毛虫、蛾による皮膚炎(毛虫皮膚炎、毒蛾皮膚炎)は4~11月にかけて発生します。特にケムシの多くなる6~8月は要注意です。ケムシ、ドクガによる皮膚炎であると認識のないまま、痛み、痒みを覚えることがあります。風の強い日にドクガが発生している木の側を通ってしまったり、終齢に近い単独行動のチャドクガの幼虫に気が付かなかったり、うっかり毒蛾の卵塊に触ってしまったなど、思わぬ所で毒毛にやられてしまう危険性があります。毒を持つガやケムシの大量発生が確認された年には特に注意が必要になります。この発生には数年の周期があるともいわれています。公園の散歩を日課にしていたり、森林浴、林縁の散策などを楽しみにしている方には知っておいた方が良い知識になると思います。ケムシやガによる皮膚炎を調べてみました。

・毛虫による皮膚炎を毛虫皮膚炎。毒蛾による皮膚炎を毒蛾皮膚炎と呼んでいます。毒のある毛を毒針毛、毒棘と呼びますが、ドクガ類の持つものを毒針毛。イラガ類の持つものを毒棘と呼んで毒毛はこの2タイプの毒針毛型と毒棘型に分けられます。両方ともに持っている種類もいます。
毒蛾にはドクガ科、イラガ科、カレハガ科、マダラガ科、ヒトリガ科の蛾が知られています。これらの科に属するすべてに毒があるわけではありませんが、毒を持つものが多い科になります。また毒蛾には幼虫(ケムシ)のみが毒を持つもの、成虫にも毒があるもの、卵塊や抜け殻にも毒があるもの、幼虫の分泌液に毒があるものなど、毒を持つ成長の段階や毒のある場所などに違いがあります。

毒針毛と毒棘。
・毒針毛を持つドクガ科の有名な毒蛾にはドクガ科とカレハガ科の蛾がいます。
ドクガ科には、ドクガ、チャドクガ、ゴマフリドクガ、モンシロドクガ、キドクガ、フタホシドクガ、マイマイガが知られています。ドクガの中には幼虫、脱皮の後の抜け殻、卵塊、成虫のすべてに毒針毛がありとても危険な種類もいます。
カレハガ科には、マツカレハ、ツガカレハ、クヌギカレハ、リンゴカレハが知られています。幼虫と繭に毒針毛があり危険です。成虫には毒はありません。
・毒棘を持つドクガ科の有名な毒蛾には、イラガ科とマダラガ科の蛾がいます。毒棘は幼虫時期にあり、成虫には毒はありません。
イラガ科には、イラガ、アオイラガ、クロシタアオイラガ、テングイラガ、ナシイラガ、ヒメクロイラガ、アカイラガなどが知られています。
マダラガ科には、タケノホソクロバ、ウメスカシクロバ、リンゴハマキクロバが知られています。
・分泌液でかぶれるドクガ。ホタルガ科のホタルガ、シロシタホタルガがいます。毛虫の持つ毛や針ではなく、幼虫(ケムシ)の出す分泌液に触れることでかぶれます。

症状の違い。
・ドクガ科の皮膚炎の特徴は、特に痒さが主になります。赤いボツボツができたり、発赤があったり、強い痒みがある場合は疑ってみることも必要です。ドクガの毒針毛による場合は痒さも強く、長く続くものがあります。衣服に付いた毒針毛は洗濯でも完全に洗い流すことは難しく、再発の様を呈することもあります。この場合、痒みの場所が移動することもあります。
・イラガ科の皮膚炎の特徴は、痛さになります。イラガに刺されるとビリビリする痛みがあるといわれています。刺された場合には、その痛みからすぐに何かに刺されたことは分かると思います。1応、どのような奴に刺されたのか見ておくと良いでしょう。イラガはズングリしたナマコやウミウシに似た形のものが多いです。クロシタアオイラガは毒針毛、毒棘の両方を持つので、イラガ科としては刺された場合の治癒に時間がかかります。

