2019年06月17日

コンテナによる船舶のグローバリゼーション

海の歴史
ジャック・アタリ
プレジデント社
2018-09-27



先週、ホルムズ海峡で攻撃を受けた日本企業のタンカー「KOKUKA COURAGEOUS」はパナマ船籍で、乗員21人は全員フィリピン人だった。

かように、海運の「国際化」は進んでいる。2017年、世界では140万人の労働者が商船で働いていて、445千人の士官、648千人の下級船員がいるそうだ。士官も下級船員も、またその中で明確に階級が決められていて、この点は軍隊同様。指揮命令系統がはっきりしてないと、大きな船をチームで動かせない。

船員の出身国上位5か国は以下の通り。日本の船はフィリピン人船員を使うことが多いようだ。
|羚顱141,807人
▲肇襯魁87,743人
フィリピン 81,180人
ぅぅ鵐疋優轡◆77,727人
ゥ蹈轡◆65,000人

外航日本人船員数は、ピーク時の57千人(昭和47)から2千人余りにまで減少している。各地で商船学校が閉鎖されるわけだ。

労働時間



















第六章 コンテナによる船舶のグローバリゼーション(1945-2017)

219:コンテナの普及
コンテナが普及したのはベトナム戦争がきっかけだった。コンテナはベトナム戦争時に、カリフォルニア州とワシントン州からベトナムまで、武器や軍需品を輸送するために利用されたのである。海運会社は帰路に競争力を持ち始めた日本製品をアメリカに運ぶことによって収益を確保した。

221:ますます栄える海上貿易
コンテナのおかげで海上の貿易量は、1970年の26億トン、2000年の60億トン、2017年の110億トンと増加の一途をたどった。

224:2017年世界の上位5港
‐絣ぁ3650万TEU
▲轡鵐ポール 3100万TEU
深圳 2400万TEU
で波 2060万TEU
ス畊繊2000万TEU

227:海で働くのはアジア人
2017年、世界では140万人の労働者が商船で働いている。445Kの士官、648Kの下級船員。

230:2017年263本の海底ケーブル、全長100万km
13本は大西洋を横断〜所有するのはアメリカ
これからはモノではなく情報の輸送が富の源泉になると他国に先駆けて悟った。

231:資源開発の場
海底油田での石油生産量は全生産量の30%(水深2000m+)
天然ガスの全生産量の27%は海上ガス田

233:娯楽用船舶建造ではフランスが世界第2位(欧州1位)
プレジャーボート→ベネトウ社
電子海図作成→マックス・シー社

235:違法な貿易
密輸組織は、コンテナ船、改造された漁船、高速モーターボート、自爆装置付きの半潜水艦(とくに東太平洋)など、あらゆる種類の船を利用する。さらに、コンテナに錆びついた南京錠を取り付ければ、密輸組織は合法的なコンテナのなかに大量の麻薬を忍び込ませることができる。このようにして麻薬は、世界中の7000カ所の港にいとも簡単に運び込まれている。透視スキャナー装置を配備している港であっても、検査の実施率は貨物全体の5%から10%にすぎない。

240:国連海洋法条約(UNCLOS)
領海 基線から12海里(22km)
接続水域(領海を含め基線から24海里)→海底面および海底下にある天然資源の探査、開発、保全、管理を目的とする管轄権
排他的経済水域(EEZ)基線から200海里→沿岸国の漁業および大陸棚の海底開発の水域
公海(海全体の64%)→人類全員のもの



shikoku88 at 20:26コメント(0)経済 

2019年06月16日

幻の鉄道ガソリンカー



高松に「ガソリン道」と呼ばれる道路があることは以前書いた。かつて仏生山から塩江温泉まで片道16kmを40分かけて走っていた塩江温泉鉄道。昭和4年に開通して、昭和13年ガソリンの入手が困難になって廃止されるまでわずか11年余りの話だ。

昨日、大雨のため、母が予約していた香川近代史研究会に車で送っていき、せっかくだからとそのまま参加して聞いたのが、ここを走っていたガソリンカー復元プロジェクトの話だった。長年行方不明になっていたガソリンカーの設計図。これを鉄道博物館(埼玉)で見つけたのが香川高専2年の前田和樹さん。製造元の川崎重工に確認して間違いないことを確かめた。

この設計図を基に、3Dプリンタで模型を製作。次は、動く模型を作りたいという。クラウドファンディング向きだ。

shikoku88 at 22:09コメント(0)史跡・公園美術館・博物館 

2019年06月15日

塩の道



北方『水滸伝』もだいぶ進んで16冊目。梁山泊軍は20万人の宋軍の大攻勢を辛くもしのぎ、犠牲者は多かったものの、戦後それを上回る志願者が集まっている。

5万人規模になった梁山泊軍を支えているのは「塩の道」だ。古くからの同志である魯俊義によって周到に張り巡らせられた「塩の道」は、本来、国の専売である塩の闇ルートだ。専売であるから価格統制されており、儲かる。昨今の反政府勢力は石油やダイヤモンド、あるいは麻薬流通を押さえて活動資金を確保することが多いようだが、昔は塩がそれだけ貴重だったということだろう。

今では高血圧になると言われ、減塩がはやりだが、肉体労働が中心だった人類史の中で、塩は必需品だ。給与のsalaryは、塩のsaltから来ているというのは有名な話(古代ローマ軍が塩を給与として配ったことに由来)。今でも熱中症対策には塩分補給が必要なことは言うまでもない。

瀬戸内海岸で金持ちと言えば、昔は製塩業だった。江戸時代には讃岐、伊予、備前、備後、備中など瀬戸内十州塩田での塩の生産量は全国の80%を占めた戦後、イオン交換膜法が発明され、製塩は工場でできるようになり、価格も下がった。これにより、瀬戸内海沿岸に広がっていた塩田風景も消えた。

Klab










(かつての流下式塩田風景)

327:梁山泊を相手に長年死闘を続けた青蓮寺トップの袁明が致死軍トップの公孫勝に
「いい国を目指せ、公孫勝。梁山泊が、そうやって闘えば、宋もまたいい国になる」

364:塩と鉄は、宋では権力者のもの
「塩は手に入れる道を作った。やがて女真の地にも、梁山泊からの塩の道ができるはずだ。しかし、鉄は大量に手に入れられない。鉄を含んだ石を集めるか、砂鉄を集めるしかない」

382:人の考えには、礎石のようなものが要る(袁明)


shikoku88 at 17:39コメント(0)史跡・公園 

2019年06月14日

海は死ぬのか?

海の歴史
ジャック・アタリ
プレジデント社
2018-09-27


古生物学者らはこれまでに起きた5回の大量絶滅を特定している。4億4300万年前のオルドビス紀の終わり頃、推定86%の海洋生物が地球上から姿を消した。3億6000万年前のデボン紀の終わりには全生物の75%が絶滅した。2億5000万年前のペルム紀の終わりには史上最大の絶滅が起き、生物の96%が消えた。

2億100万年前の三畳紀の終わりには全生物の80%が姿を消した。最も有名な大量絶滅は6500万年前の白亜紀の終わりに発生した。このときは恐竜やアンモナイトを含む76%の生物が死に絶えた。他にも1万年前の、更新世の氷河期の終わりに起きたメガファウナ(巨大動物)の絶滅などもある。(Forbes「地球を襲った5回の『大量絶滅』と人類の未来への警告」写真も)

これまでの大量絶滅は全て、火山噴火や大隕石の衝突など自然災害によって起こった気候変動で起こっている。しかし、このまま海の変調が続けば、人類の行動が原因の初めての大量絶滅が起こりそうだ。すでに、マグロなど大型魚類の個体数は90%減っている。

2016年にヨーロッパで行われた調査では、プラスチックを飲み込んだ海洋生物種は
575種と2005年調査の倍になったという。ヨーロッパで消費される魚の28%、牡蠣とムール貝の1/3にはプラスチックが含まれている。ヨーロッパ人は大好きな牡蠣やムール貝を食べることで、毎年平均11,000個のプラスチック微粒子を飲み込んでいる

ヨーロッパがそんな状況なら、アジアはどうなのか 海に漂うプラスチックの2/3は、中国を流れる7つの大河から流れ着いたものと推定されており、その多くは、東シナ海から太平洋にまで広がっている。

Forbes



































第十一章 未来:海は死ぬのか?

