ブログネタ
フランス語 に参加中!
カップラーメン

La doyenne du porno japonais prend sa retraite à 80 ans
Après dix années passées sous les projecteurs des tournages pornos, Maori Tezuka tire sa révérence à l’age de 80 ans. Considérée comme la doyenne de l’industrie florissante du film X japonais, l’actrice dit n’avoir ≪ aucun regret ≫.
Cette ancienne chanteuse d’une troupe d’opéra avait commencé sa carrière dans le porno à l’age de 71 ans, un peu par hasard : ≪ Un producteur que je connaissais m’avait demandé si ça m’intéresserait d’essayer ≫, explique-t-elle dans la presse japonaise. L’essai est concluant et elle se souvient avoir été séduite par ≪ l’animation ≫ qui régnait sur les tournages. Le public le lui rend bien, lui permettant de jouir d’une belle popularité sur le créneau des actrices septuagénaires.

Après dix années passées sous les projecteurs des tournages pornos, Maori Tezuka tire sa révérence à l’age de 80 ans. Considérée comme la doyenne de l’industrie florissante du film X japonais, l’actrice dit n’avoir ≪ aucun regret ≫.
Cette ancienne chanteuse d’une troupe d’opéra avait commencé sa carrière dans le porno à l’age de 71 ans, un peu par hasard : ≪ Un producteur que je connaissais m’avait demandé si ça m’intéresserait d’essayer ≫, explique-t-elle dans la presse japonaise. L’essai est concluant et elle se souvient avoir été séduite par ≪ l’animation ≫ qui régnait sur les tournages. Le public le lui rend bien, lui permettant de jouir d’une belle popularité sur le créneau des actrices septuagénaires.
≪ On m’a déjà demandé de revenir dans deux ou trois ans ≫
Les seniors sont très demandés dans une industrie de l’AV (≪ Adult video ≫) japonais qui pèse 20 milliards de dollars. Les productions mettant en scène ces comédiens et comédiennes ≪ mûrs ≫ représenteraient un quart du marché.
Mais alors qu’il y a quelques années encore elle se serait bien vue poursuivre cette carrière pour une décennie supplémentaire, Maori Tezuka a changé d’avis car ≪ les tournages étaient devenus difficiles quand l’acteur n’était pas mon genre ≫.
Disant n’avoir pas choisi cette voie pour l’argent, elle a vu là un ≪ tournant ≫. D’ailleurs, ≪ on m’a déjà demandé de revenir dans deux ou trois ans. J’ai dit que j’allais y réfléchir ≫, ajoutant en riant : ≪ Ca dépendra des partenaires. ≫
フランス語
フランス語の勉強?

ネットラジオ聞いていて,今日で気仙沼さいがいエフエム6年と報道されていました.喜んでいいのかどうかわかりません.でもこれからもできたら毎朝聞きます.
昼過ぎに著作権に関して相談しに行きました.誰に相談していいのかわからないので知財関連の事務の人に紹介してもらいました.Ohさんという方で,丁寧に説明いただき確実に理解できました.

津波で半壊 気仙沼信金本店が新築営業
 東日本大震災の津波で大規模半壊した気仙沼信用金庫本店が気仙沼市八日町2丁目の旧本店敷地内に新築され、営業開始に合わせた式典が21日あった。
 新本店は鉄骨一部鉄筋コンクリート5階、延べ床面積1508平方メートル。1階の本店と2階以上の本部に約50人が勤務する。事業費は約8億円で、国のグループ化補助金を活用した。
 約4メートルの津波が押し寄せた教訓から、1階は窓を減らしてコンクリートで覆い、市内初の全自動貸金庫には防水対策を施した。2階に5トンの貯水タンク、屋上に非常用発電機を設置。給湯設備は1〜3階が市ガス、残りの階はオール電化とリスクを分散した。
 同信金は震災で当時あった12店のうち10店が全半壊した。現在は8店が営業し、2017年度中に市内の鹿折支店を再建させる。
 式典には市幹部や信金関係者ら約50人が出席し、再建を祝った。菅原務理事長は「地域とともに歩み、経済活性化に尽くしたい。円滑な資金提供で復興の役割も積極的に果たしていく」と述べた。


<震災6年>ともだちカレーで絆取り戻して
 カレーを作って、傷ついた地域の絆を取り戻してほしい。パキスタン出身で仙台市泉区の輸入業タヘル・セイエドさん(49)が、東日本大震災の被災地で炊き出しを精力的に続ける。被災者に積極的に準備してもらう活動で、その名も「ともだちカレー」だ。
 震災七回忌翌日の12日、セイエドさんは陸前高田市の災害公営住宅下和野団地で、古里仕込みのカレーを大鍋に二つ作った。呼び掛けに応じた入居者が材料の下ごしらえと集会所の設営を手伝い、子どもから高齢者まで約50人が香ばしいカレーとナンを頬張った。
 震災が起きた2011年は名古屋市で家族と暮らしていた。直後、単身で東北に入った。一関市を拠点に復興支援に取り組む東京の財団法人「連帯東北・西南」に参加し、本場のカレーを生かそうと考えた。
 「こっちからの一方通行じゃなく、被災者自らが準備し、みんな友達になってもらおう」。財団の佐多保彦代表と意気投合し、各地の仮設住宅で「ともだちカレー」を重ねた。昨年の熊本地震でも現地に赴いた。
 セイエドさんは現在、家族と共に仙台市泉区に暮らす。4月に千葉県浦安市に引っ越すため、12日は東北を離れる前の最後の炊き出しとなった。
 手伝いに来た高校2年の長男アタハルさん(17)が「父の行動を理解できないこともあったが、皆さんの笑顔を見て納得できた」とあいさつすると、会場は拍手に包まれた。
 「自分を家族のように思ってくれる人たちをこれからも助けたい」とセイエドさん。少しでも被災者の孤立をなくそうと、これからも沿岸を訪れ「ともだちカレー」を続けるつもりだ。


<原発避難訴訟>福島地裁結審 判決10月10日
 東京電力福島第1原発事故時に福島県内にいた住民ら3864人が、空間放射線量を事故前に戻す原状回復などを国と東電に求めた訴訟が21日、福島地裁(金沢秀樹裁判長)で結審した。判決は10月10日。今月17日の前橋地裁判決と同様、事故につながった津波の予見可能性、防護対策を巡る東電、国の過失責任が主な争点となっている。
 原告数は全国約30件に上る原発事故の集団訴訟で最も多い。前橋地裁、9月に判決予定の千葉地裁に続いて3例目の結審となった。
 21日は原告4人と代理人が最終の意見陳述をした。二本松市でスーパーの営業を続けてきた服部浩幸さん(47)は「子どもたちを避難させるべきだったと自責の念に駆られている。全ての被害者が希望を持てるよう、勇気と正義にのっとった判決を望む」と訴えた。
 代理人の馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)弁護士は、除染対象が年間被ばく線量1ミリシーベルト以上の区域となっていることを問題視。「1ミリシーベルトは事故前の線量の約6倍で、受忍しなければならない理由は全くない」と述べ、事故前の水準(毎時0.04マイクロシーベルト以下)に下げるよう求めた。
 原状回復を巡り、これまで国は「手段や範囲が特定されておらず、訴えは不適法」と主張。東電は「膨大な費用がかかる。不可能だ」などと反論してきた。
 原告は2013年3月から順次提訴。原状回復まで1人当たり月額5万円の慰謝料も求めている。原告の事故時の居住地は県内外で、県内は全59市町村に上る。
 津波の予見可能性などの争点を巡り、前橋地裁判決は「東電は実際に予見していた」「対策を取っていれば原発事故を防げた」と判断。東電と国の責任を認め、双方に精神的賠償などの支払いを命じた。
 原告らは21日、福島市中心部で集会を開催し、「東電は賠償責任を果たせ」と訴えながらデモ行進した。原告側代理人によると、支援者を含め約1000人が参加した。


原発事故賠償判決 怠慢自覚し猛省すべきだ
 判決は東京電力だけでなく国の法的責任と怠慢を明確に認定し、厳しく批判した。福島第1原発事故で避難を強いられた住民が起こした集団訴訟で前橋地裁が国と東電に損害賠償金の支払いを命じた。巨大津波を予見できたのに対策を怠ったと断じた画期的な判決だ。国と東電は判決文を真摯(しんし)に読み、自らの怠慢を自覚して猛省すべきだ。
 判決は、2002年ごろには第1原発が津波に襲われる可能性を東電は予見できたと認定した。その根拠にしたのは02年7月に政府の地震調査研究推進本部が策定した長期評価だ。福島県沖を含む太平洋側でマグニチュード8級の津波地震が起きる確率は「30年以内に20%程度」としていた。判決は「原発の津波対策で考慮すべき合理的なものだ」とした。
 そして非常用電源や配電盤を高台に設置するなどの対策を講じていれば事故は防げた、と対策を怠った具体例を示した。
 東電が長期評価に基づいて第1原発に15・7メートルの津波が来ることを08年に試算していたことは既に知られている。
 実際に襲った津波は15・5メートルだった。判決はこの点も指摘したが事故の悲惨さを思うにつけ東電の不作為に改めて怒りを覚える。
 判決は国の怠慢も具体的に糾弾した。国が07年8月に東電から原発の耐震設計に関する中間報告を受けていたことを挙げた。「国は規制権限を行使すれば事故は防げたのにしなかった」。実に明快だ。
 世界を震撼(しんかん)させた事故の後、国や東電の怠慢については国会事故調査委員会の報告などによりさまざまな形で指摘されてきた。しかし両者とも「想定外」の一言で責任を回避してきた。
 政府は原発を低コストで安定的に発電できる「ベースロード電源」と位置付け全国の原発の再稼働を目指している。しかも再稼働判断の最終的責任を明確に宣言しないままで、だ。
 今回の判決はこうした「原発回帰」に伴うリスクの責任も国にあることを間接的に警告したと読むべきだろう。
 事故から6年たった今も福島県内外で約8万人が避難生活を続けている。原子炉内の惨状が明らかになるにつれ廃炉作業があと何十年かかるか見通せなくなっている。
 国と東電は精緻な論理で構成された判決の的確な指摘を誠実に受け止め、これまでのかたくなな姿勢を改めてほしい。それが過酷な避難生活を強いてきた被災者に対する「最低限の誠意」ではないだろうか。


福島の声 伝え続けた 月曜夜7〜9時の地元ラジオ番組終了
 東日本大震災後、福島県の現状や問題を発信し続けたラジオ番組が二十七日に終わる。ラジオ福島の「月曜Monday(もんだい)夜はこれから!」。ゴールデンタイムの生放送だが、CMはなく、被災者らの声を取り上げてきた。定年後のアナウンサーの熱意が、被災地の実情を伝える番組を支えた。 (井上能行)
 番組は毎週月曜日の夜七時から九時まで、オープンスタジオにゲストを招き、トークするスタイル。
 進行役はアナウンサーの大和田新(あらた)さん(61)。ラジオ福島所属だった二〇一一年三月十一日午後三時前、東日本大震災が起きた。午後四時ごろ、仕事先から戻ると、翌朝までマイクの前で県民に語りかけた。「一緒に朝を迎えましょう」
 震災後の混乱の中、福島の情報を伝えるトーク番組が始まり、一二年四月、「月曜…」のタイトルに。県外避難者にも伝えようと、インターネットの動画共有サービス「ユーストリーム」でも視聴できるようにした。大和田さんは一五年三月の退職後も、フリーアナウンサーの立場で進行役を務めた。
 ゲストは多彩で、福島県知事や国会議員、東京電力の役員、津波の被災者、東電との損害賠償訴訟原告団の弁護士、地元の大学生や高校生…。ほとんどは大和田さんがインタビュー取材をした後、出演を依頼した。「本当に福島のことを考えていること」が条件だという。インタビューした相手は延べ二千人を超える。
 大和田さんは番組内でリポートするため、毎週、被災地に足を運ぶ。きっかけは、リスナーからの手紙だった。津波の大被害に遭った相馬市の悲惨な状況を訴え、「現場を見てから物を言え」と結ばれていた。
 大和田さんは優しい笑顔で、ゲストから話を引き出す。本番中に涙を流すこともある。政治家や東電幹部には「本当にできるんですか」と、厳しい質問を投げ掛ける。津波で家族を亡くした南相馬市の男性の元に、東電福島復興本社の代表を連れて行ったこともある。
 「月曜…」の中で一二年十二月に放送した「請戸(うけど)小学校の奇跡」は、日本民間放送連盟賞ラジオ生ワイド番組部門の優秀賞を受賞した。
 番組は丸五年を期に、終わりを迎える。終了を惜しむメールは国内外から届いている。高校時代に出演した大学一年生は「伝えることの大切さ、伝わることのすばらしさを教えてくれました」と書いていた。
 大和田さんは「私には、震災を伝える責任があると思って担当していました。本当に残念ですが、自由にやらせてくれたラジオ福島には心から感謝しています」と話す。四月からはふくしまFMで、震災復興を伝える番組を担当する予定だという。


