原発はいつ壊れてもおかしくない⑨

(前回の続き)

11
金属材料の経年劣化

照射損傷

genpatu原子炉本体は低合金銅の金属でできている。では、この金属に中性子があたり続けると何がおこるか?2つある。はじき出し損傷と核変換損傷だ。以下に説明する。

はじき出し損傷

金属材料は結晶が集結した結晶体であることはすでに述べた。その結晶は原子が広い範囲にわたって規則的に並んでいるものであることも述べた。そしてその結晶が格子状に並べてあることも述べた。この原子が規則正しく並んでいるところに中性子があたる(照射)するとこの‘規則正しく’が部分的に崩れる。つまり中性子が原子にあたり、その場所からどかされてしまうのだ。これが「はじき出し」だ。そしてこの‘はじき出される’ことはすなわち、材料の低合金銅が‘損傷している’という状態になることを意味している。

 

核変換損傷

原子の原子核に中性子、陽子、またはほかの原子の原子核が衝突すると、全くことなる原子核に変わることがある。このことも原子炉の材料を損傷させることになる。

 

原子炉の照射脆化

原子炉本体の低合金銅に中性子があたると脆化していく。これを‘照射脆化という。この脆化は延性脆化と硬化脆化があることは7章で述べた。この2つの脆化はある温度を境にして進む。この境目の温度を延性・脆性遷移温度または単に脆性遷移温度という。そしてこの温度以上に高くなれば原子炉の低合金銅の延性がすすみ破壊に向かう。この破壊を延性破壊という。逆に温度が低くなれば低合金銅の硬化がすすみ破壊に向かう。この破壊を脆性破壊という。

 

この温度は前述したシャルピー試験で吸収エネルギー(材料が衝撃に耐える力)が41ジュールになる温度と定義されている。つまりこの41ジュールが明確に材料の破壊が進み始める境目の値である。

 

この脆性遷移温度は中性子が照射することによって上昇する。よって原子炉の温度低下による脆性破壊する温度も上昇することになる。

 

また、この中性子の照射は前述したすべり変形の際に生じる転位の運動を妨げる。つまりすべり変形でいうならば、すべらなくする、ということになる。これは材料が延性していく(延びていく)ことを妨げることを意味する。結果、‘材料の硬化’がすすむ。

 

このことはシャルピー試験でも実証されている。シャルピー試験で原子炉の低合金銅を試すと中性子照射前より後の方が明らかに吸収エネルギーの‘上部棚エネルギー’が低下している。上部棚エネルギーとは材料の温度を上げていき、同時に上がる吸収エネルギー量の上限以降のことをいう。つまりこれをグラフにしたら、上限に達したのだからそれ以降は上下せず平行に線が続くので、見た目に「棚」に見えるから上部棚エネルギーという。

この(衝撃を吸収する)エネルギーが低下しているのだから延性から脆性(硬化)になっていることになる。

 

但し、これは中性子照射による原子のはじき出しの後すぐに起こるのではない。はじき出された原子はそこからいなくなる格子欠陥(空孔)や他の原子と原子の間に入り込む格子欠陥(格子間原子)が主である。これを1次欠陥というが、これによるはじき出された欠陥(点欠陥)は小さいので転位の妨げにならない。この点欠陥や空孔が集まってできることによってできる欠陥(2次欠陥という)の大きさが大きくなるので転位の妨げとなる。よって2次欠陥が発生した時に転位もしくはすべりをなくし、材料が延びなくなり(延性から脆性へシフト)、硬化する。この格子欠陥の集合体をクラスターという。

 

炉内構造物の照射脆化(「炉内構造物の照射脆化」の項の全文)