334:海が変調をきたせば、6回目の大量絶滅が起きるだろう。自然が引き起こしたそれまでの大量絶滅とは異なり、今回は特定の生物「人類」の行動が原因だ。

336:飲料水不足
世界の年間一人当たりの飲料用の水資源量は、1950年の16,800屬ら2017年の7,400屬砲泙埜困辰拭すでに27億人の人々が、年に少なくとも一か月は水不足の状態で暮らしている。

339:枯渇が予想される海砂
今日、砂の世界最大の輸入国はシンガポール。人工島を量産するのに大量の砂が必要。
中国の2011-2013年にかけての砂の消費量は、アメリカの20世紀全体の消費量よりも多い。
フランスは自国の建設需要を賄うために、毎年4億5千tの骨材を消費する。

340:多くの海洋生物種はすでに絶滅寸前
大型魚類(マグロ、サメ、タラ、オヒョウ)の個体数はすでに90%減った。海洋脊椎動物の24-40%はまもなく絶滅。

344:海に漂うプラスチックの2/3は、中国を流れる7つの大河から流れ着いたもの
毎年2000万tのゴミが海や湖に捨てられる。半分近くがプラスチックごみ。

345:2016年調査
プラスチックを飲み込んだ海洋生物種は575種〜2005年調査の2倍
ヨーロッパで消費される魚の28%、そして牡蠣とムール貝の1/3にはプラスチックが含まれている。ヨーロッパ人はムール貝や牡蠣を食べることで、毎年平均11,000個のプラスチック微粒子を飲み込んでいる。

354:1970年から2012年にかけて海洋生物種の個体数は半減(WWF)
600種類の魚類と甲殻類の30%が絶滅寸前。
陸上で一世紀間に絶滅した脊椎動物は200種類。


shikoku88 at 20:07コメント(0)提言 

2019年06月13日

海の地政学

海の歴史
ジャック・アタリ
プレジデント社
2018-09-27


国内でなんでも賄える大国であるが故、長らく海上貿易を断ち、鎖国していた中国。19世紀に西欧列強の軍事力に圧倒されてからは、海軍力の強化を図る。

冷戦後の1993年には大陸弾道ミサイルを発射できる初の原子力潜水艦を進水させた。現在の中国海軍は183隻の戦艦を保有し、攻撃型潜水艦の保有数では世界一にまでなっている。2013年から2017年までだけで80隻の軍艦を建造しており、増強に拍車がかかっている。

今週、ウクライナから買った中国初の空母「遼寧」が沖縄本島と宮古島の間を通って東シナ海から太平洋に抜けた。2020年には、中国初の国産航空母艦が就役する予定だ。2030年までに中国艦隊は415隻の戦艦を保有し、少なくともアメリカ海軍と同規模になると予想されている。

遼寧








































第十章 将来:海の地政学

314:ソ連崩壊
1992年、ソビエト連邦は終焉を迎えた。冷戦の舞台もそれまでの戦争と同じく海上だった。その翌年、時代の変化を示す出来事として、中国が大陸弾道ミサイルを発射できる初の原子力潜水艦を進水させた。

318:紛争が起きる確率が高い水域

‘逎轡奮ぁ350万㎢)
中国の対外貿易の90%、世界の船舶の30%、海上輸送される石油の半分以上がこの水域を往来。船舶交通量は、スエズ運河の3倍、パナマ運河の5倍。漁獲量は世界全体の8%。海底には、莫大な一次産品と石油。

東シナ海(130万㎢)
世界の五大港が位置。中国の4港(寧波、上海、広州、天津)と韓国(釜山)。世界貿易量のおよそ20%がこの水域を往来。尖閣諸島は領有権問題で緊迫。北朝鮮が核戦争を開始すると恫喝。

インド洋
インドのみならず中国のほとんどの貿易船が往来。中国は、インド洋に自国船舶のための貿易拠点を多数設けた。

す罰
毎年、2万隻の船がアジアの工業製品を紅海経由でヨーロッパまで輸送。世界貿易量の20%。アメリカとフランスは、スエズ運河からジブチまでの紅海水域に艦隊を常時配備。

ゥ撻襯轡∀
スンニ派とシーア派が衝突。世界の石油埋蔵量の60%があり、世界の石油生産量の30%は、ペルシア湾から輸出される。

γ話羈
11のヨーロッパ諸国、5つのアフリカ諸国、5つのアジア諸国があり、人口42500万人以上が暮らす。

326:海底ケーブルは傍受できる。すでにアメリカ国家安全保障局(NSA)は、海底ケーブルのいくつかのアクセス・ポイントに接続して世界中の通信データの1/4を傍受。小型潜水艦を利用すれば海底ケーブルを経由するすべてのコミュニケーションおよびデータを選別しながら傍受できる。ロシアの潜水艦や哨戒艦艇は、2014年から2015年にかけて、海底ケーブル付近の巡回時間を50%増やした。


shikoku88 at 19:49コメント(0)政治 

2019年06月12日

海の経済

海の歴史
ジャック・アタリ
プレジデント社
2018-09-27


「今から2035年までに、クルーズ客船の利用者数はほぼ3倍になる見込みだ(1900万人→5400万人)」という。

私自身はクルーズ船に乗ったことがないが、世界的に裕福な退職者は増えているので、時間消費型レジャーで船の中での費用は全て込みというクルーズ船の需要が増えそうなことは想像できる。日本人乗客数は25万人とまだまだ少ない。

そこで、クルーズ専門の上場旅行会社に投資しているが、さて、どうなるか?クルーズ業界でキーになる会社はどこなのか、まだ勉強中。

KLbus



















第九章 近い将来:海の経済

285:海が未来のカギを握るのにもかかわらず、驚くべきことに、デジタル経済の大手企業や大企業家は、海よりも宇宙に夢中になっている。人類の持続的あるいは儚い利益が将来も海で生じることに、彼らはまだ気づいていないのだ。われわれは海の経済を持続的で正しい活動にするために、人類の経済活動を根本的に見直さなければならない。さもないと、人類の経済活動は崩壊するだろう。

287:今から2035年までに、クルーズ客船の利用者数はほぼ3倍になる見込みだ(1900万人→5400万人)。したがって、増加する利用者の需要を満たすために、クルーズ客船を増産する必要がある。レジャー船についても同様である。

288:北極海航路
地球温暖化の影響により、少なくとも二つの北極海経由の航路が開通。ヨーロッパ航路とアメリカ航路。スエズ運河とパナマ運河を経由するのに比べて30%短い。

306:海とかかわりを持つことなく成功し続ける国スイス
工作機械、化学、製薬、精密機械、金融サービスなど、付加価値の非常に高い製品を生み出す産業に特化。輸出の43%は空輸、輸入の20%と輸出の15%は鉄道、輸出入の10%は河川、残りは陸運。スイス国内では、16社の船舶会社が140隻以上の船舶を管理運営。


shikoku88 at 20:21コメント(0)経済 

2019年06月11日

石炭と石油をめぐる海の支配

海の歴史
ジャック・アタリ
プレジデント社
2018-09-27



近代ヨーロッパの歴史を振り返ると、それは、それまで繁栄の中心だった大陸国家を海洋国家であるイギリスが破り、大英帝国を形成していく歴史である。

1815年のウィーン会議では、ナポレオン帝国の遺産分割が協議されたが、イギリスはヨーロッパ大陸には自国領土を求めなかったという。真の権力が宿る場所を知っていたイギリスは、自分たちの帝国を拡大させるために海を支配し続けることだけに専念した。

