2005年04月06日 23:52

修験者の失敗

栄一が15歳のときでした。
20歳の姉が精神病に陥っていたので、
栄一の父の母が、この病気は家に祟りの
あるためかもしれないので
迷信嫌いの栄一の父が不在のときに
三人の修験者を呼びました。
  
   修験者はいろいろの呪文を唱え、
   「この家には金神と井戸の神が祟る、
    またこの家には無縁仏があって、
    それが祟をするのだ」とさも
   横柄に言い放った。


栄一の祖母は、

   「それごらん、神のお告げは確かなものだ。」
    この祟を清めるにはどうしたらよからろう


と聞いてみると、修験者は

   「それは祠を建立して祀りするがよい」

と言ったようです。

そこで、栄一は我慢できず、

   「其の無縁仏の出た時はおよそ何年程前の
    事でありましょうか」と言ったら、

   「およそ五、六十年以前である」


という答えが戻ってきました。
栄一は、

   「五、六十年以前なら何という年号の頃
    でありますか」と尋ねたら

   「天保三年の頃である」


という答えが今度、戻ってきました。

   ところが天保三年は今より二十三年前のこと
   であるから、そこで余は修験者に向かい、
   「無縁仏の有無が明らかに知れるくらいの
    神様が、年号を知らぬという訳はないはずだ」


と栄一が指摘しました。
計算が速い少年だったようですね。

    修験者も間が悪くなったとみえて、
    「これは何でも野狐がが来たのであろうと」
    言い抜けた。


が、栄一は容赦なく、
  
    野狐ということなら、なおさら祠を建てる祀を
    することは不用だというので、つまり何事も
    せずに止めることになった。


修験者は、この悪ガキめ、という顔付で栄一を
睨みながらその場から退場したらしいです。

栄一は、かなりませた少年であったことは確かなようです。

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コメント一覧

1. Posted by 隆子   2005年04月07日 00:26
ふふふ。愉快なお話ですね。

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