2010年03月
2010年03月23日
若手公務員のチャレンジ
第6回「地域力おっはー!クラブ」は、日本財団会議室で行われ、80人以上集まる大盛況であった。(日本財団さん、ご協力ありがとうございました!)
今回のゲストスピーカーは、みやざきわけもんフォーラム副代表の崎田恭平さん。
理系の大学生だった崎田さんは、児童養護施設でのボランティアをきっかけに行政の仕事を選び、宮崎県庁で地域振興課に配属となる。
アフターファイブと土日は“一県民”として消防団やJCに参加したり、県・市町村の壁を取っ払おうと若手公務員の勉強会を立ち上げるなどの活動に取り組んでこられた。
まさに“地域に飛び出す公務員”を実践する人物だ。
昨年、厚労省に出向した崎田さんは、東京で宮崎県ゆかりの主に20代の若者による「みやざきわけもんフォーラム」を結成して、大学生・社会人に対するキャリアデザイン支援や、若者の起業支援のためのプロジェクトを企画しているそうである。
会合には、東国原知事にも参加いただいたこともあるそうで、今後のさらなる展開が期待される。
おっはー!クラブの良いところは、地域を元気にするという共通の目的で、幅広い年代や職業の方々が集まってこられることだ。
今回、大勢の諸先輩方の前で少し緊張気味の崎田さんに対し、業種を超えた先輩方から温かいアドバイスが投げかけられた。
タテ割り・肩書き・年功序列の従来秩序だけでは、ブレイクスルーは起こらない。
様々な場での出会いをきっかけとして、ちょっとした積極性と行動力が、日本の閉塞感を突破していくことになると思う。
この4月には、おっはークラブ参加者の方々の中には、異動で元の自治体に戻る方もいらっしゃる。
この1年間、東京で築いた人的つながりが、あっという間に全国津々浦々のつながりへと広がっていくのである。
中央集権・タテ割りから、地方分権・横断的つながりという流れを体現するのは、個々の意志ある人間に他ならないのである。
さて次回のおっはー!クラブは、4月21日(水)8時(日本財団会議室)に開催される。
ゲストスピーカーは、日本ファンドレイジング協会常務理事の鵜尾雅隆さん。
元JICA職員で、日本にNPOへの寄付文化の革新を起こそうと、同協会を立ち上げられた、アツくてウィットに富んだ方である。
わが国のNPO界が、今後さらに成長していけるかどうかの重要なカギを握るのは、公共を担うおカネの流れを、税金というチャンネルだけでなく、個々人の具体的な想いをのせた寄付のチャンネルへと、どれだけ広げることができるかである。
鵜尾さんからは、そうした社会づくりに向けた仕掛けやチャレンジについて語っていただけると思う。
次回も、多くの皆さんにご参加いただきたい。
ちなみに最近、地域力おっはー!クラブのHP(暫定)が立ち上がった。
まだ未完成だが、今後はこのHPを通じて、朝の会などイベントの情報発信はもちろん、会員登録や出欠確認なども行えるようにしていこうと考えている。
昨年夏におっはーの企画を始めた事務局の石井あゆ子さんも、4月から総務省を離れ、北海道上士幌町で地域おこし協力隊員となられる。こんな強力な隊員がいたら、地域は元気になるはずだ。
そんなこんなで、3月・4月は色々な変化の季節だが、これからも日本中の多くの人たちの共感と行動によって、みんなで夢あふれる日本をつくっていきたいものである。
そのための地道な努力を今後も続けていく所存である。
今回のゲストスピーカーは、みやざきわけもんフォーラム副代表の崎田恭平さん。
理系の大学生だった崎田さんは、児童養護施設でのボランティアをきっかけに行政の仕事を選び、宮崎県庁で地域振興課に配属となる。
アフターファイブと土日は“一県民”として消防団やJCに参加したり、県・市町村の壁を取っ払おうと若手公務員の勉強会を立ち上げるなどの活動に取り組んでこられた。
まさに“地域に飛び出す公務員”を実践する人物だ。
昨年、厚労省に出向した崎田さんは、東京で宮崎県ゆかりの主に20代の若者による「みやざきわけもんフォーラム」を結成して、大学生・社会人に対するキャリアデザイン支援や、若者の起業支援のためのプロジェクトを企画しているそうである。
会合には、東国原知事にも参加いただいたこともあるそうで、今後のさらなる展開が期待される。
おっはー!クラブの良いところは、地域を元気にするという共通の目的で、幅広い年代や職業の方々が集まってこられることだ。
