花粉症はⅠ型アレルギー(即時型)でIgeが関係して起こるアレルギーです。植物の花粉が鼻、目、喉の粘膜に接触して起こるアレルギーです。代表的な症状は発作性、反復性のあるクシャミ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどです。花粉症の原因にはヒスタミンが関与しており、ヒスタミンの働きとして体内に入ってきた物質を排除する働きを行っています。 花粉症のうち、特にスギ花粉症は、スギが日本固有種なので、日本特有の花粉アレルギーということになります。スギ花粉症での口腔アレルギー症候群の合併率は10%といわれています。スギ、ヒノキ、シラカバ、ハンノキの中では、シラカバの二次的なアレルギーが酷くなることが分かっています。シラカバ花粉症では口腔アレルギー症候群になりやすく、合併率は40~50%といわれています。つまり、口腔アレルギー症候群になりやすい原因の植物の1つがシラカバであるといえます。シラカバ花粉症の人の中にはハンノキ花粉症と合併している人も少なくないようです。 口腔アレルギー症候群とは、花粉症の人がある野菜や果物などを食べることにより口腔中に起こるアレルギー症状です。花粉症の症状の重い人ほど口腔アレルギーになりやすいようです。花粉症の10~20人に1人が該当するようで、花粉症の時期に合わせてでてくる症状です。症状の多くは食後15分後以内に、唇や口の中、喉のかゆみ、ピリピリとする感じ、腫れ、などの症状がでてきます。その他症状として、鼻水やクシャミが出る。顔が腫れる。蕁麻疹ができる。下痢、腹痛を起こす。酷い場合には呼吸困難(アナフィラキシー)などがあります。
アナフィラキシーとは、即時型アレルギー症状が複数の臓器に見られるもので、時には死に至ることもあります。
口腔アレルギーの原因は、野菜や果物など、食品に含まれる仮性アレルギー物質(ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリンなど)によるものです。これらアレルギーを起こす物質により、花粉の種類と対応するアレルギーを起こす野菜や果物の種類は変わってきます。口腔アレルギー症候群が疑われた場合は、専門の医療機関で調べることにより、何が原因しているのかを調べてもらうことができます。原因となる食物を食べないことが最善の治療法になるからです。通常は新鮮な野菜や果物が原因するので、過熱することで症状の出現は低くなり、摂取が可能となることが多いそうです。花粉症になるとその症状は長く続くので、食べ続けることでの悪化は避けられないことから、食べられるものと食べられない物を調べておくと良いと思います。口腔アレルギーではシラカバ花粉症の人の症状は重症化するということが知られています。
スギ、ヒノキ、シラカバ、ハンノキ以外による果樹などの花粉症も知られており、バラ科植物の花粉症が多く、リンゴ、モモ、ナシ、サクランボ、アンズ、ウメ、バラ、イチゴ(意外に思われるかも知れませんが、イチゴはバラ科の多年草になります)での花粉症が知られています。ウメの開花時期は早くて、2月から始まり、リンゴ、イチゴ、バラなども多くは5月までの開花時期となります。これら植物は、虫媒花のため、遠くに花粉が飛ぶことはありませんので、果樹農家の方がかかることが多いもので、一般では普通かかることはありません。植物の花粉による飛散量のピークは3~10月になります。それぞれのピークとして、スギ花粉のピークは2~4月半ば頃。ヒノキ花粉が3~4月終り頃。ハンノキ花粉が3~5月。シラカバ花粉が4~5月になります。スギは花粉を飛ばす時期が長く、少ないながらも10月から始まり6月まで飛んでいることになります。ハンノキも早いと1月から飛ばし始めています。花粉症として被害が大きくなるものは風媒花によるもので、風媒花のスギは花粉の粒子が細かく、30~40マイクロメートル。飛ぶ距離は数十キロ。時には200~300キロも飛ぶといわれています。スギ花粉が問題とされる訳です。悪化させる要因として、大気汚染があります。最近ではPM2・5や黄砂などと複合して症状を悪化させていると指摘されています。車などの排気ガスによる症状の悪化は排気ガスの規制等により、現在の日本では規制前に比べて影響は少なくなってきています。その他、道路の粉塵、チリやホコリ、タバコの煙があげられます。 花粉症の発生は長期間に渡り花粉を吸い続けることにより発症してくるのですが、その吸い続ける量と期間は人により異なってきます。症状の程度も同じく、人によって異なっています。先のスギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカバの例をあげますと、大雑把に、西日本はヒノキ。東日本、本州東部はスギ。北海道はシラカバ(本州では中部以北)ハンノキ。ハンノキは日本全土に分布していて、公園などでも見かけることができます。このように住んでいる地域で対応する植物の花粉の多い少ないがあるといえます。つまりは原因の植物の密度が関係してくることになります。人口の植林のうち約90%がスギとヒノキによるもので、その比率は約43%がスギ、約25%がヒノキの割合になります。