世界の物流を変えた一大事件は、1869年のスエズ運河の開通だ。これによってヨーロッパからアジアに向かう航路が大幅に短縮された。スエズ運河を建設したのは元々駐エジプトのフランス大使だったレセップス。10年にも及ぶ難工事の末やっと開通。運河完成にはさらに2年掛かっている。

運河建設に一貫して反対していたイギリスだが、完成してみると、運河を通る船の8割がイギリス船籍だったという(Wikipedia)。既に世界一の海洋国家で、アジアに多くの植民地を持っていたのだから当然だ。

そして、事件は起こる。財政難に苦しむエジプト政府がスエズ運河運営会社の持ち株44%を売りたがっているという情報を聞きつけたイギリス政府がこれをフランスに隠れて取得したのだ。開通してから数年はスエズ運河の収益は低く、株式も安く買い取ることができた。フランスはさぞや臍を噛んだことだろう。

日露戦争ではロシアのバルチック艦隊がスエズ運河経由で日本に向かおうとするが、日本の同盟国であるイギリスがこれを拒否。艦隊は昔ながらにアフリカ大陸を回ってインド洋に出なければならなかった。このため、船の状態や水兵の体調は大幅に悪化した。イギリスがスエズ運河を押さえていなければ、日本は日露戦争に負けていたのではないかと言われる所以である。


第五章 石炭と石油をめぐる海の支配(1800-1945)

158:18世紀末、最初に海、次に陸地において、すべてが急変した。新たなエネルギー源(石炭、次に石油)や船の推進方式(外輪、次にスクリュー)により、輸送は一変し、工業化、競争、分業が推進され、ヒト、アイデア、工業製品、一次産品、農産物が大量に移動するようになった。
世界経済が急成長し始めた。産業革命が始動したのである。またしても勝者は海で決まった。勝者は、自国の文化、イデオロギー、文学を世界中に広め、軍隊をあらゆる地域に派遣した。

169:イギリスの支配
1815年のウィーン会議では、ナポレオン帝国の遺産分割が協議された。イギリスはヨーロッパ大陸には自国領土を求めなかった。真の権力が宿る場所を知っていたイギリスは、自分たちの帝国を拡大させるために海を支配し続けることだけに専念した。

185:南北戦争と潜水艦の登場
1862年、リンカーンは南軍の水域と領土を封鎖する決断をした。この作戦を実施するためには、ニューオーリンズやアラバマなど、5600kmにわたる沿岸部を支配し、ミシシッピ川を制圧しなければならなかった。そこでリンカーンはフィラデルフィアをはじめとする造船所で、多数の戦艦を製造させた。南軍も戦艦をイギリスで製造させたが、フランスは南軍に戦艦を売ることを拒否した。特筆すべきは、南軍が爆発物を搭載した魚雷艇と潜水艦「アリゲーター」号を開発したことだ。

189:最初の大運河
スエズ運河開通からわずか6年後、イギリスはフランスの隙を突いて、エジプト政府の保有するスエズ運河会社の株式を安値で買い取った。そして13年後には、コンスタンティノープルにおいて締結された、イギリスを含む多国間条約「スエズ運河の自由航行に関する条約」により、スエズ運河は国際的な地位を得た。つまり、すべての国の船舶がスエズ運河を航行できるようになったのである。

196:ロシア艦隊はバルト海を出港したが、スエズ運河の通航をイギリスが拒否
ロシアは、1453年にオスマン帝国がコンスタンティノープルを陥落させて以来の、東洋の勢力に戦争で負けたキリスト教国になった。

199:アメリカへの移民
1881年のロシアでのポグロム(ユダヤ人に対する集団的迫害行為)後のユダヤ人
1896年のトルコでの虐殺後のアルメニア人
*1815-1914 6000万人近くのヨーロッパ人がアメリカへ

201:WW1塹壕戦よりも海戦
すべての交戦国は、食糧、石炭、鋳鉄、鋼鉄、武器などを、アメリカ、アフリカ、アジアから調達しなければならず、その際、海はきわめて重要だった。

202:世界初の航空母艦
1916年3月、イギリス空軍少佐ダンニングは、イギリスの巡洋艦フリオーソの平らな甲板に着艦した。

207:WW2ドイツは農産物と鋼鉄を確実に輸入し続けるための海軍力をもたなかった
1940年4月18日スウェーデンの鋼鉄を確保しようとしたドイツ軍を連合軍がノルウェーで撃破。海軍力を失ったヒトラーは、食糧とエネルギーを確保するためにアジアに向かわざるをえなくなった。ドイツは独ソ不可侵条約を破棄し、ソビエト連邦に侵攻した。

211:アクアラングの発明
1943年、トゥーロンではジャック=イヴ・クストーとエミール・ガニアンがアクアラングを開発した。


shikoku88 at 20:06コメント(0)経済 

2019年06月10日

櫂と帆で海を制覇

海の歴史
ジャック・アタリ
プレジデント社
2018-09-27


第四章「櫂と帆で海を制覇」では、1世紀から18世紀までの人類の海洋進出を振り返る。結論としては、「海を制した国が世界を制し、海に背を向けた国は衰退」している。開かれた国家と閉じられた国家といってもいいのだろう。

帆は6000年前に黄河や揚子江流域で発明されたと言われる。その後も造船技術や航海術を発展させ、1405〜1433年には7回に渡って大艦隊をアジア各地から中東にまで派遣している(鄭和の南海遠征)。にもかかわらず、その後、宮廷は全国の造船所を閉鎖してしまう。宦官派(鄭和)が政争に負けたのだ。

現代中国でも、独りの考えで5年間全国の高等教育機関が閉鎖されるなど(文化大革命)、中国の政争の激しさと、その甚大な影響は政治体制が変わっても根強く残っているといっていいだろう。いや、共産党の下での資本主義をやってのける国だから、封建制度から共和制になっても本質は変わってないというべきなのか。

88:海から遠ざかった中国
中国は外国との交易がなくても国を維持できたのである。地中海の大国と異なり、中国には自国領土に十分な農地と農業資源があったため、輸入に頼る必要がなかったのだ。少なくとも1000年までの中国の生活水準はヨーロッパよりも高かったので、中国の鎖国戦略は成功していたと言える。

94:明も海を拒絶する
1371年、明の皇帝である朱元璋は(1000年以上前の漢の皇帝たちと同じく)海賊から身を守る最善の方法は航海しないことだと考えた。朱元璋は、民間の船舶に海禁令を発布した。貿易を禁じるこの海禁令により、元の時代に寧波や広州の港に設立された大手貿易会社は倒産した。これにより、中国沿岸部の住民は貧しくなり、政府の財政は破綻し、汚職と不正取引が蔓延した。ハイパーインフレになり、中国南部では暴動が頻発した。

99:ローマの地中海支配の崩壊
428年、ヴァンダル族(アンダルシア地方に拠点を置く海洋民族)の王ガイセリックは、北アフリカを征服しようとした。「野蛮(ヴァンダリズム)」の語源になったヴァンダル族は、造船技術を大幅に改良した。たとえば、当時は船を外板からつくっていたが、現在も行っているように骨組みからつくる工法に変えた。

117:ヨーロッパ最初の中心都市ブリュージュ
14世紀初頭、ハンザ同盟には70以上の都市が加盟した。なかでも、ロストックは造船、リューネブルクは塩の貿易を独占した。ハンザ同盟は、ベルゲン、ロンドン、ブリュージュ、ノヴゴロドに貿易拠点を持ち、1000隻の船舶を保有した。