原発避難 いじめ認定 悪口や嫌がらせ、子ども数人に
 東京電力福島第1原発事故で群馬県などに避難した住民らによる集団訴訟で、国と東電の責任を認めた17日の前橋地裁判決が、少なくとも子ども4人について避難先の学校などでいじめや嫌がらせがあり、精神的苦痛を受けたと認定、一部に対し慰謝料の支払いを国と東電に命じていたことが22日までに分かった。
 判決によると、福島県から群馬県に避難した女児は「気持ち悪い、近づくな、吐き気がする」というメモをかばんに入れられた。別の男児は小学校で「福島君」と呼ばれた。
 判決は、子どもたちが知人のいない学校に転校し、友人や祖父母との関係を失ったことなどによっても精神的苦痛を受けたと認定した。


河北春秋
 生活保護を受けていた埼玉県の1人暮らしの高齢女性が、居住する自治体から家のクーラーを外された。それが継続の条件だった。女性は暑さで脱水症状になった。関係者に相談を受けた岡崎トミ子さんは憤慨した▼少しも弱者にやさしい政治じゃない。当時の厚生省に問い「行き過ぎでは」という返答を引き出す。厚相にも掛け合い、病弱な生活保護者のクーラー使用を認めさせた。社会党衆院議員(旧宮城1区)時代のそんな思い出を自著に書いている▼生活者本位の社会を追い求めてきた岡崎さんが亡くなった。1990年、女子アナから政界への転身は世間をあっと言わせた。社会党解党、社民党離党の体験を経て旧民主党結党に参加。直後の衆院選では落選し参院補選で返り咲いた。激流のような有為転変の国政を懸命に生き抜いた▼2009年の政権選択選挙では宮城県連代表として采配を振る。小選挙区で1〜5区を制し「有権者の怒りが地殻変動を起こした」と勝ちどきを上げた。翌年、待望だった東北初の女性閣僚にも就いた▼4年前に政界を退いてからも、護憲や平和運動を続け気さくな笑顔を見せていた岡崎さん。「今の政治を崩すには市民のパワーが必要」。昨年の参院選前の言葉だ。常に市民と共に歩み続けた生涯だった。

「共謀罪」閣議決定/「監視社会」に向かう危険性
 いわゆる「共謀罪」の導入に向けて政府はきのう、組織犯罪処罰法の改正案を閣議決定し、今の国会での成立を目指す姿勢を鮮明にした。
 過去に3度も廃案になった法案と比べると、「テロ等準備罪」へと名称や構成要件が変わり、適用は「組織的犯罪集団」に限られたが、一般人も影響を受けかねない危険な性格は依然残っている。
 法案も提出されたのだから、国会で徹底的に問題点を議論すべきだ。法案の内容に加え、今後予想される捜査手法についても、歯止め策の検討などが不可欠になる。
 共謀(計画)と準備の段階で立件しようとすれば、常識的には私的な通信の傍受や追跡といった捜査が必要。政府内には「通信傍受の対象外」との声があるものの、公権力による監視社会に陥りかねない危険性をはらむことにも十分注意しなければならない。
 共謀罪に対しては、酒の上の冗談で犯行を計画しただけでも犯罪として立件されかねない、と批判されてきた。そのためか政府は今回、「準備行為」も要件に加えた。実行のための資金調達や現場の下見などが該当するという。
 ただ、計画性が条文から消えたわけではないので、計画の段階から捜査が始まっても何ら不思議はない。
 以前は「団体」だった捜査対象も、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と変わった。政府は3年後の東京五輪に備えたテロ対策を強調してきた経緯がある。
 「テロ集団」などの言葉が法律のどこにもないことが批判されて表現が変わったが、では組織的犯罪集団が何を指すのかとなると、曖昧さは拭えない。
 実際にはおそらく、捜査する側が何らかの理由で「組織的犯罪集団の疑いあり」とみなせば、捜査に着手できるということになるのだろう。
 共謀罪が適用される犯罪の数は以前は600を優に超えたが、今回は277と半分以下になった。それでもかなりの数であり、テロとは縁が薄そうな犯罪も含まれる。
 結局、今回の法案でも国際的なテロ組織の取り締まりに特化しているわけではなく、一般国民に適用されることがないと言い切ることは困難。むしろ導入による「副作用」が心配になる。
 計画と準備のみで犯罪を摘発しようとすれば、電話やメールの傍受に頼ることになりかねないし、広範囲に移動を監視する必要も出てくる。通信傍受は今やかなりの犯罪で可能だし、衛星利用測位システム(GPS)の端末をひそかに車に取り付ける捜査も実際に行われている。
 傍受や監視は、容疑者と目される人物の周辺まで及ぶことも十分あり得るだろう。もちろん本人は何も知らないうちに。共謀罪の議論に当たっては、人権やプライバシーが危機にひんしかねないことも決して忘れてはならない。


「共謀罪」法案 説明の矛盾が多過ぎる
 テロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案が閣議決定された。
 政府はかつて「共謀罪」新設の関連法案を3度提出したが、廃案になった。名称を変えた今回の法案も、組織犯罪が計画段階で幅広く処罰可能となる本質は変わらない。
 法整備は、国際組織犯罪防止条約の締結に欠かせないと政府はいう。
 確かに条約締結には意義がある。国際社会が手を結ぶことは必要だ。
 最大の焦点は、締結のためにテロ等準備罪の創設が必要かどうかだ。
 条約は、重大な犯罪の合意(共謀)を処罰できる法整備を締結国に求めている。だが、こうした処罰の規定は人の内心に踏み込む。捜査側の対応次第で国民生活も脅かされる。
 日本の刑法は、犯罪行為に着手した時点で処罰の対象とするのが原則だ。例外的に殺人の予備や内乱の陰謀など重大な犯罪では未遂以前の行為を罰せられる。だが、その数は70程度に限られている。
 今回の法案は従来の原則からかけ離れている。
 条約は各国の国内法の原則に従って法整備することを認めている。ならば現行法で条約締結は可能だというのが民進党など野党の主張だ。
 一方、政府はそれでは締結に不十分だという。政府が国会に提出した資料では、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国のうち、条約締結時に共謀罪などを新設したのは4カ国で、残りはもともとの国内法で対応した。これをどう見るか。
 なぜ法整備が条約締結のための必要条件なのか。法学者ら専門家の見解も分かれる。まずは政府が丁寧に説明し、議論の土台とすべきだ。
 それにしても、これまでの政府の説明には矛盾が目立つ。
 最大のほころびは対象犯罪数だ。条約が法整備を求める4年以上の懲役・禁錮の刑を定める犯罪数は676あり、選別はできないと政府は説明してきた。だが、公明党の意見をいれ、今回の法案では対象犯罪を277に絞り込んだ。これでは過去の説明と整合しない。
 法案の再提出に当たり、唐突にテロ対策の看板を掲げたことも理解できない。条約はマフィアによる犯罪収益の洗浄などへの処罰を目的としたものだ。
 安倍晋三首相が、東京五輪・パラリンピックのテロ対策を理由に「法整備ができなければ開催できないと言っても過言ではない」などと発言するに至っては、まさに首相が批判する印象操作ではないか。
 共謀罪から絞り込んだ要件にも懸念が出ている。組織的犯罪集団に市民が入る余地はないのか、といった点などだ。政府は「共謀罪とは別物だ」との説明を繰り返してきたが、明らかに共謀罪の延長線上にある。


「共謀罪」閣議決定 刑法の原則が覆る怖さ
 政府が閣議決定した組織犯罪処罰法改正案の本質は「共謀罪」だ。二百七十七もの罪を準備段階で処罰できる。刑事法の原則を覆す法案には反対する。
 盗みを働こうと企(たくら)む二人組がいたとしよう。だが、人間というのは犯罪を共謀したからといって、必ず実行に移すとは限らない。現場を下見に行ったとしても、良心が働いて「やっぱり悪いことだからやめよう」と断念する、そんなことはいくらでもある。
 共謀罪が恐ろしいのは、話し合い合意するだけで罰せられることだ。この二人組の場合は共謀し、下見をした段階で処罰される。そんな法案なのだ。何も盗んではいないのに…。
◆当局の解釈次第では
 今回の法案では二人以上の計画と準備行為の段階で摘発できる。準備行為とは「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」と書いてある。ずいぶん漠然としてはいないか。「その他」の文字が入っているから、捜査当局にどのように解釈されるか分からない心配もある。
 犯行資金をATMで下ろすことが準備行為に該当すると政府は例示するが、お金を引き出すというのはごく日常的な行為である。それが犯罪なのか。どう証明するのか。疑問は尽きない。
 共謀罪の考え方は、日本の刑事法の体系と全く相いれない。日本では既遂を処罰する、これが原則である。心の中で考えただけではむろん犯罪たり得ない。犯罪を実行して初めて処罰される。未遂や予備、陰謀などで処罰するのは、重大事件の例外としてである。
 だから、この法案は刑事法の原則を根本からゆがめる。しかも、二百七十七もの罪に共謀罪をかぶせるというのは、対象犯罪を丸暗記していない限り、何が罰せられ、何が罰せられないか、国民には理解不能になるだろう。
◆現行法でも締結可能
 この法案は「キメラ」のようでもある。キメラとはギリシャ神話に登場する怪物だ。一つの体に獅子とヤギと蛇が組み合わさった姿をしている。目的である本体は国連のマフィア対策の条約締結だ。その体に「共謀罪」がくっつき、政府が強調する「テロ防止」がくっついている。
 安倍晋三首相は国会答弁で「東京五輪のために必要な法案だ」という趣旨の発言をした。これは明らかな詭弁(きべん)というべきである。そもそも日本はテロに対して無防備ではない。テロ防止に関する十三もの国際条約を日本は締結している。ハイジャック防止条約、人質行為防止条約、爆弾テロ防止条約、テロ資金供与防止条約、核テロリズム防止条約…。同時に国内法も整備している。
 例えば爆発物に関しては脅迫、教唆、扇動、共謀の段階で既に処罰できる。サリンなど化学物質などでも同じである。
 むしろ、政府は当初、「テロ等準備罪」の看板を掲げながら、条文の中にテロの定義も文字もなかった。批判を受けて、あわてて法案の中に「テロリズム集団」という文字を入れ込んだ。本質がテロ対策でない証左といえよう。
 「五輪が開けない」とは国民に対する明白な誤導である。本質は共謀罪の創設なのだ。
 確かに国連の国際組織犯罪防止条約の締約国は百八十七カ国・地域にのぼる。だが、そのために共謀罪を新設した国はノルウェーやブルガリアなどだけだ。むしろ国連は「国内法の基本原則に従って必要な措置をとる」ことを求めている。「共謀罪がなくとも条約の締結は可能だ」とする日弁連の意見に賛同する。
 そもそもこの条約は国境を越えて行われるマフィアの犯罪がターゲットだ。麻薬やマネーロンダリング(資金洗浄)、人身売買などで、テロ対策の条約ではない。少なくともこの条約締結のために、刑事法の大原則を覆してしまうのは本末転倒である。
 危惧するのは、この法案の行く末である。犯罪組織の重大犯罪を取り締まるならともかく、政府は普通の市民団体でも性質を変えた場合には適用するとしている。米軍基地建設の反対運動、反原発運動、政府批判のデモなどが摘発対象にならないか懸念する。
◆行く末は監視社会か
 専門家によれば、英米法系の国ではかつて、共謀罪が労働組合や市民運動の弾圧に使われたという。市民団体の何かの計画が共謀罪に問われたら…。全員のスマートフォンやパソコンが押収され一網打尽となってしまう。もはや悪夢というべきである。
 実は捜査当局が犯行前の共謀や準備行為を摘発するには国民を監視するしかない。通信傍受や密告が横行しよう。行き着く先は自由が奪われた「監視社会」なのではなかろうか。


