2009年10月

2009年10月19日

行政刷新会議へ!

年度途中の急な話だが、10月15日付けで、行政刷新会議の事務局へ異動となった。

今年4月に配属された総務省地域力創造グループでは、尊敬する上司である椎川忍地域力創造審議官のもとで、地域活性化を担う人材育成を担当し、NPOや企業と自治体との官民連携の枠組みや、まちづくり教育推進のための学校教員グループとの連携地域に飛び出す公務員ネットワーク地域力おっはー!クラブなど、あの手この手でプランニングしていたところだったので、志半ばの仕事がたくさんあるが、そこはサラリーマンだから、やむを得ない。後任者にしっかり引き継ごうと思う。


行政刷新会議の仕事は、当面は、来年度当初予算編成に向けて財源確保である。

周知のとおり、民主党マニフェストに基づいて実施する施策には相当な規模の財源が必要であり、これを捻出するためには、既存の予算を大幅に見直す必要がある。
そこで、各省の予算について、従来の査定プロセスに加え、行政の外部からの目で改めて議論するため、シンクタンク構想日本(加藤秀樹代表)が数年来にわたり全国各地の自治体で取り組んできた実績のある「事業仕分け」を実施する予定である。


事務局にあいさつに来られた古川元久副大臣は、「国民のため、そして官僚自身のためにも、行政のあり方を刷新し、信頼される行政をつくっていこう」と述べられた。

加藤秀樹事務局長からも、事務局職員に対し「マスコミが行政を批判する余地がないぐらい新しい行政をつくろうではないか」との訓示があった。


9月18日に閣議決定された文書『行政刷新会議の設置について』には、「国民的な観点から、国の予算、制度その他国の行政全般の在り方を刷新するとともに、国、地方公共団体及び民間の役割の在り方の見直しを行うため、内閣府に行政刷新会議を設置する。」とある。

後段の官民の役割分担について、いつも思うのが、いまの社会に欠けているものは、社会に対して当事者意識を持つ人たちが、実際に社会に参画する環境が十分に整備されていないということである。

社会をより良いものにしていこうとする多くのプレーヤーが奔放に社会参画し、“ぶ厚いパブリック”を形成することが必要ではないかと思っている。

現時点の行政刷新会議事務局のスタッフは、各省からの職員30人程度と民間人2名だけだが、近々民間からも増員されるようだ。

どんな職場にいようとも、これまでの私が出会ってきたような、多くのNPOや企業のイケてる民間人や、イケてる公務員とともに、公共社会をより良く、より楽しく、活気あるものにしていこうという基本的な思いを発展させていきたい。

shigetoku2 at 08:03|PermalinkComments(6)TrackBack(0) 行政・地方自治 

2009年10月13日

自殺を社会の問題ととらえること

NPO法人ライフリンク代表の清水康之さんにお会いした。

NHKに勤務していた頃に、自らが番組制作に携わった自殺の問題にもっと正面から向き合おうと、5年前にNHKを退職し、NPOを立ち上げた方だ。

ある雑誌への寄稿の中で、清水さんは次のように述べられている。
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警察庁が毎年発表する「自殺の概要資料」では、自殺の原因の「○○%が健康問題、△△%が経済問題、◇◇%が勤務問題」といったように、あたかもそれぞれの原因が独立したものであるかのように扱われているが、自殺の背景はそれほど単純ではない。

ひとりの自殺の背景には平均4つの危機要因が重なり合っていることが分かった。
経済的な問題や健康の問題、人間関係の問題など、複数の要因が連鎖して、人が自殺に追い込まれていくプロセスが明らかとなったのだ。

しかも、危機要因の連鎖の仕方に、ある一定の規則性があることも分かった。

「事業不振」や「職場環境の変化」といった社会的な問題がある。
こうしたものが、まず自殺のきっかけとして発生し、それが「職場の人間関係の悪化」や「失業」「負債」といった要因を引き起こし、さらにそうした要因が悪化していく中で、「家族の不和」「生活苦」「うつ病」といった個々人の生活や内面的な心の問題にまで転化していく。

