2022年03月06日

3つの波
















【しきち】
インド全国の新規感染者数の推移。最初のなだらかな山が第一波、次の高い山が第二波、最後のシャープな山が第三波である。

2020年3月末、モディ首相のスピーチでインドは厳しいロックダウンを行った。団地内のウォーキングも制限され、街からは車や通行人が消えた。一人でも感染者が出ると、バリケードが作られた。

2021年の第二波(デルタ株)では、職場では20人中5人ほどが感染した。多くが医療機関で診療を受け、味覚や呼吸に不自由を感じた者もいた。親世代のため、酸素ボンベを探し回った人もいた。取引先では社員が亡くなったというケースも珍しくはなかった。悲壮感が漂う中、業務に支障が出ないように必死で職場での集団感染を避けて引きこもった。遺書までは書かなかったが、しきちは自分の意識が朦朧とした時のために医療機関の電話番号を冷蔵庫に貼りつけ、家族の連絡先を親しい友人や上司に共有した。

2022年1月の第三波(オミクロン株)は、急激かつ広範囲な感染拡大だった。職場では在宅勤務を続けているメンバーを中心に、再び5人が感染した。同僚の一人が語る。「妻と両親が感染したから、生活スペースを分けて子供たちとオレは感染しないように気を付けてた。2週間で回復したから、家の大掃除をしたんだ。そしたら感染しちまった」。みんな同居家族と共に感染した。しかし、入院した者は一人もいない。キットや在宅PCR検査で陽性が判明した社員の誰もが、自宅療養して平均2週間で在宅勤務を復活した。当地の在住日本人の間でも「実は陽性でした」「感染しましたが、治りました」で始まる挨拶が頻繁に聞かれた。

生活への影響は、1か月も厳格なロックダウンをした第一波が最も大きかった。悲壮感は第二波が最大かつ深刻だった。第三波で印象に残ったのは「スピード」だったように思う。拡大は瞬く間に広がり、潮が引くのも早かった。

2月末になって学校はすべて対面授業を再開し、カップルは延期していた結婚披露宴を競って催し、一時は厳しかったホテルやモールへの立ち入りも、厳しく陰性証明を求められることは無くなった。そろそろ、オフィスで同僚とあれこれおしゃべりしながら働きたいなあと思いつつ、通勤時間なしの在宅勤務の快適さもつくづく有難いと思う。  
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2021年12月27日

「迷惑」の呪縛

【しきち】
インド人の同僚らは、休暇を取る時にほとんど「根回し」をしない。根回しとは、例えば取引先に電話して「来週は休みます、例の件はXXに申し送りしておきました、ご迷惑をおかけします」と告知したり、社内レポートの提出期限を延ばすように交渉しておいたり、詳細な引継ぎメールを各チームメイトに送ったりということだ。

しきちは自分にお鉢が回ってきたりすると「迷惑だなあ」と不機嫌になったり、別の同僚が明らかな迷惑をこうむっていると休み明けの本人に「XYちゃんがあれやって、これやって、いろいろカバーしてくれてたよ」と告げ口したりする。しかし、本人もXYちゃんも意に介さず、どこ吹く風。

どうやらインド人は「迷惑をかける」ことについて、さほど危機感や罪悪感を持っていないようだ。休暇なんだから仕方ない、とフォローする。しきちは「休暇は権利なんだからいいじゃないか」と逆に諭されたことすらある。体調が悪ければどんなに重要な仕事が控えていても休むし、チームメイトは取引先に「すみませんXXは病欠です」と言って憚らず、取引先も「仕方ないなあ、じゃ明日でいいや」と待ってくれたりする。

日本では老人世帯が多く「子どもや孫に迷惑をかけたくない」と同居を望まない人が少なくない、と話すと「信じられない」という反応が返ってくる。年金などの社会福祉制度が充実しているから老人独居でもなんとかなるのだ、と半ばむきになって説明するのだが、根本的に「自分の老後は子どもに任せる」という考え方が主流だから話は平行線になる。

オートリクシャに乗っていて前方に車線が減少する箇所がある。合流地点を過ぎるまではノロノロ運転になるのだが、早めに車線変更をせずにギリギリまで直進し、合流地点で入れてもらうドライバーが大半だ。しきちが本線走行車だったら車間距離を縮めて意地でも入らせないようにするところだが、アッサリと入れてもらえている。「ここまで来てしまっているのだから仕方ない」といったところだろうか。