今回、大勢の諸先輩方の前で少し緊張気味の崎田さんに対し、業種を超えた先輩方から温かいアドバイスが投げかけられた。
タテ割り・肩書き・年功序列の従来秩序だけでは、ブレイクスルーは起こらない。
様々な場での出会いをきっかけとして、ちょっとした積極性と行動力が、日本の閉塞感を突破していくことになると思う。
この4月には、おっはークラブ参加者の方々の中には、異動で元の自治体に戻る方もいらっしゃる。
この1年間、東京で築いた人的つながりが、あっという間に全国津々浦々のつながりへと広がっていくのである。
中央集権・タテ割りから、地方分権・横断的つながりという流れを体現するのは、個々の意志ある人間に他ならないのである。
さて次回のおっはー!クラブは、4月21日(水)8時(日本財団会議室)に開催される。
ゲストスピーカーは、日本ファンドレイジング協会常務理事の鵜尾雅隆さん。
元JICA職員で、日本にNPOへの寄付文化の革新を起こそうと、同協会を立ち上げられた、アツくてウィットに富んだ方である。
わが国のNPO界が、今後さらに成長していけるかどうかの重要なカギを握るのは、公共を担うおカネの流れを、税金というチャンネルだけでなく、個々人の具体的な想いをのせた寄付のチャンネルへと、どれだけ広げることができるかである。
鵜尾さんからは、そうした社会づくりに向けた仕掛けやチャレンジについて語っていただけると思う。
次回も、多くの皆さんにご参加いただきたい。
ちなみに最近、地域力おっはー!クラブのHP(暫定)が立ち上がった。
まだ未完成だが、今後はこのHPを通じて、朝の会などイベントの情報発信はもちろん、会員登録や出欠確認なども行えるようにしていこうと考えている。
昨年夏におっはーの企画を始めた事務局の石井あゆ子さんも、4月から総務省を離れ、北海道上士幌町で地域おこし協力隊員となられる。こんな強力な隊員がいたら、地域は元気になるはずだ。
そんなこんなで、3月・4月は色々な変化の季節だが、これからも日本中の多くの人たちの共感と行動によって、みんなで夢あふれる日本をつくっていきたいものである。
そのための地道な努力を今後も続けていく所存である。
2010年03月16日
福祉NPOのメッカ・知多半島
愛知県半田市を拠点とする社会福祉法人むそう、NPO法人ふわりの理事長戸枝陽基さんを訪ねた。
戸枝さんは、半田市内外で、障がい者が就労し、社会で活躍できる場をつくっておられる方だ。
まず訪れたのは、養鶏場。なんと1個40円の高級な卵を生産している。



知的障がいを持つ人でも、飼料の配合作業を行えるよう、使う原料の分量をボードに分かりやすく示し、一つ一つ作業を進めるごとにボード上のマークを移し替えることで、正確な作業をしやすい仕掛けが設けられている。
次は、パン屋の「なちゅ」。


製造と売り場に、数人の障がい者が従事している。
私もここで、おいしいあんパンを1つ購入した。
ラーメン店の「うんぷう」。

バイキングもあり、リーズナブルな価格で、ボリュームたっぷりの食事ができるお店だ。
残念ながら、食べていく時間はなかったが、また今度来てみたい。
こうした事業展開には、障がい者雇用に対する国の給付金を活用した工夫がある。
事業者からすると、障がい者がうまく健常者と一緒の生産ラインに入ってもらうことができれば、通常の事業よりも給付金が入る分だけ有利になる。
通常は低い賃金しかもらえない障がい者にとっても、生産性の高い仕事に従事し利益が上がれば、賃金が上乗せされる。
何より、障がいを持つ方にとって、お客さんと触れ合うことのできるお店で働いたり、市場価値の高い商品の生産に携わることができることは、とっても嬉しいことではないかと思う。
戸枝さんは、今後、児童館の運営に障害者スタッフを活用し、従来よりも充実した運営を実現しようと計画しているようである。
事業家としての手腕はもちろん、リバースモーゲージや市の指定寄付などを組み合わせた資金・資産の地域循環システムなど政策提案も積極的に行っておられ、非営利セクター全体をリードする存在だ。
半田市は知多半島に位置する人口12万人の市である。
この地域では、従来から福祉系NPOが発展し、介護保険対象外の「助け合い事業」(家事援助や子育て支援など)も広く行われてきたほか、高齢者の居場所作りや、障害者と共生する地域づくり、ひきこもりの若者のフリースクールなど、様々なNPO活動が盛んである。