118:ヴェネチアが商業の中心地になる
1423年、ヴェネチアは3000隻のガレー船を保有し、そのうちの300隻は軍艦だった。人口15万人のヴェネチアには1万7000人の船乗りがいた。
15世紀末、ヴェネチア艦隊は、商船と軍艦を合わせて6000隻近くを保有する世界最大の勢力になり、各地の海と西側の海上貿易を支配した。ヴェネチアは、おもな商品の価格を決め、為替相場を操作し、富を蓄積した。ヴェネツィアの株式市場リアルトは世界最大になった。

119:フランス初の挑戦:海が舞台の百年戦争
海の重要さを理解した最初のフランス王は、13世紀末のフィリップ四世に違いない。フィリップ四世は、クロ=デ=ガレという海軍工廠をルーアンに建設し、そこで500隻以上の船をつくった。これはフランスが海洋勢力になろうとする最初の挑戦だった。

124:アントワープ:第三の中心都市と北海の支配
1453年、百年戦争が終結して、イングランドとフランスは疲弊した。ちょうどそのとき、オスマン帝国は東ローマ帝国最後の砦コンスタンティノープルをついに攻略した。コンスタンティノープルの陥落により、ヴェネチアはアジア市場へのアクセスを完全に失った。こうしてヴェネチア共和国は、大西洋のアントワープという新たな勢力を前に、歴史の表舞台から消え去った。

126:1488年から1498年:世界の勢力図が決まる10年
1488年、バルトロメウ・ディアス(ポルトガルの航海者)は、二隻の50tのキャラベル船と1隻の補給船でアフリカ大陸を回航した。キャラバン船の航海は分業体制になり、マストを登る水兵、帆を操作する甲板員、指令を出す兵長と、乗組員の役割分担が明確になった。さらには、医師と海図製作者も乗船した。乗組員の当直の時間や、船の速度と位置を知るために、砂時計が登場した。

132:17世紀、海賊はジャマイカとハイチに拠点を構えた。フランスのフリビュスティエ(海賊)であるロロネーは、7隻の船を所有し、400人の手下を操った。イギリスの海賊である「黒髭」は、1708年から1718年にかけて暴れ回って荒稼ぎしたが、最後はイギリス艦隊に殺された。

136:オランダの飛躍と『自由海論』
オランダが飛躍した要因は、新たな船が開発され、1590年以降、アムステルダムの専用の海軍工廠で、フリュート船(輸送用の帆船)が工業生産されるようになったからである。800人乗りで2000tの巨大なフリュート船が量産されたのである。この船が開発されたおかげで、航海に必要な乗組員は従来の1/5になった。三本のマストに横帆が張ってあるフリュート船には、大量の貨物を積むことができた。乗組員の地位は、船長が1人、士官が複数人、水夫長、大工、帆修理工がそれぞれ1人、手伝いが3人、見習いが4人、水夫が数十人というように複雑になった。

144:奴隷貿易は1550年ごろ始まり、1672年から急増した。当初、ポルトガル船がアフリカから奴隷を輸送したが、1672年になると、イギリスの王立アフリカ会社とフランスのセネガル会社が奴隷貿易に参入した。

147:イギリスの台頭
1761年、イギリス政府は、船上で利用できるほとんど誤差のないクロノメーターを発明したヨークシャーの家具職人ジョン・ハリソンに、2万ポンドの賞金を授与した。クロノメーターを装備したイギリスの船は、出発の際にテムズ川にあるグリニッジ天文台の時計の時刻にこのクロノメーターを合わせるようになった。こうしてグリニッジ天文台の時刻が次第に世界の標準時になったのである。



shikoku88 at 23:03コメント(0)経済 

2019年06月09日

海と人類

海の歴史
ジャック・アタリ
プレジデント社
2018-09-27


人類が海上を移動し始めたのは6万年前らしい。それはインド洋と大西洋の沿岸部に生息する人々だったが、当時は筏や丸木舟だ。移動できる範囲は限られていた。

やがて技術革新が起こる。6000年前、オーストロネシア人(東南アジアのモンゴロイド)と中国の南東部の人々が帆船を発明する。彼らは帆船を使って長江と黄河に浮かぶ島々の間を往来した。黄河・長江文明の誕生だ。

第一章 宇宙、水、生命(130億年前~7億年前)

24:地球に水ができ、海が形成されたからこそ、生命が誕生したのである。

第二章 水と大陸:海綿動物から人類へ(7億年前から85000年前まで)

43:地球で利用できる水の量は安定的である。水の総量は13億8600万㎦であり、海に13億3800万㎦の海水と、湖と河川に4800万㎦の淡水がある。この総量に加えて、地球内部の鉱物にしみ込んだ水が海水量の二倍から五倍存在する。この水量は今も変わらない。

第三章 人類は海へと旅立つ(6万年前~紀元前1年)

57:霊長類がはじめて大西洋上を旅したのは、およそ3000万年前のことだ。前章で述べたように、ヒトがはじめて太平洋上を旅したのは80万年前のことだ。ホモ・サピエンス・サピエンスの初旅は6万年前まで遡る。それはインド洋と大西洋の沿岸部に生息する人々だった。

59:6000年前(人口はおよそ500万人だった)、大きな技術革命があった。オーストロネシア人(東南アジアのモンゴロイド)と中国の南東部の人々が帆船を発明したのだ。彼らは帆船を使って長江と黄河に浮かぶ島々の間を往来した。最初に集落を形成したのは彼らに違いない。

66:ハンムラビ法典には、荷主と船頭との関係が詳細に記載されている。

76:ペルシア軍による破壊の後に復興したアテナイは、地中海東部の巨大勢力になった。ギリシアのピレウスやカンタロスの港に拠点を構える交易商人は、商品購入や航海の資金をファイナンスする仕組みを発明した。難破した際には、借り手が加入する保険によって出資金は保証された。これは中国でリスク分散化の仕組みが開発されてから数世紀後のことである。

79:新興勢力のローマの人口はすぐに100万人になった。紀元前三世紀初頭、ローマは海上交易の重要性を悟った。自国民と遠征先の軍隊を養うには海上交易が欠かせないと理解したのである。そして塩も重要だった。遠征中に食料を確保するためには塩が必要だったのである。ローマが多くの地域を征服できたのは、遠征先で塩鉱山や塩田を探し出し、そこで製塩したからでる。

80:地中海を挟んでローマの対岸に位置するカルタゴが勢力を伸ばし、北アフリカのフェニキア人の都市を支配した。戦略的な場所に位置する整備の行き届いたカルタゴの港には、220隻の船が同時に停泊できた。カルタゴの艦隊はこの恵まれた環境を生かしてさまざまな種類の軍艦を保有した。たとえば、イコソーレ(20人の漕ぎ手)、トリアコントーレ(30人の漕ぎ手)、ペンテコントーレ(50人の漕ぎ手)、ブリガンティーン(二本マストの帆船)、レンボ(古代の駆逐艦)、そしてローマと同じく、漕ぎ手を三段、四段、五段に配列する櫂船などである。

83:二年後にアウグストゥスの称号を得たオクタウィアヌスは、紀元前27年にローマの初代皇帝に就任し、破壊されたカルタゴを「コロニア・ユリア・カルタゴ」と名付けて復興させた。こうして今度は、地中海、大西洋、インド洋と、ローマが海の名付け親になったのである。



shikoku88 at 19:04コメント(0)提言 

2019年06月08日

未来は宇宙よりも海

海の歴史
ジャック・アタリ
プレジデント社
2018-09-27


400pに及ぶ大著。130億年前の地球の誕生から始まり、やがて地球は「水の惑星」となる。水があったから生命が生まれ、現在の繁栄がある。人類は漁業にしても、貿易にしても、軍事にしても、多大な海の恩恵を受けてきた。

