
(前号のつづき)
あの東日本大震災の翌朝、宅急便の配達に現れた若者の出身地をズバリ当て、続いて5月には生保の新入社員の出身県を見事的中させ気分は上々。3度目のチャンスを心待ちしていた。
そんなある日、妻が「台所の蛇口が古くなったので、新しいタイプに取り替えましょう」と言い出した。「お隣さんは最近取り替えて調子がいいみたい。節水タイプで微妙な温度設定ができるそうよ」。
早速、最近の機種の勉強のため近くのショールームを訪ねた。ピカピカの新鋭機器がズラリお出迎え。「蛇口」「カラン」「水栓」「混合栓」などの呼称はもう古い。機種は豊富、機能も多彩だ。
一通りの説明を受け「これは」と思うタイプに絞ってリフォーム店に電話でお願い。「明日早朝には伺います」の快い返事。私はもう巌流島で武蔵を待つ小次郎の心境。
翌朝、武蔵が現れた。若い、40台半ばだろうか。近所のリフォームを幅広く手掛けている評判の社長。技術屋さんというより、フレンドリーで話し好きな営業マンの雰囲気。早速名刺をいただく。待ちに待った緊張の瞬間である。「○○さん」。