2013年02月

尖閣諸島問題の検証

              <尖閣諸島問題の検証の続き>
以上日本と中国における軍事力の比較において‘日本の方が有利’と‘中国の方が圧倒的に有利’の相反する2つの見解を記しましたがどちらが的確な判断をしているのか。おそらく後者の孫崎氏による見解の方が妥当だとシダーズは考えます。というのはまず、前者の方の‘日本が有利’とする米海軍大学のジェームズ・ホルムズ准教授という方が書いた論文の要旨を見る限りでは、‘日本が有利’とは言っていません。<移動対艦ミサイル(ASCM)を尖閣や周辺の島に配備し、防御を堅固にすれば、周辺海域の中国艦艇は確実に撃退でき、>と書いてありますがあくまでも中国の艦艇を撃退できるだけの話で、これで紛争が終わるわけではありません。さらに言えば、2つ目の太字部分の部分的に相殺するか、とあるように中国の艦艇を部分的にしか効果的な攻撃が出来ないかも知れないのです。また、3つ目の太字の中国海域が広大であり集中はできない、はシダーズには意味が分かりません。尖閣諸島をめぐる日本と中国の紛争でなぜ中国が広大な中国海域を意識しなければならないのか。何か違う戦況を前提にして論文を書いているのか分かりませんが、この引用文からはその意味が分かりません。
(1つ目の太字‘米軍が介入する’とは、日米安全保障条約(通称:日米安保)によりアメリカ軍が日本の自衛隊と共闘することを言っています。これについては後段で記します。)

仮に中国の艦艇を撃退できたとしても、その仕返しに戦闘航空機で攻撃してくる可能性がある、というか攻撃してきます。そこで前述の孫崎氏の見解にもあるように、日本の航空自衛隊基地の滑走路を破壊されたら自衛隊の戦闘航空機は飛行できません。

つまり仮に海戦で中国艦隊を撃退できたとしても、今度は航空戦になります。となると航空戦は日本と中国のどちらが有利なのか、という話になるわけですが実はこの‘日本の方が有利’とする前述の文には続きがあり、そこには航空戦になった場合の戦況についても記してありました。以下引用します。
※下線引きはシダーズによる。
引用開始
空自が航空優勢を獲得する
(タイトル)
戦局のカギを握るのは、先ほど申し上げた「航空優勢」(制空権)です。数の上では第4世代機の保有数でも日本は不利ですが、日本のレーダーカバレッジや、操縦者の錬度、可動率の高さ、再発進に要する時間が短い等々、質的には、まだ航空自衛隊が勝ります。特に活躍が期待されるのが、空自のAWACS(早期警戒管制機)E−767です。

じつは、中国もAWACS「KJ(空警)2000」を保有しており、「数百機の航空機に対しての指揮管制が可能」とも言われていますが、かりにそうだとしても、空自の主力戦闘機F−15イーグルの餌食となるでしょう。F−15に対抗できる、中国の主力戦闘機J−10の能力は低くはありませんが、言わば、目と耳の役割を果たすべき見方のAWACSを撃墜されれば、その戦闘能力を発揮することは難しいでしょう。いわゆるドッグファイトの近接戦闘になれば、パイロットの技量でも空自が勝ると思います。つまり、航空戦でも自衛隊が圧勝するということです。
(中略)
さきの論文では、「日本が移動対艦ミサイル(ASCM)を尖閣や周辺の島に配備」すると予測していますが、実際には、その前に、空自の支援戦闘機「F−2」が展開し、中国機をことごとく餌食とするでしょう。すでに尖閣の島や岩に上陸され、基地が設営されたとしても、航空機で難なく破壊するでしょう。

ただし、以上はあくまで現時点の予測です。(後略)
引用終わり

尖閣諸島問題の検証

                        <尖閣諸島問題の検証の続き>
以上が「尖閣 激突」 山田 吉彦、潮 まさ人 著 扶桑社 刊からの抜粋文の‘日本が勝利する’と結論づけるものです。何とも勇ましい感じがしますが次に‘日本は中国に全く勝ち目がない’とする一文を記します。
引用開始
(前略)
日本の海軍力を見てみたい。
             海上自衛隊   中国海軍
弾道ミサイル原潜     0         2   
戦術原潜                  0                    5            
通常動力潜水艦            15                  55
駆逐艦                         44                  26
フリーゲート                    9                   47                                 
揚陸艦                          3                   26
ミサイル艦                     9                   42
哨戒艇                          9                  174
掃海艦艇                      29                  23
(かの よしのり 著 「中国軍VS自衛隊」 並木書房、2007年)

