久しぶりの文章になります。前回まで「原発はいつ壊れてもおかしくない」というテーマで、事故がなくても原発は危ない、ということをシリーズで書いてきましたが私の個人的都合により一時的にそれを中断し、長崎県の石木ダムの建設問題について書きたいと思います。

それは特に深い理由はないのですが先日、私は長崎へ行き、その際に川棚町という町でダムが地元の人たちの猛烈な反対にもかかわらず、強引に建設が進められているダム建設予定地に行って取材をしてきました。そこでは同じ長崎に在住の「石木川まもり隊」(
http://ishikigawa.jp/ )の代表である松本さんという方に石木ダム建設の問題点について詳しく聞くことができました。その私が聞いたことと松本さんから頂いた資料及び私が撮った写真をもって文を書きたいと思います。

尚、この私の文の趣旨は長崎の石木ダム建設問題を明らかにすることはもちろんのこと、このダム建設は他の公共工事にも共通するところがあり、国及び自治体などによる我々の地域においても行われている、もしくは行われる可能性のあるものです。もちろん、それはダム工事に限ったことを言っているのではなく、国及び自治体の、市民の声を無視した公共事業の強引な遂行、という意味においてです。ですのでダム問題に全く関係がない地域の人も他人事ではない、という観点で読んで頂ければと思います。

では、書きたいと思いますが2部構成で書きたいと思います。1部は石木ダム建設問題を私が聞いた話と頂いた資料をもとに、2部は私がその石木川で撮った写真をもとに書きたいと思います。


1部

石木ダム建設問題

長崎県のやや北側に川棚町という町がある。大村湾に面した町だ。この町に川棚川という川が流れているが、この川の支流に石木川が流れている。この石木川流域において石木ダムというダムの建設が行われようとしている。すでに工事車両が走るための道路は敷かれている。

 

このダム建設にあたって全国の他のダム同様に建設反対デモが行われている。ことの発端は1962年に長崎県が地元に無断で現地調査・測量を始めようとしたことに遡る。これに対し地元の人たちが抗議をし、調査・測量を中止させた。

その10年後の1972年、長崎県と川棚町が「調査だけしたい」ということを言ってきたので川原、岩屋、木場の3つの郷は「あくまでも調査だけ」ということで覚書を交わした。

しかしその3年後の1975年、長崎県は地元に何も言わず国に事業申請をし、国は採択した。これに対し地元の人たちは石木ダム建設反対運動を始めた。つまり地元の人たちが反対運動を始めて今年で43年目になる。

 

しかしそもそもなぜこの石木川流域でダム建設計画は立てられたのか? この石木ダムは隣接する佐世保市の水源のためのダムだが、佐世保市というところは水源が乏しくまとまった雨もあまり降らない。つまり、長い歴史の中で慢性的に水不足に悩まされてきた。ゆえの対策として、石木ダム建設に国や長崎県や佐世保市は前のめりになってきた。

 

こう書くと石木ダム建設には一定の根拠がありそうだが実はそうではない。昔は水不足で佐世保市民の生活に支障をきたしたこともあったが現在はその心配はほとんどもしくは全くない。現在の佐世保市の給水量はおよそ70,000㎥強/日から80,000㎥弱/日だが、佐世保市の水源は105,500/日ある。だから石木ダムを建設する必要はないのだが、長崎県や佐世保市は建設しようとしている。なぜか?

 

保有水源の過小評価

佐世保市の言い分はこうだ。佐世保市は水源として105,500/日あるが、そのうち安定水源は77,000/日で、残りの28,500/日は安定水源ではない。28,500/日の、相浦川(22,500/日)川棚川(5,000/日)、湧水の岡本水源(1,000/日)の水源は許可水源ではないので渇水時には水源として確保することが困難だから、ということだ。

 

水利権には許可水利権以外に慣行水利権というものがある。上述の相浦川の22,500/日の水源は慣行水利権だ。では許可水利権と慣行水利権はどう違うのか。許可水利権は河川法23条の許可を得た水利権、慣行水利権は旧河川法の制定前から長期にわたって継続利用してきたという事実をもって、河川法88条で許可された水利権だ。この河川法88条をもって届出がされれば水利権が発生する。つまり相浦川の水源は許可水利権と法的に何らかわらないのだ。それを佐世保市は水源として含めないで、水源がない、としているのだ。

 

実際に2007年の水不足による佐世保市の渇水時の平均取水率は、相浦川の慣行水利権は65%、佐世保市の水利県全体のそれは70%で、ほとんど同じように取水されている。佐世保市の相浦川の水源を考慮しないのは恣意的なものとしか思えない。

