La chaleur, drame du quotidien au Japon et enjeu des JO de Tokyo
L’archipel nippon subit une vague de chaleur inédite ; 10 000 personnes ont été hospitalisées et 30 ont déjà succombé aux fortes températures.
Il fait terriblement chaud au Japon. L’Archipel s’est réveillé ce week-end sur la promesse de nouvelles journées de températures record, avec plus de 38 °C attendus dans plusieurs régions, notamment à Kyoto (Ouest) qui n’a jamais connu pareille touffeur depuis le début des statistiques météorologiques en 1880.
La présence de deux systèmes de hautes pressions couvrant la quasi-totalité du pays fait de ce mois de juillet l’un des plus torrides de l’histoire : à 35 °C en moyenne depuis le 9 juillet, les températures dépassent les normales de 10 °C. La vague de chaleur, qualifiée par l’agence de météorologie de ≪ grand danger pour la santé ≫, pourrait durer jusqu’à la fin du mois.
Plus de 10 000 personnes ont déjà été hospitalisées et trente ont déjà succombé. Le ministère de l’éducation rappelle que les coups de chaleur peuvent survenir même quand la température oscille entre 25 °C et 30 °C. Le risque dépend aussi du taux d’humidité, qui exacerbe la chaleur ressentie. D’après le site spécialisé Accuweather, la température devait atteindre 34 °C à Tokyo samedi avec un ressenti à 40 °C. Le taux d’humidité devrait lui s’établir autour de 65 %.
Les autorités répètent à l’envi l’importance d’utiliser les climatiseurs et de s’hydrater, ainsi que d’éviter de sortir et de pratiquer des activités en extérieur. Les écoles doivent prendre des mesures pour protéger les enfants. Un écolier de 6 ans du département d’Aichi (Centre) est mort le 17 juillet après avoir participé à des activités en plein air. Huit autres, scolarisés à Shimonoseki dans l’ouest du pays, ont dû recevoir des soins le 18 à cause d’insolations.
Inquiétude pour les JO de 2020
La situation est particulièrement pénible pour les 4 400 personnes évacuées, fatiguées et stressées, à la suite des inondations et glissements de terrain qui ont fait 218 morts et douze disparus début juillet dans l’ouest du pays. L’intense chaleur perturbe même le travail des militaires des forces d’autodéfense, des secouristes et des volontaires déployés pour dégager les décombres des zones sinistrées.
La gravité du phénomène a ravivé les débats sur l’organisation des Jeux olympiques (JO) de Tokyo, programmés du 24 juillet au 9 août 2020. Annoncé le 19 juillet par le Comité international olympique (CIO), le calendrier des épreuves a voulu en tenir compte, fixant le départ des marathons à 7 heures du matin et celui du 50 km marche à 6 heures.
Les choix opérés ont été accueillis avec prudence par la Fédération japonaise d’athlétisme. Toshihiko Seko, le responsable de la section marathon et qui a participé aux JO de 1984 et de 1988, préférerait des départs des épreuves encore plus tôt pour 2020. ≪ Il s’agira de courses à risques. Nous attendons du comité d’organisation qu’il installe le plus de brumisateurs possible et aménage un maximum de zones d’ombre sur le parcours pour que tous les coureurs puissent finir l’épreuve ≫, a-t-il déclaré au quotidien Japan Times.
En 2007, 30 % des 85 coureurs du marathon d’Osaka (Ouest) avaient abandonné à cause de la chaleur. L’épreuve courue alors que le thermomètre affichait plus de 30 °C, avait pourtant commencé à 7 heures.
≪ Nous sommes conscients que nous devons nous préparer à la chaleur extrême ≫, a reconnu le 12 juillet John Coates, responsable du CIO chargé du suivi de la préparation des JO, expliquant que le Japon n’était pas le ≪ premier pays à accueillir les épreuves sous une chaleur extrême. C’est une conséquence naturelle de l’organisation des JO en juillet et en août. ≫
Protéger les athlètes et le public
Malgré ces déclarations rassurantes, la chaleur représente un casse-tête pour les organisateurs, qui veulent éviter tout problème avec les athlètes comme avec le public. Ils prévoient l’installation d’≪ abris ≫ ventilés et la mise en place d’un dispositif de suivi en temps réel du risque thermique sur chaque site.