スギ花粉のアレルギー性は低い方なので、他の花に比べたらアナフェラキシーや口腔アレルギー症候群のような重症化に繋がることは少ないようです。スギ花粉症の人はヒノキ花粉症も合併していることが多く、その比率は70~80%といわれています。このことからヒノキの花粉が終わるまでの長期間に渡り症状が続くことが多いです。このスギ、ヒノキは植林から30~40年の木が多くの花粉を持つことから、今後は西日本に多いヒノキによるヒノキ花粉の飛散量が上がることが指摘されています。ストレスのかかった木も子孫を残そうとするためか多くの花粉を持つことが分かっています。植えっぱなしの植林では、より多くの花粉を持ってしまうということですね。現在、スギの花粉の付く量が1%という低いものが改発されていて今後の主流となるようですが、生産される苗の量があまりに少なく、期待できる結果がでるまでには相当時間がかかりそうです。
・症状を悪化させる食べ物としては、ヒスタミンを多く含むものが特に良くないようです。ヒスタミンの過剰摂取により鼻水、鼻づまりなどの症状がでてきます。ヒスタミンを多く含む食べ物として、マグロ(特に血合い部分)、カジキ、サバ、アジ、サンマ、エビ、カニがあります。この場合、ヒスタミンが生産されて起こってくるもので、ヒスタミン生産菌によりヒスタミンが増えてしまうことからです。古くなった魚はあたりやすいという事です。魚は出しっぱなしにしないで、早く冷蔵庫等に保管するようにすることでリスクを減らすことができます。その他悪化させてしまう食べ物には、酒。インスタント食品。ハム、ソーセージ。乳製品。卵。砂糖などがあげられます。仮性アレルゲンとしてのヒスタミン、セロトニン、アセチルコリン、ノイリン、トリメチールアミンオキサイドを含む食品も悪化させてしまう危険があります。
・ヒスタミンを多く含む物として、トマト、ナス、ホウレンソウ、セロリ、タケノコ、エノキダケ、サトイモ、牛肉、馬肉、チーズなどの発酵食品。
・セロトニンを多く含む物として、トマト、バナナ、キウイフルーツ、パイナップル、アボガド、クルミなど。
・アセチルコリンを多く含む物として、トマト、ナス、タケノコ、サトイモ、ヤマイモ、ソバ、マツタケ、落花生。アセチルコリンの原料となる物として、コリンと卵黄。レバー、ダイズ、酵母など。
・ノイリンを多く含む物として、サンマ、タラ、サケなど。
トリメチールアミンオキサイドを多く含む物として、カレイ、タラ、スズキ、エビ、カニ、タコ、アサリ、ハマグリなど。
花粉症の種類と良くない食べ物の食べ合わせとして対比させてみると、
・スギ花粉症、ヒノキ花粉症にはトマトは良くありません。過熱処理で症状は緩和されます。
・シラカバ花粉症には、リンゴ、モモ、サクランボ、ビワ、アンズ、ヨウナシ、イチゴなどのバラ科の果物。ピーナッツ、ココナッツ、アーモンド、ヘーゼルナッツ、クルミなどのナッツ類。ニンジン、セロリ、ジャガイモ、キウイフルーツ、オレンジ、メロンが良くありません。
・ハンノキ花粉症には、リンゴ、モモ、サクランボ、ビワ、アンズ、ヨウナシなどのバラ科の果物。キウイフルーツ、オレンジ、アボガド、マンゴー、セロリ、ニンジン、トマト、ヤマイモ、ダイズ、ヘーゼルナッツが良くありません。
アレルギーに良いとされる食品としては、最近効果が発見された野菜として、レンコンがあります。タンニンなどのポリフェノールが多く含まれていて高い効果が確認されたようです。柑橘類には抗ヒスタミン物質のビタミンCとバイオフラボノイドが多く含まれています。タマネギには同じくビタミンCとケルセチンが含まれます。また抗炎症性質も持っています。ビタミンCやポリフェノールは炎症を緩和する作用があります。魚ではイワシ、サバ、サケには抗炎症作用のあるオメガ3脂肪酸ご多く含まれています。ヨーグルトは乳酸菌の入ったものが有効ですが、効果を感じられる人は30%以下になるようです。ビフィズス菌の入ったものが効果が高く、腸内環境が良くなることから効果が得られるようです。上記、花粉症に良いとされる食品と合わせて食べることで効果が上がることは確認されたようです。他に、生姜、シソ、ミント類が良いようです。
生活環境としては、疲れやストレス、睡眠不足、運動不足、飲酒、喫煙は良くありません。代謝や血液の循環が良くなると症状は緩和されるので、軽い運動、入浴、マッサージは有効だと思います。使うと良いものとして、帽子、花粉症に対応するマスク、花粉症用メガネはとても有効です。服の素材もフリースなどを避けて花粉を払い落としやすいものにすることも良いことです。洗濯物は室内に干すようにして、帰宅時には玄関に入る前に服に付いた花粉を払うと室内に入る花粉の量を減らすことができます。帽子もかぶっていなければ髪の毛も払うと良いでしょう。風の強い日も花粉が沢山飛んできている可能性が強いので注意が必要です。
大げさな話になってしまいましたが、アレルギーはこれといった改善策がないので、できることから対処していくことが最善の策となっていきます。できることから初めて症状を軽くすることに注意を向けてみましょう。