ところが、海はあまりに当たり前にそこにあり、広大なことから、十分な調査も保護もされてこなかった。宇宙開発にはジェフ・ベゾスやイーロン・マスク、日本でもホリエモンなど大富豪が競ってお金を出すが、海洋調査や保護に使われる資金はわずかだ。

「未来は宇宙よりも海にある」というのは、本書を読めば説得力がある。身近であるのに、解明されているのはわずかなのだ。

海は、あの世と並んで顧みられてこなかった。

歴史を遡れば、海は天に代わる存在だとわかったはずだ。

カメル・ダーウード(アルジェリアの作家)

イントロダクション

15:海には、富と未来のすべてが凝縮されている。海を破壊し始めた人類は、海によって滅びるだろう。

18:歴史の勝者には、フラマン人、ジェノヴァ人、ヴェネチア人のようにカトリック教徒もいれば、オランダ人、イギリス人、アメリカ人のようにプロテスタントもいる。だが、彼ら全員は沿岸部で暮らす人々である。反対に、歴史の敗者には、フランス人やロシア人のようにカトリック教徒も居れば、ドイツ人のようにプロテスタントもいる。だが、彼ら全員は内陸部で暮らす人々である。

20:フランスは(排他的経済水域と領海において)世界第2位の海洋国家であり、海の歴史において特別な役割を担う国だからだ。ところが、フランスには8回もチャンスがあったのに、地政学上の超大国になるための必要条件である、海洋大国になるための手段を講じることができなかった。フランスは毎回失敗したのである。


shikoku88 at 19:03コメント(0)提言 

2019年06月07日

世界、技術、ヒト、カネの30年

平成の経営
伊丹 敬之
日本経済新聞出版社
2019-01-26


伊丹先生は、1980年代はじめから、日本企業の系列をはじめとする「長期的継続的」取引慣行は十分に経済合理性が高いと主張してきた。しかし、系列取引は一方でぬるま湯の温床にもなりやすい。「そこをどうきびしくコントロールした上で、系列のもつ経済合理性をきちんと発揮させられるか、それが鍵」だ。

「厳しい日本的経営」を貫き通したのがトヨタで、ぬるま湯になって潰れかけ、ルノーの支援を仰がざるをえなくなった結果、「ゴーン改革」で系列のもつ経済合理性まで失ってしまったのが日産だと分析する。

ぬるま湯の日本的経営<厳しい欧米型経営<厳しい日本的経営

というのが平成30年の結論。私も異論はない。「所属の国・日本では、人々は簡単には組織を離れない。そんな国の企業に参加の国・アメリカの人事制度や慣行を持ち込んでも、うまくいかない」のだ。

126:ピザ型グローバリゼーションの国、日本
海外での生産基地を日本国内の生産システムと密接な関係を持った延長・拡大と捉えるか、それとも飛び地のような独立基地と捉えるか。
海外工場で使う基幹部品や基幹素材の供給を国内の自社工場や関連企業の工場から行う。
自社グループの国内基地と海外基地の間で密接な分業関係をつくって、全体としての世界最適生産体制を動かそうとする。
国内が空になったドーナッツにならないので、ピザのように中心部分が残り、全体が拡大。

152:IT人材の供給の少なさ
アメリカの大学では昔からコンピュータ・情報科学という分類が工学と並んで存在。
1986 学士42,000名   修士8,000名
2015 学士60,000名 修士31,000名
日本の推定数とは、学士で5倍、修士で10倍程度の人材供給量格差

193:所属の国、日本
アメリカでは企業組織に人々は「参加」する。日本では「所属」する。
所属の国・日本では、人々は簡単には組織を離れない。そんな国の企業に参加の国・アメリカの人事制度や慣行を持ち込んでも、うまくいかない。

243:日本企業の系列をはじめとする「長期的継続的」取引慣行は十分に経済合理性が高い
利害が対立するのがふつうの売り手と買い手の間で協力関係を維持しながら、長期的視野で共同利益を大きくできるようになるという合理性。しかし、系列取引は一方でぬるま湯の温床にもなりやすい。そこをどうきびしくコントロールした上で、系列のもつ経済合理性をきちんと発揮させられるか、それが鍵。トヨタのコントロールは、じつはきびしい。

267:日本的経営の原理としての人本主義
ヒトとヒトとのネットワークを安定的に保つことを基本原則として、経済組織を作り維持していこうとする原理。

あとがき:自信喪失とアメリカへの過度の傾斜が「失われた20年」の最大原因
自信喪失と過度の傾斜への躊躇感がともに迷いの原因となり、その迷いが果断を欠く行動につながり、それが結局は打つ手がうまくいかないという結果になった。

「失われた20年」に終止符を打ったのが、リーマンショックと東日本大震災
もうぐずぐずと考えている余裕はない、という状況に追い込まれて、はじめて日本企業全体がシャキッとした。


shikoku88 at 20:59コメント(0)仕事 

2019年06月06日

平成30年間の日本企業

平成の経営
伊丹 敬之
日本経済新聞出版社
2019-01-26


今ではよく知られたように、1987年に始まり1992年に終わったバブル経済をもたらしたのは、銀行の過剰貸出である。もともとは、1985年のプラザ合意に伴う急激な円高に対する景気対策として始まった。

1985年の段階で268兆円あった銀行貸出残高がわずか4年で140兆円も増えた。その間GDPも伸びているのだが、GDP対比でみると84%→103%。1989年GDP比84%だと336兆円になるので、75兆円の過剰貸出だったということになる。このほとんどが不良債権になる。

今、心配なのは、中国の債務残高が、かつて日本がバブル崩壊したレベルに達していること(通商白書2017)。既に中国のGDPは世界第2位で、日本の2.5倍ある。経済規模が大きくなれば成長率は鈍化するのが自然だが、中国は共産党の一党独裁であるが故、経済成長率が落ちて失業率が上がるとそれが政治問題になってしまう。

労働時間

















16:銀行貸出残高(兆円)
1985 268 GDP比84%
1989 411 GDP比103%

37:97年11月日本人はお化けを見た
ある国の大きな金融機関が毎週のように月曜日に破綻する。
11/3 三洋証券会社更生法
11/17 北海道拓殖銀行営業譲渡
11/24 山一證券自主廃業

66:お化けの正体=失業
2002年従業員数も失業率もバブル崩壊後最悪
2002年以降、雇用の絶対数は確保するも、一人当たり人件費は下がる。
国全体でワークシェアリング


shikoku88 at 19:32コメント(0)経済 

2019年06月05日

疾風に勁草を知る

平成の経営
伊丹 敬之
日本経済新聞出版社
2019-01-26



「どん底から復活へ」

オビにはそうある。伊丹先生は平成元年に41歳。それから現在まで「仕事盛り」の30年間を過ごしてきたという。私にとっては、新入社員を終える25歳から30年。その間、6社の社員・取締役を経験し、国家公務員にも3年間なった。半年から1年間の失業も3回経験した。

平成元年4月には松下幸之助が、6月には美空ひばりが逝去した。彼女は1月に最後のシングル曲で、かつ最後の大ヒットとなった「川の流れのように」を出したばかりだった。「経営の神様」と「昭和の歌姫」の死は、昭和の終わりを感じさせた。私はといえば、4月にLBSの合格通知が届き退社を決意。引継ぎと渡航準備で大わらわだった。

序章のタイトルは、「疾風に勁草を知る」。日本企業は平成の30年間に何度も「疾風」にさらされた。それで吹き飛んでいった企業も多い。しかし、大地に踏みとどまり、経営に磨きをかけていっそう強くなった会社もある。