海軍力を比較した際には、現時点において、日本が技術的優位立っている。しかし、日本は軍事支出が低い。軍事費はGDP比1%、4.8兆円(2012年度の概算要求は4兆6906億円)程度で推移している。他方中国は軍事を重視する。アメリカ国防省の「中国の軍事力」は中国国防費を1600億ドルと推定している。1600億ドルの日本円換算は円ドルレートで大きく変わるが少なくても12兆円以上である。現時点で軍事費は日本1対中国3くらいの差がある。中国が経済力を増すにつれ、軍事費を増大させていく。日本対中国の軍事費が1対10になることも十分想定される。この中、自衛隊が量・質で中国の上にいくことはありえない。
 
日中での軍事衝突の際に最大の問題は中国のミサイルである。日中が空中戦になれば、当然のことながら、中国は少なくとも日本における航空自衛隊基地をミサイルで攻撃することが想定される。ついで日本の都市攻撃などの選択もある。この段階では日本に全く、対抗手段がない。

中国ミサイル
システム   ミサイル数      発射装置数              距離(Km)
ICBM             50−75                50−75             5400−13000
IRBM             5−20                    5−20                    3000
MRBM          75−100              75−100                  1750
SRBM          1000−1200       200−250            300−600
GLCM           200−500           40−55                     1500
(Military and Developments Involving the People's Republic of China 2011)

2010年11月4日付ワシントン・タイムズ紙は「中国のミサイルは米軍基地を破壊できる」の標題で「80の中・短弾道弾、350のクルーズ・ミサイルで在日米軍基地(嘉手納、横田、三沢)を破壊できる」と報じた。このことは、航空自衛隊の基地にも該当する。いかに優秀な戦闘機を持っていても、中国の中・短弾道弾、クルーズ・ミサイルでを使って基地の滑走路を破壊すれば、戦闘機は機能しない。

すでに見たように、日本で日中の軍事紛争が起った時の優劣を見る時に論じられているのは、現時点での海軍力のみである。戦闘が起れば、海軍対海軍で終わらない。空軍がでる。ミサイル部隊がでる。その際には日本に勝ち目は全くない。
引用終わり
(検証 尖閣問題」 孫崎 享 著 岩波書店 刊 より抜粋)
                                <尖閣諸島問題の検証に続く>
  
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尖閣諸島問題の検証

              <尖閣諸島問題の検証の続き>
では実際に(絶対にあってはならないが)日本と中国が戦争したらどうなるのか。日本が勝つのか、中国が勝つのか、という事を考えざるを得ないでしょう。この‘朝まで生TV’のアンケートでも‘尖閣諸島を守ることを最優先する’に8割の人が前向きな回答をしたという事実もそうですし、また、石原前都知事が‘尖閣買取り宣言’をしてから東京都に十数億円の寄付金が集まった、といった昨今の現実を踏まえると、戦争の勝敗の分析は不可避と思われます。では以下にその検証結果の一文を記します。
※太字、下線はシダーズに依る。
引用開始
中国軍VS自衛隊でも、日本が有利
(タイトル)
(前略)
:尖閣有事は、同時に日本有事でもあるわけですから、日米共同対処が当然です。そこを、あえて読者の参考にすべく、強引に自衛隊単独作戦を想定するなら、国際的な定評の高い外交専門誌「フォーリン・ポリシー」(電子版8月20日付)の巻頭論文「2012年の中日海戦ー中日両国は戦争をするか、どちらが勝つか」が、よい参考となるでしょう。論文の筆者は、米海軍大学のジェームズ・ホルムズ准教授です。
山田:われわれの分析と同じように、米軍が介入する以上、日中の直接対決は「あり得ないシナリオ」と前置きした上で、かりに、尖閣諸島を巡り日中が軍事衝突した場合、「米軍が加わらないシナリオ」と前置きした上で、尖閣諸島を巡り日中が軍事衝突した場合、「米軍が加わらない大規模な日中海洋戦争でも日本側が有利」と分析した論文ですね。
:はい、論文があげた理由は、戦力の質的優劣でした。「海上自衛隊の質的能力は、中国海軍の数的優位を部分的に相殺するか、全面的に覆すだろう」と指摘しています。じつは論文の中身を、私のコメントを含め、「週間ポスト」(9月14日号)が紹介しました。手前味噌は控え、産経新聞の古森義久記者の要約を借りましょう。