原子炉圧力容器内には、炉心を保持するシュラウド(BWRの場合)や流れを制御し熱を遮る熱遮蔽板(PWRの場合)などのステンレス製の構造物がある。オーステナイト系ステンレス銅は、フェライト銅(炭素銅や低合金銅)に比べて照射脆化に強いが、炉心に近く設置されているため、浴びる中性子の量は桁違いに多い。BWRの炉心シュラウドでは、炉心の高さにあるステンレス銅が著しく硬化しているケースが見つかっている。また、照射を受けることによってステンレスの応力腐食割れが加速した事例も見つかっている。これを照射誘起応力腐食割れという。これらは経年劣化した原発に共通して起こる事象である。

 

金属疲労

原子炉の構造体の材料として使われている低合金銅などの金属材料は特に破壊に留意しなければならない。それは部材として外力(地震など)に特に晒される部材だからだ。そして熱的な力も金属を疲労させるものだ。もちろんこの熱とは原子炉内部などの熱のことだ。

 

こういった応力(地震や熱などによる材料に対する破壊していく力)は、原発は絶えず稼働しているわけだから原子炉などの部材に振動として繰り返し働いている。この繰り返し応力は大きくなればなるほど材料は破断しやすくなる。逆にこの繰り返し応力を小さくすればするほど材料は破断しにくくなる。この繰り返し応力をどんどん下げていき、材料が破断しなくなるほどまでになる地点を疲労限度という。

 

この繰り返し応力と材料が破断する関係をグラフにしたものをS-N曲線という。このグラフをもとに使われる材料の強さの基準を決め、その基準をクリアした材料が使われている。但し材料内部の欠陥の有無や晒される温度の違い(原子炉などの温度は常に一定ではない)などの要因によって同じ材料でも疲労具合いは違ってくる。なのでこのS-N曲線より材料のひずみ具合いが1/2、その材料に働いている繰り返し応力の量を1/20まで下がった材料を使うことになっている。一応書いておくが、繰り返し応力が1/20というのは材料が20回壊れたものを1回の破損で済んだものを使う、ことを言っているのではない。表面エネルギーのことは前述したが、破損が目に見えなくても材料の破壊が進行していることがあり、それは表面エネルギーが破壊する応力に抵抗しているからだ。つまり巨視レベルではなく、原子レベルでの破損が1/20のものを原発で使うということだ。

 

では実際に原発で使われている部材はどうなっているのか? 各原発の各部材においてとても良好なものが使われているとはいい難い。1つだけ例を記す。川内原発1号機の蒸気発生器給水入口管台(ノズル)の部材の耐性は基準値1に対して0.903だ。基準値1というのは上述した条件を加味して決められた基準でこの1を下回れば原発に使われる部材として許容される。この基準値1を累積疲労係数という。つまり川内原発の蒸気発生器のノズルは累積疲労係数1を下回っているのだから問題ない、ということだ。だが、本当に問題ないのだろうか? 言ってみればこの0.903という数値は許容値ギリギリの数値だ。他の各原発の各部材においてもこのように高い数値のものが多くある。なぜか? それは3.11シビアアクシデントを受け、規制委員会の新規制基準による基準の強化が行われたが、それ以前の基準で設計された原発をそのまま稼働させようとしているからだ。さらにいえば、この基準値1は、材料のひずみ具合いを1/2、繰り返し破壊応力を1/20にまで下げたとはいえ、これは繰り返し破壊応力による塑性変形の末、材料が巨視的に破壊してしまう目安のことだ。このような数値のギリギリに許容されている部材を原発で使っていて安全な部材を使っている、と言えるのだろうか?

 

腐食とは

腐食とは金属が水中やガス中で錆びることである。ほとんどの金属は鉱石を還元してつくられるので、もとの状態に戻ろうとする力が働く。腐食には全面腐食と局部腐食の2つがある。そのうちの局部腐食は目に見えにくく目視できない状態で材料内部に腐食が進行していく。よって目視だけでなく、超音波探傷も行われている。但し、この超音波探傷も不十分な検査で、その探査器の見落とし、過小探査、過大探査、裏波(材料裏側の跳ね返り音)との混同があり、十分な検査とは言えない。さらには、この探査器を当てることができない箇所もある。そして原子炉20年延長の際に行われる「特別検査」の検査書には、「BWRは検査可能な領域を検査する」といった旨の文言がる。逆に言えば、検査不可能ならしなくていい、ということだ。