Des produits réduisant de plusieurs degrés la chaleur dégagée par le goudron devraient être utilisés et le gouvernement va multiplier les plantations d’arbres le long des parcours des courses de fond. Les organisateurs de Tokyo 2020 vont également établir des directives sur la gestion des épreuves en cas de températures extrêmes.
Lors d’une visite organisée le 18 juillet du Stade national, qui accueillera les cérémonies d’ouverture et de clôture ainsi que les épreuves d’athlétisme, Keiji Kato, du Conseil japonais des sports (JSC) a expliqué que la conception du toit pouvant partiellement recouvrir le stade permettait d’améliorer la circulation de l’air et de maintenir une certaine fraîcheur pour les spectateurs. Le thermomètre affichait 43 °C ce jour-là.
フランス語の勉強?
SWITCHインタビュー 達人達(たち)「フランソワ・オゾン×池松壮亮」
“今、気になる俳優”池松壮亮が、フランス映画祭2018のために来日した映画監督、フランソワ・オゾンと対談。互いの人生から映画監督と俳優のあり方まで語り合った。
女性の繊細な心理描写などに定評のあるオゾン監督。池松が、演出について尋ねると「身体はうそをつけない、だから私は俳優の身体に真実を語らせる」と話した。一方池松も演技が「うそ」にならないよう心がけていることなどを語る。さらに、カメラの前で俳優はいかに振る舞うべきか、監督は何をすべきか、そしてフランス映画、日本映画の将来まで、静かな男たちが熱い映画論を交わした。 映画監督…フランソワ・オゾン,俳優…池松壮亮, 吉田羊,六角精児
ETV特集「私は産みたかった〜旧優生保護法の下で〜」
“不良な子孫の出生を防止”するため障害者への強制不妊手術を認めていた旧優生保護法▽優れた命と劣った命を分ける“優生思想”の広がり▽人生を翻弄された人々はいま…
もしも、16歳に戻れるなら…自分でも知らないうちに子供を産むことができなくなった70代の女性は、悔しさと共に人生を振り返る。“不良な子孫の出生を防止”するため障害者に不妊手術を強制していた旧優生保護法。その数は16000人以上とされる。背景にあったのは、優れた命と劣った命を選別する“優生思想”。戦後日本で、なぜ優生思想は広がったのか。旧優生保護法を契機に、障害者の命をめぐる知られざる歴史に迫る。 劇団態変主宰・芸術監督…金滿里, ayako_HaLo,守本奈実
和歌山カレー事件再審請求弁護団報告(和歌山カレー事件を考える人々の集い)
和歌山カレー事件から20年 林眞須美さんは、獄中から無実を訴え続けています!!
・第1部 お話:森 達也さん(映画監督)
・第2部 弁護団報告:和歌山カレー事件再審請求と民事訴訟の「いま そして これから パート検
挨 拶:鈴木邦男さん(林眞須美さんを支援する会代表)
資料代800円/事前申込不要
昼過ぎから大阪弁護士会館で林眞須美さんを支援する集会.早速と思って出かけたのですが会館近くで財布忘れていることに気がつきました.知り合いがいたら借りる・・・と思いましたが来ていないとダメなので財布を取りに戻ります.暑いですが仕方ないです.
講演の森さんのお話は面白かったです.反原発やオウムの話から入って刑事司法の在り方にまで話が及びます.マスコミの水かけたというのでネガティブなイメージがある林さんですが,無実なのには変わりありません.新たに和歌山カレー事件で林さんの無実を紹介する本が出版されたとのことです.保険金詐欺をしていたことと殺人は結び付きません.証拠もなしにいい加減な印象操作はよくないですね.鈴木邦男さんとのトークもなかなか.そして圧巻は健治さん登場.車いすですが元気のようです.