論文は、中国側の多数の通常弾道の弾道ミサイルが日本側の兵力や基地を破壊する能力を有するが、日本側が、移動対艦ミサイル(ASCM)を尖閣や周辺の島に配備し、防御を堅固にすれば、周辺海域の中国艦艇は確実に撃退でき、尖閣の攻撃や占拠は難しくなる-------との見方を示した。さらに、尖閣中心に日中両国軍がぶつかった場合、日本側は主力兵力をほぼすべて集中できるが、中国海域が広大であり集中はできない ・日本側は単に尖閣防衛を貫けばよく、それ以上に中国軍を追撃して撃滅する必要はない ・中国首脳はこの種の対日戦争が自国の経済や外交の将来をかけた海軍力の破局をもたらしかねないと認識している------ことなどから「日本が勝つ見通しが強い」と展望した。(「尖閣 激突」 山田 吉彦、潮 まさ人 著 扶桑社 刊より抜粋)
引用終わり
             <尖閣諸島問題の検証に続く>

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尖閣諸島問題の検証

             <尖閣諸島問題の検証の続き>
しかしこのように話をすると、もう一方の逆の考え方が浮上してくるのも事実です。つまり‘尖閣諸島という日本固有の領土は我々日本人が守り、中国に対して強く対抗しなければならない’、という考え方です。ですがその‘日本固有の領土’という見解はここまでこのブログで記してきたように何ら根拠がないのです。安倍首相や前野田首相が再三言っている‘尖閣諸島は国際法上日本固有の領土である’とする論拠はないのです。

ただ、現在の日本国内の世論の動きとしてはどうも‘中国はけしからん、日本の尖閣諸島を占領しようとしている、日本も強くでるべきだ’、といった意見が多いようです。このブログで再三参考にさせてもらっている本の著者、孫崎 享氏も前述の「検証 尖閣問題」の‘まえがき’に以下のように記していました。
引用開始
(前略)私は2012年10月、テレビ朝日の「朝まで生テレビ!」に出た。尖閣問題がテーマであったが、私は尖閣諸島の棚上げ論を主張した。番組中、私への批難が集中した。番組の終了間際に、アンケートがなされた。2者択一である。
「尖閣諸島を守ることを最優先する」
「日中関係を促進する」
結果は、前者の支持が8割、後者の支持が2割である。私は愕然とした。この番組は右翼的傾向の強い視聴者が多いという。しかし、大きな世論の動きと無関係ではないであろう。1970年代や1980年代に同じ質問をしたら、異なった傾向が出ていたのではないか。(中略)私は、今こそ、尖閣問題で日中双方が軍事紛争を避けるために、真剣に考える時にきていると思う。幸いに今回、尖閣問題を語るのにふさわしい学者や評論家などを招き、会談を実施することになった。さまざまな見地がある。激しく対立する場面もあった。それだけに、読者に多角的に事態を考えることのできる絶好の機会を提供できたのではないかと思う。本書が問題の本質的な理解と解決の一助になればと願っている。
2012年11月20日 孫崎 享
引用終わり
実はシダーズもこの2012年10月の第4金曜日の深夜に放送されたTV朝日の「朝まで生テレビ!」をたまたま見ていました(注:朝までは見ていない)。その番組中、上記のように孫崎氏は‘尖閣問題の棚上げ’を主張されていました。しかし朝までは見ていなかったのでその番組終了間際のアンケートにおいて孫崎氏に多くの非難があったのはこの本を読むまでは知りませんでした(今年1月まで)。