「共謀罪」法案  内心の自由危うくする
 戦前のように、人が集まって話し合うだけで罰せられる社会につながりかねない。
 新たな「共謀罪」を柱にした組織犯罪処罰法改正案がきのう閣議決定された。戦後民主主義社会の基底にある内心の自由を危うくする恐れを拭いきれない。
 古来、アリの穴から堤も崩れるという。法案に反対である。
 安倍政権は今国会での法案成立をめざすが、さまざまな疑問に答えられるのか。国民は議論の行方を注視する必要がある。
 改正案は、「組織的犯罪集団」の2人以上のメンバーが重大な犯罪を計画し、少なくとも1人が資金の手配や下見など「準備行為」をしたとき、計画した全員が処罰される、としている。
 実行後の処罰を原則とする現行の刑法体系が、根底から変わることになる。日本弁護士連合会の指摘に危機感がにじむ。
 組織的犯罪集団の例示として、テロ組織や暴力団、麻薬密売組織などを挙げるが、あいまいさが残る。当初は別目的の組織でも、犯罪目的に一変したとみなされれば対象となる。
 そこに恣意(しい)的な運用や捜査が入り込む余地がある。歴史をかえりみて、市民団体や労働団体などにも適用されかねない怖さがある。
 要件である「準備行為」にしても幅がある。内部の計画合意をどう把握するのか。最高裁が違法としたGPS捜査のほか、電話やメールの傍受、おとり捜査などが広がりかねない。
 これでは歯止めがきかない。思想の自由やプライバシーなどが脅かされる監視社会にならないか。
 共謀罪法案は3回国会で廃案になっている。それを政府は2020年東京五輪・パラリンピックのテロ対策と看板を変え、共謀罪を「テロ等準備罪」に言い換えたにすぎない。国民に受け入れられやすいようにとの思惑が透けるだけに、用心しないといけない。
 政府は、2000年に日本が署名した国際組織犯罪防止条約に締結するため、共謀罪の新設が必要というが、もともと条約はマフィアなどによる経済的な犯罪の撲滅をめざすものだ。
 日弁連は、新たな共謀罪なしでも、日本には条約締結できる法制度があると指摘する。組織犯罪集団による犯罪を未遂前に取り締まれる予備罪・共謀罪が計58あり、刑法の共謀規定も含め実際には広く共謀処罰が可能だという。
 なぜ、それ以上に新たな共謀罪が必要なのか。怖さを感じる。


「共謀罪」提案 危険な本質 容認できぬ
 政府はきのう、「共謀罪」の構成要件を変更しテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案を閣議決定し、国会に提出した。
 共謀罪は個人の内心を処罰対象とし、犯罪実行前の幅広い摘発を可能にするものだ。実行後の処罰を原則としてきた刑法の体系を大きく変え、捜査当局の恣意(しい)的な運用を許す恐れが拭えない。
 改正案が過去3度廃案になったのも、問題が多すぎたからだ。多少の修正を経ても本質は変わらない。国会は徹底審議し、危険性を浮き彫りにすべきである。
 テロ等準備罪成立には、テロ集団などの組織的犯罪集団による犯罪実行の共謀に加え、資金調達などの準備行為が必要としている。
 組織的犯罪集団や準備行為の定義自体があいまいで、一般市民が対象となる可能性を排除できていないのが問題だ。
 そもそも、必要性自体に首をかしげざるを得ない。
 政府はこれまで、国際組織犯罪防止条約締結のために共謀罪創設が必要としてきた。今回はそれに加え東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策を強調している。
 安倍晋三首相は「締結できなければ五輪を開けないと言っても過言ではない」とまで答弁した。だが、内容を点検すればテロ対策の看板にも偽りがあるように映る。
 対象犯罪277のうち、組織的殺人やハイジャックなど「テロの実行」に分類されるのは110にすぎない。それ以外は、犯罪の資金源を断つためとして経済犯罪を幅広く含めているのが特徴だ。
 これまでの審議でも、テロのような重大犯罪の防止には既存の予備罪や準備罪などで対処できるとの野党側の再三の指摘に、政府は納得のいく説明をしていない。
 注意すべきは犯罪の準備行為を加えた今回の法案でも、捜査の核心は共謀の立証にあることだ。
 立証には計画段階から集団の動向を監視する必要があり、通信傍受や密告の奨励などの捜査手法が広がる懸念が指摘されている。
 菅義偉官房長官はきのう「テロ等準備罪を通信傍受の対象とすることは全く考えていない」と述べた。だが金田勝年法相は国会で「今後検討すべき課題」と述べ、将来の可能性は否定していない。
 法案が犯罪実行前の自首に刑の減免規定を設けたのも、密告の奨励が目的だとの見方がある。
 政府が意図しなくても、やがては国民生活の隅々に警察の一層の監視の目が光る。そんな社会の到来を許してはならない。


「共謀罪」法案/テロ防止に必要と言うが
 なぜ必要なのか、よく分からない。同じ思いの人も多いだろう。
 政府が「共謀罪」の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案を閣議決定し、国会に提出した。思想や内心が取り締まりの対象となり監視社会につながる恐れがあるなどとして、世論の強い反対で3度も廃案に追い込まれた「共謀罪」法案である。
 政府は東京五輪・パラリンピックのテロ対策に欠かせないと訴える。ところが、当初与党に示された条文には「テロ」の表現がなく、批判を受けて急きょ文言が盛り込まれた。国民のテロへの不安をあおって積年の課題だった法案を成立させようとしているのではないか、と見られても仕方がない。
 これまでの説明を聞いても、残念ながら国民の疑問に誠実に答えようとする姿勢が見られない。
 政府は、国連の国際組織犯罪防止条約締結のために「共謀罪」を新設する必要があると主張する。だが、日本はもともと「予備罪」や「準備罪」などの形で、犯罪の準備行為を処罰の対象にしてきた。法学者からは、これらの法律を活用すれば条約締結は可能で新たな法整備は必要ない、との指摘がある。
 そもそも、この条約はマフィアなどの経済的な犯罪の撲滅を目指すもので、テロ対策のために採択されたものではない。
 国際的なテロへの取り組みでは「テロ資金供与防止条約」などがあるが、日本はすべて締結している。法的な“武器”は相当整備されているのに、政府はさらに強力なものを求めていると映る。
 憲法が保障する人権を侵害し社会が萎縮する、捜査機関が乱用する恐れがあるなど、多くの懸念が指摘されているにもかかわらず、だ。
 当初は676の犯罪を対象とし、一つも減らせないと答弁してきたのに、公明党の要請を受けるや、277に絞り込む。そんな恣意(しい)的な対応には法律の内容よりも成立を最優先する思惑が透けて見える。
 担当大臣の金田勝年法相は先月、質問封じと受け止められかねない文書を公表し、野党に辞任を要求されている。提出された法案を巡っては、不十分な答弁で審議を停滞させるようなことは許されない。
 もとより議論を尽くすことなく、与党が採決を強行するようなことはあってはならない。


「密告社会」に不安も 「共謀罪」閣議決定、懸念広がる
 「市民団体や労働組合の活動が監視される」「密告社会や冤罪(えんざい)をつくりかねない」−。共謀罪の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案が21日に閣議決定されたことを受け、市民に及ぼす影響への懸念が京都市内で広がった。旧東ドイツからの移住者は言論の自由が脅かされることを不安視し、市民たちは今後の国会での議論に注目している。
■市民団体「廃案に追い込もう」
 京都市右京区の西大路通四条交差点では京都総評、自由法曹団京都支部、日本国民救援会府本部の3団体が、同法案に反対する街頭宣伝活動を行った。参加者15人が抗議声明文のビラを配り、駅利用者らに「共謀罪を廃案に追い込もう」とアピールした。
 街頭で各団体の代表者は共謀罪に反対の意志を示す横断幕を手にして「憲法違反の法案だ」「自由に物を言えない社会になる」と批判の声を響かせた。
 喜久山大貴弁護士は法案について道行く人々に説明しながら「計画の段階で処罰され、刑法を根本から覆す法案だ。捜査機関に恣意的(しいてき)に運用され、乱用される可能性があることを知ってほしい」と訴えていた。
 下京区の四条通河原町交差点でも市民グループ「共謀罪を4度目も廃案にさせるALL京都」を中心とした緊急街宣活動があった。
 さまざまな市民団体から15人のメンバーが参加した。伏見区の里中悦子さん(59)は「これまでの3度と同様に、法務委員会での議論や世論の動きで廃案に持ち込まねばならない。多くの人に関心を持ってほしい」と呼び掛けた。かつて治安維持法で知人が逮捕されたという同区の村上敏明さん(82)は「当時と同じ思いを若い人にさせたくない。閣議決定されたからと萎縮せず、声を上げ続けたい」と語った。
 また、府保険医協会の垣田さち子理事長は同日、「個人の自由を制約し、基本的人権を侵害する恐れが強い法の創設を到底看過することはできない」とのコメントを発表した。
■果たせるか、メディアの政府監視
 旧東ドイツ出身で監視社会の息苦しさを知る早稲田大教授クラヴィッター・アルネさん(47)=京都市左京区=は「ドイツでは武器保持などの証拠がない限り、テロを画策した疑いだけでは逮捕されない。法は正確に理解して使うことが大事だ」と主張する。
 第2次世界大戦後、秘密警察(シュタージ)の盗聴や盗撮による監視社会だった旧東ドイツの港湾都市ロストックでアルネさんは生まれた。造船技術者だったが、叔母が西ドイツへ亡命したため、外国への逃亡が容易な船乗りの夢はあきらめざるをえなかった。政府の監視について「国民は内輪では政府を批判していたが、表向きは悪口は言えなかった。電話が盗聴されていると気づけば政治的なことは一切話さなかった」と振り返る。
 1989年、東側でベルリンの壁崩壊を体験した妻のハイドルンさん(47)は「壁が崩壊する2年ほど前から監視が強まっていた。亡命する友人も多かった」という。
 日本の共謀罪法案に、アルネさんは「テロリストによる核兵器使用などを考えれば、テロ対策は必要でドイツでも対応は似たような状況だ」と一定の理解は示す一方、「東ドイツ時代は政府礼賛のニュースばかりで批判がなかった。物を言いにくくなり、メディアが政府を冷静に監視する機能を果たせなくなることが心配だ」と懸念している。


「共謀罪」閣議決定 国会で徹底審議が必要だ
 数多くの懸念や疑問を抱えた法案である。国会で徹底的な審議が必要であるのは言うまでもない。
 政府はきのう、共謀罪の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。
 私たちは慎重な対応を繰り返し政府に求めてきたが、政府はまず制定ありきの姿勢を崩さず法案づくりを優先させた。拙速で泥縄式の対応と言わざるを得ない。
 犯罪を行おうと2人以上で合意した段階で処罰する共謀罪は日弁連や市民団体、野党などの反対で過去に3回も廃案となった。話し合ったりメールをやりとりしたりするだけで罪に問われ、憲法が保障する思想信条の自由を侵しかねない。そんな恐れが強いからだ。
 政府は2020年東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策を前面に掲げて、今回の「共謀罪」新設に国民の理解を得ようとした。安倍晋三首相は「制定できないと五輪が開催できないと言っても過言ではない」とまで言い切った。ところが、法務省の原案には「テロ」の文言が一切なく、慌てて付け加えるお粗末さだった。
 実行後の処罰を原則とする刑法体系に反すると指摘され、資金手配や下見など「準備行為」を要件に加えた。しかし「心の中」を罰しようとする本質は変わらない。
 対象犯罪が676では多過ぎると注文され277に絞り込んだ。それでも市民団体や労働組合に適用される恐れは消えない。対象は「組織的犯罪集団」だが、政府見解は「正当な活動をしていた団体も目的が一変した場合は組織的犯罪集団」と曖昧だ。捜査当局の恣意(しい)的運用への懸念も拭えない。
 政府は国際組織犯罪防止条約の締結に必要とも説明するが、現行法で対応できるとの意見は根強い。対象犯罪の絞り込みが適正なのか、納得のいく説明もない。
 共同通信社の最新世論調査によると、改正案に反対は45・5%で、賛成の33・0%を上回った。問題の多い法案であることを多くの国民が憂慮している。
 この世論を肝に銘じて、国会は審議を尽くしてほしい。