 

腐食① --- 減肉

水の乱流などで起こる。部材の肉(原材料)が減っていくことを意味する。乱流などで生じる浸食と腐食の相乗効果によって起こる。単なる腐食であれば原材料は減りはしないが、そこに水の浸食などが加わると減る。実際に美浜原発3号機は過去に厚さ10mm2次系炭素銅配管が1mm以下にまで減肉した。

 

この炭素銅は減肉しやすい。だから関西電力は約3200ヵ所にのぼる部材を低合金銅やステンレス銅に替えている。恐るべき量の交換だ。

 

腐食② --- ステンレス銅の応力腐食割れ

これは炭素銅と比べると腐食しにくい原材料だ。だが、このステンレス銅は材料中にクロム原子が一様に溶け込んでいる状態でこそ耐食性を発揮する。しかしPWRの原子炉圧力容器に多く使われているオーステナイト系ステンレス銅SUS304は炭素を0.08%含んでいて、熱が加わると炭素原子が移動してクロム原子と結合しクロム炭化物をつくる。結果、クロム原子が減っていき、耐食性を失う。これを「ステンレス銅の鋭敏化」という。

 

また、このステンレス銅を溶接する際のその部位を熱影響部というが、溶接後の冷却の際に800℃から600℃の温度の領域になるとクロム炭化物が粒界析出(鋭敏化)する。つまりクロム炭化物は、原材料の格子状の立体組織である結晶体のその中の個々の結晶と結晶の間、つまり粒と粒の間、すなわち結晶粒界に析出する。

 

さらには、溶接後、材料は不均一な圧縮状態になる。すると内部に引っ張り応力が残留する。この状態の材料に酸素イオン(ガンマ線などの放射線によって水が分解し生成)がアタックするとクロムが欠乏した結晶粒界に沿って金属原子が溶け出し、割れが進行していく。

 

この応力腐食割れは1970年代から明らかにされ、その対策として炭素含有量を0.03%以下に抑えたステンレス銅(SUS340Lなど)が開発された。しかし1990年代にはこの低炭素ステンレス銅も加工によってひずみを受けると、応力腐食割れを頻発することがBWR原子炉製造メーカーの研究者などにより報告された。対策として溶接影響部の残留引張応力(材料を広げる力)を低減するショットピーニング(小硬球を叩きつけて材料を圧縮・硬化させる)などが試みられているが、完全には防ぎきれていない。

 

原発全体の物量

上述した金属を原料とした部材以外にも原発には多量の部材がある。これらも当然、劣化、損傷の危険性がある。以下に100kw級の原発全体の物量(PWRBWRの総数の1原発あたりの平均値)を記す。

熱交換器 ----- 140基  ポンプ----- 360台  弁 ----- 30,000台  モーター ----- 1,300台  配管----- 170km10,000トン  溶接点数 ----- 65,000点  モニター ----- 20,000

箇所  ケーブル長さ ----- 1,700km
(次回に続く)

原発はいつ壊れてもおかしくない⑧

(前回の続き)

10
原子炉で使われる材料


BWR
(沸騰水型原子炉)と(PWR)加圧水型原子炉における破損の違い

genpatu日本ではBWRPWRの原子炉2種類がある。大きな違いは蒸気発生器の有無だ。BWRには蒸気発生器はなく、PWRにはある。この両方とも原子力発電所内の至るところで数々の破損個所が発見されている。原子炉容器内や格納容器内だけではない。特に破損が多いのはBWRでは原子炉内の水を攪拌する再循環系と呼ばれる配管で、PWRでは格納容器内にある蒸気発生器だ。また、この2つの原子炉の破損の仕方の違いは、BWRは格納容器から外へ出る水に放射能が含まれ、PWRは格納容器内の蒸気発生器で水が止まり、蒸気だけが格納容器から出る、という違いだ。だが、上述したように、その蒸気発生器で破損が多発している。