では、この8割にも上った「尖閣諸島を守ることを最優先する」とは具体的に何を意味するのか。今までの尖閣諸島周辺における日本と中国の係争及び昨年4月16日の石原前東京都知事の‘尖閣諸島の買取り宣言’に端を発し、野田前首相による‘尖閣諸島の国有化’が行われ、その後中国船舶の往来の増加、航空機の尖閣諸島領土上空の飛行、それに対する日本の海上保安船の警告、日本の航空自衛隊のF15戦闘機のスクランブル飛行、など、現に尖閣諸島周辺で起っていることを考えると、場合によっては紛争を起こしても尖閣諸島を日本の領土として守る、という事になります。当然、この「朝まで生テレビ!」が放送された2012年10月時点でも、このような事が行われて、TVニュースや新聞等で報道されていたわけです。

尖閣諸島問題の検証

             <尖閣諸島問題の検証の続き>
以上が尖閣諸島問題を国際法から考察した結論になります。このサンフランシスコ平和条約に則って、第2次大戦後の世界秩序は築かれてきたのです。こういった観点から見ると安倍首相や前野田首相などの方々が言っている‘尖閣諸島は国際法からみて日本固有の領土’という発言は明らかに失当なのです。

するとここで疑問が生じます。それは安倍首相や野田前首相がこの、我々も高校などの歴史の授業などで教わる‘サンフランシスコ平和条約’を把握していないのか、という事です。いったい何をもって‘日本固有の領土’と言っているのか、理解に苦しみます。ただ、その理由もここまでこの‘尖閣諸島問題の検証’で記したブログを見ていくと見えてきます。ここまでの尖閣諸島問題の検証のブログでの重要な事は、‘アメリカは尖閣諸島を日本と中国の間に係争の火種として残した’、という事です。つまりアメリカとしては日本と中国に争ってほしいわけです。もちろんアメリカは表向き、「尖閣諸島の問題は(戦争ではなく)話合いで解決すべき」、といった事を言っています。新聞やTVニュースでもそのように報道されています。ですが今さらアメリカがそのような事を言うのはシダーズは賦に落ちません。それは再言するまでもなく、前述したサンフランシスコ平和条約がアメリカ主導で決められたからです。

ではどうするのか、となるのですがそれは前述の<尖閣諸島問題の検証─笋乃した1972年に沖縄が返還された時に、プレイ国務省スポークスマンが発言した文言にも答えを見出せると思います。つまり、この沖縄返還にともない、プレイスポークスマン含め、アメリカ側が言っているのは、‘アメリカは尖閣諸島の主権に関しては中立の立場’、という事です。これは言い換えると、尖閣諸島は日本の領土でも中国の領土でもない、という事になります。なのでこの尖閣諸島の問題を‘棚上げ’、するのが得策なのではないか、と思うのです。今までそうしてきた様に。

実際、それは可能であったのです、というかそうしてきたのです。石原前東京都知事が昨年4月16日(米国時間)にワシントンでアメリカ保守派のシンクタンクであるヘリテージ財団での講演で尖閣諸島の買い上げを宣言するまでは。この後、野田首相が問題を大きくさせないために国での買取りを決定します。ですが結果的にはこの野田首相の‘尖閣諸島の国有化’が日本と中国の係争を本格化させました。そして現在に至っては、尖閣諸島沖での中国船の往来の増加、その上空を中国航空機が飛行する、といった事態になっています。
             <尖閣諸島問題の検証に続く>

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尖閣諸島問題の検証

                 <尖閣諸島問題の検証の続き>
さらに、このブログで参考にさせて頂いている「サンフランシスコ平和条約の盲点」 原 貴美恵 著 渓水社 刊 に、1972年の沖縄返還の際に、アメリカが曖昧な態度をとった理由のまさに核心にせまる記述があります。以下記します。
引用開始
米国の配慮は、もう一つの中国、台湾の中華民国政府にも向けられていたと思われる。ニクソン大統領は1972年に北京を訪問し、中華人民共和国と事実上の外交関係を開いたものの、公式な関係を直ちに結んだわけではなかった。その後、1979年に公式な外交関係が樹立されるまでの数年間、米国は台湾との公式な外交及び安全保障関係を維持していた。そして今日でも、台湾の防衛は米国の重要な外交課題である。この点に関し、興味深い一文が米国公文書館に残っている。それが次に引用した、上院外交委員会議長J・Wフルブライトからウィリアム・P・ロジャース国務長官に宛てた1971年7月8日付けの書簡である。