そういえば森さんはネットで林眞須美さんのことをもっと知らせるように工夫したほうがいいって主張していました.そうですね.
石巻の海水浴場 8年ぶり海開き
東日本大震災で被災した石巻市の渡波海水浴場が、21日、8年ぶりに再開し、地元住民などでにぎわいました。
石巻市の渡波海水浴場は、市の中心部から最も近い海水浴場で、震災前は年間およそ8000人が訪れていましたが、津波で砂浜の一部が流されたほか周辺で防潮堤の工事を進めるため、震災後は閉鎖されていました。
しかし、防潮堤の工事が完了し、海底のがれきも撤去されて安全性が確認されたことから、21日、8年ぶりに海開きが行われました。
海開きには石巻市の亀山紘市長や多くの地元住民が集まり、安全を祈願する神事を行いました。
午前10時になると、夏休みに入った地元の子どもたちなどが訪れて、海水をかけあったり砂遊びをしたりし、海水浴場にはにぎやかな声が広がりました。
地元の中学3年生の男子生徒は、「小さいころから遊んでいた場所が遊べなくなり、がっかりしていました。きょうの海開きで震災の後、何かひっかかっていたものが取れたような気がします。いろんな地域の人にも来て欲しいし、自分もたくさんの人を誘って来たいと思います」と話していました。
渡波海水浴場は来月12日まで午前10時から午後3時までオープンし、石巻市では、期間中に震災前と同じ8000人ほどが訪れることを見込んでいるということです。
豪雨災害対策/ダム、堤防の強化を急ぎたい
洪水や土砂災害などで甚大な被害が広がった西日本豪雨は、豪雨災害の恐ろしさをまざまざと見せつける一方、防災の遅れを痛感させた。上流のダムのかさ上げ、河川の堤防の強化など、ハード面の対策を急がなければならない。
西日本豪雨などによる被害額は、農林水産業関連だけで768億円に上った。被害額は今後も膨らむ見込みで、その他のさまざまな被害を合わせれば、どれほど巨額になるか分からない。
豪雨災害はさまざまな治水対策によって相当程度、被害を軽減できる。被害が発生してからの人命を含めた巨額の損失を考えれば、事前の防災対策という公共事業をためらうべきでない。急激な気候変動に対する防災対策の進展の速度は遅れている。
まずは、河川の堤防の強化を早急に実施すべきだ。堤防の多くは、川側がコンクリートでも、裏法面(のりめん)と呼ばれる住宅地側は土でできている。堤防からあふれる越流によって土の側がえぐられ、これが決壊の大きな原因となる。
広範囲の降雨と雨量の増大のため、洪水の継続時間が長くなり、堤防の決壊の危険性は各地で増すばかりだ。堤防の上面のアスファルト化などを含む堤防の補強は、喫緊の課題だろう。
場所によっては既存のダムのかさ上げも必要だ。ダムの構造上、少しのかさ上げでも貯水量は大きく増える。西日本豪雨の際も事前放流で水位を下げて雨に備えたが、愛媛県のダムでは容量が足りず、緊急避難的に放流する措置を取らざるを得なかった。
ダムの構造体は鉄筋を使わないコンクリート製であるため、鉄筋の腐食による劣化がないのが特色で、強度は自然石と同等と言われる。既設ダムのかさ上げには技術的に何ら問題はなく、安価な費用で済む有効な洪水対策だ。
豪雨に備えて多目的ダムの水位を下げ、予測が外れた場合、今度は渇水という問題に直面する。効果的な事前放流を行うためには、降雨量やダムへの水の流入量に関する気象予測の精度を上げる努力も必要になる。
日本の河川はほとんどが急流で治水のためのダムが有効であったにもかかわらず、かつて、自然破壊の象徴とみられた時期があった。森林による「緑のダム」の効果が実際の貯水能力以上に喧伝(けんでん)され、ダムの洪水調節機能が軽視された。
