湾の夏の海が私の頭の中でぎらぎらした。心に血のにじんだ牝と牡だった。両膝の力が抜け落ち、二人は炎の氷がきしむように崩れ落ちた。闇の中で世界が破滅するようだった。(139〜140頁)

とか、いやぁ、良い文章ですよ。
「霊の炎」とか、「大阪湾の夏の海が私の頭の中でぎらぎらした」とか、いいですねぇ。詩情あふれていて、良い文章だなぁ、と感じてしまいます。
その後の「心に血のにじんだ牝と牡」というのもいい。
いやぁ、ここは、車谷先生の渾身の文章だということがわかります。
また、コトが終わった後にも、
その背中を見ても、私も声が出なかった。と言うより、すでに全身の霊が燃え果てた灰のようになっていて、私の中で言葉を生み出す何かが死んでいた。一気に連続五回、射精した。はじめの三回は物に狂うたような抜かずの三連発だった。あとの二回はアヤちゃんの口にふくんでもらって射精した。それはこの世のことならぬ至福だった。だが、そうであるがゆえに、射精は死だ。私は射精後の忌まわしい虚無の時間の中に萎びた男根を垂れ、死人のように転がっていた。(141〜142頁)

ですからね。
いやぁ、五回もいたしたんすか。
絶倫ですなぁ。
思わず吹き出したのが「はじめの三回は物に狂うたような抜かずの三連発だった」ですね。
なんすか「抜かずの」って…?
って、ググってみたら、要は膣内から「抜かず」なわけね。発射して、そのまま膣内に留まって、それでまたおっきくなったんですね。
いやぁ、すごい、すごい絶倫ぶり!!
尼崎の貧民窟ぶりに驚くより、車谷先生の絶倫ぶりのほうがビックリしちゃいましたよ。

とりあえず、尼崎やその近辺に住んでいる人は、読んでおいて損はないですね。
なかなか面白かったです。



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