私が最近の報道記事で目に留め、委員会でも数人の証人が私の注意を喚起したことですが、沖縄に現在格納されている戦術核兵器のいくつかを、台湾をそのひとつとする他の格納場所に移すという提案に国務省が同意したという報告があります。
引用終わり

引用開始
米国の尖閣列島に対する政策については、日中間、とりわけ沖縄近辺に、領土係争が存在すれば、「日本の防衛」のための米軍の沖縄駐留は正当化される。ニクソン政権は、日本向けには「中国の脅威」を協調(シダーズ注:強調の誤字と思われる)する一方、中国に対しては、日本軍国主義への恐怖を巧みに利用した「日本からの防衛」を理由に、米軍の沖縄駐留を承認させたのである。
引用終わり

・引用文,ら分かるのは、
上院外交委員会議長J・Wフルブライトからウィリアム・P・ロジャース国務長官に宛てた1971年7月8日付けの書簡には当時、沖縄に戦術核兵器があった、ということ。
・沖縄を日本に返還するにあたり、その戦術核兵器を台湾に移動するように決まっていたということ。
・なのでアメリカは台湾にも気を配り、尖閣諸島の主権を曖昧にした(台湾も尖閣諸島の主権を当時から主張していた)ということ。
です。加えて上記の太字の核兵器とは、2009年12月に日本でニュースで取り上げられた、‘当時の首相だった佐藤栄作首相がアメリカのニクソン大統領と核密約(有事の際のアメリカによる沖縄への核持ち込みの密約)によって沖縄に持ち込まれた核兵器’です。

引用文△ら分かるのは、昨日のブログでも記させて頂きましたが、
・やはりアメリカは日本と中国の間に‘尖閣の領土問題’という紛争の火種を残した。
・その紛争の火種がある事によって沖縄に米軍基地をおくことを正当化している。
という事です。

ただここで言及しておきたい事は、現在の日本のTVニュース、新聞等でこの尖閣諸島の問題を報じる際に、このような事はほとんど報道されません。ほとんど日本の海上保安船と中国の漁船・監視船の応報、日本と中国の航空機の応報の報道に終始しているだけです。もちろんそこに日中関係に詳しいとされる解説者が説明を加えたりしますが、この上記のような事はまず解説してくれません。

先ほどシダーズはNHKラジオで現在起っている尖閣諸島問題について解説者の方が説明していたのを聞いていたのですがそこで解説者の方が言っていた一言に、「アメリカにとっては米中関係も日中関係も平穏であることを望んでいるのは言うまでもないんです。なのでアメリカは日本に中国に対してあまり強気ででて欲しくない、というのが本音なんですね」、と言っていました。これが本当かどうかは分かりませんがこういった報道からは、上記のような尖閣諸島問題の核心部分を知る事はできません。

尖閣諸島問題の検証

              <尖閣諸島問題の検証┐梁海>
この 「検証 尖閣問題」( 孫崎 享 著 岩波書店 刊)からの抜粋文をみなさん、どう思いますか。意味分かりますか。‘尖閣諸島の施政権は日本に戻すが主権についてはアメリカは中立の立場だ’という文言を単純に分析すると、尖閣諸島はどこの国にも属さないが統治は日本がしていい、となります。

世界中たいていの国は少しでも有効活用できるなら自国の領土を広げたい、と思うのは普通です。戦後、国連の承諾のもとに沖縄を含め尖閣諸島をアメリカが信託統治してきました。ですが、1972年に沖縄返還を行う際になぜか沖縄本島及びその他小諸島は普通に日本に返還され、尖閣諸島だけは‘主権に関しては中立’などと言っています。要するにこのブログの<尖閣諸島問題の検証ぁ笋任眈し触れた北方領土と同様に尖閣諸島に関しても日本と中国との間に楔をたてたのです。つまり、日本と中国との間に尖閣諸島という領土問題を存在させ、係争させ、接近させないためにあえてアメリカは沖縄を日本に返還する時に、尖閣諸島だけを特別扱いにしたのです。