最近では、認知症の方が行う契約行為や財産管理に対する成年後見センター機能を持つNPOも立ち上がっている。
日本福祉大学も半田市内に立地しており、地域リソースとして重要である。
半島地域全体では、5市5町に22団体、事業収入12億円超。相当規模の雇用を生み出している。
半島地域のNPOを中間支援するNPO法人地域福祉サポートちた(99年設立)は、大規模施設に象徴される“豪華客船型”に対して、人と人がつながり支え合う“イカダ連隊型”を標榜し、人材育成や情報交流促進を積極的に行っている。
行政も呼応する。
半田市の榊原純夫市長のマニフェストには、「議員や役人が市民目線でまちづくりをするよりも、何が大切かを市民が決め、市民が自分の考えでまちづくりが出来るというまさに市民自治を実行しようと思います。市民パワーの活用です。」とある。
半田市では来年度から、社会福祉協議会や様々なNPOが連なって、市民活動の事務局をつくる構想があるそうだ。
これまでの地域福祉のあり方をさらに進化させ、すべての人を社会に包含し、すべての人が生き甲斐を持って生きていける地域づくりに期待したい。
半田市のような中小都市がさきがけとなって、日本社会を覆う閉塞感を突破していくことが期待される。
そのための大きなカギを握るのは、常に現場からの目線で創造性を発揮する力強いNPOの存在である。
福祉NPOのメッカ・知多半島を今後も応援していきたい。
戸枝さんは、半田市内外で、障がい者が就労し、社会で活躍できる場をつくっておられる方だ。
まず訪れたのは、養鶏場。なんと1個40円の高級な卵を生産している。



知的障がいを持つ人でも、飼料の配合作業を行えるよう、使う原料の分量をボードに分かりやすく示し、一つ一つ作業を進めるごとにボード上のマークを移し替えることで、正確な作業をしやすい仕掛けが設けられている。
次は、パン屋の「なちゅ」。


製造と売り場に、数人の障がい者が従事している。
私もここで、おいしいあんパンを1つ購入した。
ラーメン店の「うんぷう」。

バイキングもあり、リーズナブルな価格で、ボリュームたっぷりの食事ができるお店だ。
残念ながら、食べていく時間はなかったが、また今度来てみたい。
こうした事業展開には、障がい者雇用に対する国の給付金を活用した工夫がある。
事業者からすると、障がい者がうまく健常者と一緒の生産ラインに入ってもらうことができれば、通常の事業よりも給付金が入る分だけ有利になる。
通常は低い賃金しかもらえない障がい者にとっても、生産性の高い仕事に従事し利益が上がれば、賃金が上乗せされる。
何より、障がいを持つ方にとって、お客さんと触れ合うことのできるお店で働いたり、市場価値の高い商品の生産に携わることができることは、とっても嬉しいことではないかと思う。
戸枝さんは、今後、児童館の運営に障害者スタッフを活用し、従来よりも充実した運営を実現しようと計画しているようである。
事業家としての手腕はもちろん、リバースモーゲージや市の指定寄付などを組み合わせた資金・資産の地域循環システムなど政策提案も積極的に行っておられ、非営利セクター全体をリードする存在だ。
半田市は知多半島に位置する人口12万人の市である。
この地域では、従来から福祉系NPOが発展し、介護保険対象外の「助け合い事業」(家事援助や子育て支援など)も広く行われてきたほか、高齢者の居場所作りや、障害者と共生する地域づくり、ひきこもりの若者のフリースクールなど、様々なNPO活動が盛んである。
最近では、認知症の方が行う契約行為や財産管理に対する成年後見センター機能を持つNPOも立ち上がっている。
日本福祉大学も半田市内に立地しており、地域リソースとして重要である。
半島地域全体では、5市5町に22団体、事業収入12億円超。相当規模の雇用を生み出している。
半島地域のNPOを中間支援するNPO法人地域福祉サポートちた(99年設立)は、大規模施設に象徴される“豪華客船型”に対して、人と人がつながり支え合う“イカダ連隊型”を標榜し、人材育成や情報交流促進を積極的に行っている。
行政も呼応する。
半田市の榊原純夫市長のマニフェストには、「議員や役人が市民目線でまちづくりをするよりも、何が大切かを市民が決め、市民が自分の考えでまちづくりが出来るというまさに市民自治を実行しようと思います。市民パワーの活用です。」とある。
