ここ数年、メジマグロの刺身が出回っていません。メジマグロとはマグロの幼魚のことで、刺身の場合に身が柔らかい肉になります。個人的には好きな味なのですが、スーパー等で見ることがなくなってしまいました。この原因は調べてみると、どうやらマグロによる食中毒にも原因がありそうです。この食中毒を起こす原因はクドアによるもののようです。クドアはクドア・セプテンプンクタータと呼ばれる種類になります。以前から知られていたクドアでは中毒を起こすことがありませんでしたが、このクドア(クドア・セプテンプンクタータ)による食中毒の症状は下痢や嘔吐になり短時間で症状が出る特徴があります。クドアは粘液胞子虫(クドア属)と呼ばれる寄生虫です。肉眼では見えない位に小さなものになります。東京都健康安全研究」センターの調べでは、日本産メジマグロ(メジマグロとはクロマグロの幼魚のことで、3年以内の幼魚になります。重さは30キロ未満)の67%。日本産クロマグロの10%がクドアに汚染されているということです。ミナミマグロ、キハダマグロ、メバチマグロからはクドアの検出はありませんでした。どうやら日本近海のマグロに多発しているようです。クドアは新しい食中毒を起こす菌として厚生労働省から報告されていますが、食中毒としての認定はされていません。クドアは冷凍されると毒性を失うので、通例、出回っているマグロは冷凍されて運ばれているので、中毒を起こすことはありません。やはり危険なものは日本近海の生で食べるものになるようです。スーパー等でメジマグロを見なくったのは、マグロの漁獲も減っていることから、メジマグロの捕獲が減っている、もしくは保護していることからかもしれません。他国の日本近海での捕獲(成魚になる前の段階での捕獲)も影響があるようです。
他の魚についても、サバに当たる、魚に当たるということを聞くことがありますが、魚を生で食べる日本の食文化から、これはアニサキス症であると思われます。魚による寄生虫症では日本の場合、圧倒的にアニサキスによるアニサキス症が多く発生しています。アニサキスによる中毒の場合、症状がひどくなることと、発生件数が多いことから有名な魚の食中毒になっています。寄生がいる魚を食べたり、寄生虫そのものを食べてしまっても、人に害のない場合もあります。寄生虫がいたからと異常に怖がることは無いと思います
魚の寄生虫による食中毒と寄生虫を幾つか調べてみました。
タイノエ、アニサキス、シュードテラノーバ、テンタクラリア、クドア(クドア・セプテンプンクタータ)、ブリ筋肉線虫(ブリ糸状虫)、ラジノリンクス。7種類の魚に寄生する寄生虫を調べてみました。
◆タイノエ(ウオノエ類) 寄生する魚はマダイ、メジナ、スズキ、キダイ、アカムツ、アマダイ、マルアジ、シログチ等。
ウオノエ類の寄生場所は魚の鰓(エラ)、口腔、腹腔内、体表に寄生します。タイノエは口腔内に寄生します。マダイなどタイの口腔に多く見られます。体色は乳白色〜黄色をしています。雌の体長は40〜50ミリ。雄の体長は10〜20ミリ。通常、雌雄1対が寄生しています。タイノエは寄生性の甲殻類の等脚目に属します。フナムシ、ダンゴムシやワラジムシの仲間になります。人間には寄生しません。 かなり大きいので肉眼で確認できます。見た目があまりにも気持ち悪いのですが、取り除けば問題はないです。寄生された魚を食べても大丈夫です。魚が死んでしまうとタイノエは離れるそうです。ウオノエ類は種類によって寄生する魚の種類が変わってくるそうです。初めて見たのはマダイの口の中で、トラウマになりそうな衝撃を受けました。この時は魚を食べないで、そのまま捨ててしまいました。今思うともったいないことをしてしまいました。
◆アニサキス アニサキスはアニサキス科アニサキス属に属する線虫の総称になっています。寄生する魚はマダラ、スケソウダラ、サケ、サバ、サンマ、ホッケ、メバル、スルメイカ、アジ、イワシ等。寄生場所は、魚の腸に多く寄生しています。魚が死ぬと内臓から筋肉内に潜り込んで行きます。スーパー等の魚ですと内臓に潜んでいる可能性があります。渦巻きのような状態で寄生しています。半透明ですが、焼き魚を食べていると赤っぽく渦巻きになったものを見つけることがあります。体長は2〰4センチ。アニサキスの食中毒は、魚の寄生虫症では有名です。稀に胃や腸壁を食い破ることがあり、痛みを伴った激しい下痢、吐き気、おう吐を起こします。発症は食後数時間後位(速い場合は2時間程、通例8時間程が多いようです)になります。アニサキスはマイナス20度で24時間以上の冷凍で死んでしまいます。死んでしまったものは無害です。
アニサキス症の種類。