アメリカがあえて‘尖閣諸島の主権に関しては中立の立場だ’、と言えば中国は、‘じゃあ、中国の領土かも知れないんだな!’、となります。

また、この時期、1970年代始めの頃というのは尖閣諸島周辺の海底には‘多量の石油が眠っている海底油田がある可能性が高い’、という情報が流れ始めます。そういった尖閣諸島の海底油田説も中国の尖閣諸島の獲得意気に繋がったのかも知れません。

そしてこのアメリカの尖閣諸島を含む沖縄返還方針に対して当時の日本政府の対応として次に記すような事があったそうです。

貼り付け開始
「(1972年)3月21日、米国務省筋は沖縄返還に伴い、尖閣諸島の施政権は日本に返還するが、主権の帰属については中立の立場をとる米国の態度には変更はないと語った。3月22日、福田(赳夫)外相は、参議院沖縄及び北方領土特別委員会で、米国がこの問題であいまいな態度をとっていると批判し、「現在施政権を行使している米国が中立的な立場をとることを正式に表明すれば、米国政府に対し厳重に抗議する」との意向を明らかにした。佐藤(栄作)首相も、3月23日の記者会見で米国の態度に強い不満を持っていると語った。牛場(信彦)駐米大使は政府の訓令に基づき国務省のグリーン国務次官補に会見し、尖閣諸島の帰属問題に関する日本の見解を説明し支持を求めたが、同次官補は従来の米政府の中立の立場を繰り返すにとどまった」(前掲   尾崎重義 著 論評 「尖閣諸島の帰属について」)
貼り付け終わり

この1文はこのブログで前掲している「検証 尖閣問題」 孫崎 享 著 岩波書店 刊からの抜粋文になりますが、この1文から分かるのは、当時の福田(赳夫)外相や左藤栄作首相はアメリカのあいまいな態度に対してはっきり批判し、物申した、という事です。現在の日本の政治家の方々でこのようにアメリカにはっきり物申す政治家がほとんどいない現実を思うと、当時の政治家の方たちは政治家としての気概をしっかりもっていた、という事なのかも知れません。

尖閣諸島問題の検証

              <尖閣諸島問題の検証Г梁海>
その会議議事録の内容を以下に記します。
1951年6月5日に催された英米外相級会談での沖縄処理問題についての会談議事録
※下線はシダーズに依る。
貼り付け開始
ダレス氏は、米国政府は次のような理由から信託統治協定の下で、第3条で言及された琉球及び他の諸島を取得することは望まないと述べた。
(a) これらの諸島の住民は民族的に日本に近い。米国政府は、特に住民の国籍変更は貿易及び漁場の規制を複雑化しかねないという理由により、これらの諸島と日本との長期にわたる関係を完全に断ち切ることは望まない。
これらの諸島の住民は日本人猟師達と同じ領海で漁業を行い、彼らの主な取引先は日本本土である。米国はこれらの諸島を施政する権利を保持したいと望んでいるが、それと同時に彼が述べた複雑化を回避したいとも望んでいる。
(b) 米国政府はまだその可能性を十分に検討し尽してはいないが、諸島の住民は日本国籍を保持するが米国政府に無制限に統治されるという非通常型の信託統治協定を国連に提案することを希望している
(c) ダレス氏は、この問題に対する十分な研究がなされるまでには何ヶ月もかかり、条約が調印される前にそれが完了するとは期待していない、と付け加えた。
更に、
ダレス氏は、提案中に何らかの実質があるかもしれないが、実のところ米国政府は琉球及び他の諸島の主権を米国に帰属させる準備ができていないと語った。彼は、米国政府がもはやこれらの諸島を占領し続けることを望まない時期が来るかもしれず、そうなれば処分が(憲法上及び他の理由からも)相当困難になるだろうと述べた。
貼り付け終わり