公共事業の総額は1990年代の終盤をピークに下がり続け、旧民主党政権時代には激減した。「コンクリートから人へ」という情緒的な政治スローガンによって、ダムだけでなく公共事業全般が悪玉にされた。
事業仕分けなどで公共工事が遅れ、災害の被害を増やしたとすれば、残念と言うほかはない。防災のための社会基盤の整備は決して無駄ではなく、将来に残す資産である。
災害時の情報伝達 早期避難実現へ検証を
多くの犠牲を出した西日本豪雨の現場では、いまだに安否不明者の捜索が続き、住宅被害のほか、農地、鉄道などの復旧も長期化が懸念される。被害拡大の一因となった避難情報の伝達、周知の課題を考えておきたい。
予想降雨量が災害に直結するレベルであることは早くから明らかだった。気象庁は5日午後には台風以外では異例の緊急会見を開き、関係省庁にも警戒を呼び掛けた。ただ、それが国民にどれだけ深刻に受け止められていたか。政権は「初動対応は万全だった」と正当化するばかりでなく、情報発信の在り方について謙虚に検証するべきだ。
特に発信のタイミングと手段は妥当、十分だったか。対象地域を決める基準や言葉遣いについても専門家の知恵を借りて見直してほしい。放送やインターネット、携帯端末など伝達手段は多様だが、そうしたメディアになじみのない人もいる。自分では逃げられない独居高齢者や要介護者にどう伝えるか。地域の共助、見守りが果たす役割も重視した制度設計が望ましい。
今回の豪雨では事態が広域で、急速に進んだ。ただ、河川の氾濫、浸水、土砂災害の多くはハザードマップ(危険予測地図)の想定内だった。それなのに、避難指示が深夜、未明だったことなどで多くの人が、自宅や周辺で濁流にのまれた。想定が生かされなかった。
ハザードマップは、浸水の恐れがあるほぼ全ての市町村で作成済みではあるが、農水省のデータで、決壊などで被害の出る恐れがある全国1万カ所以上の「防災重点ため池」は、約35%しかハザードマップが公表されていないことも分かった。危険箇所が強調されれば地価に影響するとの懸念があるという。しかし、長期的にはむしろ、安全な町並みをつくる手掛かりになるのではないか。
マップは、その意味するところを住民が実感するため、浸水域が一目で分かることは大前提として、どんな状況なら、どの経路で逃げるか。地域ごとに、住民を交えて検討し、反映したい。作成の指針や避難所の環境改善、危険箇所の改修などで、国の一層の支援も不可欠だろう。
避難準備・高齢者等避難開始、避難勧告、避難指示(緊急)、特別警報などの区分と用語について見直しを求める声も一考に値する。ただ、最終的に身を守るのは一人一人の瞬時の判断だ。どう名付けたとしても、受け止める側の意識が伴わなければ実効性は薄い。
自然の力は人知をやすやすと超え、どれだけ予測、予報の精度が向上しても不測の事態があり得る。避難に手助けが必要な人たちのことを忘れてはならないが、それは、地域住民に早期避難の意識が徹底すれば、おのずと解決策が見いだせるはずだ。
遠回りでも、防災教育を一層充実させることも必要だ。
豪雨災害のほか、地震や津波、火山噴火にも共通して言えることだが、地域で過去に起きた災害には、教訓がたくさんある。将来も起きる可能性があるそうした災害の実相を、大人も子どもとともに学び、自分で危険を感じ取る力を養いたい。
「いざというとき」が来る前に、場合によっては行政の呼び掛けに先立って「念のために逃げよう」と言い合えること、それが災害に強い社会につながる。(共同通信・由藤庸二郎)
西日本豪雨 思い出のピアノもハンマーで 倉敷・真備
西日本豪雨で大規模な浸水被害を受けた岡山県倉敷市真備町地区。小田川の支流、真谷(まだに)川の堤防が決壊した真備町服部地区は、今も田畑に水が残ったままで、壊れた農機具などが放置されていた。