 

核燃料

世界中の天然ウランの中に0.7%存在している核分裂性のウラン2353~5%に濃縮したものが原料だ。これを二酸化ウランという。これは粉末で、それを焼き固めて直径及び高さが約1㎝のペレットに成型したものを核燃料として用いる。

 

核燃料被覆材

このペレットは長さ約4mの被覆管に1列に積み重ねられて挿入される。この被覆管は内側からの高圧及び高温に耐え、冷却材(水)との化学反応を起こさないことが条件とされる。また、核分裂反応をする際に中性子を吸収しないこと、熱伝導率が高いこと、などが重要な条件で、使用後の再処理が容易に行えることも条件とされる。この条件をみたしている原料はジルコニウムだ。このジルコニウムに強度、耐食性を改善するため、スズや鉄、クロムなどが添加され、ジルコニウム合金となり、これが使われている。

 

但し、このジルコニウムは工業用のものだと1~5%のハフ二ウムが含まれている。このハフニウムは中性子の吸収量がジルコニウムの数百倍と極めて多い。なのでこのハフニウムを100ppm以下になるまで分離したジルコニウムが使われている。分離したハフニウムは核燃料の制御棒に使われる。但しハフニウムは水素と反応しやすいので冷却材として使われる水の水素濃度に留意する必要があるが、冷却材として使われる水の温度は300℃前後で、この温度ではジルコニウムは水と反応しない。

 

制御材

原子炉内では核分裂反応が連続的に起こっている。それにより増える中性子の数が多くなり過ぎないように制御材(制御棒)が使われる。この原料は中性子を多く吸収しかつ、核分裂をおこさないことが条件となる。その原料は、カドニウム、ホウ素、ハフニウムだ。PWRでは銀-インジニウム-カドニウム合金が、BWRでは炭化ホウ素、ハフニウムのどちらかもしくは両方の組み合わせが使われている。

 

減速材

ウランが核分裂する際の高速中性子の速度は速すぎて他のウランの核との衝突断面積は小さい。このスピードを下げて核に衝突しやすくするために減速材が使われている。つまりウランから放たれる中性子を直接に他のウランの核に当てさせるのではなく、減速材として使われる原料の核に先に当てさせる。そうすれば当たった分、スピードは遅くなる。この原料は水が使われる。水(HO)は軽い原料だ。この軽さがポイントだ。なぜなら重ければウランから出る中性子が何度もぶつからないと重くてそこからどかないので中性子が他のウランの核に行き着けない。軽いと少ない衝突回数で水がそこから動かされ、中性子が他のウランの核にぶつかることができる。核燃料棒はその水に浸されている。

 

原子炉圧力容器(BWR

圧力容器本体----低合金銅(ステンレス銅などで部分的に内張り)

炉水に接触するシュラウド----ステンレス銅

制御棒案内管----ステンレス銅   

それ以外のほとんどの部位----低炭素ステンレス銅

また、これらに使われている銅の種類はSUS304だったが、応力腐食割れが頻発したので炭素含有量を減らしたSUS304Lやそれにモリブデンを添加したSUS316など耐食性を高めたステンレス銅に置き換えられた。

 

 

原子炉圧力容器(PWR

圧力容器本体----低合金銅(ステンレス銅で内張り)

上部蓋鏡、下部鏡----低合金銅

制御棒----カドニウム合金

それ以外のほとんどの部位----オーステナイト系ステンレス銅(SUS304など)

 

PWRの蒸気発生器            

構造材----低合金銅

伝熱細管----ニッケル合金(インコネル600もしくは690

 

配管系

BWR

再循環系の配管----ステンレス製

主蒸気管----低炭素(ステンレスで内張り)

PWR

1次系配管----ステンレス製

2次系配管----炭素銅

 

なお、上記のように低合金銅や炭素銅が使われるのは、ステンレス銅やニッケル合金に比べて安価だからである。また、核反応にかかわる炉心周辺の部材をのぞいて多くが通常の工業材料かそれを原発向きに改良したものである。例えばオーステナイト系ステンレス銅は家庭のキッチンの流し台やスプーンと同じ材料である。