・胃アニサキス症(胃壁に障害を与えます。ほとんどの症状はこれ。痛みを伴った激しい下痢、吐き気、おう吐)症状が現れるのは食後2時間から8時間程が多いようです。 ・腸アニサキス症(腸壁に障害を与えます。 腹痛、悪心、おう吐)数時間から数日後に症状が現れるようです。 ・消化管外アニサキス症(腸管を食い破って腸管外に脱出して起こる)この場合どこにアニサキスが移動するかで症状が変わるようです。 ・アニサキスアレルギー症 アレルギー症状を引き起こします。
アニサキス症の予防として食べる際に、60度以上で1分以上加熱する。マイナス20度で24時間以上の冷凍をする。ことで安心して食べることができます。もしも釣った魚ならば、内臓は取り除いてしまった方が安全だと思います。保存も冷凍が好ましいです。
アニサキスの体内での寿命は1週間程になりますが、与えるダメージが大きいので早い処置が必要になります。
◆シュードテラノーバ センチュウ類。寄生する魚はアンコウ、タラ、オヒョウ、ホッケ、マンボウ、サバ、ニシン、スルメイカ等。
稀に人の胃や腸壁に侵入して症状を引き起こします。症状は2〰10時間後に激しい吐き気、腹痛、、吐き気、おう吐、ジンマシンを起こします。アニサキスと同じような症状を起こします。アニサキスに似ていますが、アニサキスが渦巻き状になることに対して、丸まることはありません。アニサキスより太くてやや大きくなります。大きさは2〰4センチ程。
寄生場所は魚の内臓や筋肉内にいます。色は茶褐色。寄生場所は内臓や筋肉。
アニサキス同じく食べる際に、60度以上で1分以上加熱する。マイナス20度で24時間以上の冷凍をする。ことで安心して食べることができます。
◆テンタクラリア 寄生する魚はカツオ、サバ、マアジ等。最終寄生主はサメ類。
寄生する場所は腹側の身の中(内臓、腹部の筋肉内)人に寄生することはありません。扁形動物門に属し、大きさはコメ粒ほどで色は乳白色をしています。成体は5〜10ミリ。頭部に伸び縮みする4本の吻があります。かなりの確率で寄生しています。九州方面のカツオのタタキは表面が過熱されています。恐らく寄生虫が多いカツオの食べ方とした事から来たことなのでしょう。スーパーのカツオの切り身に生きているテンタクラリアを見つけたことがあります。死んでしまうと透明になるので、冷凍保存されたカツオでは分からなくなってしまいます。テンタクラリアは食べてしまっても人体に影響はありません。
◆クドア・セプテンプンクタータ 和名ナナホシクドア。寄生する魚はマグロ、ヒラメ、コチ等(特に養殖ヒラメに多く寄生しています)
食後数時間(5時間程が多いようです)で症状が出ますが、短時間で回復していきます(24時間以内に回復に向かいます)。症状は下痢、おう吐、胃の不快感。症状は下痢が約80%、おう吐が約60%位の症状で現れます。人には寄生しません。クドア・セプテンプンクタータの大きさは0・01ミリと小さいので肉眼で見ることはできません。マイナス15度で4時間以上の冷凍が必要なようです。クドア食中毒と呼ばれています。クドアは養ヒラメに多く、韓国産養殖ヒラメ、日本産養殖ヒラメに多く寄生しています。
◆ブリ筋肉線虫(古い呼び名はブリ糸状虫) 線虫類。寄生する魚はブリ、ハマチ。稀にヒラマサに寄生することがあります。寄生する場所は魚の筋肉、体腔にとぐろを巻いた状態で寄生しています。血を吸っているので血合いの部分に多く寄生します。人には寄生しない。色は橙赤色。最大で50センチを超えることもある大型の線虫。水温の高い時期に多く見かける寄生虫になります。海水温が低いと寄生できないようです。養殖のハマチには寄生している確率が非常に低く、ほぼ寄生していないようです。天然ものには高確率でほとんど寄生しているようです。ブリ筋肉線虫(ブリ糸状虫)は人に寄生することは無く、寄生されている魚を食べても害はありません。何といっても見た目の気持ちの悪さが問題になります。
◆ラジノリンクス 鉤頭虫類。寄生する魚はサンマ、サバ、カツオ、ブリ等。特にサンマに多く寄生しています。寄生する場所は内臓(腸管内)。体長2〰3センチ。幅は2〰3ミリ。形は円筒形もしくは紡錘形で先端の吻でくっついています。色は赤橙色(オレンジ色)。人には寄生しません。焼いたサンマの内臓部分に赤くなって見られます。またサンマの肛門から赤っぽい、赤橙色の糸のような物が出ていたらラジノリンクスだと思ってよいでしょう。寄生されている魚を食べても害はありません。
自分で生魚を調理したり、釣りに行かない場合は目にする事も無い種類のものもいますが、知識として知っておいて損はないと思います。参考にしてみてください。