アッサリしていて根に持たない人々。その根本には「誰かに迷惑をかけるのは当たり前だから、他者にも寛容になる」というセオリーがあるようだ。しきちも知り合いや道行く人に親切にされたことは数え切れず、そのたびに我が身を振り返って反省する。「人に迷惑をかけてはいけない」という呪縛から逃れて寛大になりたいと思うのだが、まだまだ修行が足りない。

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写真はバンガロール市内、カマナハリの路上にて。歩道を半分以上ブロックしてクリスマス飾りを売っていた。  
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2021年12月18日

一時帰国・その3

【しきち】
今年の春ごろから、両親のもとに「お使いの携帯電話が使えなくなります」という知らせが頻繁に入るようになった。ハガキや電話、メールなどで何度も繰り返し通知されるという。

使っているのはいわゆる「ガラケー」で、使用している3Gサービスへの電波供給が来年、終了するらしい。

夏には「スマホに移行するわ。友達が皆さんLINEとかいうのを使っているの。連絡が取りやすくなるから」と決めた母に感心しつつ、しきちはスマホを一緒に買いに行くことを約束した。姉は契約を一手に引き受けてくれた。父は「ほとんど使っていないから、携帯は不要かも」と言うので、別のガラケーに移ってもらうことにした。

店頭で在庫のある機種から選び、即購入。ボタンを大きくする設定をして、母への使い方指南を始める。しかしながら、使い慣れた端末をスマホに変えるのは、容易なことではないとすぐに痛感。

ボタンを押下するガラケーとは違い、スマホの画面はツルツルだ。アイコンを正確にタップしたり、文字入力をするのは至難の業。さながら、手袋をはめたままで端末を操作するような感じだ。スワイプとタップの使い分けも混乱を生む。

横についていると、つい「こうやるんだよ」と手を出してしまう。最後には手書きのマニュアルを書いて渡してきたが、インドに戻る前に空港から電話すると「全く知らない画面が出てきちゃったから、なんだか怖くて・・」と。先週は「思いつめるとストレスになるから、今はもう固定電話だけで過ごしてる」と話していた。ストレスをためないのは大賛成なのだが、母からの毎朝一言の近況メールが来なくなっており、どうにも寂しい。

そのうち本でも買って、スマホ教室にも行って、ゆっくり覚えるから・・と本人は言っていたが、姉が画面コピーを駆使した詳細マニュアルを自作し、母を訪ねて手ほどきしてくれることになった。ありがたい。

インドでは携帯の通信費が大変安価で、八百屋の見習い少年も掃除のおばさんもおしなべてスマホを使っている。農村にも普及している。「親はまだガラケーだ」と4年前に言っていた友人にきいてみたら「もう使いこなしてるよ。今やYouTube中毒で、いつも宗教動画(説法)を見てる」と。大家族だから、孫に聞きながら少しずつ覚えていったのだろう。

母からの一言メッセージが再開することを心待ちにしている。

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(写真は山歩きに出かけた帰りのカフェにて。)  
Posted by shiki_chin at 15:18Comments(0)日本

2021年12月15日

一時帰国・その2

【しきち】
14日間の自主隔離期間は、自らが感染源となるのを防ぐために、公共交通機関に乗ることはできず、人と会うこともできなかったのだが、この管理方法が面白い。検疫所がスマホアプリで、入国者の所在を確認するのである。

海外在住の方には釈迦に説法であるが、記録のためにこのアプリについて書いておく。

入国者は、成田など日本の空港に到着するとMySOSという専用アプリを各自のスマホにダウンロードする。スマホを持っていない人は自己負担でレンタルが必要だ。係官は我々一人ひとりのスマホを手に取り、すばやい指さばきで設定を確認して「はいOKです」と言う。しきちは小学生の時の「ハンカチ・爪検査」を思い出した。爪をきちんと切っているか、ハンカチを携行しているかを先生にチェックしてもらう。今思うと、先生も大変である。