日本の法人企業全体(上場企業だけでなく、中小企業も含む。ただし、金融業と保険業をのぞく)の売上高営業利益率も実質労働生産性(実質1人当たり付加価値、GDPデフレーターで実質化)も、08年を底としてほとんど一本調子で改善してきています。そしてバブル期のピーク(89年あるいは90年)をはるかに追い抜いています。(伊丹敬之「プレジデントオンライン」

Karl


shikoku88 at 19:02コメント(0)仕事 

2019年06月04日

企業のライフサイクルにより求められるリーダーシップ

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
スコット・ギャロウェイ
東洋経済新報社
2018-07-27



企業のライフサイクルの段階によって、求められるリーダーシップの種類は違っている。だから、「一代で大企業にした」という人は古今東西まれ。本書でも指摘されているが、Googleの成長はプロ経営者のEric SchdmitをCEOに雇ったときから始まった。

日本では「起業=人生」なので、同じ人がずっと経営することが多い。起業するのはアントレプレナー・タイプだから、その人が「アントレプレナー」から脱し、経営者として成長しない限り、会社の成長はない。あるいは時流に乗って成長した後、わきが甘くて潰してしまう。

ベンチャー向けのプロ経営者市場のない日本では、投資先の経営者を変えようにも適任者が見つかることはまれ。そのため、VCはバランスの取れた経営者を求めがち。あるいは、若い経営者の成長に賭ける。

起業時:アントレプレナー
ストーリーテラー兼セールスマン
・人よりリスク許容度が高い
・売りこみができる
・無分別で失敗を予測できない
きわめて合理的で知性が高い人は、リスクがはっきり見えてしまうので、アントレプレナー、特にシリアル・アントレプレナーには向かない。

成長期:ビジョナリー
ほとんどのアントレプレナーは自分たちの製品が大量生産できることよりも、貴重であることを誇りにしている。ビジョナリーもストーリーを売らなければならないが、この段階ではストーリーではなく、いくつかの章からなる物語を必要とする。
ビジョナリーはアントレプレナーが持つ天才的狂気は持ち合わせていないかもしれない。しかしそれを組織への愛情、特にアイデアを大規模化できる組織を構築するために力を尽くすことで埋め合わせる。

成熟期:オペレーター
オペレーターはビジネスを完成させるのが得意で、誠実さがにじみ出ている。リスクよりも安定を求め、株式より給与を好むようになる社員への対応に優れる。年間250日は世界中のあらゆる地域に出張し、腹を立てている株主に対処し、絶えず次の買収の相手を探している。

衰退期:プラグマティスト
プラグマティストのCEOは、会社の栄光の時代に対するロマンチックな考えを持ち合わせていない。プラグマティストのCEOは会社が傾いていることを正しく認識する。だからCFを確保し、収益が落ちるよりも前にコストをカットする。まだ価値のある資産を成熟企業のCEOに売却し、他は投げ売りする。



shikoku88 at 20:02コメント(0)仕事 

2019年06月03日

NEXT GAFA

the four GAFA 四騎士が創り変えた世界
スコット・ギャロウェイ
東洋経済新報社
2018-07-27


テスラの最大の革新性を、クルマではなく「顧客への直販」としているのが面白い。テスラのEVは他社よりカッコよくて、速くて航続距離も長いかもしれないが、それだけの値段はする。もちろん、テスラがEVを発明したわけでもなければ、台数を最も売っているわけでもない。

ところが、「車を顧客へ直販した」という点では自動車業界において革新的だ。初期のクルマは、故障するのが当たり前だった。そのため、全国各地にある代理店が販売し、メンテナンスも担当する仕組みが100年前にできた。全国ネットワークを直営で築くには莫大な費用が掛かったからである。

1970年代になって日本車が品質革命を成し遂げ、故障することはほぼなくなった。それでも、メンテナンスは必要だし、それが販売店の収益源になっているから、一旦築いた販売網を無くすことの出来ないまま最近まで来ている。クルマが売れなくなって販売店網を整理し始めたのはこの10年の話だ。

新興のテスラは、EVがノーメンテナンスに近いこともあり、最初から直販にした。世界の量販車メーカーで始めて、直販体制を取った。顧客から直接「予約金」(デポジット一台当たり$1000)をとれたのも、直販体制のおかげだ。

Tesla
331:Model3 $35,000
発売から1週間たたないうちに325,000件の予約(デポジット$1000)
借り入れコストゼロで1年分の資本として$325Mを集められる企業はほとんどない。
従来の自動車会社は垂直統合ができていない。(中略)販売店に行くと1985年にタイムトリップした気分になる。
テスラが自動車業界にもたらした革命的な変化は、電気エンジンなどではない。(中略)テスラの革新の本質は、顧客との近さ。ライブ配信されたCEOイーロン・マスクによる製品発表、メーカー直販、定期的な無線によるアップデート。テスラは顧客と、数年間にわたる深い関係を築く。

10. GAFA「以後」の世界で生きるための武器

個人が成功するために必要な内面的要素
才能ある人が一生懸命働いても、食い込めるのは世界の上位10億人レベル。デジタル時代の精鋭を振り分ける要因。

/翰的成熟
1日の間にさまざまな役割をこなさなければならない。
自分の熱意をどうコントロールするか。
自覚があって自己管理に優れ、モチベーション、共感力、社交スキルを備えたリーダーが率いるグローバル企業ほど、目に見える大きな業績をあげている。

好奇心
MS Officeは22年でユーザー10億人、Gmailはたったの12年、Facebookは9年で達成。この流れにさからおうとすれば溺れてしまう。

E事者意識
チームの誰よりも細部にこだわり、何をいつ、どのように終わらせる必要があるか検討する。自分が全員を、そしてすべてを掌握しなければ、何も起こらないと考える。

大学に行く

368:Facebookはキャンパスの実際のニーズから生まれたために大学で急激に広まった。ゲイツはMicrosoftを起業する前、ハーバード大学で数学とプログラミングを3年間みっちり学んだ。そこでスティーブ・バルマーに出会い、25年後には彼にMicrosoftをゆだねた。そしてジョブズでさえリード大学に進んで青春を謳歌し、そこでデザインへの情熱に火がついた。

369:アメリカにはカースト制度がある。それは学歴と呼ばれる。大不況の真っただ中、大学卒業者の失業率は5%だったが、高校しか出ていないものの失業率は15%だった。

371:大学の費用は目玉が飛び出るほど高い。4年間の授業料、住居費に食費。トップ校に準じる程度の大学でも25万ドルくらいかかる。Ivy Leagueの大学では手厚い支援。平均的な家庭の学生には授業料免除だけでなく部屋と食事が無料。




shikoku88 at 19:16コメント(0)仕事 

2019年06月02日

ワンイチ

自転車乗りは「一周」が好きなようで、淡路島一周のアワイチとか、琵琶湖一周のビワイチとか、〇〇イチがいろいろある。私はあまりこだわりがないが、昨日、ロードバイク仲間に誘われて行ったのが東京湾一周のワンイチ。

一周175km。ロードバイクだと休憩も含めて大体平均時速20km/hで考えておけばいいので、9時間+昼食1時間で10時間くらいかな?と思っていたら14時間掛かった自分ではやったことないけどこれを機に挑戦という人が(私も含めて)多くて、ナント、30名の参加者上級者の1チーム以外に、初めて挑戦他ののんびりチームが3組。のんびりチームは揃ってのゴールを目指したので、誰かに何かある度に待つことになる。

ワンイチ良い点
・175kmの一筆書きやりましたという達成感
・同じロードバイク乗りと情報交換しながら走るのは楽しい
・30台も揃うと最新バイクの見本市のよう

厳しい点
・日本のGDPの3割を稼ぎ出す東京湾周辺〜半分は市街地で信号だらけ
・一部幹線道路が避けられず、ダンプや大型トラックの脇を走る
・完走目的だったので、遅い昼食でもビール我慢

結論
・体調と天候も含めたコンディションさえよければ一日で(家から皇居への往復含め)185km走れることは分かった
・一人で走るとあまり休憩を取らないので100kmを超えると辛くなっていたが、長めの休憩入れれば200kmでも(多分)足が持ちそう
・次回やるとしたら、金谷フェリーで久里浜に着いたらビール飲んで輪行で帰りたい(笑)

shikoku88 at 21:19コメント(0)旅行自転車 

2019年06月01日

CAC40の営業年数は平均101年!