渇水時でも水不足は起こらない

また、佐世保市は、「普段は大丈夫でも渇水時はどうするのか」と言ったことを言っている。では実際に渇水時にはどうなるのか。まずは下のグラフを見て頂きたい。

佐世保市の給水1

これは2007年の佐世保地区での水不足による渇水時の給水量を、2016年の給水量と比べたものだ。グラフ上の減圧給水とあるのは佐世保市による給水制限のことだ。つまり2007年の佐世保市の利水量は平年と比べかなり少ないのだが、その量を2016年の利水量は下回っている。つまり、普通に水利用していても給水制限された2007年より利水用は少ないのだ。これをもっても石木ダムの建設は全く必要ないことがわかる。次に以下のグラフを見て頂きたい。

佐世保市の給水2



これは1994年度の大渇水時の給水量と2016年度の給水量を比較したものだ。1994年の渇水は前述の2007年の渇水と比べて、より深刻な渇水に見舞われた。これは統計計算して100年に1回も起こらないほどの確立の低い大渇水だ。それを2016年の平時の給水量と比べてみると下回っているが、2016年度との対比で、1994年度の7月から3月までの110~20時間断水が行われた時期と比べて90~97%の比率だ。それほどの違いはない。しかも前述したように、佐世保市での利用可能水源は相浦川の慣行水利権の水源などを含めれば、105,500/日ある。これをもってしても石木ダムの建設は全く必要ないといえる。

また、佐世保市ではこういった渇水が起こるのを防ぐために市内に6つあるダムのうち1つを嵩上げ工事している。これによりそのダムの貯水可能量が65%増えている。つまり仮に貯水対策をするとしてもダムの建設など必要ないということだ。このことも含めて、どう考えても石木ダムの建設は必要ない。

 

佐世保市が新たに言い出した言い訳

佐世保市は渇水時でも水不足は起こらない、ということを石木ダム建設に反対する人たちに知られたからか、違う理由を石木ダムの建設の理由として持ち出した。それは既設のダムが老巧化していて修繕するために1つのダムから完全に水を抜かなければならない、ゆえにその場合において、ダム1つ分の利水ができなくなり、その際には石木ダムが無ければ水不足が起こる、というものだ。

 

その修繕の1つとして、佐世保市はダムの底に堆積した土砂の除去を挙げている。しかしダムに堆積した土砂の除去は水を抜かない状態で行うのが普通だ。石木ダム建設の理由にならない。神奈川県の相模ダムなどではそのように行われている。

 

また、佐世保市は既設ダムのリニューアルも石木ダム建設の理由に持ち出した。ダム堤の補強、腐食送水管、バルブの取り換えといった修繕を行うために石木ダムが必要というわけだ。しかしこれも取ってつけた理由に過ぎない。なぜなら同じ佐世保市にある下の原ダムの嵩上げ工事は貯水したままで行われているからだ。このことに対し、工事を施行した鹿島建設の「KAZIMAダイジェスト20068月号」には、

「堤体の嵩上げは、新旧の堤体の接合や基礎の改良など構造上の技術的課題が多く高度な建設技術を要する。水道用水を貯えるダムの機能は停止できないため、下の原ダムでは貯水したままの作業となり、ダム工事の中でも難易度の高い施行が求められた」

と書いてある。つまり難易度は高いが貯水したままで工事ができた、と言っているのだ。

その他にも佐世保市は2007年の渇水によって廃業に追い込まれた会社が多数でて、50億円の経済損失がでたことも石木ダム建設の理由として挙げているが、前述したように、今後は渇水に見舞われる可能性がほとんどなくなったのだから理由にならない。

 

石木ダムの建設・運営費用は佐世保市民の税金

石木ダム建設にあたり、利水関係の事業費は約354億円だが、このうち55億円が国庫補助金として支払われる。それ以外の298.5億円が佐世保市の負担となる。この内訳の一つに地方債の発行があるが、この利息分40億円がさらに佐世保市の負担となる。これを佐世保市の世帯数105,693世帯(201861日時点)で割ると、1世帯あたり約32万円もの金額になる。

 

それだけではない。建設後のダムの運営費用も佐世保市の負担となる。石木ダムの検証報告書には水道施設の50年間の維持管理費が184億円、施設更新費が107億円、50年間の利水負担分の維持管理費が2億円、施設更新費が1億円、と記されている。合計で294億円にもなる。これと前述の建設費用298.5億円と地方債の利息分40億円を合わせると、合計約633億円にもなる。これを前述の世帯数で割ると1世帯あたりの負担額が約60万円にもなる。

 

また、建設費用はよく「小さく生んで大きく育てる」と言われるように、工事が進むにつれ増えるものである。よってさらに佐世保市の負担額はこれより増える可能性は大である。

(2部に続く)