「共謀罪」国会提出 無用で害悪、即刻廃案に
 無駄なことの例えに「屋上屋を重ねる」という言葉がある。政府が国会に提出した組織犯罪処罰法改正案、いわゆる「共謀罪」法案はまさにその典型だ。現在ある法に基づいて対応できるのに、なぜ無用の法を加える必要があるのか。
 捜査機関の恣意(しい)的な運用で市民監視社会に道を開きかねない悪法でもある。無駄どころか害悪でしかない。
 法案の柱は犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の新設だ。現行刑法は犯罪の結果である「既遂」に対する処罰を原則としている。犯罪の前段階である「未遂」「予備」「陰謀」は、それぞれ殺人や内乱など引き起こされる結果の重大性によって厳密に適用される範囲が定められている。
 計画段階での処罰を可能にすることは「既遂」を原則とする刑法の体系をも根幹から揺るがす。
 政府は「共謀罪」の必要性に関してテロ防止を前面に掲げ、法案成立を急務とする。だが化学兵器や病原体などの使用、犯罪による収益に関する事実の隠匿など、テロ行為につながる準備段階の行為は、現行法でも処罰できる。
 テロ防止が目的だとしても、犯罪行為を計画段階で察知するには、捜査機関にさらなる権限を与えることが予想される。手段としては盗聴、尾行、潜入(おとり)捜査などが考えられる。これらが日常的に実行されれば、まさに警察による監視社会の実現だ。
 米軍基地周辺で行われる抗議活動が兵器や弾薬などの損壊行為に向けた下見と見なされ、「共謀罪」の適用対象になるという懸念は与野党にかかわらず存在する。
 安倍晋三首相は1月の国会答弁で、処罰対象は「そもそも犯罪を犯すことを目的とする集団」としていたが、2月には「そもそもの目的が正常でも、一変した段階で一般人であるわけがない」と説明を変えた。労働組合など正当な目的の団体であっても、捜査機関が「組織的犯罪集団」として認定すれば処罰対象にすると受け止められる。
 東村高江でのヘリパッド建設に対する抗議活動で本来なら立件すら疑わしい事案を公務執行妨害などとして起訴し、政権批判を封じるのが現政権の体質であり、司法も追認する。犯罪集団と認定される危険性は誰にでもあるが、現政権で歯止めはないに等しい。市民社会の自由が奪われる前に即刻廃案にすべきだ。


[「共謀罪」閣議決定]人権軽視の懸念拭えず
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が閣議決定された。
 看板は変わっても、過去3度廃案になった共謀罪と本質的に変わりはない。内心の自由や表現の自由を脅かしかねず、強く反対する。
 政府は2020年の東京五輪に向けた「テロ対策」として法案の必要性を強調している。
 適用対象はテロ組織や暴力団など「組織的犯罪集団」で、2人以上で犯罪を計画し、うち1人でも資金の手配や関係場所の下見など「準備行為」をしたときに、計画に合意した全員が処罰される。
 対象となる犯罪を当初の半分以下の277に絞り込んだとはいえ、範囲は広い。
 話し合っただけで処罰されるというのは、犯罪実行後の「既遂」を原則としてきた日本の刑法体系を根本から覆す。思想及び良心の自由を保障した憲法にも反する。
 とりわけ世論の批判が強いのは、市民がその対象となり、監視社会への道を開く恐れである。
 政府は「一般市民が対象となることはない」と繰り返し説明する。しかし組織的犯罪集団の概念はあいまいで、「正当な活動をする団体でも目的が一変すれば処罰の対象となる」との見解を示している。一変したかどうかを見極める捜査機関の恣意(しい)的な運用への懸念が消えない。
 戦時中に戻るような嫌な空気が漂うのは、国家が国民の心の中に踏み込む「監視の網」が広がろうとしているからだ。
■    ■
 改正案が反基地運動を展開する市民をターゲットにしているのではとの批判の声も根強い。
 米軍基地周辺での抗議行動が刑事特別法の「軍用物などの損壊」の下見と見なされたり、座り込みなどの呼び掛けが組織的威力業務妨害罪の「共謀」とされる可能性の指摘だ。
 法律の拡大解釈や過剰な取り締まりは、市民運動を萎縮させる。
 反基地運動のリーダーが微罪にもかかわらず約5カ月にもわたって勾留されたことと背景が似ている。自分たちにとって不都合な声を封じ、排除しようとするのが安倍政権のやり方なのか。
 名護市辺野古の新基地建設を巡って、これから埋め立て工事が本格化すれば、政治的表現の自由への規制が一層懸念される。
■    ■
 政府は共謀罪ではなく「テロ等準備罪」との罪名を持ち出しテロ対策を前面に掲げるが、当初与党に示した案には「テロ」の表記がなかった。
 もちろんテロを未然に防ぐことは重要である。だがすでに一定の重大な犯罪には共謀罪、予備罪などが整えられている。政府が法改正の根拠とする国際組織犯罪防止条約も現行法のままで締結できる。
 特定秘密保護法の制定と通信傍受の拡大を柱とした改正刑事訴訟法の成立、今回の共謀罪は密接に関係している。
 民主主義社会の根幹である基本的人権を軽視し、市民生活に深刻な影響を及ぼす法律をつくる必要はない。


基本的人権との摩擦生む/「共謀罪」法案
 政府は共謀罪を取り入れた組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。改正案は2人以上で重大な犯罪を計画すれば、実行しなくても処罰の対象となる。犯罪の実行で結果が発生して初めて罰するという刑事法の原則を大きく変える。捜査機関は計画段階の犯罪をあぶり出すため社会に監視の網を広げようとするだろう。
 通信傍受で電話やメールの内容に目を光らせたり、隠し撮りしたり。屋内に送信機を仕掛け日常会話を拾う会話傍受など新たな捜査手法の導入も警察内で検討課題になっている。プライバシーの領域に立ち入ることなしに「内心」を探ることはできず、憲法が保障する基本的人権との摩擦を生むのは避けられない。
 政府は2020年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策を強化するのに不可欠とする。過去に批判を浴び、法案が3度廃案になったときの共謀罪と違い、構成要件が厳格で一般の人が対象になることはあり得ないとも言う。
 適用対象は「組織的犯罪集団」だが、普通の団体なども目的が一変した場合には対象になると政府は答弁している。対象犯罪も当初の半分以下に減らしたとはいえ300近くに及ぶ。拡大解釈や過剰な取り締まりによって、国への批判を萎縮させる恐れが指摘されている。
 政府は閣議決定した法案から「共謀」の2文字を完全に消した。「内心の自由」を侵すと批判を招き、日の目を見なかった過去の共謀罪法案と異なることを強調するためだ。共謀罪ではなく「テロ等準備罪」という罪名を持ち出し、テロ対策を前面に掲げた。
 しかし、いくら字面をいじっても共謀を罰するという本質は変わらない。組織的犯罪集団は「重大な犯罪を実行するために結合する団体」と定義されるが、常習性や反復継続性などの要件はなく、市民団体や会社も対象になるとの懸念は根強い。
 そもそもなぜ、この法案が必要なのか。政府は航空機乗っ取りなどの事例をいくつか挙げ「現行法では的確に対処できない」とする。野党が有力な学説を引き「ハイジャック防止法の予備罪を適用できる」と指摘しても「予備罪に当たらないこともある」と繰り返し、具体的に現行法のどこに不備があるのかは判然としない。政府は今後の審議で、こうした疑念や不安の数々にこたえていく必要がある。


「共謀罪」提出 数で押すのは許されぬ
 「共謀罪」法案が、いよいよ国会に提出された。
 共謀罪は「内心の自由」を侵すとの強い批判から、過去3度も廃案になっている。政府は閣議決定に当たり、関連の組織犯罪処罰法改正案から「共謀」の文字を消去。「これまでの法案とは違う」とする体裁を整えた。
 だが本質は変わらないと見るべきだろう。政府は犯罪実行のための準備行為など、構成要件を厳格化した上で「テロ等準備罪」という罪名をひねり出した。2020年東京五輪・パラリンピックに向け表看板をテロ対策に代えて反発をいなす思惑が透ける。
 ところが当初、与党に示した改正案には「テロ」の表記が欠けていた。テロ防止を訴えているのにおかしいと指摘されると「テロリズム集団その他の犯罪集団」と適用対象でテロに言及。まさに「体裁を整えた」感が強い。
 対象は「組織的犯罪集団」であり、一般人が対象になることはあり得ない―と政府は説明するが、これまでの答弁では、目的が一変した場合は対象になるとしている。線引きは極めてあいまいだ。
 対象犯罪は当初の676から277に絞られたが、それでも相当数。拡大解釈など、捜査機関の恣(し)意(い)的運用に堕する懸念は依然として残る。
 そもそも、これまで政府は「共謀罪」創設が加盟の条件とする国際条約の規定を盾に「対象犯罪は減らせない」との立場だった。このあたりにも世論の空気を見据え体裁にこだわった様子がありあり。政府、与党が年明け以後の国会の議論から学び取った中身の程が知れる。
 共同通信が今月実施した電話世論調査では、改正案について反対が45・5%で賛成の33・0%を上回った。前回1月時点では、賛成42・6%で反対40・7%より多かった。
 法案提出前の議論を封じる動きを見せるなど、担当閣僚のヨレヨレの答弁もあり、議論を経て賛成を大幅に減らした事実は重い。
 言論弾圧の後ろ盾となった戦前の治安維持法も、国は当初「一般国民は無関係」などと説明していた。なぜ今、法案が必要なのか。「五輪があるから」は説明ではない。
 野党が有力な学説を引きつつ現行法でもテロ対応は可能と訴えても、政府は「必要」を繰り返すばかり。国際条約加盟に必要―との説明に日弁連などが疑義を挟んでも、まともな反論もない。
 法案は人権の問題に直結する。成立すれば「未遂が処罰されず、計画段階で処罰される犯罪が出てくる」との指摘もある。犯罪の実行を処罰対象とする刑事法の原則に関わる重大な局面を政権が厳粛に受け止めるなら、数の力で押すのは決して許されない。


共謀罪法案 危うさを見極めねば
 「共謀罪と呼ぶのは全くの間違いだ」「一般の人が対象になることはあり得ない」…。政府が国会で繰り返してきた説明は、いずれも論拠を欠いている。本質にある危うさを見極め、法案の審議に厳しい目を向けていかなくてはならない。
 広範な犯罪について、共謀したことを処罰の対象にする法案を、政府が国会に提出した。今国会での成立を目指している。
 内心の動きではなく行為を罰する刑法の基本原則から逸脱し、処罰の枠組みを一気に押し広げる。捜査機関の権限が歯止めなく拡大することになりかねない。
 過去に3度、国会で廃案になった法案の焼き直しである。東京五輪に向けたテロ対策を前面に掲げた今回、政府は「テロ等準備罪」と呼び名を変えたほか、対象を「組織的犯罪集団」に限定したと説明する。一定の準備行為があることも処罰の要件に加えた。
 けれども、共謀が罪とされることは変わらない。準備行為として例示した「資金または物品の手配、関係場所の下見その他」も、恣意(しい)的な運用の歯止めにならない。たまたま立ち寄っただけでも下見と判断される余地がある。
 何が組織的犯罪集団にあたるのかも明確でない。犯罪目的で結成するのではない市民団体や労働組合、NPOも「目的が一変した」として捜査対象になり得る。政府の方針に反対する人たちが標的にされる懸念は消えない。
 共謀罪の導入は、逮捕や捜索、差し押さえなど強制力を伴う捜査を、早い段階から可能にする。立件はされなくても、権限が乱用され、プライバシーや人身の自由が侵される恐れは高まる。
 また、共謀を察知するには日常的な動向の把握が欠かせない。そうでなくても警察は、GPS(衛星利用測位システム)端末や隠しカメラの設置を秘密裏に行ってきた。市民の活動や生活が監視される恐れはさらに増すだろう。
 戦前、治安維持法が制定された際にも、一般の人に累は及ばないと政府は強調した。その後、広範な人々の思想・言論弾圧につながったことは歴史が示している。
 憲法は、刑罰権の乱用を防ぐため、刑事手続きについて諸外国に例を見ないほど詳細な規定を置いた。捜査・治安当局の横暴によって著しく人権が侵害された反省を踏まえたものだ。
 そのことに立ち戻って考えれば、廃案にすべき法案である。政府与党が強引に審議を進めることがあってはならない。