(次回に続く)

原発はいつ壊れてもおかしくない⑦

(前回の続き)

9
原子、原子核、核分裂

9章のほぼ全文)

原子とは

genpatu物質はすべて原子から構成されている。原子は、原子核と電子でできている。最も軽い原子は水素であり、(天然に存在する元素で)最も重い原子はウランである。原子核のまわりをまわる電子の数は、原子核の中の陽子の数と同じである。陽子にはプラス(+)の電気、電子にはマイナス(-)の電気があり、全体として電気的に中性になっている。

 

水素の原子核は陽子1個だけで中性子はない。陽子1個と中性子1個から成る原子核をもつ原子を重水素とよび記号Dで表す。陽子1個と中性子2個であれば三重水素(トリチウム)とよび記号Tで表す。このように陽子数が同じ元素を同位体(アイソトープ)または同位元素という。これらの同位元素を含む水分子は、普通の水HO(軽水とよぶ)と科学的性質が同じなので、分離するには大変な手間とエネルギーがかかる。

 

原子核の大きさは、原子を1兆倍すると直径100mになるが、それに対し数mmの直径になる。原子核中の陽子と中性子の合計の数を質量数という。

 

ウランには天然に存在する3つの同位体ウラン234235238があり、238がウラン全体の99.3%、2350.7%、23410万分の6という割合である。

 

ウランの核分裂

ある種の原子核に中性子がぶつかると、分裂して2つの軽い原子を生成する。これを核分裂反応という。ウラン235の核分裂の場合、中性子が2個または3個発生する。分裂して生じた塊を核分裂生成物とよぶ。分裂のしかたは様々であるが、2つの塊の大きさ(質量)の比は3:2程度である。核分裂生成物としては40種類あるが、同位体も含めて数えればほぼ100種類になる。とくにヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90などは原発事故による汚染・被ばくの主要な核種である。

 

1回の核分裂あたりに発生するエネルギーは約200メガ電子ボルトで、その大部分は核分裂生成物の運動エネルギーである。ウラン2351グラムが核分裂する際に発生する熱量は、およそ石炭3トンの熱発生量に等しいとされる。また、ウラン2351グラム取り出すには、ウラン鉱石の3~4キログラムも必要とし、取り出す際には10キログラム以上もの土が放射能汚染する。この土には6兆ベクレルもの放射線量が含まれている。1ベクレルは1秒に1回崩壊する放射能の量だ。

 

核分裂の際に生まれる中性子は、数メガ電子ボルトのエネルギーをもつ。核分裂によって飛び出した高速中性子は、周囲の物質と衝突を繰り返し、その物質の温度と見合った速度になる(温度が下がれば速度も下がるということか?)。これを熱中性子または遅い中性子という。遅い中性子といっても、新幹線の数十倍、音速の7倍くらいの速さである。

 

核分裂の持続

ウラン235が核分裂する際、平均2.5個の中性子が発生する。そのうち、少なくとも1個が他のウラン原子235原子に衝突して核分裂を起こせば、その繰り返しにより核分裂が持続する。この状態を臨界という。熱中性子は高速中性子に比べ、ウラン235を核分裂させる割合がおよそ500倍も大きいので、臨界を実現するのに必要なウランの量は少なくてすむ。ウラン235のみに濃縮する必要はなく、ウラン238が混合していてもかまわない。

 

発電用原子炉(軽水炉)では、ウラン2353~5%程度の低濃縮ウランを用いた酸化ウランを燃料とし、中性子の減速用に軽水を使用している。直径1㎝の円柱状の燃料(ペレット)の中心部は2000℃を超えていて、それを収納している厚さ1mm程度の被覆管の外部は300℃の水に接している。かつて、「原子炉からの放射能物質の漏えいは5重の壁により防がれている」と安全性が強調されたが、その壁の1つであるという燃料被覆管はこうした大きな温度差のもとで使われおり、原子炉が綱渡りの技術であることを示す一例である。