アプリは一日に2回、ランダムな時刻に「いますぐボタンを押してください」と自動メッセージを送ってくる。ボタンを押すだけが1回、自分の顔と背景を15秒間ビデオ録画するのが1回。無視し続けると係官から連絡があるようで、悪質な場合には名前が公表されるらしい。しきちは小学生の時の連絡網を思い出した。電話連絡がいつあるか分からない。連絡網が回ってきた時に電話に出られなかったら、前後の人に迷惑がかかる。重大なペナルティがあるわけではないが、一刻も早く次の人に電話せねば・・と焦る。今思うと、メールやLINEが無い時代は面倒だった。

しきちはアプリの連絡を逃さないようにトイレや風呂にもスマホを持ち込んだり、業務上の電話や会議もなるべく早く切り上げたりするようになり、家族に呆れられた。14日間が無事に終了した時の心からの解放感!日本人の真面目な一面を上手にくすぐる、心憎い制度だと思う。  
Posted by shiki_chin at 01:46Comments(2)日本

2021年12月05日

一時帰国・その1

【しきち】
10月の末から、3週間ほど一時帰国していた。2年半ぶりの日本である。いうまでもなく、新型コロナ感染拡大で、国境を越えた往来を控えていたのであるが、日印双方ともに落ち着いたタイミングをとらえることができた。

これを書いている2021年12月現在は、変異型ウイルスのオミクロン株の出現で、検疫の規制も強化されているが、10月当時は「有効なワクチン接種証明の提示」をもって、インドからの入国者にも宿泊施設での隔離が免除されていた。ただし、しきちのワクチン証明は残念ながら有効ではなかったため、ホテルでの隔離をすることになった。

写真は隔離施設となった首都圏のホテルに到着し、バスの中から撮影したもの。土曜の夜だったが、ホテルのスタッフが整列してバスに向かっておじぎしてくれ、車内のしきちは深く頭を下げた。スタッフは駆け足で持ち場へと移動し、我々宿泊者はホテルロビーで一人ずつ説明を聞いた。しきちは再び深く頭を下げ「本当にお疲れ様です、お世話になります」と心から言った。

しきちがホテルに滞在したのは3日間。部屋のお風呂に肩までつかったり、配られるお弁当に一人ではしゃいだり、ソファやベッドを駆使して運動したり、そしてテレワークをしたり。快適そのものであり、感謝しかない。

4日目に空港で解散した後はあらかじめ届け出た居場所(自宅など)への移動だ。入国後14日間の自主隔離期間は、自らが感染源となるのを防ぐために、公共交通機関に乗ることはできない。人と会うのもいけない。このため空港までしきち姉がレンタカーで迎えに来てくれた。これまた、感謝しかない。

かくして14日間は実家にこもって過ごしたが、両親とゆっくり過ごしたのは何ものにも代えがたく、ずっと懸案だった私物も、姉の助けもあり大いに片づけることができた。

しきちの密かな自慢は、隔離のホテルで毎日3食配られるお弁当を、お米の一粒に至るまで残さなかったことである。食べきれなかったご飯はラップに包んで冷凍し、自宅に移動してからおいしく食べたのであった。  
Posted by shiki_chin at 22:26Comments(0)日本

2021年09月05日

停電・その3

【しきち】
アパート主導の計画停電はアプリで告知されるものの、それ以外にも停電はある。なぜか今年は去年よりもずっと停電が多い。

アパートには大型の発電機が備えられており、エレベータや共用廊下、集会所などには停電があっても発電機の電気が供給される。マンションによっては各戸にも電気が配給されるようだが、しきちのアパートにはそのサービスはなく、住民はそれぞれ家庭用の非常電源を購入して使うようである。

携帯電話の電池がなくなってしまったしきちは、発電機のある管理棟に赴いて電源を借りたことがあった。その際「ここにノートパソコンを持ち込んで仕事ができるな」とひらめいた。それ以来、停電してインターネットが使えなくなるとリュックにパソコンと携帯電話を入れて管理棟に行くようになった。

管理棟の発電機ルームには電気技師と水道技師が常駐している。写真の後ろ姿は、しきちのパソコン(右端)用に延長コードを設置してくれている電気技師。ちょっとコンセントを貸してくれと言って座り込んだ図々しい住民に「そこのテーブル使っていいよ」とオファーするばかりか、こんな気遣いまで。ありがたい。

ここを使う大きなメリットは、復旧したら即座に帰宅できることだ。デメリットは、停電中はディーゼルの発電機が稼働しているのでモーター音が大きいこと。電話の際はこの部屋の外に出ないと会話にならない。外に出るとマスクをしていても日焼けするので、日焼け止めと帽子が欠かせない。