「共謀罪」法案 なぜ必要か疑問に答えよ
 一般の人が対象となることはないのか。強い危惧を覚える。
 政府は、犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案を閣議決定し、国会に提出した。
 成立すれば、実行後の処罰を原則としてきた日本の刑法体系は大きく変わることになる。
 共謀罪は過去に3度、廃案となっている。捜査機関による乱用の恐れなどがあるとして、世論が強く反対したためだ。
 今回の法案も実質的には従来とほとんど同じ内容と言える。
 ところが政府は、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けテロを含む組織犯罪を未然に防ぐために必要だと強調する。
 国際組織犯罪防止条約の早期締結を目指したいが、条約は締結国に共謀罪の整備を求めているというのである。
 しかし、そもそもこの条約はテロを想定したものではない。マフィアなどによる経済的な犯罪の撲滅を目指したものだ。
 政府は2001年の米同時多発テロ以降、条約がテロ対策の性格を帯びたと主張する。
 ところが今国会で「テロ等準備罪」の呼称を使用したものの、条文に「テロ」の文言がなかった。
 批判を受け急きょ挿入することを決めている。改正法案成立を急ぐために国民が受け入れやすい「看板」にした疑念は拭えない。
 法案では適用対象を「組織的犯罪集団」に限定し、政府はテロ組織や暴力団、麻薬密売組織などを例示している。
 2人以上で犯罪を計画し、このうちの少なくとも1人が資金の手配や関係場所の下見などの「準備行為」をしたときに、計画に合意した全員が処罰されることとなる。
 日弁連などは、犯罪主体がテロ組織などに限定されているとは言えず、市民団体や労働組合にも適用される余地があるなどと批判している。
 政府は「立証には高いハードルがあり乱用する恐れはない」と強調するが、これまでの議論で懸念が払拭(ふっしょく)されたとは言い難い。
 政府は当初、条約の規定に基づいて676の犯罪を対象とする方針だったが、公明党などの批判を受け277に絞り込んだ。
 過去には「犯罪の内容によって選別できない」との答弁書を閣議決定しており、整合性も問われるのではないか。
 共同通信の世論調査では「共謀罪」について反対が45・5%で、賛成の33・0%を上回っている。
 県内では、県弁護士会が法案の国会提出に反対する会長声明を出していた。
 新発田市議会は国に慎重審議を要請する意見書の提出を求める陳情書を採択し、柏崎市議会も「共謀罪」に反対する議員発案の意見書を採択する予定となっている。
 テロを未然に防ぐ対策を政府が講じることは必要だろう。だが条約締結については、現行法のままでも可能だという指摘もある。
 なぜ「共謀罪」が必要なのか、政府には十分な説明が求められる。「数の力」で採決を強行するようなことがあってはならない。


共謀罪法案/監視の網が広がる恐れも
 政府は共謀罪を取り入れた組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。今国会に提出する。成立すれば、2人以上で重大な犯罪を計画したら実行しなくても処罰の対象となり、犯罪の実行で結果が発生して初めて罰するという刑事法の原則を大きく変える。犯罪を計画段階で防ぐ狙いは分かるが、必要以上に社会に監視の網が広がる恐れがある。
 通信傍受で電話やメールの内容に目を光らせたり、隠し撮りしたりに加え、屋内に送信機を仕掛け日常会話を拾う会話傍受など、新たな捜査手法の導入も警察内で検討課題になっている。プライバシーの領域に立ち入ることなしに「内心」を探ることはできず、憲法が保障する基本的人権との摩擦も予想される。
 政府は2020年の東京五輪・パラリンピックに向けテロ対策を強化するのに不可欠とする。過去に批判を浴び、法案が3度も廃案になったときの共謀罪と全く違い、構成要件が厳格で一般の人が対象になることはあり得ないと言う。だが法案の条文から、それは読み取れない。
 適用対象は「組織的犯罪集団」だが、普通の団体なども目的が一変した場合には対象になると政府は答弁。対象犯罪も当初の半分以下に減らしたとはいえ、300近くに及ぶ。拡大解釈や過剰な取り締まりにより国への批判を萎縮させる恐れも指摘される。今後の審議で数々の疑念や不安が解消されるかどうかだ。
 政府は閣議決定した法案から「共謀」の2文字を完全に消した。「内心の自由」を侵すと強い批判を招き、日の目を見なかった共謀罪法案とは異なることを強調するためだ。共謀罪ではなく「テロ等準備罪」という罪名を持ち出しテロ対策を前面に掲げた。過去の条文にあった「共謀」も「計画」に置き換えた。
 さらに犯罪の合意−つまり共謀に加え、下見などの「実行準備行為」がないと処罰できないよう構成要件を厳格化したとする。ところが先に与党に示した原案には「テロ」の表記は一切なく、テロ対策としてきた政府説明との整合性を問われた。
 このため「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と適用対象でテロに言及した。しかし、いくら字面をいじっても、共謀を罰するという本質は変わらない。しかも組織的犯罪集団は「重大な犯罪を実行するために結合する団体」と定義されるが、常習性や反復継続性などの要件はなく、市民団体や会社も対象になるとの懸念は根強い。
 また犯罪の計画について現実的、かつ具体的でなければならないと政府は繰り返し説明しているものの、条文にそのような記述はない。下見のほか資金や凶器の用意などが例示される準備行為にしても、あいまいだ。
 なぜ、この法案が必要なのか。政府は「テロの未然防止」を強調。テロの実行に着手する前に一網打尽にしたいが、航空機乗っ取りなどの事例を挙げて「現行法では的確に対処できない」とする。
 野党が有力な学説を引き「ハイジャック防止法の予備罪を適用できる」と指摘しても「予備罪に当たらないこともある」と繰り返すばかりで、具体的に現行法のどこに不備があるのか説明はない。この法案のあいまいさと危うさはまだ解消されていない。


「共謀罪」閣議決定 人権脅かす危険法案に反対する
 政府が昨日、「共謀罪」の名称や構成要件を変えた「組織犯罪処罰法改正案」を閣議決定、直ちに衆院に提出した。
 「共謀罪と呼ぶのは全くの間違い」「(改正案を成立させ国際組織犯罪防止条約を締結できなければ)東京五輪を開けないといっても過言ではない」。安倍晋三首相は声高に繰り返したが、改正案を見る限りその認識こそ「全くの間違い」と断じざるを得ない。国民にとって極めて危険で、にもかかわらず疑問だらけのずさんな法案を強硬に成立させることは許されない。なぜ今必要なのか、徹底論議と抜本見直しを国会に求めるとともに、何度でも強く反対する。
 犯罪を計画段階で処罰できる共謀罪は、現行刑法の「既遂処罰」原則の大転換であり、憲法が保障する内心の自由など国民の人権を大きく脅かす危険がある。批判を受け過去3度廃案になったが、今回の改正案でもその「本質」は何ら変わっていない。適用対象や要件を狭めたように見せて、恣意(しい)的な運用や拡大解釈の余地は残ったまま。広く一般人、つまりは捜査機関が怪しいとにらんだ相手なら誰でも、心の動きを罪とした逮捕が可能になる。監視強化や、政府方針と異なる意見を持つ国民の萎縮は避けられず、新設に前のめりな国の本音を危惧する。
 政府与党は、共謀罪を「テロ等準備罪」と言い換え、目的を「テロ防止、五輪対策」と強調してきた。だがそれが体のいい口実にすぎなかったことは、当初案にテロの文言が抜けていたことからも明らか。慌てて適用対象に「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と例示的に足したが、自民党の法務部会でさえ「テロ防止にはほとんど役立たない」との指摘が出たという。そんな案を「歯止めがかかった。国民の理解は得られる」(公明党幹部)などと諾々と了承した与党の姿勢にも、大きな失望を禁じ得ない。
 「組織的犯罪集団」といえばさも限定的に聞こえるが、法務省は「正当な団体でも、目的が一変した場合は組織的犯罪集団になる」。誰がいつ、何をもって「一変した」と判断するのか不明で、限定の根拠には全くなり得ない。あらかじめ目を付け常態的に監視でもしない限り、「一変」の判断は困難だろう。
 首相らはオウム真理教の例を頻繁に引くが、当時この法案があったとしてもテロ行為を察知し、防げたとは思えない。逆に今回、犯罪成立要件に付加した「準備行為」があれば、この法案がなくても多くは現行法の予備・準備罪で対処可能。広すぎると批判を浴びた対象犯罪は676から277に減らしたが、これまで絞り込みは「条約上できない」の一点張りだったのに今回なぜ急に減らせたのかも、削減の根拠も分からない。
 国民の人権を揺るがす法案の重大性に比して、政府の説明はあまりに拙速かつ稚拙。やはり容認はできない。諦めず、反対の声を上げ続けねばならない。


【「共謀罪」法案】 国民の不安を拭えるのか
 政府は、共謀罪の構成要件を変えた組織犯罪処罰法改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。
 共謀罪を新設するための法案は2003年から05年にかけ、3度国会に提出された。いずれも国民の強い反発で廃案になっている。
 今回の改正案は「組織的犯罪集団」に適用すると規定し、対象となる犯罪も絞った。とはいえ、根強い懸念を解消できるのか。国会審議を通じ、問題点を浮き彫りにしなければならない。
 共謀罪は重大犯罪の実行行為がなくても、謀議に加わるだけで処罰できるようにするものだ。
 ごく一部の例外を除き、実行された犯罪を裁く刑事法制の原則を大きく転換することになる。それだけに捜査当局の恣意(しい)的な判断で、市民活動や思想・信条の自由を脅かされないか、不安がつきまとう。
 政府は20年の東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策の強化をうたい、罪名を「テロ等準備罪」と呼んで構成要件を見直した。テロを未然に防ぐ必要性は言うまでもないにせよ、根本的な危うさは残ったままといわざるを得ない。
 改正案ではこれまでの批判を踏まえ、当初は676としていた対象犯罪を277に絞ったが、それでも捜査機関による乱用の恐れは拭えない。
 政府は適用対象を「組織的犯罪集団」と位置付けるが、一方では「正当な活動をする団体も目的が一変すれば組織的犯罪集団となる」と説明している。
 「一変」したかどうかの基準も「具体的な事情を考慮して総合的に判断する」(金田法相)という曖昧さだ。捜査機関側がいかようにも判断しかねない。
 構成要件とする犯罪の準備行為にしても、同様の懸念が浮かぶ。現場の下見や資金調達などを挙げるが、犯罪の準備とどう認定するのか。拡大解釈の余地があれば、乱用の歯止めになるまい。市民による集会やデモへの抑圧につながらないか。
 政府はテロ対策を前面に押し出すものの、当初の改正案には「テロ」の表記さえなかった。
 そもそも、政府が「共謀罪」を設ける根拠とする国際組織犯罪防止条約にしてもテロ対策がメインではなく、マフィアによる薬物犯罪や資金洗浄などを想定したものだ。
 既に締結した国でも、既存の国内法で対応したケースが多い。日本もテロに関連する犯罪について現行法の予備罪や準備罪で対応できるとの指摘がある。
 直近の世論調査では改正案に反対の声が45・5%と、賛成の33・0%を上回っている。政府の前のめり姿勢とは裏腹に、国民が抱える懸念を表しているといってよい。
 現行法や個別の犯罪に関する予備罪などの検討で、なぜ対応できないのか。
 国民の人権に大きく関わる問題だけに、数の力で押し切ることは許されまい。国民が納得できるだけの説明を求める。