 

 

ウランの濃縮

上で述べたように天然ウランには、核分裂を起こさないウラン23899.3%、核分裂を起こすウラン2350.7%含まれている。核分裂連鎖反応を起こしやすくさせるために、ウラン235の濃度を高める技術が開発された。

 

ウラン238235は科学的性質にほとんど差異はないので、中性子3個分のわずかな質量差を利用して分離しなければならない(重さを計測するのか?)。ガス拡散法や遠心分離法といった質量差を利用した同位体分離技術が一般的に用いられる。他にも、レーザー法、科学法(イオン交換法)などがある。

 

ウラン濃縮工程から得られる生成物は、ウラン235の割合が高められた濃縮ウランとその割合が減じられた劣化ウランである。濃度が20%を超える生成物を高濃縮ウランという。

 
(次回に続く)

原発はいつ壊れてもおかしくない⑥

(前回の続き)

8 き裂がある材料の強度破壊靭性とは

ガラスに見るき裂による応力(き裂を広げる力)のはたらき方

genpatuガラスはその繊維が細くなればなるほど強度が増す。そのガラスに何かの衝撃が与えられ、き裂が発生すると、応力(き裂を広げる力)が発生する。この応力はき裂部分の周りから外側に働く。ここでの考え方は、その応力がき裂部分を迂回して働いている、と考える。このとき応力がき裂周辺に集中していることにより、ガラス繊維が曲がり、横の繊維との間隔は狭くなる。そしてこの応力はき裂の外側に行けば行くほど、弱くなる。だから徐々にガラス繊維の間隔は広くなる。

 

ガラスの構造は繊維の集合体。この繊維の幅が狭くなるほどガラスの強度は増す。つまりガラスの体積が同じである場合、細くなればなるほど繊維の本数は多くなる。だからガラスの強度は増す。言ってみれば、安倍首相が少し前までやたらと言っていた「3本の矢」の原理だ。

 

応力が発生するとき

この応力が発生するときは実はき裂が発生する瞬間ではない。き裂が発生していなくてもそこに衝撃が与えられれば、応力は発生する。つまり衝撃が与えられたその材料き裂部分にその応力に反発する力が発生しているのである程度の間はき裂は発生しないでいる。この反発する力を表面エネルギーという。この表面エネルギーと同等かそれ以上に応力が発生したときにき裂が起こりはじめる。

 

破損した材料の強度測定の前提

このき裂が発生した材料の強度を測る場合、応力だけでは測れない。そのき裂部分は強度が低下しているのでこのことも考慮しなければならない。このき裂による強度低下は、そのき裂の寸法による。寸法が大きくなればなるほど強度低下は著しくなる。ゆえにき裂のある材料の強度を測る場合、応力と欠陥(き裂)寸法が組み合わされたパラメータによって測られなければならない。

 

破壊靭性値

応力が働いてき裂が進行していることが巨視的にわかるときからの破壊を‘脆性破壊が起こる’と考える。そしてこの起こりはじめる瞬間を‘臨界’という。ゆえにこの瞬間の応力を臨界応力強度因子という。そしてこれは破壊靭性値とも呼ばれている。

 

強度が高いからといって破壊靭性値が高いとはいえない。むしろその逆の方が多い。例をあげれば鉄はねばり強く、破壊靭性値が高い。だが、セラミックは強度は非常に高いが破壊靭性値は低い。セラミックは硬いので破壊しにくいが、き裂が入るとそのき裂の進展速度は速い。ゆえに破壊靭性値は‘耐き裂進展性’を示す値といえる。

 

実際の測定では破壊靭性はその材料の形状に依存する。破壊靭性は材料の板厚が十分大きいときに最小値をとり、その最小値が平面ひずみ破壊靭性である。つまり平面にひずみが発生し、破壊が起こりはじめるときだ。


(次回に続く)