多くの場合、そうやって問題が悪化の連鎖を繰り返した末に、自殺は起きているのである。

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自殺がこうした複合的な要因によって起こっているため、行政側としても、労働や金融、福祉や医療、生活支援や介護支援など、複数のセクションにまたがる対応が求められるが、これがうまく機能していない。

清水さんは、これまで5年間にわたって政治や行政に働きかけてこられたが、なかなか部局横断的な対策が進まないという。

また、現場で市町村が対策を講じる場合、国や県の機関との緊密な連携も必要となるが、これも不十分。

自治体の意識としても、自殺は“個人の問題”と捉える傾向があり、その対策を行政として講じる意識が必ずしも高くないという。

しかし、上記寄稿にあるとおり、自殺は少なからず“社会の問題”なのである。


また、そもそも自殺の実態や要因が分からなければ、各現場の市町村も対策の施しようがない。
実態が分からなければ、市町村も対策のほどこしようがない。

その意味で、自殺に関する統計や実態を初めて全国的に公表した自殺実態白書が作成されたのは画期的である。


日本の年間自殺者数は、10年連続で3万人を超えている。
人口当たりで比較すると、米国の2倍、英国の3倍。一部の東欧圏の国と同水準だそうだ。

特に、経済情勢と連動して数が増減するのが日本の特徴らしい。
今年は、経済危機の影響もあり、過去最高に達するおそれがあるという。

せっかく先輩たちが築き上げてきた経済大国がこれではあまりに悲しい。

日本の行政は、経済的豊かさを追求するための政策立案手法は確立してきたかもしれないが、“心の豊かさ”を追求する術は、いままでの行政にはなかった仕事のモデルだ。


清水さんは、行政の仕組みを変えることをライフリンクの活動目標に置いており、総合的な自殺対策の仕組みが回り始めたら活動を終了するつもりだという。

一方、日本では多くのNPOが資金的にきわめて厳しく、わが国の非営利活動はきわめて薄っぺらである。
こうした状況を少しでも改善し、NPOで食っていける社会づくりも必要との認識で一致した。

目的意識を失いつつ、会社で限界まで働き続ける生活スタイルだけでなく、豊かな地域社会に必要と感じる非営利活動に生きがいを持って従事する選択肢が必要である。


将来に希望を持てる人間味ある温かい地域社会。

これは、持続可能で活力あふれる地域づくりのためにも、生きる望みを求める人々のためにも、不可欠なものだ。


shigetoku2 at 08:01|PermalinkComments(2)TrackBack(0) NPO 

2009年10月06日

ご当地ブランド

職業病だと思うが、最近は、スーパーやコンビニで買い物してても「地域ブランド商品」が気にかかる。

キャットフードコンビニによく置いてあるサンドイッチに「嬬恋キャベツ入りメンチカツ」が登場。

富士宮ヤキソバ」というのも見かけたことがある。

ピザ2

たまたま自宅の郵便受けに入っていたピザのチラシを見たら、「東海ウォーカー」など各地の情報誌とタイアップして作ったという4種類のご当地ピザ




関西「めちゃうま!神戸長田牛牛すじぼっかけピザ」。
北海道「なまらうめぇ!北海道産秋鮭ピザ」。
東海「でらうみゃ〜!名古屋コーチンの赤みそ仕立て」。
福岡「バリうま!はかた地どりの柚子こしょうピザ」。


もともと情報誌がコラボしているんだから、各地への情報発信力も大きいだろう。

キャットフード2さらに、キャットフードまで!
枕崎産のカツオ」とか「焼津産のマグロ」。

いや〜日本の消費者の目は肥えている。

もはや外国産では猫も食わないのか。
いや、正確に言えば、猫にも食わさないのか。

この消費者の嗜好には、日々放映されるグルメ番組や農村地域への食の旅など、TVの影響が大きく寄与しているのは間違いない。
少なくとも、嬬恋がおいしいキャベツの産地だという情報が消費者の頭に入っているからこそ、売り上げに結びつくのだ。