「共謀罪」法案提出◆「内心の自由」侵される恐れ◆
 政府は、共謀罪を取り入れた組織犯罪処罰法改正案を閣議決定し、国会に提出した。成立すれば、2人以上で重大な犯罪を計画したら実行しなくても処罰対象となり、犯罪の実行で結果が発生して初めて罰するという刑事法の原則を大きく変える。
 捜査機関は計画段階の犯罪をあぶり出すため、社会に監視の網を広げようとするだろう。プライバシーの領域に立ち入ることなしに「内心」を探ることはできず、憲法が保障する基本的人権との摩擦を生むのは避けられない。
一般人も適用対象か
 過去に批判を浴び、法案が3度も廃案になったときの共謀罪と違い、構成要件が厳格で一般の人が対象になることはあり得ないと政府は言う。だが法案の条文から、そうしたことは読み取れない。
 適用対象は「組織的犯罪集団」だが、普通の団体なども目的が一変した場合には対象になると政府は答弁。対象犯罪も300近くに及ぶ。拡大解釈や過剰な取り締まりにより国への批判を萎縮させる恐れも指摘され、今後の審議で数々の疑念が解消されない限り、この法案は受け入れられない。
 政府は閣議決定した法案から「共謀」の2文字を消した。「内心の自由」を侵すと強い批判を招き、日の目を見なかった共謀罪法案とは異なることを強調するためだ。共謀罪ではなく「テロ等準備罪」という罪名を持ち出し、テロ対策を前面に掲げた。
 さらに犯罪の合意-つまり共謀に加え、下見などの「実行準備行為」がないと処罰できないよう構成要件を厳格化したとする。ところが先に与党に示した原案にはテロ等準備罪も含め「テロ」の表記は一切なく、テロ対策としてきた政府説明との整合性を問われた。
 このため「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と適用対象でテロに言及した。しかし字面をいじっても、共謀を罰するという本質は変わらない。
現行法の限界説明を
 しかも組織的犯罪集団は「重大な犯罪を実行するために結合する団体」と定義されるが、常習性や反復継続性などの要件はなく、市民団体や会社も対象になるとの懸念は根強い。また犯罪の計画について現実的、かつ具体的でなければならないと政府は繰り返し説明しているものの、条文にそのような記述はない。下見のほか資金や凶器の用意などが例示される準備行為にしても、あいまいだ。
 そもそもなぜ、この法案が必要なのか。政府は「テロの未然防止」を強調。航空機乗っ取りなどの事例をいくつか挙げて「現行法では的確に対処できない」とする。
 野党が有力な学説を引き「ハイジャック防止法の予備罪を適用できる」と指摘しても「予備罪に当たらないこともある」と繰り返すばかりだ。具体的に現行法のどこに不備があるのか説明しない。どこまでいっても、この法案にはあいまいさと危うさがつきまとう。


「共謀罪」が閣議決定 人権侵害の恐れないか
 過去に廃案となった「共謀罪」を取り入れた組織犯罪処罰法改正案が閣議決定され、今国会に提出された。政府は東京五輪を控えてのテロ対策を強調するが、法が恣意(しい)的に運用されれば、国民のあらゆる行為に捜査の目が向けられる恐れがある。基本的人権を侵害することはないのか、慎重な法案審議が求められる。
 政府は共謀罪ではなく、「テロ等準備罪」と呼ぶ。菅義偉官房長官は閣議決定後の会見で「かつての共謀罪と明らかに別物。3年後の五輪に向け、テロを含む組織犯罪を未然に防ぐために万全の態勢を整えたい」と理解を求めた。
 法案はテロリストなどの犯罪集団が重大犯罪を計画し、そのうちの一人が現場の下見や、資金や物品の手配など準備行為に着手した場合、計画に関わった全員を逮捕できるとしたものだ。
 過去に3度廃案になった経緯を考えれば、政府も「国際社会と連携したテロ対策」と国民の理解を得たいだろう。ただ、そのために、犯罪行為の実行を構成要件とする刑法の大原則を変えるやり方には釈然としないものがある。
 対象となる罪は277に及ぶ。テロ対策と言いつつ、その犯罪を見ると「無資格モーターボート競走」「商標権侵害」「株式の超過発行」などテロとの関係性を感じにくいものが多い。国民を守るには犯罪の準備段階から取り締まることが必要なケースもあるが、殺人やハイジャックなどの凶悪犯罪には予備罪が適用できる。現行法でも対応できそうなのに、新たな「準備罪」は必要なのだろうか。
 法案は犯罪集団に限定し、市民団体や労働組合などが捜査を受けることはないとする。しかし、テロリスト集団が構成員の名簿をつくるはずもない。捜査機関はテロ行為への「協力者」を捜すため、捜査の範囲を広げるだろうし、無関係の国民が内偵されることもあるだろう。また、市民団体が捜査機関の判断で「犯罪集団」となる懸念はぬぐえていない。
 犯罪の構成要件に「現場の下見」がある。今はあらゆるところに監視カメラがあり、携帯電話の電源が入っていれば、位置情報も簡単に把握できる。偶然、犯行現場の予定地近くを通ることもあるだろう。それを「下見」と見なされる間違いは起きないのか。
 テレビの取材で女性が「まだ起きていない犯罪に、自分が関与していないことをどう証明できるのか」と話したが、詳細に検証しないと不安が尽きない法案だ。
 国会は今、政治家の関与が疑われている森友学園への国有地払い下げ問題で揺れている。自民党は全容を知る官僚の国会招致を拒み続ける。政官癒着の疑惑解明を棚上げして、権力による監視で国民の萎縮を招く恐れがある「共謀罪」の審議をすることは許されるのか。混乱に乗じて法案を成立させようという意図も感じられる。
 テロ対策を大義名分にした警察権の強化が進められている。戦前や戦中は警察権の乱用で、政治的な不満を力で抑えた。その反省から、現行憲法や刑法が逮捕権の行使に慎重であることを再び思い起こしたい。
 基本的人権は一度後退すれば、元に戻すのは簡単ではない。後悔をしないためにも、法案審議は時間にとらわれず、慎重に進めるべきだ。(日高勉)


[「共謀罪」提出] 人権を抑圧する武器になりかねない
 日本を監視社会に変え、市民生活を息苦しくするようなことはないのか。
 政府の意に沿わない市民活動などにも幅広く法の網をかけ、取り締まることはないのか。
 人権や自由を侵害する恐れが解消されない中での見切り発車と言わざるを得ない。
 犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の新設を柱とする、組織犯罪処罰法改正案を政府が閣議決定し、国会に提出した。
 政府は、2020年の東京五輪・パラリンピックを見据えた「テロ対策」強化のための法整備が必要だとし、「構成要件を厳格化した」と過去の共謀罪法案との違いを強調する。
 一方、野党や研究者らは過去の共謀罪法案と本質は変わらないと批判。実行後の処罰を原則としてきた日本の刑法体系を大きく変えることになると反対している。
 過去の法案は、捜査機関の拡大解釈や乱用を懸念した世論の反発でこれまで3度、廃案になった経緯がある。
 今回の法案を巡っては、金田勝年法相が国会答弁に窮し、野党から辞任要求されるなど政府側の混乱が目立つ。
 テロは断じて容認できない。だが、法整備の必要性を十分に説明できないまま、国民生活に重大な影響を及ぼしかねない法案の成立を急ぐことは到底許されない。
 国会は「成立ありき」ではなく慎重に論議すべきだ。
■国際条約と食い違い
 政府は法整備を急ぐ理由に、国際組織犯罪防止条約の締結を挙げている。
 日本が2000年に署名した条約は「重大な犯罪の合意」(共謀)などを犯罪とするよう求めており、政府はこれを「共謀罪」新設の根拠にしている。
 安倍晋三首相は1月の衆院代表質問で「条約が締結できなければ東京五輪を開催できないと言っても過言ではない」と答弁した。
 しかし、条約はそもそも組織的犯罪集団を「金銭的利益その他の物質的利益を得るため行動するもの」と定義する。
 03〜05年に政府案が提出された際に想定されていたのは、マフィアによる薬物密輸やマネーロンダリング(資金洗浄)など経済的な犯罪の撲滅だった。
 野党が「目的をすり替え、国民の目をそらせている」と批判するのは当然だろう。
 また処罰の対象について、政府はあくまでテロ組織や暴力団などの犯罪集団と主張する。一般の人は対象外という。
 具体的には、犯罪を計画した2人以上のうち、少なくとも1人が資金や物品の手配、関係場所の下見などの「実行準備行為」をしたときに処罰するというものだ。
 犯罪の計画について現実的、かつ具体的でなければならないと政府は繰り返し説明するが、条文にそのような記述はない。
 捜査機関による恣意(しい)的な運用拡大で、市民団体や労働組合の活動も対象にされる可能性は捨てきれない。
 原発に反対するグループや、沖縄の米軍基地に抗議する市民活動などもターゲットになるのではないか。そんな疑念は強い。
 というのも、政府は一般の団体が組織的犯罪集団に「一変した」と認定すれば処罰対象になると説明しているからだ。
 だが、どこで「一変した」かを見極めるのは極めて難しい。一変したと認めるためには、それ以前からの監視が必要ではないか。
 誰が、いつ、どこで何を企てるのか。そのために監視や盗聴、密告などが横行する恐れが懸念されている。
■「内心の自由」を侵す
 政府は閣議決定した法案から「共謀」の2文字を消した。
 「内心の自由」を侵すと強い批判を受け、日の目を見なかった共謀罪法案とは異なることを強調するためである。
 共謀罪ではなく「テロ等準備罪」という罪名を持ち出し、テロ対策を前面に掲げた。過去の条文にあった「共謀」も「計画」に置き換えた。
 ところが、与党に示した原案に「テロ」の文言はなく、批判を受けると、急きょ挿入することを決めた。
 野党が主張するように、こうした姿勢は国民を安心させるための「印象操作」ではないのか。
 条約は4年以上の懲役・禁錮を定めた罪を対象にするよう要請している。政府は当初676の犯罪を対象にする方針だったが、「広すぎる」との批判を受けると277に絞り込んだ。
 政府は過去に、条約の規定を理由に、共謀罪の対象範囲は減らせないとの答弁書を閣議決定している。今回の改正案との整合性はどうとるのか。納得できる説明が求められる。
 野党などは現行法でテロ対策は可能と主張している。政府がそれでは不十分というなら、国民に丁寧に説明する必要がある。
 できなければ、問題のある法案は撤回すべきだ。
 日弁連は「未遂はおろか予備にすら至っていない段階で犯罪が成立することになり、刑法体系を根底から変容させるものとなる」と危惧している。
 そのことも忘れてはならない。


重要法案なぜ安倍首相抜き? 「共謀罪」閣議決定の怪しさ
 官邸の主が不在のまま、共謀罪を盛り込んだ組織的犯罪処罰法の改正案が21日、閣議決定された。安倍首相は19日からドイツ、フランス、ベルギー、イタリアの4カ国を歴訪していて、22日に帰国予定。重要法案のアベ抜き閣議決定なんてアリなのか。
 閣議は本来、総理大臣の呼び掛けで開かれる内閣の合議だ。内閣法第4条でこう、うたっている。
〈閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。この場合において、内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる〉
 2000年に提出された質問主意書に対しても、森元首相は〈閣議は、その主宰者である内閣総理大臣及びその他の国務大臣全員が集まって開かれるのを原則とする〉と答弁書を出している。黒に近い灰色なのだ。
 高千穂大教授の五野井郁夫氏(政治学)は言う。
「世間の関心が森友学園疑惑や豊洲市場問題に向けられている間に、ドサクサ紛れで閣議決定に持ち込んだのでしょう。実際、安倍首相が外遊中で大きなニュースにはなっていません。安倍政権は東京五輪のテロ対策を前面に出し、TOC条約(国際組織犯罪防止条約)の締結に必要だとしていますが、デタラメです。現行法で十分に対応できる。戦前の治安維持法さながらの悪法の恐ろしさが知れ渡る前に、審議時間を稼ごうという意図を感じます」
 拙速さが奏功して、世論調査で半数が共謀罪の成立に賛成している。テロの脅威をことさらにあおる政権の術中にハマっているのだ。金田法相が国会で答弁している通り、これはトンデモナい法案だ。穏健な市民団体でも捜査機関が「活動が一変した」とみなし、「実行の準備行為を伴う合意」があったと認定すれば組織的犯罪集団にされてしまう。金田法相は「それを判断するのは捜査機関だ」と断言しているのである。
「花見シーズン入りして新宿御苑に足を運ぶ人が増える時期ですが、御苑は迎撃ミサイルのPAC3配備が検討され、過去には訓練も行われています。花見の流れで仲間と御苑をあちこち探索しようものなら、〈犯罪行為のための下見〉とされる可能性もある」(前出の五野井氏)
 安倍政権は今国会での成立をもくろんでいるが、それを許したら官憲の気配に怯える戦前に逆戻りすることになる。