半田市では来年度から、社会福祉協議会や様々なNPOが連なって、市民活動の事務局をつくる構想があるそうだ。
これまでの地域福祉のあり方をさらに進化させ、すべての人を社会に包含し、すべての人が生き甲斐を持って生きていける地域づくりに期待したい。
半田市のような中小都市がさきがけとなって、日本社会を覆う閉塞感を突破していくことが期待される。
そのための大きなカギを握るのは、常に現場からの目線で創造性を発揮する力強いNPOの存在である。
福祉NPOのメッカ・知多半島を今後も応援していきたい。
2010年03月08日
発達障害とNPO
中野区で発達障害などの小中高大生の教育に取り組むNPO法人翔和学園を訪問した。
東京メトロ・丸の内線の中野坂上駅を出ると、目の前にあるビルの2階フロアで、約100人の教育的支援にあたっている。
駅に降り立つと、学校の前で、登校してくる先生や生徒を待ち構えて「○○先生、おはようございます!」と声をかけてくる生徒がいたりして、一見して少し違う雰囲気である。
伊藤寛晃先生らのご案内により、朝9時20分から教室で始まる活動を見てビックリ!
小中学生のクラスでは、先生のリードのもと、大きな声で歌いながら、みんなで手をつなぎ、踊る。見学していた私も、子どもたちからのお誘いで、輪の中に入って踊った。
ひとしきり大騒ぎした後は、文章をトレーシングペーパーで書き取る練習。
さっきまでの騒ぎが嘘のように、教室はシ〜ンと静まり、子どもたちは作業に集中する。
高等部では、「走れメロス」「方丈記」「平家物語」などから抜粋されたタテ書き数行の文章が、スマートボード(電子黒板)に映し出されるのに合わせ、大きな声で朗読。
先生は、間髪を置かず、テンポ良く短い指示を出す。
中学時代はいじめられたり、教室でネグレクトされて声も出せなかった子たちが、はっきりと大きな声を発する。
大学部では、伊藤先生を中心に、朗読を中心とした授業が行われた。
全員で行う朗読だけでなく、映画の中で酔っぱらった田中邦衛さんが語るセリフとか、歌舞伎の弁天小僧菊之助のセリフなどは、一人ずつがユーモアたっぷりに発声する。
先生のギターにあわせ、卒業生が書き残した言葉を歌詞に使った歌をみんなで大きな声で歌う。
授業の一部には、眼の焦点を合わせる訓練を取り入れている。
通常の視力検査では判明しにくいのだが、眼の焦点を合わせるのに時間と苦痛を伴う子もおり、ノートと黒板を行ったり来たりするのを苦にして通常の授業についていけなくなる子がいるそうだ。
眼から入る情報をうまく認識できないデスレクシア(識字障害)を持つ子もいる。
このため、この学園では、眼科医や心理士による検査も行っているという。
先生方も“闘い”だ。
考え抜かれた授業内容を、子どもたちの注意を惹きつけ続けながら、テンポよく進めていく。
長い説明や叱り飛ばすだけの指導では、クラスがあっと言う間にバラバラになり、収拾がつかなくなってしまうそうだ。
先生たちの人並み外れた努力、卓越したスキルがなければとても乗り切ることができないだろう。
授業で明るくふるまっていた子どもたち一人々々には、翔和学園に来るに至るまで、語るのもつらい過去の人生があるという。
並外れた努力の甲斐あって、年度終盤には子どもたちはかなり落ち着き、まとまっているが、年度初めはみんな勝手バラバラで、先生たちは「傷だらけになりながらやっている」そうである。
======================
翔和学園は、発達障害を抱えていたり、人間関係やコミュニケーションに不安のある18歳以上の若者の社会的自立を目指すための学校として、94年に設立された。
設立当初は、福祉やコンピュータのコースなど、主に就労から自立に向けた技術的支援中心のカリキュラムを実践してきたが、活動を続ける中で、ここに来る学生たちにとって必要なことは、自立支援よりもまず、日常の基本的な生活力を身につけることだと強く認識するに至った。
そこで02年、養護学校や職業訓練校、専門学校とは一線を画し、「社会性を学び、集団の中で生きる力を身につける」という目的を第一に掲げ、実践する学園に生まれ変わり、その後、小中高生に対象を広げ、一貫した特別支援教育の実現を目指して活動中である。
【翔和学園パンフレットより】
======================
通常、学校で勉強するのは、社会を生きる基礎となる知識・素養を身につけるためであるが、実際に就労した際に求められるのは、計算力や読解力以上に、まず社会性である。
