2007年02月

2007年02月18日

生きる上で拠って立つもの

仕事に忙殺される日々を過ごしていても、たまに時間のあるときに思い悩むテーマがある。

“私たち人間の、拠って立つものって、一体何なのだろう?”

有史以来、多くの哲学者、思想家が考え続けたテーマなのだから、私ごときが少し考えた程度で、確信を得られるものではないだろうけれども。


たとえば、村上春樹を読むと、いつも人間の存在根拠の薄さを感じさせられる。

最近読んだ『海辺のカフカ』は、現実世界で身近な人々が殺人事件に巻き込まれる傍ら、主人公は現実離れした旅を続け、現実と潜在意識とが倒錯したようなストーリー展開になっている。
他の村上作品と同様、全体に浮き草のように根っこのない、無気力な人間の存在が漂っている。

だがそんな作品の雰囲気に、なぜだか、ある種の共感を覚える。
社会規範を逸脱したがっている、心の中の潜在的な反社会的意識が共鳴するような感覚をおぼえるのだ。

もしかしたら、自分は、潜在的な心理意識の中では、かなり反社会性が高いのかもしれない。
『海辺のカフカ』の世界のように、「許される、あるいは、必然的な殺人があっても良い」などと思っているのかもしれない。
しかし、現実社会で、殺人という行為が肯定されることはありえないし、そんな発言をすることすら公の場では許されない。
まあ殺人のたとえは極端にしても、一般に人間社会は、秩序が高ければ高いほど、生きる上での制約がきつく自由度が低いと言えよう。


とはいえ実は、社会規範がなければ、人間は生きていくのがとてもつらい。

現に、村上作品のストーリー展開の中でも、ホッと一息つくことができるのは、時々登場する、事件を追う警察官やニュース報道など、私たちが日常的に接している世俗的な場面である。
合理性のない、不快な心理描写にもがき苦しんでいたところ、「いつものあの場所」に辿り着くことができ、「拠り所」感に安心する。

また、昔読んだ星新一の小説に、社交界でつまらぬ建前ばかり語る親に疑問を呈する子供に対して、父親が「人は建前なくして、生きていくことなどできないんだよ」と諭すような場面があり、非常に納得した記憶がある。

生きるため、食べていくために仕事をし、そのために毎日規則的な行動をし、程よく人とのお付き合いをこなす。
日々が退屈にならぬよう、好奇心が満たされるよう、ニュースや娯楽番組を見るが、一時の話題性が薄れると二度と思い出しもしない。

・・・結局、人間が拠って立つことのできる「確かなもの」は家族、信仰、人によってはカネ、国際的には祖国、といった類のものしかないのだろうか?

しかし生きる根拠がそれだけでは、あまりにつらい。
そこで、社会のルールが生まれてくる。
みんなが合意した(ということ自体日常的にはほとんど考えることのない)規範があることで、安心して暮らせるというものだ。

・・・そんなわけで、わたしは明日もまじめに働くのだ。

shigetoku2 at 23:24|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 日本論・人生論 

2007年02月04日

展開するITS

広島で、ITS(高度道路交通システム)の公道実験が始まるらしい。

事故・渋滞が多発する道路にセンサー内臓カメラなどを設置し、見通しの悪いカーブの先に停止している車両や、渋滞状況を感知して、カーナビで見れるようにするモデル実験である。

半年間の実験にはマツダ車50〜100台が参加し、雨天・夜間など異なる条件下でのブレーキのタイミング、車間距離などの情報も収集する。
マツダや広島大が解析し、ITSによる事故防止に向けた技術開発などに役立てるとのことである。

交通事故といえば、ここ数年の死者は、激減している。
平成8年には9,942人だったのが、平成18年には6,352人まで減ってきている。
10年で2/3以下である。

交通事故死者数の減少の理由は、交通安全白書(平成17年版)によれば、「道路交通環境の整備、交通安全思想の普及徹底、安全運転の確保、車両の安全性の確保、道路交通秩序の維持、救助・救急体制等の整備等の諸対策が効果を発揮したことは言うまでもない」とした上で、「定量的に示すことができる主な要因」として、いくつか挙げている。

特に1ドライバーとしても実感できるのは、次の2つではなかろうか。

^酒運転の厳罰化
飲酒運転による死亡事故は、平成6年に1,458件だったのが、16年には710件まで減っている。半減だ。
平成14年に、懲役・罰金の限度が引き上げられたり、酒気帯びの基準が厳しくなったりした成果といえよう。

さらに、去年8月の福岡市職員の起こした死亡事故以来、公務員は飲酒運転事故のケースで免職処分が幅広く適用されるようになり、日常的な意識を持たざるを得ない環境になってきている。

▲掘璽肇戰襯斑緲兌堽┘▲奪
着用者率は、平成6年の68.5%から平成16年には88.3%に上がっており、その間に致死率(死傷者数のうちの死者数)は0.88%から0.39%まで下がっている。
この辺のモラルは、相当高まっていると思う。

もらい事故だってあるんだから、事故を100%避けることはできない。
ならば、死ぬ可能性を下げるしかないだろう。


話は戻るが、ITSは交通安全のためだけのツールではない。

NPO法人青森ITSクラブでは、路線バスの位置情報を携帯電話などでリアルタイムで提供する、バスロケーションシステムを普及させている。
渋滞などで時間が当てにならないとされるバスを、より信頼のおける公共交通機関に転換していくことは、社会的に大きな意味がある。

特に、青森のように、吹雪の中、病院に行くためにバス停で待たなくてはならないような土地では、バスロケの導入目的は、単なる「待つ間のイライラ解消」だけではない。

ITSはIntelligent Transport Systemsの略であって、IT(Information Technology)と語源は異なるが、内容的には、いかに交通システムとITをミックスして高度化していけるかという、大いにITと関係する概念である。

カーナビの活用一つ取ってみても、渋滞や対向車といった情報だけでなく、地域のお祭りやショッピング、地場の旬な食べ物情報、観光情報をドライバーに提供する、といったアイディアを実現していけるはずである。

ITSは、これからまだまだ進化していくITの大きな活用方策の一つだと思う。

shigetoku2 at 23:44|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 行政・地方自治 | 経済社会・文化・科学