下線日本国籍を保持するが米国政府に無制限に統治されるという非通常型の信託統治協定は、アメリカが沖縄を最大限にアメリカに都合がいいようなかたちで占領計画をたてていたことがうかがえます。日本国籍を保持するが非通常型の無制限な信託統治協定で沖縄を統治する、ということは言ってみれば、司法・行政・立法の全てにおいて無制限にアメリカが権力を行使するが、責任は日本政府にある、という事でしょう。よく、日本とアメリカの関係において、「日本はアメリカの51番目の州だ」 と言って、日本が多くの面でアメリカ政府の顔色を伺いながら施政していることを表した言い回しがされます。ですがこのアメリカと沖縄の関係についてはそれ以下、というか51番目の州ではないわけです。アメリカが無制限に権力を行使はするが、沖縄の人の国籍は日本にある、と言っているのですから。ここに当時の国連で定めた国連信託統治制度の範囲を逸脱してまで東・東南アジア地域及び領海において実質的な権力を反映させる事をアメリカは考えていた事が分かります。

下線米国政府がもはやこれらの諸島を占領し続けることを望まない時期が来るかもしれず、というところにあきらかに将来において尖閣諸島を含む沖縄地域をアメリカの施政下から外すことを、当時アメリカ政府は考えていたと言えます。

このようなダレス氏の発言や連合国側(戦勝国側)における会談等の過程をえて、サンフランシスコ平和条約が戦勝国(アメリカ、イギリス、ソ連、中国など)と敗戦国(日本、ドイツ、イタリア)の間で締結され、第2次世界大戦後の国際秩序の原則になっています。つまり、戦後の領土問題における国際法といったら、このサンフランシスコ平和条約になるわけです。

ここで再度、サンフレンシスコ平和条約 第二章 領域 第3条を貼り付けます。

サンフランシスコ平和条約 第二章 領域 第三条
(※下線はシダーズの線引き)

日本国は、北緯29度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)そう婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対するいかなる提案のにも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。

このサンフランシスコ平和条約 第二章 領域 第三条の前述した下線部南西諸島に尖閣諸島は含まれると思われます。とすると、1972年にアメリカが日本に沖縄を返還した時点で尖閣諸島も一緒に返還された、だから日本の領土だ、と普通はなるのですが実際には日本と中国の間にその後40年におよんで係争が続いています。
何故なのか。この原因(と思われる)については先にも紹介させ頂いた 「検証 尖閣問題」( 孫崎 享 著 岩波書店 刊) にヒントもしくは答えがあります。以下そのヒント、もしくは答えと思われる部分を記します。
貼り付け開始
(前略)米国は沖縄を施政下においていた時には、尖閣諸島を管轄していた。しかし、1971年6月17日、沖縄返還協定が調印されたが、プレイ国務省スポークスマンは、当日の会見で、尖閣諸島の「施政権」は沖縄返還にともなって日本に返還されるが「主権」の帰属については中立の立場をとるという態度を明らかにした(尾崎重義 著 論評 「尖閣諸島の帰属について」 外務省図書館に保管)。(第1章 「尖閣問題にどう対処すべきか」 から抜粋)。
貼り付け終わり

尖閣諸島問題の検証

                <尖閣諸島問題の検証Δ梁海>
なので終戦直後の一時期はアメリカも尖閣諸島を含む沖縄地域を占領する予定ではなかったのですが前述したようにその後、占領していく方向で他の連合国であるイギリス、ソ連との協議を行いながらサンフランシスコ平和条約の草文を完成させます。以下その条文を記します。

サンフランシスコ平和条約 第二章 領域 第三条(※下線はシダーズの線引き)

日本国は、北緯29度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)そう婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島を合衆国唯一の施政権者とする信託統治制度の下におくこととする国際連合に対するいかなる提案のにも同意する。このような提案が行われ且つ可決されるまで合衆国は、領水を含むこれらの諸島の領域及び住民に対して、行政、立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有するものとする。

となります。一つ目の下線南西諸島に尖閣諸島が含まれると思われます。つまり、沖縄本島尖閣諸島を含むその他諸小島をアメリカが統治してよい、と国連(国際連合)が決めた。また、アメリカが沖縄を統治していく中で決める制度を国連に提案したら日本は賛成しなければならない、ということです。

