2006年10月

2006年10月29日

熱いハートと、クールな頭脳

広島県や平和貢献NGOsひろしまによる「国際貢献のための人材育成講座」がスタートした。

初日、日経新聞編集委員の原田勝広さんと、難民への緊急人道支援を行うNGOの事務局長の木山啓子さんの話を聞いた。


岡崎高校の先輩でもある原田さんは、「NPO・NGO」という言葉のメディアへの年間登場回数は、10年前の’95年には5000件程度、’99年に1万件を超え、’05年には5万件を突破したというデータを紹介してくれた。

考えてみれば、日本国内でも、住民主体の地域づくりだとか、行政と住民との協働が声高にいわれるようになったのは、ごく最近である。
青森にいた頃に仲間でつくったNPO法人・青森ITSクラブの設立も’02年のこと。

政府や大企業がリードしてきた世の中から、市民中心の社会へと流れる時代の潮流は、けっして後戻りすることはない。
原田さんの話でも、NGOのジャパン・プラットフォームの立ち上げにあたっては、newsZEROの村尾信尚さんが大蔵官僚時代に、一個人として熱いハートを持って動いたことが大きかったという。
お堅いといわれる政府組織でも、要はそこに属する人間の気持ちが重要なのだ。


日経ウーマン誌「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2006」受賞の木山さんは、長らく旧ユーゴでの人道支援などを行ってきた方で、JENというNGO組織を運営するにあたり、苦労してきたマネジメントについて語ってくれた。

たとえば、

○あるスタッフから「働いても働いても目に見える成果は出ないし、給料も上がらない。もうやめたい」と文句が出て、数日後には別組織に出て行かれてしまった。何か理由をつけて給料を上げてやるべきだったのだろうか?

○難民キャンプ1万人分の食料と水をドナーから調達したが、突如難民が1000人増えてしまった。ドナーとの今後の契約継続を考えると契約違反はまずいが、目の前で苦しんでいる難民に提供してしまってよいものか?

○「5日以内に撤退しないとスタッフを殺害する」との脅迫があった。難民を放置して撤退するのか、それでも使命を果たすため現地にとどまるのか?

などといった場面での状況判断の難しさを知った。

「いずれも正解はないんです」とのことだが、しかしこんな現実に直面したら結論を急がなければならないものばかりだ。

9・11テロ以来、緊急人道支援組織でさえ現地での攻撃の的になり、現地でのセキュリティ確保には神経を尖らせているそうだ。

「熱いハートと、クールな頭脳」を要する仕事だ、との木山さんの言葉が印象的だった。


shigetoku2 at 23:28|PermalinkComments(1)TrackBack(0) NPO