良き社会のための経済学
ジャン・ティロール
日本経済新聞出版社
2018-08-25



第5部は「産業の課題」。「境界線効果」は日本の「扶養控除」を連想させる。

本書に挙げられるフランスの例では、「従業員が49人から50人に増えた瞬間に、34の義務が一気に加わる」ため、多くの企業が恣意的にそれ以上の規模にしない。そのため、周辺国や諸外国に比べて中堅企業の数が極端に少なく、中堅企業を経て大企業へと発展する企業も少なくなるため、フランスを代表する大企業CAC40構成銘柄40社の営業年数は平均101年にもなるという

日本でも「老舗」として社歴が長いことを尊ぶ風潮があるが、企業は社歴で評価されるべきでないことは言うまでもない。社歴が長いことは、時代に合わせて変化してきたことの証左ではあるが、同時に、多くの長寿企業は規模を拡大させないことで同族支配を続けて来たにすぎない。

社会における企業の役割という点から見れば、規模を拡大することで、消費者のニーズに応え、雇用を拡大し、納税義務を果たすことだ。それができない会社は、むしろ市場から退出し、それが可能な新興企業に経営資源を譲るほうが望ましい。

アメリカのFortune 500構成銘柄では平均営業年数は15年だそうだ。日経225構成銘柄ではどうなのか?簡単に調べただけでは出てこなかったが、15年より大幅に長く101年より短いのは間違いない。


404:無分別な選択
経済学者が産業政策に否定的な第一の理由は、「勝ち馬を当てる」ことがむずかしいから。なぜむずかしいかと言えば、政治家も有権者も、将来に富をもたらす技術、産業、企業がどれなのかについて、情報を持ち合わせていないから。

406:ハイテク分野で成功しているクラスターの大半は自然発生
MITの近隣に出現したKendall Square〜バイオテクノロジーの聖地

411:フランスのCAC40構成銘柄40社の営業年数は平均101年
Fortune 500構成銘柄 15年
20世紀後半に世界のスター企業となったヨーロッパ企業はVodafoneとSAPの2社だけ

414:境界線効果
フランス企業は従業員が10人、20人、50人の境界線を越えるごとにいろいろな制約が課され費用負担が大きくなる→50人以上の企業が途端に減る
会計報告に関する業務が増え、社会保険料の料率は上がり、通勤費は会社が負担しなければならず、従業員が50人を越えればあれこれの委員会を設置しなければならない。経済的理由による解雇も難しくなる。従業員が49人から50人に増えた瞬間に、34の義務が一気に加わる。

453:医療保険制度
保険を論じる時に必ず出て来るのが、モラルハザードと逆選択という問題。

455:フランス国民皆保険
ドイツ、スイス、オランダでは民間保険だが、リスク選択は法律で禁じられている。

459:フランスのタクシー
べらぼうに高いため、利用するのは富裕層か、誰かが料金を負担してくれる人に限られる。

464:時代遅れの労働法
フランスの労働法は、工場労働者を想定して設計されている。したがって、有期雇用契約(CDD)のことはほとんど考慮されていない。まして、在宅勤務者、個人事業主、フリーランスは言うまでもない。

473:Double Irish/Dutch Sandwich
アイルランド支社を設立し、海外事業のライセンスを与える(この会社は実体がないためアイルランドでの法人税免除、登記はバミューダ諸島で完全無税)。次にアイルランド支社が子会社を設立し、こちらにサブライセンスを付与して海外事業収入の大半を計上。子会社からライセンス収入をオランダ支社に送金し(アイルランド〜オランダ間の移転は非課税)、さらにもとのアイルランド支社に送金する。アメリカ企業の利益は本国送金した時にしか課税されないため、バミューダに留め置かれている利益は課税対象にならない。

477:知的財産権制度
古代ギリシャに早くも最初の特許。その後、15世紀のフィレンツェやヴェニスで特許制度は大きく発展。


shikoku88 at 22:52コメント(0)経済 

2019年05月31日

フランスの労働市場

良き社会のための経済学
ジャン・ティロール
日本経済新聞出版社
2018-08-25


第4部「マクロ経済の課題」には、フランスの労働市場の話が出て来る。

フランスの労働市場は日本に似ている点がある。
・正社員(CDI)はまず解雇されない
・流動性が低い
・労使関係満足度が低い

制度的には似ているように思うのだが、現象として違う点もある
・フランスの失業率は高いが、日本は低い
・フランスではいったん正社員を辞めると同じ条件で転職できることは稀なため、嫌でも仕事にしがみつく。日本では、雇用環境が良いので、転職は増えている。

要するに、雇用制度としては、日仏とも「労働者保護」の名目上、硬直的で流動性が低くなっている。正社員の地位は安泰で、本人の成績不振だけでは解雇されない。結果、不満を抱えながらも転職に踏み切れない。しかし、日本では少子化で企業は労働力不足に不安を抱いており、新卒採用に積極的。フランスでは低成長の下、未経験の若年労働者を正社員で雇用することに企業が不安で、若年層の失業率は24%にものぼる。フランスの出生率が先進国では最高水準の2.0(日本は1.4)で若年層の人数が比較的多いのも一因かもしれない。

フランスでは「栄光の30年」と呼ばれる高度成長期(1945-75)以来の労働制度を低成長になっても変えなかった。経済学者をはじめ、専門家は何度か改革案を示していたが、国民がそれを支持しなかったのだ。その後の雇用環境の悪化で、逆に、労働規制は強化され、ますます新規雇用が減る結果になった。

フランスの経済状況は、「その後の40年間にゆっくりだが確実に悪化した」。日本も、「失われた20年」が40年にならないよう、今手を打たないとダメだ。

237:京都議定書の失敗
議定書が採択された時点では、締結国の排出量合計は世界の65%以上
2012年 議定書がカバーするのは15%以下
・アメリカが批准を拒否
・カナダ、ロシア、日本が離脱
・フリーライダー問題(中国)

264:フランスの失業率
2015 10.6%(ドイツの2倍以上)
15-24歳 24%

265:経済活動が活発で雇用機会が存在する地域では、住宅の需給が逼迫
・政府の政策で土地利用が厳格に制限されているため、住宅は慢性的に不足。
・借家人の権利が手厚く保護されているため、借家の供給はいっこうに増えない。
・貸し手市場のため、貸し手が借り手を選別し、高い補償金を要求する。
→雇用不安定な若年層は家を借りられない

266:有期雇用契約(CDD)に補助金
・CDDが無期雇用契約(CDI)に移行するケースは稀。
・新たに創出される雇用の大半がCDD(2013年85%)

269:CDIが特権化
・転職したら同等の契約を結ぶのはむずかしく、しがみつく→労働市場は硬直
・労使関係が敵対的(労使関係の満足度評価で129/139ヵ国)
労働市場の流動性が高ければ、不満を抱く労働者は転職するのが普通だが、フランスでは転職先が容易に見つからないため、どんなに不満でも現在の仕事にとどまる。

270:労働市場改革の必要性
・失業は構造的問題~制度がフランスと似ている南ヨーロッパでも失業率は高い

275:解雇を促すシステム
フランスでは、企業は労働者に解雇手当を払うが、その解雇に伴い現実に発生する失業保険のコストは払わない。反対に、労働者の雇用を維持する企業は、社会保障費を負担し続ける。つまり雇用を維持する企業は、解雇した企業のために失業保険料を払っている。

286:社会的に受け入れられるか
フランスの制度は、いまだにフランス人の大半に支持されている!