2つ目の下線部に国連に提案したら、とありますがこれは北緯29度以南の南西諸島(琉球諸島及び大東諸島を含む。)そう婦岩の南の南方諸島(小笠原群島、西之島及び火山列島を含む。)並びに沖の鳥島及び南鳥島の地域・領海はアメリカによる信託統治というかたちをとっているゆえに国連に提案する必要があるという事です。信託統治とは、戦後の沖縄本島を含むその他の小諸島は、通常の占領ー占領した国家に編入、ではなく、将来的にはその地域が独立することを前提に考えられています。つまり独立させるまでの過度的処理ということです。また、この‘将来的に独立’、という事を匂わせる発言を実はこの条約草案に関わった最重要人物、といっても過言ではない、1950年4月にアメリカ国務省顧問に就任した、ジョン・フォスター・ダレス(以下ダレスと省略)という人がいます。そのダレスが1951年6月5日に開催された英米外相級会談で沖縄処理問題で言及し、大きく影響を与えています。

尖閣諸島問題の検証

              <尖閣諸島問題の検証イ梁海>
下線領土拡大に反対する・・・・実は前述した1943年にルーズベルト(米国)、チャーチル(イギリス)、蒋介石(中国国民政府)によって行われたカイロ宣言で領土不拡大原則が謳われていて、それは戦後、日本が「暴力と貪欲」によって奪取した全ての領土から駆逐されることが明言されています。その領土不拡大原則に反する事を当時アメリカは懸念していた、という事になります。

下線報われない任務を米国に課すことになるであろう。・・・・アメリカはここで、沖縄をアメリカが占領してアメリカの一部として国家運営する事に対する財政的な負担を懸念しています。

下線合法的な政治的及び地域的利権区域の外に踏み出していると、他所国から見なされるであろう。・・・・アメリが沖縄を占領統治することによる他国のアメリカ批判を恐れています。この下線の合法的な、という文言は上述のカイロ宣言の領土不拡大原則を言っていると思われます。

そして太字のソ連に認識されてしまうだろう、はソ連の北方領土に対する動きを警戒していることが読み取れます。

このSWNCC59.1の文面からも分かるようにこの時期(1946年6月)に沖縄を占領せず、日本の領土のままにしておく、事をアメリカが考えていた時期もあったのです。

ですがどうもこの後、アメリカは沖縄を占領(信託統治)する方向で考えていったようです。その理由は大きく考えて2つあるようです。ひとつは、前述したように中国、ソ連による東、東南アジアの領土・領海における共産主義勢力の拡大の阻止、もうひとつは、東、東南アジア地域・領海に対してアメリカの軍部が提案していた強攻策の圧力です。ただ、この強攻派であるアメリカ軍部の圧力がなかったとしても、1945年のポツダム宣言発表から1951年のサンフランシスコ平和条約締結までの6年の中国、ソ連による共産主義勢力の拡大傾向から、沖縄は占領(信託統治)されていたと思われます。

この6年の間におけるアメリカ国内での対沖縄対策についての会議議事録やアメリカがイギリスと対沖縄対策について会議してだした米英共同草案など、この「サンフランシスコ平和条約の盲点」には多数資料があり、このブログでも記したいところなのですが、それをするとかなりのページ数及び時間を要してしまうことになりますので避けさせて頂きます。ただ、重要な点は東、東南アジアの地域・領海において、共産主義勢力が拡大し、朝鮮戦争勃発によって尖閣諸島を含む沖縄地域を占領(信託統治)する方行に完全にシフトしていったということです。

また、ここであえてアメリカが一時期考えていた‘沖縄を占領(信託統治)しない’対沖縄地域政策の資料を記したのは、この尖閣諸島を含む沖縄地域の領有権問題の本質を知ることができる、と思ったからです。つまりそれは、1972年に沖縄地域が日本に返還されるまで、事実上の占領地域になっていて、返還後も多くの米軍基地が沖縄に残り、その基地の運営費用を日本がかなりの割合で負担し続け、現在に至ってはオスプレイの強行配備をされている沖縄地域を考えると、1945年から現在に至るまで沖縄政策というのはほぼアメリカの都合で決まっているということです。
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