かように、地域ブランドにはメディアの力が欠かせないわけだ。


話は変わるが、いまや“官僚ブランド”のイメージは、コワモテの腹黒い集団。

日々の報道では、霞が関の「官僚政治」「省益重視」「天下り」「自己保身」「面従腹背」「伏魔殿」・・・。
これでもかと罵詈雑言のオンパレードである。(そして公務員は慢性的に意気消沈である。)

最近、民間の方々(省庁との接点の少ない人たち)に会うと、よく「あんた、官僚のイメージと違う〜!」と言われるのは、おそらくそれ自体は褒め言葉だと解釈しているが、だとすれば官僚イメージがおそろしく悪いことの裏返しで、実に悲しい事実である。

思えば、私が役所に入った15年ぐらい前に「官官接待」なんていう、最近の働き始めた若手職員には想像も付かないような事態が明るみに出て以来、ノーパンしゃぶしゃぶ、薬害エイズ問題、省庁幹部による収賄事件、消えた年金記録問題など、叩かれ続けているのである。

これだけ叩かれて良いイメージを持つ方がおかしいだろう。

これからの時代を担う若手公務員は、“官僚ブランド”を良いものに転換していく努力が必要である。

しかしブランドは、内容を伴わなければならない。
嬬恋キャベツは、メディアで宣伝されるだけでなく、本当に美味しいからブランドなのである。

公務員もキャベツに負けず、斬新な仕事のスタイルをどんどん試し、変革に向けた内発的な行動を実践して、時代の要請にこたえ、社会から高い評価を得る努力を続ける必要があると思う。

「日本を良い国にする!」という強い使命感と高い理想を持った公務員が、自信を持って働ける職場にしていくため、そして、人々が“心豊か”に暮らせるニッポンをつくるため、やれることは何でもやっていきたい。

shigetoku2 at 08:02|PermalinkComments(1)TrackBack(0) 地域活性化・地域の話題 | 行政・地方自治

2009年10月05日

ファーム・エイド銀座2009

先日、「ファーム・エイド銀座2009」というイベントのセッションに参画した。

ファームエイド銀座セッション昨年秋にビル屋上のミツバチ見学をして以来、個人的に注目していた活動に少々貢献させていただく機会となった。

同じセッションに参加したのは、岡山県新庄村笹野寛村長さんと、場所文化機構代表、レストラン「とかちの・・・」総監督の後藤健市さん。


新庄村は、県内のブナ林の2/3を占める山林地域であり、出雲街道の宿場町の歴史があるという。

笹野村長さんの言われる「1点突破」を目指す村の特産は、モチ米・ヒメノモチ
当日会場の周りで販売していたので購入して味わってみたら本当に美味しい。

新庄村では、今年11/14(土)15(日)に「日本再発見塾」が開催される。
日本再発見塾は、「経済的な利益や効率、グローバル化などの陰で息も絶え絶えとなっている日本各地に根付いた文化、伝統、歴史の魅力を改めて見出すこと(再発見)によって、日本を元気にしていく活動」だそうで、セッションの中で、塾生として参加している慶応大学の学生さんたちも活動紹介をしてくれた。
彼・彼女らの出身地はばらばらだ。
東京に飽き足らず、山村に足を伸ばすのだから、一昔前では「物好き」で終わってた話だ。
若い世代の意識に変化が見られる。


さて後藤健市さんは、群馬県高崎市で運営している屋台村の活動紹介をされた。
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寂れた商店街でも、お祭りや花火大会なら人が出てくるのは、屋台があって楽しいから。
そんな発想から、従来駐車場として使われていた駅近く音土地に、屋台を出店させる事業を始めた。
その土地の坪当たりの売り上げ単価は数十倍になった。

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事業への参加者を増やすためには、屋台のように「こんなことなら自分にもできそう!」と思わせることが大事だという。
だが実際には誰でも容易に成功できるものではない。

それでも、参入に対する心理的ハードルを下げるというのは、多くの人たちがまちづくりに参画していくためには、重要かつ本質的なポイントだ。

同様のことはたとえば農業についても言える。

農業にまったく縁のない若者が「農業をやってみたい」なんて言うと、周りの人に「農業はそんなに甘いもんじゃない。お前なんかができる仕事じゃない」などと諌められることが多い。

確かに現状の農業は、ラクでオイシイ商売ではなく、親身になって助言するとそうなるのだろうけれども、でも入口のハードルがあんまり高く見えると、外部からのなり手がなかなか入れなくなってしまうのではないだろうか?