293:「栄光の30年」
高度成長期(1945-75)には、新規雇用、それも無期契約による雇用が次々に創出され、財政も健全だったため、さして問題が起きなかった。だがその後の40年間に状況はゆっくりだが確実に悪化した。

333:証券化に潜む危険
住宅債券担保証券(RMBS)の発行体は、その証券がどうなろうと損害を被るわけではないので、ローンの質に注意を払うインセンティブがない。
証券化が容易な住宅ローンの場合、ほぼ同条件の他のローンに比べ、債務不履行率が20%も高い。


shikoku88 at 19:36コメント(0)経済 

2019年05月30日

経済の制度的枠組み

良き社会のための経済学
ジャン・ティロール
日本経済新聞出版社
2018-08-25



第3部は「経済の制度的枠組み」。主にフランスの例を挙げて、他国と比較するのだが、ここでも日本との類似点が目立つ。

例えば、フランスでは「大企業は比較的好業績だが、なかなか新しい企業が誕生しない」という。フランスの大企業とは、ミシュランやルノーなど。ルノーが近年好業績だったのは、傘下の日産の好業績に支えられてだったことがゴーン事件で明らかになった。しかし、やるべきことは明らかだったのに、自己改革できなかったのだから自分の蒔いた種だと思うしかない。

日本も日経225構成銘柄で新興企業というと、ソフトバンク、ユニクロ、サイバーエージェント、DeNAなどごく一部にしかすぎない。

179:1999年12月 ジャン=ジャック・ラフォン報告書
きわめて抑制されたものであったにもかかわらず、不遜だとか無礼だとして高級官僚や大学教授や政治家から猛反発。

181:計画経済を採用した国の生活水準と、市場経済を選んだ国の生活水準の著しい格差は、1989年にベルリンの壁が崩壊したとき、全世界にあきらかになった。
今日でも、北朝鮮と韓国の間には1対10の格差がある。

市場の失敗
_燭蕕の取引が、合意に参加していない第三者に悪影響を及ぼす
環境汚染が代表例。
⊆莪の中には、買い手が十分な情報を得たうえで合意したわけではないものがある
G磴ぜ蠅麓ら選んで自分に損害を与えることがある
ぜ莪の実行が個人の能力を超えてしまうことがある
ゴ覿箸市場の力を悪用することがある
市場は効率の権化だとしても、そのことは平等を保障しない

190:なぜ独立行政機関なのか
議員は世論をつねに気にしなければならない。これは選挙のメリットであるが、しかし民主主義のアキレス腱でもある。代表民主制は、有権者よりも多くの情報を持ち合わせているプレーヤーに決定権を委ねる制度である。ところがこのプレーヤーは、世論の動向を読んで追随することになりがちだ。

197:公務員の削減
行政改革ではまず公務員の数を制限すべき。一つには経費節減のため。もう一つには、情報技術の進歩によって以前ほど人手がいらなくなっているから。ところがフランスでは2000-13年に15%も増えている。何らかの公共サービスを始めるとなると、フランスではまず公務員を雇うことを考える。
2010年公共部門雇用数 フランス530万人 ドイツ450万人(人口はドイツが25%多い)
ドイツでは1990年代からアウトソーシングを活用。

201:フランスでは景気が低迷しているいま改革するのは時期が悪いといった声をよく聞く。だが改革の大半は、まさに景気後退期に行われている。スウェーデンの改革は、金融危機の真っ只中で可決された。(中略)フィンランドの改革もほぼ同時期に興ん割れている。(中略)ドイツでシュレーダー改革が行われたのも、困難な時期だった。

209:共同体の構成員の利害が十分に一致していれば、集団的な意思決定はうまくいく(ヘンリー・ハンスマン『企業の所有権』1996)
VISAとMastercardは、それぞれ2008年と2006年に上場するまでは、共同出資会社だった。それでも、店舗網、ソフトウェア開発、マーケティングなどに精力的に投資していた。

214:フランス企業の資金調達
CAC40株価指数の構成企業は1960年から存在している企業ばかり。対照的にS&P500株価指数構成企業の半分は、2000年の時点では入ってなかった。


shikoku88 at 18:11コメント(0)経済 

2019年05月29日

経済学者の仕事

良き社会のための経済学
ジャン・ティロール
日本経済新聞出版社
2018-08-25



第二部では、経済学者が日頃何をやっているかが説明される。その中で、フランスの大学システムと英米の大学が比べられる。フランス人で活躍している経済学者は少なくないが(理系教育が盛んで、数学に強い人が多いことが関係しているのか?)、ほぼ全員が英米で博士号を習得している。

フランスの大学は無償で、バカロレア(高卒資格)さえあれば全員進学できる。高校進学率自体が半分なかった昔ならいいかもしれないが、ほぼ全員が高校に行く現代でこれがどれほど無謀なことか。進学率の高い日米でも大学進学率は約50%だ。

結果、フランスでは、半数位が大学中退する。問題は、職業訓練できてないので、中退後の職業が限られることだ。こうして、若年層の高失業率の一因となっている。

大量に進学するので、フランスの大学はマス教育になる。学費無料なので、運営資金は税金で賄われる。フランスの財政状況は悪いので、潤沢に出せるわけではない。その結果、大学教授の報酬は英米に比べて1/5〜1/3だという。

当然、研究成果を上げている教授は英米(特にアメリカ)の有名大学に数倍の給与で引き抜かれることになる。高い授業料と多額の寄付を集めているアメリカの私立大学は財源豊かで、優秀な学生には奨学金をどんどん出す。

こうして、フランスに限らず、世界の優秀な学生はアメリカの大学院を目指すことになる。日本は、フランスのように大学無償化にこそなってないものの、もともと国立大学授業料が安い。現在、年間授業料は約50万円だが、実際の費用は200万円以上掛かっている。年間150万円、4年間で600万円を税金で負担しているのが実態だ。東大に至っては、その数倍掛けている。

奨学金制度を充実させるとともに、全体的には、実態に合わせて授業料の引き上げが必要だろう。英米の私立大学が年間400-500万円の授業料を取るのは、儲けているのではなく、良い教育をしようと思えばそれだけの費用が掛かるからだ。実態を反映しない価格設定は社会に非効率をもたらし、納税者負担を増やしている。

91:フランスで地位の高い研究職〜CNRS・INRA・大学教授
英米、スイスなどと比べると報酬は1/5〜1/3

96:フランスの多くの知識人や芸術家は、全体主義を目の当たりにしたとき理性を失い、現実から目をそらした。ソビエトや毛沢東やキューバの全体主義に対してその傾向が強かった。

121:重要なのはさまざまなアプローチが互いに刺激し合うこと
弟子たちが群を作って「師匠」の学説の解釈をしているような学派ほど始末に悪いものはない。英米圏には、これを断ち切るための良い習慣がある。博士課程を終えた学生はその大学を離れなければならないのである。この習慣は、教授同士の関係を平和にする(教え子を空きポストに無理矢理押し込む必要がない)だけでなく、学生に新境地を切り拓くチャンスを与え、学部には新しい血を迎え入れることができる。

自己の利益に反する行動

・先送りする
意志薄弱。現状維持でよしとする気持ちが強く、やりたくないことや労苦を伴うことをぐずぐずと遅らせ、将来への投資を怠り、一時の感情に任せて行動しがち。

・錯覚する
統計に関してまったくお粗末。

・感情移入する
「献血を有償にすると社会に役立つ行動をする意欲を失わせてしまうから払うべきではない」(1970リチャード・ティトマス)



shikoku88 at 18:55コメント(0)教育 
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