1時半になると技師たちは昼食を取る。持参したお弁当を広げるのである。しきちは自宅でランチを済ませているのだが、同じテーブルの端を使わせてもらっているので、邪魔をして申し訳ない気分になる。そして、チラリと横目で、おいしそうなお弁当を盗み見るのである。
  
Posted by shiki_chin at 01:14Comments(2)インド

2021年08月22日

停電・その2

【しきち】
猫のエサやりについて活発な議論が行われた住民用掲示板アプリで、半日の停電が予告されていたある日。しきちはリュックにノートパソコンを入れて、最寄りのモールの中のカフェを訪れていた。スターバックスコーヒーだ。2012年にタタ財閥との合弁でインド進出してから着々と店舗数を増やしてきた。バンガロールには、27軒ものスターバックスコーヒー店がある。

停電の日に在宅勤務で最も困るのは、インターネットの接続だ。ノートパソコンの電池は1日もつのだが、Wi-Fiのルーター(室内のアンテナのような受信機)はコンセントに差し込んでいないと使えない。携帯電話のネットワークを使う手もあるが、携帯の電池が急速に消耗してしまい、連続使用は2時間程度しかもたない。

7月初めまでは数か月間休業していたモールには、意外なほど人が戻っていた。平日のお昼なのに、スターバックスも盛況でほとんど空席がないほど。幸い、電源が2つ使える壁際の席が確保できた。一杯500円以上とためらってしまうお値段のコーヒーも、数時間居座る体制で来ている身には惜しくはない。失敗としてはイヤホンを忘れてしまったので、ネット会議で難儀したことだ。電話がかかってくると席をはずして店の外に出ることを繰り返した。

快適に業務が進んでよかったが、家を出てから着席してログインするまでに約40分ほどかかることを考えると、業務が立て込んでいる時には難しい。また、オートリクシャを見つける手間もかかる。リクシャ用に小額紙幣を用意しておく必要もある。

久々の外出に心が踊った。同僚らにも「今日はカフェ勤務だよ」と自慢したのであった。
  
Posted by shiki_chin at 21:58Comments(0)インド

2021年08月15日

カリカリ中毒

【しきち】
1週間に一袋のペースでゆっくり食べようと思っていたインドの柿の種、「カリカリ」。そんな作戦は、しきちの食い意地の前には無力であった。目に付かないよう、クローゼットに隠したのも無意味であった。

特に昼食や夕食の後に食べたくなり、クローゼットに直行する。一度開けたら3分の2を食べ尽くし、翌日には完食必至である。

在庫を食べ尽くした現在は落ち着いているものの、もしもこの商品を近所の商店が販売し始めたら・・と考えると自分でも怖い。

本日はインドの独立記念日。8月に入ると交差点に停車する車をめがけて、路上販売者が国旗グッズを売るようになる。そんな風物詩も、外出しない今年は見ることもなかった。大きな企業のオフィスは在宅勤務を続けており、学校も原則的にオンライン授業の体制だが、感染が落ち着いたバンガロールでは車の往来も増え、繁華街には人が溢れているそうだ。ワクチン不足はほぼ解消し、しきちの住む団地では4度目の集団接種が行われていた。

カリカリの集中消費のためか、ちょっと部屋着のウエストがきつくなったようだ。一方、この記事を書いていたら無性にまた食べたくなってきた。ネットスーパーで買おうか買うまいか、迷うばかりである。
  
Posted by shiki_chin at 22:14Comments(2)インド

2021年07月17日

インドで米菓

【しきち】
姉から「インドにも柿の種があるんだって?」と、メールでニュース記事が送られてきた。亀田製菓の柿の種の話である。

「もちろん食べたことあるよ!ホームパーティの手土産にしているよ」と返信したが、記事を読んだら無性に食べたくなり、いそいそとネット通販サイトから購入。

ロックダウン体制下の数か月間は配達予約が大変困難だった食料品通販サイトも、今ではすっかり元に戻り、半日で配達された。ブログ用に写真も撮りたいし、賞味期限も長いからしばらく保管しておこうと思って4袋も注文したのだが、我慢できなくなり「塩胡椒風味」を開けて少しつまんだところ、もう止まらない。夕食は取った後だったのに、袋のチャックを閉めてはまた開けて食べ始めることを繰り返し、135gの袋が半分以上空になってしまった。