陸自日報隠し  隠蔽体質の徹底究明を
 根深い隠蔽(いんぺい)体質への疑念が強まるばかりだ。
 南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)に従事する陸上自衛隊派遣部隊の日報が、廃棄したとしていた陸自内に電子データで保管されていたことが発覚した。
 防衛省は当初、陸自内に存在しないと情報公開請求に不開示を決定。再調査で別の統合幕僚監部で見つかったと一部を公開した。その説明とつじつまを合わせるため陸自内の保管を伏せたまま、データを破棄した疑いが出ている。
 当の日報は、昨年7月に宿営地の首都ジュバで起きた大規模戦闘の緊迫を生々しく伝えていた。それを組織内で握りつぶし、国民に隠すのは二重の背信行為だ。誰がどう判断したのか、徹底的な真相究明と再発防止策を求める。
 保管の事実は、陸自トップの岡部俊哉陸上幕僚長も把握して公表が陸自内で検討されたが、統幕の「背広組」幹部が非公表とするよう指示した―との疑惑が指摘されている。PKO5原則に抵触しかねない「不都合な事実」を隠すため、公開請求時からうそにうそを重ねてきた可能性も排除できない。
 稲田朋美防衛相は、全容解明に向けて特別防衛監察を行うとして「現場の問題」を強調したが、自身の責任は免れない。これまで国会で「陸自になく、隠す意図はなかった」と繰り返し、実態解明に消極的な姿勢を続けてきた。
 しかも統幕で見つかってから稲田氏への報告は約1カ月遅れたほか、重要な情報が省内から上がっていたか疑わしい。国民から選ばれた政治家が自衛隊を統率するシビリアンコントロール(文民統制)が揺らぐ重大な問題である。
 そもそも派遣部隊の日報は、現地情勢を判断する重要な基礎情報で、保管を定めていないこと自体が疑問だ。政府の「派遣ありき」の姿勢が、防衛省内での実態隠しを助長してきたのではないか。
 疑惑の渦中、政府は5月末をめどに南スーダン派遣部隊の撤収方針を発表した。治安悪化が理由ではないとするが、現地では派遣隊員が政府軍に一時拘束される事件も起きた。まだ2カ月余り派遣を続けるべき情勢なのか、国民に納得のいく説明が求められる。
 疑惑解明を特別防衛監察に委ねての時間稼ぎは許されず、速やかに問題点を洗い出して国会で議論すべきだ。稲田氏は「私の責任で」と言うが、戦闘を「衝突」と言い換えて実態をごまかし、森友学園問題でも事実確認に不誠実だった稲田氏に任せられるだろうか。


「月給30万円の基本給は15万円!?」それでも摘発ゼロの“求人詐欺”に挑むPOSSE代表・今野晴貴
「ここ2、3年は、“求人詐欺”の問題に取り組んでいます。給料や手当を実際より高く偽った求人で、企業が求職者を騙しても罰せられることはなく、野放し状態なんです……」
労働問題を可視化するために“事件”をつくる――POSSE代表・今野晴貴
 年間2000件超の労働相談を行うNPO法人POSSE代表・今野晴貴はこう話した。
「典型的なケースは、月給30万円の求人を見て就職したら、基本給が15万円で残業代が15万円だったというもの。このように、求人する側の企業は嘘のつき放題ですが、実際、厚労省は一度も取り締まったことがない。特に、介護業界と保育業界は酷くて、求人内容と実際の給料が合っているほうが珍しいくらいです。これらの業界は給料が安いので、高いように偽らないと人が集まらないし、同業他社が“求人詐欺”で高待遇を謳っていれば、それと同じかそれ以上に嘘をつかなければならない……まるで詐欺合戦ですよ。エステ、外食、小売業界も似たようなことになっています」
 求人募集の虚偽記載は職業安定法で禁じられているが、摘発はゼロ。ザル法なのだ。ところが2016年6月、厚労省が“求人詐欺”を行う企業に、懲役刑を含む罰則を検討していることが明らかになった。行政の変化の背景には、“求人詐欺”の実態を労働相談の現場から吸い上げ、調査、分析し、対策を申し入れてきたPOSSEの働きがあったのだ。
 今野の名を世に知らしめたのは、2012年の著書『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』だ。同著はベストセラーとなり、2013年には「ブラック企業」が新語・流行語大賞のトップ10に入った。もともとネットスラングだった「ブラック企業」という言葉に、今野は魂を注入したのだ。実証的なデータや現場から吸い上げた事例から、企業による従業員潰しの実態を炙り出した。どこか掴みどころのなかった「ブラック企業」は、今野によって初めて、獰猛で狡猾な姿を現した。
「違法だからブラック企業というわけじゃない。残業代を支払わない会社や離職率の高い中小企業はあるが、それは構造的な問題を抱えているからで、こうした企業は安易に従業員を辞めさせたりしない。これに対して、ブラック企業は人を使い潰す労務管理を戦略的に行う。初めから計算づくなんですよ」


「月給30万円の基本給は15万円!?」それでも摘発ゼロの“求人詐欺”に挑むPOSSE代表・今野晴貴
「ここ2、3年は、“求人詐欺”の問題に取り組んでいます。給料や手当を実際より高く偽った求人で、企業が求職者を騙しても罰せられることはなく、野放し状態なんです……」
労働問題を可視化するために“事件”をつくる――POSSE代表・今野晴貴
『ブラックバイト 学生が危ない』(岩波新書)、『求人詐欺 内定後の落とし穴』(幻冬舎)の両著とも、実践家の今野氏らしく対処法や改善事例が豊富に綴られている
 年間2000件超の労働相談を行うNPO法人POSSE代表・今野晴貴はこう話した。
「典型的なケースは、月給30万円の求人を見て就職したら、基本給が15万円で残業代が15万円だったというもの。このように、求人する側の企業は嘘のつき放題ですが、実際、厚労省は一度も取り締まったことがない。特に、介護業界と保育業界は酷くて、求人内容と実際の給料が合っているほうが珍しいくらいです。これらの業界は給料が安いので、高いように偽らないと人が集まらないし、同業他社が“求人詐欺”で高待遇を謳っていれば、それと同じかそれ以上に嘘をつかなければならない……まるで詐欺合戦ですよ。エステ、外食、小売業界も似たようなことになっています」
 求人募集の虚偽記載は職業安定法で禁じられているが、摘発はゼロ。ザル法なのだ。ところが2016年6月、厚労省が“求人詐欺”を行う企業に、懲役刑を含む罰則を検討していることが明らかになった。行政の変化の背景には、“求人詐欺”の実態を労働相談の現場から吸い上げ、調査、分析し、対策を申し入れてきたPOSSEの働きがあったのだ。
 今野の名を世に知らしめたのは、2012年の著書『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』だ。同著はベストセラーとなり、2013年には「ブラック企業」が新語・流行語大賞のトップ10に入った。もともとネットスラングだった「ブラック企業」という言葉に、今野は魂を注入したのだ。実証的なデータや現場から吸い上げた事例から、企業による従業員潰しの実態を炙り出した。どこか掴みどころのなかった「ブラック企業」は、今野によって初めて、獰猛で狡猾な姿を現した。
「違法だからブラック企業というわけじゃない。残業代を支払わない会社や離職率の高い中小企業はあるが、それは構造的な問題を抱えているからで、こうした企業は安易に従業員を辞めさせたりしない。これに対して、ブラック企業は人を使い潰す労務管理を戦略的に行う。初めから計算づくなんですよ」
 今や労働問題研究の第一人者となった感のある今野によって、ブラック企業の問題にメスが入ったが、その後も、前述した“求人詐欺”、学生を正社員並みに働かせることで、学業に支障をきたす“ブラックバイト”と、労働問題が次々に噴出している。
「“ブラックバイト”は、ブラック企業が背景にある。ブラック企業は正社員に長時間、低賃金で働かせており、正社員が少しでも休みを取ろうとすると学生アルバイトにシワ寄せがいく。つまり、この種の会社は“ブラック企業”になるか、“ブラックバイト”を生むか、どちらかしかない。結局、“求人詐欺”や“ブラックバイト”、“ブラック企業”というのは個別の現象ではなく、日本型雇用の延長線上の問題なのです。だから、景気がよくなっても、なくなることはない。ただ、悪い会社だから懲らしめよう……という話に留まらない。
 ブラック企業が蔓延り、増殖していくと、日本の産業は崩壊してしまう。若者が使い潰され、鬱病になったり身体を壊したりすれば、医療費負担は増えていく。労働力人口が減って、社会保障費が増えれば、当然、財政は悪化する。さらに、長時間労働と低賃金に苦しむ若者は結婚できず、少子化が加速する。この問題を放置すれば、日本という国が滅びてしまう。ブラック企業の存在は、若者だけでなく、誰にとってもいいことが何ひとつないのです」
 今野はこの国の行く末を憂いて、日本の労働市場を変革しようとしているのだ。
「終身雇用など、日本型雇用の恩恵を受けていた年長世代は、こうした労働問題をなかなか理解できない……。だから僕らは、問題を事実として示して、社会問題化する。労働相談の当事者の多くは裁判など起こさず、泣き寝入りしているが、“事件”にすれば報道されるし、書くこともできる。敢えて“事件”化して、問題を可視化するのです。そのために、今後も“事件”をつくっていきますよ(笑)」
 今野たちは、これまでの日本の労働運動にはない新しい手法で着々と成果を挙げている。そんな彼だが、現在、ターニングポイントを迎えていると明かした。
「3、4年前は、『ブラック企業』という言葉を使って、日本に労働問題が存在するというレベルから話を始めなければならなかったけれど、今は『日本全体がブラックなのでは?』と視点を移す段階にきている。問題のある特定の企業をただ『ブラック』と批判するだけでは、かえって本質を見失いかねない……。僕はこれまでブラック企業について問題提起をしてきたけれど、もともとやっていた日本の労働問題の研究、調査、政策提言に立ち戻るタイミングだと思っている。原点回帰ですね」
 企業サイドが使う「日本型雇用」という言い回しは、日本固有の特殊な雇用形態(だから仕方ない)ということなのだろう。確かに、国内ではこの言い分は通用するかもしれないが、海外から見れば、日本という国自体が“ブラックネーション”ということになる。
 ブラック企業は存在せず、労働問題はタチの悪い一部の企業の問題……今野が登場するまで、この国ではそういうことになっていた。荒地を拓き種を蒔くような、骨の折れる仕事を今野は続けてきたのだ。
「息抜きは、建設的じゃないかもしれないけど、仲間や友人と酒を飲むことくらいかな(笑)。続けてこれたのは、現場でとにかく鍛えられたから。活動するなかで、価値観もガラリと変わっていきました。以前の僕は、正直、頭でっかちだったけど(苦笑)、現実に向き合うことで実践的になったと思う」
 日本で労働問題界隈の人材は、研究者か活動家とタイプが二分されるように思える。だが、今野は研究者肌でありながら、実践家の顔を併せ持つユニークな存在だ。現場の人らしく、時には街に飛び出し、ハローワークの前で聞き取り調査なども行う。
「もともと、戦略を立てるのは得意。次にポイントになりそうなイシューに対して仕掛けていくわけです。例えば、『どんな理由で転職するのか』を調べたら面白い結果が出そうだな、と当たりをつけて、言論活動で興味深いピースになりそうなことを仕掛けたり、プロジェクトを立ち上げて人を巻き込んでいったり……まぁ、酒でも飲みながらね(笑)。『このテーマはまだ誰も調べてないから面白いぞ』と仲間を調査に誘うんです。面白いデータに突き当たって、それがメディアに報じられたりすれば、誘われた仲間にとって成功体験だし、僕もすごく楽しい。そんな話をしながら、仲間と酒を飲むのが大好きなんですよ(笑)。
 結果がちゃんと出るから、活動が継続できているんでしょうね」
 今野は息抜きの酒を「建設的じゃない」と自嘲的に話したが、酒席で仕事が生まれ、仲間のモチベーションも向上する……むしろ、建設的ではないか。
 彼が代表を務めるPOSSEは、メンバーが若いNPOとして知られる。そして、人を巻き込む才に恵まれた今野の周りには、困窮者支援など他分野のNPO、コンサルタント、学者、弁護士、労組関係者……多種多様な人々が集まる。従来の労働運動はともすると世界が狭くなりがちだったが、今野は活動を通してさまざまな分野の人々と横断的に繋がっているのだ。ただ、特定のイデオロギーや政治勢力とは一定の距離を置くという。
「NPOとして、特定の政治勢力と結びつかないよう意識しています。ただ僕らは、現場に根差して社会をよくしていきたい。だから、すべての政党に開かれているべき。まぁ、自民党は話を聞きにこないけど、望まれればいくらでも話しますよ。労働問題って、すべてが現実問題。その意味では、僕は“現実主義”というイデオロギーかもしれない(笑)」
 これまでにない社会運動を仕掛ける、実践家の次の一手に注目していきたい。