原発はいつ壊れてもおかしくない⑤

7 塑性変形と転位

genpatu塑性変形とは変形して元に戻らなくなった状態のことをいう。また、転位とは材料が破断するとき、その応力(破断する力)を抑えるもしくは緩やかにすることをいう。

 

延性と脆性

延性とは材料の伸び具合のことをいう。伸びていて破断してはいないので材料学的には‘延性が強い’ということを破断しにくい、と言う。逆に脆性とは字のごとく‘脆い性質’ということになる。そしてそれは‘硬い’材料の多くにあてはまる。但しこういった性質の強弱はその状態の温度によって変化する。例えば金属材料は高温化すると塑性変形量が大きくなり延性が強くなる。

 

結晶の破断

金属材料は結晶の集合体であることはすでに述べた。すなわち金属材料が破断する、ということは結晶が破断することを意味する。破断の仕方は主に2つあり、へき開破壊とすべり変形がある。へき開破壊とは材料の左右両端を逆方向に引っ張った結果、真二つに破断するものだ。一方すべり破壊は材料の両端角部分を逆方向に引っ張った場合、切れ口部分が斜めにスライドするように破断することをいう。

 

へき開面の原子エネルギー

材料の両端を引っ張って、切れ口部分がへき開するとき、そこに応力(引っ張る力)が働く。この力の原子エネルギーは切れ口が切れると、切れた表面に蓄えられる。つまりこの(原子)エネルギーは力を使い切って力がなくなるのではなく、切れ口部分に集まる。

 

すべり変形時の破断面の原子エネルギー

すべり変形は切れ口部分がスライドするように破断するということは前述したが、この時の応力(切れる力)は実はへき開破断するときの応力より少ない。なぜ少ないのか?それは字のごとくすべるからだ。すべるように切れるとうことは切れ口面の両端から切れていく。へき開の場合、切れ口面全体が同時に破断する。つまり切れ口面全体を同時に切る力とその両端部分から徐々に切れていく場合の応力が違うからだ。言われてみれば、「そりゃそうだよな」と言えることかも知れない。このすべりによる変形を塑性変形という。そしてこのような変形が起こるのは「転位」というものが動いているからだ。その転位が実際に存在していることは電子顕微鏡で結晶を見れば、確認できる。そしてそのすべったところとまだすべらないところの境界線を転位線という。

 

だから、金属を塑性変形するのに必要な力を降伏応力というが、この応力は転位を動かす力ということになる。そしてこの応力も温度によって左右される。金属材料は結晶の集合体であることはすでに述べたが、この結晶の集合組織が前述した体心立方金属(バナジウム、モリブデンなど)の構造体であれば温度依存性は高くなる。つまり、温度が高くなると、転位を動かす力(=塑性変形する力=降伏応力)は下がる。逆に面心立方金属の構造体(銀など)であれば、温度依存性は低くなる。すなわち転位を動かす力はあまり変わらない。但し、銀などはそもそも、バナジウムやモリブデンなどと比べるとこの応力が少ない。

 

照射硬化

ところで、原子炉内の中性子照射は金属材料の結晶中に、前述した格子欠陥(点欠陥)を生じさせる。この欠陥は、空孔(原子が無いところ)と格子間原子(原子と原子の間に後から入り込んだもの)が出会えば消滅するが、空孔が2つ集まったボイド(空洞)や格子間原子が寄り集まったクラスターなどになったりする。結晶中にこういった析出物や介在物粒子が分散していると塑性変形するのに要する応力が上がることが知られている。つまりボイドやクラスターは析出物や介在物粒子と同じ働きをするので塑性変形させてしまう。こう書くともとの形の戻らなくなるくらいまで伸び、延性が強くなると思いがちだが、実は硬化することになる。つまり塑性変形するまでの伸び幅を短くしているのだ。結果、材料は硬化する。前述したように、硬い材料の多くは脆性(脆い)ので、このことは材料が破断しやすくなっていることを意味する。この中性子照射による材料の硬化を「照射硬化」という。

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