このため、発達障害などを抱える子どもたちが社会生活を送るうえで重要なのは、学力や技術よりもコミュニケーション能力と考えられ、翔和学園では、就労を意識した教育を行っているのである。
発達障害は、「発達でこぼこ」と表現する方もいるそうで、他の障害と異なり、能力を発揮できる分野とそうでない分野のバラつきがある。
しかし、周囲の無理解によって、適切な対応や指導を受けない子が、知的障害になっていくケースもあるという。
翔和学園は、学校法人でなくNPO法人なので、行政制度上の財政支援もなく、授業料は年間100〜150万円かかる。
通常の学校と異なり、学割もない。
それでも、山梨や茨城から数時間もかけて通学する子たちがいるそうだ。
16人の職員の給与水準は、通常の学校教員よりも低く、駅前の家賃負担も馬鹿にならない。
NPOには、社会的ニーズがあっても行政制度の対象になっていないサービスの必要性に気づき、こうした公益的な事業を自ら実施するという重要な役割がある。
こうしたサービスは、法で定める線引きの中に入ってこないものがあり、財政支援がなかなか得られないものもある。
しかし、こうした役割を“個人の想いで勝手にやっている私的領域”と片づけてしまうことには、大きな疑問がある。
社会的価値の高いNPO活動が、正しく評価され、社会に包摂されるための資金循環の仕組みが必要である。
これは、あらゆる立場に立たされた人々が、社会から温かく包まれ、支え合って生きていくことと同義だと思う。
困難に向き合い、様々なハードルを克服するために尽力されている翔和学園の取り組みに今後も注目していきたい。
東京メトロ・丸の内線の中野坂上駅を出ると、目の前にあるビルの2階フロアで、約100人の教育的支援にあたっている。
駅に降り立つと、学校の前で、登校してくる先生や生徒を待ち構えて「○○先生、おはようございます!」と声をかけてくる生徒がいたりして、一見して少し違う雰囲気である。
伊藤寛晃先生らのご案内により、朝9時20分から教室で始まる活動を見てビックリ!
小中学生のクラスでは、先生のリードのもと、大きな声で歌いながら、みんなで手をつなぎ、踊る。見学していた私も、子どもたちからのお誘いで、輪の中に入って踊った。
ひとしきり大騒ぎした後は、文章をトレーシングペーパーで書き取る練習。
さっきまでの騒ぎが嘘のように、教室はシ〜ンと静まり、子どもたちは作業に集中する。
高等部では、「走れメロス」「方丈記」「平家物語」などから抜粋されたタテ書き数行の文章が、スマートボード(電子黒板)に映し出されるのに合わせ、大きな声で朗読。
先生は、間髪を置かず、テンポ良く短い指示を出す。
中学時代はいじめられたり、教室でネグレクトされて声も出せなかった子たちが、はっきりと大きな声を発する。
大学部では、伊藤先生を中心に、朗読を中心とした授業が行われた。
全員で行う朗読だけでなく、映画の中で酔っぱらった田中邦衛さんが語るセリフとか、歌舞伎の弁天小僧菊之助のセリフなどは、一人ずつがユーモアたっぷりに発声する。
先生のギターにあわせ、卒業生が書き残した言葉を歌詞に使った歌をみんなで大きな声で歌う。
授業の一部には、眼の焦点を合わせる訓練を取り入れている。
通常の視力検査では判明しにくいのだが、眼の焦点を合わせるのに時間と苦痛を伴う子もおり、ノートと黒板を行ったり来たりするのを苦にして通常の授業についていけなくなる子がいるそうだ。
眼から入る情報をうまく認識できないデスレクシア(識字障害)を持つ子もいる。
このため、この学園では、眼科医や心理士による検査も行っているという。
先生方も“闘い”だ。
考え抜かれた授業内容を、子どもたちの注意を惹きつけ続けながら、テンポよく進めていく。
長い説明や叱り飛ばすだけの指導では、クラスがあっと言う間にバラバラになり、収拾がつかなくなってしまうそうだ。
先生たちの人並み外れた努力、卓越したスキルがなければとても乗り切ることができないだろう。
授業で明るくふるまっていた子どもたち一人々々には、翔和学園に来るに至るまで、語るのもつらい過去の人生があるという。
並外れた努力の甲斐あって、年度終盤には子どもたちはかなり落ち着き、まとまっているが、年度初めはみんな勝手バラバラで、先生たちは「傷だらけになりながらやっている」そうである。
======================