被害としては
・ドクガ、チャドクガの被害が特に多く出ます。ドクガの毒針毛は1匹で50~600万本といわれています。幼虫は危険を感じると空気中にこの毒針毛を発射します。普通の服の繊維を通り抜けるほど小さいので、気が付かないうちにかぶれることもあります。毒針毛は掻いたりすることで皮膚に刺さってしまい、症状を悪化させてしまいます。蕁麻疹のような発赤や色素沈着を残したりします。痒みが強く長く続くことでも知られています。
ドクガ、チャドクガ、ゴマフリドクガはよく似ています。この種類は雄と雌の色が違い別の種類に見えてしまいます。日中などによく目にしやすいのは雌の我の方で、じっとしていることが多いです。似た色や形の蛾がいたら触らないようにした方が無難です。ドクガには成虫にも毒針毛がある種類が多いです。幼虫、卵塊、成虫と毒を持っている蛾なのでドクガ、チャドクガの被害が多く出ることになる訳です。卵塊に関しては、成虫が毒針毛を卵塊に塗り付けてしまう事により毒を持つことになります。ドクガ、チャドクガによる治癒には10日間ほどかかります。人により数週間続くこともあります。毒を持つ蛾の幼虫は毛の長いケムシが多いです。毛の長いケムシ、ケムクジャラのケムシには要注意です。ドクガ科のマイマイガも時に大発生があるようです。1齢と卵塊、成虫に毒針毛があり注意が必要です。ドクガ、チャドクガよりは毒性は弱くなります。
・イラガの仲間の被害は幼虫に触れてしまったことによる毒棘による被害になります。成虫(我)は無毒です。刺されると痛みが強くビリビリとした痛みを感じるそうです。その痛みはハチに刺された痛みに似ているそうです。痛さが特徴の毒になりますが、痛みのピークは1時間ほどで、痒みはドクガほど強くはないですが、1週間続くこともあるようです。通例、イラガの毒としては2~3日で毒性は消えていくようです。クロシタアオイラガは毒針毛、毒棘の両方を持っているので要注意のイラガになりますね。イラガの幼虫の外見はナマコやウミウシを連想させる姿形をしています。それらしきものを見かけたら注意しましょう。
・マダラガ科のタケノホソクロバは1齢幼虫に毒があります。成虫には毒はありません。ウメスカシクロバにも同様な毒があります。毒性はタケノホソクロバより弱くはなるものの、同様に刺されると激しい痛みの後、激しい痒みがあります。治癒には10日間ほどかかるようです。
タケノホソクロバ、ウメスカシクロバの成虫は大変よく似ており、区別がつきにくいです。翅脈の間隔と、翅の透明度の差で判断しないと分かりません。幼虫(ケムシ)は毛の生えたものには毒があると思い注意することが必要です。
被害は少なくなりますが、ホタルガ科のホタルガやシロシタホタルガの幼虫は毒のある分泌液を出すので、ケムシ自体に触らないようにすることが予防につながります。症状は発赤と痒みで、2日ほど続くようです。

刺されたしまった場合の対処。
・毒針毛に触れたり、自覚のある場合には、セロテープで柔らかく(押し付けないで)吸着させて毒針毛を皮膚から取り除きます。服に付いた毒針毛は洗濯しても取り除くことが完全にはできないので、捨てるか、他の洗濯物と分ける必要があります。再発の場合、毒針毛の付いた服を洗濯の後、着ていることからくることも多いです。この場合の特徴は痒みの場所が変わったり、新たに痒い場所が現れます。
・体はシャワーで洗い流すことが良いと思われます。その際には石鹸の泡で柔らかく洗い流すようにすると良いようです。かぶれた場所の洗浄により、2次感染を防ぐ意味合いもあります。体にも服の繊維を通り抜けて付着していることもあります。毒針の毒が消えるまでには1年ほどかかるそうです。

・痒い場合でも掻かないように努力しましょう。掻くことで毒針が刺さっていくと、さらに激しい痒みとなっていきます。市販薬ではほとんど効かないので、皮膚科に行くことをお勧めします。治療法としてはステロイド剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤が使われるようです。
チャドクガ・LD
上、チャドクガの成虫です。2本の白い線と上翅下端に2個の黒点が見えます。
ゴマフリドクガ・LD
上、ゴマフリドクガの成虫です。幼虫の写真も撮れましたら追加したいと思います。