しきちは幼少期からおせんべい・おかきが大好きだった。チョコレートや生クリームよりも、おせんべいだった。柿の種については、ピーナッツはいらないからもっとおかきを増やしてほしいなあと子ども心に思っていた。柿の種が世に出て今年で55年だそうだ。また、ブルボン・チーズおかきは37年とのことだが、初めて食べた時の感動は今でも覚えている。

案の定、翌日には完食してしまったKARI-KARI。写真に一緒に並べた右上の袋、空っぽである。このペースでは、あと6日間ですべて食べ終わってしまうではないか・・・。

記事にもあるが、KARI-KARIは柿の種よりも大粒で食べ応えがある。唐辛子風味やマサラ風味は少しピリッとする。日本で売っている柿の種6袋入の小袋(約30g)は、小さすぎて1つでは足りないと思っていたのだが、小袋に入っていることで食べすぎを抑制できるのかもしれないなー、と思った。

ところでインドにも米で作られた菓子はたくさんある。ポン菓子タイプや、米粉を成形して揚げたものなどさまざまだ。写真のようなミックスタイプは特に人気で、リヤカーでの路上販売では、その場でミックスしてくれる。

残りの3袋のKARI-KARIは、目につかないところにしまっておくことにしよう。
  
Posted by shiki_chin at 14:12Comments(2)インド

2021年07月10日

停電

【しきち】
バンガロール市および近郊では、停電は珍しくない。

日中に発生する地区ごとの計画停電は、たいてい2〜3時間で復旧する。電力公社のツイッターで「現在○○地区が停電中です。復旧は12時半の予定です」などと教えてくれる。

雨が降った後にも、しばしば停電する。感電事故を未然に防ぐものと聞いたことがある。15分で復旧することもあれば、1時間以上続くこともある。夜だと真っ暗な中、諦めて就寝してしまうこともある。

工場やオフィス、大規模な集合住宅はディーゼル自家発電機を備えていて、停電時は自動的に自家発電機に切り替えることで対応している。しきちのアパートにも発電機はあるのだが、各戸への供給ではなくエレベータや共有スペースの照明のみをまかなっている。家庭用の発電機を備えている人もいるが、しきちを含む多くは充電式電気スタンド程度しか持たない。在宅勤務用に、勤務先からパソコンと並んでUPS(無停電電源装置)を貸与してもらい、インターネット用のルーターに使っている。

朝10時ごろに電気が来なくなったのはある月曜のことだった。すぐ復旧するだろうと、ノートパソコン内蔵バッテリーとUPSでしのいでいたが、お昼になっても停電している。電力公社のツイッターにも情報がない。焦ったしきちは、団地内の発電機ルームに様子を見に行った。中には小さな作業机があり、技師が数人いる。聞くと「4時半まで停電だよ」と。やむなく同僚らに、停電のため夕方まで働けない旨を連絡した。

その週の木曜。気づいたらまた朝から停電である。忙しかったので電力を節約するのも忘れており、11時ごろにはUPSが充電切れに。聞きに行くと「5時まで停電」という。この時点でようやく団地のインフラ工事のための計画停電だと知った。急遽、勤務先に頼み込んでフル充電したUPSを届けてもらったのだが、来るまでの2時間は頭を抱えたまま家の中をウロウロ歩くばかり。カフェなどで仕事をしようにも、ロックダウン中で持ち帰りのみの営業なのも痛かった。

そして翌火曜。今回は事前に計画停電だと知っていたので、早起きしてUPS2個と携帯電話をフル充電し、パソコンは省電力モードに。停電になるとUPSを1つずつ使用し、電池が切れると発電機ルームに持ち込んで充電してもらった。最初は「5時だよ」と追い返されそうになったが、しきちの意図を察すると「そこのコンセント使っていいよ」と。2往復したら夕方になり電気が復旧した。

アパートの管理室によると、インフラ工事は無事に終了し、日中の一斉停電も以後は無いとのこと。在宅勤務の中、電気への依存を思い知った。住民は落ち着いて備えていたようで、騒いでいる様子は全くなかった。アパート住民用掲示板をまめにチェックすることの大切さが教訓に残った出来事であった。
  
Posted by shiki_chin at 16:39Comments(0)インド