国内食料自給率が低迷し、農業に一人でも多く参入してもらいたい状況である。
ここはあえて、誰でもできそうに見せる→一歩踏み込ませる→厳しい現実を思い知らせる→でも頑張ってうまく行くこともある、といった循環に乗せるため、第一歩として、家族・友人からもおススメできるような仕組みが必要であろう。

・・・というような考えに基づき、志ある人がお試しで農村で働ける仕組みとして、総務省では「地域おこし協力隊」(関係HP)、農水省では「田舎で働き隊」という制度が始まっている。

これからの日本では、多くの人たちが“当事者意識”を持って、活力ある地域をつくるため、チャレンジしていける社会をつくらなければならない。
そのためにも、その“当事者”となる第一歩を踏み出しやすい環境を社会のいろいろなところにつくっていく必要があると思う。

shigetoku2 at 08:03|PermalinkComments(1)TrackBack(0) 地域活性化・地域の話題 

2009年10月01日

大科学者の言

有機化学の研究で有名な東京大学大学院教授の福山透さんの話を聞いた。

岡崎高校の先輩であり、今年、中日新聞の中日文化賞を受賞された。
首都圏の同窓会である首都圏段戸会では、年に数回「段戸フォーラム」を開催しており、若者から年配の方まで数十人集まる。

福山さんは、製薬につながる分子構造の基礎研究の権威であり、非常に高度な内容を私たちシロウト向けに解説してくださった(けどここでそれを伝える能力がありません・・・)。

それでも、講演と質疑の中では、どんな分野にも通じる心にグッとくる言葉がいくつもあった。
特に印象的だったのは、次の言葉だ。

ひらめきは、相当勉強しないと生まれない。

他人と違うことをやらないと面白くない。

これが、福山さんの生き方であり、仕事への姿勢だ!と感じた。
何十人もいる研究室の学生さんたちにもこうした姿勢で指導しているそうだ。


20年以上アメリカで研究活動を続けてこられた福山さんは、十数年前に日本に戻ってこられた。

業界誌への寄稿文には、次のようなくだりがある。
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「なぜ帰国したの?」とよく訪ねられるが、一番の理由は「私は根っからの日本人」に尽きると思う。
22年もアメリカで暮らしたが、背中にはいつも日の丸を背負っていた。
自分の家でも何か借家住まいのように思えたのは異邦人としての意識が抜けないからだ。

「日本に帰ってきてよかった?」と、聞かれれば、以前はのらりくらりと答えていたものだが、今では素直に「よかった!」と答えられる。

「日本の若者を育ててみたい」という願いは叶い、気持ちのよい青年たちに囲まれて幸せな日々を送っている。

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正直言って、日本は、こういう方でも帰ってきたくなるような国なんだ、とホッとする感覚を持ったのは私だけでなかったと思う。

実際、世界で通用する日本の人材が海外に流出するのはよくあることだ。
研究者にとって、大学のサポート体制、研究資金、ビジネス環境、様々な面で日本はまだまだ欧米に見劣りすると言われる。

行政に携わる人間として、そんな状況を何とかしたいという思いに駆られる。


福山さんへの質疑の中では同窓会らしく、子どもの頃を知る方から「あのいたずら坊主が世界的な科学者か」という感嘆の声も上がり、楽しい時間を過ごすことができた。

首都圏段戸会では、D-misoプロジェクト進行中であり、これからも老若男女にとって有意義な同窓会として発展することを期待したい。

shigetoku2 at 08:00|PermalinkComments(1)TrackBack(0) 経済社会・文化・科学 | 日本論・人生論