翔和学園は、発達障害を抱えていたり、人間関係やコミュニケーションに不安のある18歳以上の若者の社会的自立を目指すための学校として、94年に設立された。
設立当初は、福祉やコンピュータのコースなど、主に就労から自立に向けた技術的支援中心のカリキュラムを実践してきたが、活動を続ける中で、ここに来る学生たちにとって必要なことは、自立支援よりもまず、日常の基本的な生活力を身につけることだと強く認識するに至った。
そこで02年、養護学校や職業訓練校、専門学校とは一線を画し、「社会性を学び、集団の中で生きる力を身につける」という目的を第一に掲げ、実践する学園に生まれ変わり、その後、小中高生に対象を広げ、一貫した特別支援教育の実現を目指して活動中である。
【翔和学園パンフレットより】
======================
通常、学校で勉強するのは、社会を生きる基礎となる知識・素養を身につけるためであるが、実際に就労した際に求められるのは、計算力や読解力以上に、まず社会性である。
このため、発達障害などを抱える子どもたちが社会生活を送るうえで重要なのは、学力や技術よりもコミュニケーション能力と考えられ、翔和学園では、就労を意識した教育を行っているのである。
発達障害は、「発達でこぼこ」と表現する方もいるそうで、他の障害と異なり、能力を発揮できる分野とそうでない分野のバラつきがある。
しかし、周囲の無理解によって、適切な対応や指導を受けない子が、知的障害になっていくケースもあるという。
翔和学園は、学校法人でなくNPO法人なので、行政制度上の財政支援もなく、授業料は年間100〜150万円かかる。
通常の学校と異なり、学割もない。
それでも、山梨や茨城から数時間もかけて通学する子たちがいるそうだ。
16人の職員の給与水準は、通常の学校教員よりも低く、駅前の家賃負担も馬鹿にならない。
NPOには、社会的ニーズがあっても行政制度の対象になっていないサービスの必要性に気づき、こうした公益的な事業を自ら実施するという重要な役割がある。
こうしたサービスは、法で定める線引きの中に入ってこないものがあり、財政支援がなかなか得られないものもある。
しかし、こうした役割を“個人の想いで勝手にやっている私的領域”と片づけてしまうことには、大きな疑問がある。
社会的価値の高いNPO活動が、正しく評価され、社会に包摂されるための資金循環の仕組みが必要である。
これは、あらゆる立場に立たされた人々が、社会から温かく包まれ、支え合って生きていくことと同義だと思う。
困難に向き合い、様々なハードルを克服するために尽力されている翔和学園の取り組みに今後も注目していきたい。
2010年03月03日
ポイントは、誰のもの?
第5回「地域力おっはー!クラブ」は、八重洲にある鹿児島銀行東京事務所で行われ、70〜80人集まった。(鹿児島銀行さん、ご協力ありがとうございました!)
みんなで「おっはー!」とスタートし、女声アカペラカルテットXUXU(しゅしゅ)が「地域力おっはー!クラブの歌」を歌ってくれた。
今回は、歌詞中の「(みんなで♪)おっはー!」の部分を、みんなで声を合わせて歌ってみた。なかなか良い盛り上がりである。
ちなみにXUXUは、「題名のない音楽会」に3月14日(日)午前9時〜出演するそうだ。必見である!
さて、今回のゲストスピーカーは、株式会社サイモンズの斉川満社長。
サイモンズは、ポイントカードの発行・管理をしているベンチャー会社だ。
ポイントカードを加盟店で提示すると、100円の買い物につき1ポイント(=1円)たまる。
それだけなら良くある仕組みと同じだが、サイモンズカードの特徴は、1〜2年の有効期限が切れて失効したポイントを地域活性化や社会貢献活動を行うNPOなどに寄付する仕組みになっていることである。
たとえば、マロニエ基金を通じて、盲導犬育成や自然保護などの活動に毎年寄付されている。
また、avexの社員や東京農大(網走キャンパス)の学生など、利用者側がグループをつくって、グループ会員共通のポイントカードをつくるケースもあるそうだ。
現在、世の中に出回っているポイントの発行総額は8000億円以上と言われ、その4割が失効するとの試算もある。
失効ポイント分は、そのまま企業の収益になるのである。
客が使うはずだったポイントならば、失効分を地域社会に還元することができないものか・・・?