橋下松井コンビに激高 安倍首相“維新3点セット”白紙撤回か
 長すぎた蜜月がついに終わった。森友騒動で連日、野党の追及を受ける安倍首相は錯乱状態。虚偽答弁が発覚した稲田防衛相を「答弁には気をつけてくれと、何度も言っただろ!」と叱りつけたと報じられたが、最近は辺り構わず腹いせをぶつけているという。
 なかでも苛立ちを隠さないのが、日本維新の会のツートップの態度だ。大阪府の松井一郎知事と橋下徹前知事は今さら「国の圧力があった」と口をそろえている。
「昭恵夫人が名誉校長だった責任を棚に上げ、首相はあくまで今回の疑惑は大阪府の責任との認識です。確かに大阪府は私立小学校の設置認可の審査基準を緩和し、森友学園が問題だらけと知りながら、スピード審議で『認可適当』と判断。首相にすれば、騒動の発端は大阪府の怪しい手続きで、この問題で矢面に立たされるのは松井知事らの不手際のトバッチリ。おまけに『国の圧力』の“責任逃れ”発言を聞かされたから、もう怒り心頭です。『大阪の3点セットは白紙に戻す』と語気を荒らげているそうです」(官邸事情通)
 安倍首相の言う3点セットとは「大阪万博誘致への国を挙げた協力」「大阪・夢洲のカジノ計画」「リニア大阪延伸の前倒し」を指し、いずれも維新の“看板公約”だ。維新が与野党対立法案に軒並み賛成、安倍政権に全面協力してきたのも、見返りに3点セットの実現を求めているためだ。
 それにしても、安倍首相の私怨で国策が左右されるとは「首相を侮辱したから証人喚問」と同様のおぞましさだが、そんな政権と維新のもたれ合いに森友騒動は亀裂を入れ、その裂け目は日ごとに広がっている。
■5年の蜜月にピリオド
「橋下・松井コンビにすれば『国の圧力』発言は先手を打っただけでしょう。鼻の利く2人は安倍政権側の言動をみて、森友問題を“大阪ローカルの問題”と矮小化させ、責任を押し付けてくるニオイを嗅ぎ取った。“やられる前にやれ”ですよ」(維新関係者)
 安倍首相と松井知事は2012年2月、大阪で開かれた「日本教育再生機構」のシンポジウムで会談したのを機に意気投合。再生機構はHPで〈教育を通じて国民意識を覚醒させ、国家への愛情を取り戻すこと〉を標榜し、メンバーは「日本会議」と重なる。森友学園とも関係の深い組織だ。
 会談から5年。菅官房長官と橋下氏を交えて会食を重ね、親密さを誇示してきたが、互いに思想の共鳴し合う森友学園のせいで関係にヒビが入るとは皮肉である。


国有地売却、地検に告発状…容疑者不詳で
 学校法人「森友学園」(大阪市)に大阪府豊中市の国有地が鑑定評価額を大幅に下回る価格で売却された問題で、木村真・豊中市議ら230人が22日、財務省近畿財務局の職員が不当な安価で売却し、国に損害を与えたとして、背任容疑の告発状を大阪地検特捜部に提出した。
 関与した職員は特定しておらず、容疑者は不詳としている。
 告発状では、近畿財務局の職員らは十分調査して適正な価格で売却する義務があるのに、国有地(約8700平方メートル)を1億3400万円と著しく低い価格で売却したとしている。
 国は鑑定評価額9億5600万円から、地中に埋まったごみの撤去費として8億1900万円などを差し引いたが、木村市議らは「撤去費の算定手続きが不適切」と主張している。
 記者会見した木村市議は「この契約は何から何まで不自然。政治的な力が働いたのは明らかで、検察に解明してほしい」と話した。


籠池理事長が卒園式でも「安倍首相から小学校設立に100万円の寄付があった」「かなり仲良かったのに裏切られた」
 やっぱり本丸は安倍首相だった。本日、学校法人森友学園の籠池泰典理事長の立ち会いのもと、参議院予算委員会の議員団が瑞穂の國記念小學院開校予定地を現地視察。さらにこの後、籠池理事長の自宅にて野党議員のヒアリングに応じることになっている。
 メディアも詰めかけ、午後の各局ワイドショーが中継するなか、予定の13時45分から遅れること30分、14時すぎに参院予算委員会の調査団11名が、現地に到着した。
 13時すぎには現地に到着していた籠池理事長が校舎から出てきて、校庭の中ほどで、調査メンバーを出迎える。挨拶を交わし、説明を始めた。その話し声を、途切れ途切れながら、敷地外のテレビ局のカメラが拾って、漏れ聞こえてきた。
「我々がこの学園をつくり上げようとしたのは、みなさん方のご意志があってこそだと思う。そのご意思のなかには、大変恐縮ですが、安倍内閣総理大臣の寄付金も入っていることを伝達します」
 各局とも未確認情報としかこの発言をクローズアップしていないが、これは決して聞き間違いでも、口がすべったわけでもない。
 きょう、塚本幼稚園の卒園式において、籠池理事長が保護者に対して同様の発言をしたらしいのだ。
「安倍首相から小学校設立に100万円の寄付があった」「かなり仲良かったのに裏切られた」
 これは、本日14時から放映された『ちちんぷいぷい』(毎日放送)が保護者に取材して、その証言として報道したもの。閣僚から金をもらっていたという話については、昨日、著述家の菅野完氏も籠池理事長から聞いたと証言したが、このことだったのか。
 いずれにしても、稲田朋美防衛相だけでなく、安倍首相の嘘がこれで一気に暴かれるだろう。(編集部)


安倍応援団・田崎史郎が“籠池が稲田へセクハラ”の噂を紹介し「彼女にセクハラするかな」…それがセクハラだ
 またしてもこの男か──。安倍首相の“ワイドショースポークスマン”、そして“スシロー”“御用記者”“安倍ちゃんの親衛隊”など数々の異名をもつ田崎史郎・時事通信社特別解説委員。森友学園問題が勃発しても、相変わらず“安倍首相と昭恵夫人は“籠池泰典理事長に騙された”と擁護発言を続けてきた田崎氏だが、本日16日に出演した『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でも唖然とするような政権擁護発言を連発したのだった。
 まず、田崎氏は、昨日話題となったノンフィクション作家・菅野完氏の会見内容について噛みつき始める。昨日2回目の菅野氏の会見で暴露された“籠池氏がとある現役閣僚から現金数百万円程度を受け取った“それは大臣経験者であり誰もが知る安倍政権の現役閣僚”とのVTRを受け、こう疑問を呈した。
「あいまいな点が多すぎる。いつ、どういう理由で、というのが抜けている。しかも、とある政治家から直接ではなくて、ワンクッション置いて、このお金はある政治家からのお金ですと言ってる。ワンクッション置いたが、言った人が嘘を言っている可能性もある。そもそも菅野さんの発言で気になったのは、この方は(政治家は)大臣経験者ですか。『そうですね』。現役閣僚ですか。『そうですね』。どっちなんだと(笑)。言われているなかで、どれを信じたらいいんだろうか疑問をもちます」
 大臣経験者で現役閣僚というのは別に矛盾しておらず、何をつっこんだ気になっているのかよくわからないが、菅野氏への批判はさらに続く。
 昨日、予定されていた籠池氏の会見がキャンセルされたことについて、菅野氏が“誰かに止められた”と匂わせたとして「匂わせるだけで何なのか。変な不快感が残りますよね」。さらに菅野氏の会見を受け、“悪いやつ”と名指しされた松井一郎大阪府知事が「相手にしてもしょうがない」とコメントしたことを受けて、松井府知事を代弁する一方、返す刀でまたしても菅野氏をディスった。
「松井さんは(菅野氏の)信憑性はどのくらいなのか、とおっしゃりたかったと思いますよ。菅野さんという方は存じあげてないので、どれほど正確なことを書かれる方なのか、僕にはわからないんですけどね」
 つまり田崎氏は、菅野氏、そして会見内容にいちゃもんをつけ、“何者かわからない”“信用できない”といった旨のコメントを繰り返すことで、会見で語られたことはすべてでたらめだと言いたかったのだろう。自分はさんざん嘘やデマをふりまきながら、自分に都合の悪いことはすべて“印象操作”という言葉で片付けてしまう安倍首相そっくりのやり口だが、まあ、これはいつものこと。大した驚きはなかった。
 驚いたのは話題が稲田朋美防衛大臣と森友学園との関係に移った際だった。ご存知のように、現在、ワイドショーで盛んに取り上げられるのが稲田氏の虚偽答弁と、その原因となったとされる籠池氏からの“10年前の大変失礼な出来事”についてだが、田崎氏は司会の羽鳥慎一氏から“虚偽答弁の評価”について聞かれ、「答弁自体は、虚偽答弁に結果的になりましたからその責任は重大」としながら、突然、こんなことを言い始めた。
「この大変失礼なこと、これは何なのだろう、というのが結構、いま永田町で話題になっているんですよ。実は昨日ある自民党議員と食事をしたんですが、大変失礼なことは、セクハラだったのかな、とか。いやぁ、彼女にセクハラするかな、とか。いろいろ話があるんですよ」
 しかも田崎氏はこの発言の際、ニヤニヤと嬉しそうに、オーバーアクション──両手で身振り手振りをしながら──で聞かれもしないのに語っている。これは籠池理事長ではなく田崎氏から稲田氏への立派なセクハラだろう。しかもテレビという公の場での“公開セクハラ”だ。
 このセクハラ発言に驚いた羽鳥氏の様子に気づいた田崎氏は、「講演を断った稲田氏が籠池氏から抗議がきて、付き合いたくないという気持ちが先行した結果じゃないか」などとフォローしたが、しかしそれでセクハラ発言が帳消しになるものではない。
 さらに問題なのは、田崎氏はこうした会話を自民党議員と、しかも会食の席でしていたことだ。おそらく男性だと思われる自民党議員と御用評論家である田崎氏が、女性閣僚へのセクハラ発言をつまみに豪華な食事を楽しみ酒を飲む。なんともおぞましい絵図が浮かぶが、こんな連中が日本政治とマスコミの中核を担っているのだ。
 折しも本日午後、籠池氏が言う“現金をもらった現役閣僚”がなんと安倍首相本人だということが報じられている。これを受け、明日以降、スポークスマンの田崎氏がどんな珍妙な言い訳を繰り出すのか。けだし見ものである。(編集部)


竜一の愛した書斎
 大分県中津市に残る作家松下竜一さんの家が、昨年暮れに取り壊された。市道拡幅の対象になったためだった。地方に根差し、反公害・反原発運動などを通じて戦後日本の矛盾を見つめてきた作家の話をじかに聞きたいと、六十七歳で亡くなる前年の二〇〇三年、訪ねたあの家が今はない。
 築五十年は過ぎていたその家は、若き日に営んでいた豆腐店の面影を残していた。土間に板を張っただけの書斎。そこが一日の居場所だった。食べて、寝て、客を迎え、孫が走り回る。生活のすべてが詰まったこの簡素な部屋から松下さんの思索はつむがれていた。
 国家事業のダム建設に抗(あらが)う男の物語「砦(とりで)に拠(よ)る」、大正の「アナキスト」大杉栄と伊藤野枝の遺児を描く「ルイズ」、甲山事件の冤罪(えんざい)を訴えた「記憶の闇」…。従わぬ者には容赦ない、国家の暴力性が作品を貫く。今日にそのまま通じる主題である。全三十巻の「松下竜一その仕事」(河出書房新社)、「未刊行著作集」(海鳥社)は今こそ読まれてほしい。
 家の解体を見守ったのは七〇年代に地元で起きた火力発電所建設反対闘争以来の盟友、梶原得三郎さん(79)と妻の和嘉子さん(79)。数千冊の蔵書は事前に運び出され図書館への寄託を待つ。書斎が壊される時だけ雨が土砂降りになったという。和嘉子さんは万感の思いを歌に詠んだ。<竜一の愛した書斎こわれゆく 涙の雨の降りしきる中> (佐藤直子)