グローバル代書屋の日記

外国人・外資系企業を主に扱う司法書士の日記。 日常の業務に関することから、英語に関する情報等々。 Website: http://micasalegal.com

お陰様で色んな国の方々から会社設立のご依頼を頂いております。

東南アジア、中東、東欧etc.

外資系の会社というのは設立するまでは良いんですが、その後が大変です。

特に銀行口座とオフィス(サービスオフィスじゃない賃貸オフィス)というのはビジネスに不可欠なのですが、日本社会はたいそうせせこましくて保守的なので、結構ここで躓きます。

外資系がサービスオフィスに多いのはこういった理由からでしょう。
スタートアップにしてはかなり大きなお金をもっている方がいらしたのですが、外資系のスタートアップということで賃貸オフィスが借りれないと嘆いておられました。

それでもオフィスはサービスオフィスという選択肢もあるので、まだ大丈夫です。

問題は銀行口座。

昨年の10月に犯罪収益移転防止法が改正されてとんでもなく面倒くさくなりました。
我々は不動産取引や法人設立で犯罪収益移転防止法では相手をチェックする側であることが通常ですが、私の場合口座開設のお手伝いをさせて頂く関係上、チェックされる側になることが多々あります。

で、今回の改正により実質的支配者という要は誰がその会社に一番影響力があんの?ってことを直接だけでなく間接的に支配していても銀行に知らせなければなりません。
銀行によってはチャート式の関係図みたいなのも書かされます。相続関係説明図ではありません。
これが個人まで遡る必要があるので、日本法人が個人所有ならすぐに済むのですが、外国法人の完全子会社とかだとその外国法人の代表者は誰だとか株主は誰だとかってなって名前だけでなく住所や生年月日、その人の外国法人における株式の所有割合などを書くよう求められます。
それで○○共和国なんて書くと不思議そうな顔されるのですよね。

そのせいかこれまでにないくらい口座開設を断られまくって往生している訳です。

今後外資系の会社が日本法人を作る際の手続きを緩和しようという政府の姿勢は支持致します。
警察庁のテロ防止、マネーロンダリング防止とう姿勢も当然なのですが、この辺り上手く落とし所を付けられないのでしょうか。

政府の方は昨年よりいろいろと対策を練っているようなので、実務が追いついていくことを期待したいとおもいます。

http://www.invest-japan.go.jp/promotion/simplify_wg_04/shiryo_02.pdf




 

ついに出ました。
http://www.moj.go.jp/content/001211891.pdf

今まで出資の履行の際に資本金を払い込む銀行口座は日本にある口座でないといけなかったのですが(外国銀行の日本支店含む。)この通達により邦銀の海外支店でもOKということになりました。
うちは外資系の設立の相談が結構多いので、実務への影響が大です。

でも、この通達にある「銀行法8条2項の内閣総理大臣の許可を得て設置した外国における邦銀の支店」っていうのは、どうやったら分かるのでしょうか。
「支店」というからには「支店」であって「子会社(現地法人)」ではダメなんでしょう。

手軽に分かる方法があれば誰か教えて下さい。 

相続登記を申請する場合、通常は被相続人の出生から死亡までの戸籍と相続人の現在戸籍を添付するのですが、被相続人が外国人であれば戸籍はありませんのでどのように処理するのでしょうか。

先日アメリカ人が被相続人のケースで無事登記が完了しましたので、簡単に書き留めておきたいと思います。

これから外国人に関わる相続というのは増加するでしょうが、相続人が外国人であれば恐らくそんなに問題になりません。
被相続人が外国人だと結構厄介なんですね。
なぜなら、法の適用に関する通則法36条で
「相続は、被相続人の本国法による。 」
なんて規定があるので、必ずしも一次的に配偶者とその子が相続人になるとは限らないからです。
外国の法令なんて知るかって感じですよね。

ただ38条以下にずらずらずらと色々な規定があって重要なのは41条の反致。
当事者の本国法によるべき場合において、その国の法に従えば日本法によるべきときは、日本法による。ただし、第二十五条(第二十六条第一項及び第二十七条において準用する場合を含む。)又は第三十二条の規定により当事者の本国法によるべき場合は、この限りでない。 

これが適用されて日本法で処理できればかなり楽になりますね。
アメリカであれば州によって違ったりするみたいですが、インドネシアとかだと民族や宗教によって異なるみたいです。無茶言うなって感じです。
ただ、不動産の相続については不動産の所在地法によるって国が結構多いみたいです。

今回のアメリカもそのようなケースに該当するようで、きちんと先例がありました。
「アメリカ人が日本に有する不動産の相続については、日本法が適用される。」

なので日本法が適用され配偶者と子が相続人になります。 
 
次に必要書類ですが、正直「これ」といったものはありません。
この手の登記は集められるものを集められるだけ集めて一応登記官にお伺いをたてて上申書つけることになるでしょう。

今回のケースでは、被相続人は出生時は日本とアメリカの二重国籍で、二十歳になる前にアメリカ国籍を選択してその後日本に住んでおられました。
なので出生時の戸籍が存在し、親と兄弟関係は簡単に証明ができました。
次に日本に住んでいたということで外国人登録原票が存在しています。
平成24年の7月に外国人住民票が創設されましたが、それ以前は外国人登録原票に身分事項等が記載されており、その原票は現在法務局の入管に保管されいます。なので、市役所で証明書の交付を受けるように容易ではありません。外国人登録原票の写しは原則本人しか交付請求できないのですが、死亡者に限っては、配偶者や兄弟などが請求できます。さすがに一切請求できないとすると事務手続き的に困難が生じる場合があるからでしょう。
ところで、この外国人登録原票、1つだけ問題あります。国籍・死亡時の住所・死亡の記載・配偶者の記載はあるのですが、子の記載がないのです。したがってこれだけでは子との関係を証明できません。
通常は配偶者(であった)方の現在戸籍だけを添付すればいいのですが、今回は婚姻時まで遡って取得しました。さらに法務局からは子の出生時からの戸籍も出してほしいと言われ、配偶者の原戸籍に載ってて確認できるから良いだろーと思いながらも黙って追完致しました。

被相続人が外国人のケース、これから益々増えると思いますが、なんとか処理していきます。 

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