斉川さんは、もともとJALでマイレージカード事業に携われた方でありながら、大企業でのポイントの運用のあり方に疑問や限界を感じ、自らの想いで理想的な仕組みを社会に根付かせたいとお考えになったそうである。
もちろん、ハードルはある。
発行企業は、財務上、客に付与したポイント金額を引当金を積むべきところであるが、実際にはポイントの失効を見越して、全額引当を計上しないことが多いそうである。
失効分が全部使われることになれば、当然企業の負担は増えることになる。
しかし、地域活性化は、多くの国民(消費者)の願いである。
いろいろな形で、気軽に着実に地域社会に貢献できる資金循環の仕組みが定着することを期待したい。
次回のおっはー!クラブは、3月10日(水)8時から日本財団会議室にて開催される。
ゲストスピーカーは、みやざきわけもんフォーラム副代表の崎田恭平さん。
崎田さんは、宮崎県庁から厚労省に出向されていて、実名ブログも書いていらっしゃる30歳の若手職員である。
当たり前だが、今の30歳の人は、10年後に40歳、20年後に50歳、社会の中核になっていくのであるから、将来を展望し、若い人たちの動向や考え方に着目し、みんなで応援することは、きわめて重要なことである。
多くの皆さんにご参加いただきたい。
みんなで「おっはー!」とスタートし、女声アカペラカルテットXUXU(しゅしゅ)が「地域力おっはー!クラブの歌」を歌ってくれた。
今回は、歌詞中の「(みんなで♪)おっはー!」の部分を、みんなで声を合わせて歌ってみた。なかなか良い盛り上がりである。
ちなみにXUXUは、「題名のない音楽会」に3月14日(日)午前9時〜出演するそうだ。必見である!
さて、今回のゲストスピーカーは、株式会社サイモンズの斉川満社長。
サイモンズは、ポイントカードの発行・管理をしているベンチャー会社だ。
ポイントカードを加盟店で提示すると、100円の買い物につき1ポイント(=1円)たまる。
それだけなら良くある仕組みと同じだが、サイモンズカードの特徴は、1〜2年の有効期限が切れて失効したポイントを地域活性化や社会貢献活動を行うNPOなどに寄付する仕組みになっていることである。
たとえば、マロニエ基金を通じて、盲導犬育成や自然保護などの活動に毎年寄付されている。
また、avexの社員や東京農大(網走キャンパス)の学生など、利用者側がグループをつくって、グループ会員共通のポイントカードをつくるケースもあるそうだ。
現在、世の中に出回っているポイントの発行総額は8000億円以上と言われ、その4割が失効するとの試算もある。
失効ポイント分は、そのまま企業の収益になるのである。
客が使うはずだったポイントならば、失効分を地域社会に還元することができないものか・・・?
斉川さんは、もともとJALでマイレージカード事業に携われた方でありながら、大企業でのポイントの運用のあり方に疑問や限界を感じ、自らの想いで理想的な仕組みを社会に根付かせたいとお考えになったそうである。
もちろん、ハードルはある。
発行企業は、財務上、客に付与したポイント金額を引当金を積むべきところであるが、実際にはポイントの失効を見越して、全額引当を計上しないことが多いそうである。
失効分が全部使われることになれば、当然企業の負担は増えることになる。
しかし、地域活性化は、多くの国民(消費者)の願いである。
いろいろな形で、気軽に着実に地域社会に貢献できる資金循環の仕組みが定着することを期待したい。
次回のおっはー!クラブは、3月10日(水)8時から日本財団会議室にて開催される。
ゲストスピーカーは、みやざきわけもんフォーラム副代表の崎田恭平さん。
崎田さんは、宮崎県庁から厚労省に出向されていて、実名ブログも書いていらっしゃる30歳の若手職員である。
当たり前だが、今の30歳の人は、10年後に40歳、20年後に50歳、社会の中核になっていくのであるから、将来を展望し、若い人たちの動向や考え方に着目し、みんなで応援することは、きわめて重要なことである。
多くの皆さんにご参加いただきたい。