同地区の民家では21日も、猛暑の中、住民らが後片付けに追われていた。週末を利用し、実家の片付けに来たという愛知県長久手市の男性(44)は「豪雨の時、家にいた両親は近くの公共施設に避難しましたが、そこも危ないということで結局、岡山市内まで逃げて無事でした」と話す。「真谷川があふれたという情報は当初全然なかったのですが、2階まで水が来たようで、姉が使っていたピアノが横倒しになっていて驚きました」
その思い出のピアノも処分せざるを得ず、仕方なくハンマーで壊して屋外へ。岡山市内からボランティアに駆けつけた会社員の中井英明さん(48)は「惨状を見て胸が痛みます。微力ですが、少しでもお手伝いができれば」と、水浸しになった家具や衣類などを搬出していた。【内林克行】
心躍る さぁ夏休み 宮城県内公立小中学校で終業式や全校集会
宮城県内のほとんどの公立小中学校は20日、夏休み前最後の登校日を迎え、終業式や全校集会を開いた。子どもたちは待ちに待った夏休みに心を躍らせた。
3学期制の南三陸町志津川小(児童190人)では体育館で終業式があった。斉藤明校長が「夏休みならではの活動に積極的に取り組み、元気に楽しく過ごしてほしい」と呼び掛けた。
1年の佐藤勇河君(7)が児童を代表し、1学期の思い出を発表。「音読の練習は長い文章もあったけど、毎日頑張った。二重丸をもらってうれしかった」と笑顔で振り返った。
3年の教室では、児童27人が担任の首藤大知教諭から通知表を受け取った。高橋夢葉さん(8)は「夏休みはプールでクロールの息継ぎを練習し、25メートルを泳げるようになりたい」と意気込みを語った。
この日終業式をしたのは、小学校214校、中学校108校。仙台市など2学期制の小学校159校と中学校90校は全校集会などを開いた。夏休みは8月26日までの学校が多い。
<東北甲子園物語>試合前挨拶は仙台発祥 「野球は健全なスポーツ」とアピール
全国高校野球選手権が100回大会を迎える。甲子園で約1世紀にわたり繰り広げられてきた球児たちの熱戦。その舞台裏にある東北ゆかりの秘話を紹介する。(野仲敏勝)
◇
甲子園でおなじみの試合前あいさつ。両校ナインが本塁を挟んで整列し、一礼するすがすがしい光景だ。この慣習の発祥は仙台にあるという。
仙台市泉区の野球史家、伊藤正浩さん(46)によると、1911(明治44)年11月、旧制二高(現東北大)が仙台市内で主催した東北6県中学野球大会で始まった。「野球は健全なスポーツ」とアピールするため、二高生が発案した。
きっかけは同年8月、当時の新聞に「野球は学生に悪影響」とする「野球害毒論」が発表され、論争が起きたことだ。「健全さを示すため、武士道精神にのっとり、礼に始まるスタイルを生み出した」と伊藤さん。
この方式は好評を博し、同年12月に京都で開かれた旧制高校の全国大会でも、二高の提案で実施された。4年後の15(大正4)年に大阪・豊中球場で始まった全国中学野球大会(現在の夏の甲子園)でも採用された。
伊藤さんは「米国発祥のベースボールに日本人の精神性が付与され、真の意味で野球となった。現代の球児にも先人の思いを知ってほしい」と話す。
初めて試合前挨拶を行った東北6県中学野球大会は、現在の片平公園(青葉区、当時は二高グラウンド)で開かれた。
国会あす閉会 政権の横暴が極まった
通常国会があす閉会する。与党は延長会期中、国民への影響が懸念される「悪法」の成立を強行する一方、森友、加計問題の解明にはふたをしてしまった。安倍政権の横暴が極まったのではないか。
あす会期末を迎える通常国会はきのう事実上閉会した。実質的な最終日、与党が成立を図ったのがカジノを中核とする統合型リゾート施設(IR)整備法案だった。
そもそも刑法が禁じる賭博を一部合法化する危険性や、ギャンブル依存症患者を増やす恐れがある法案だ。地域振興や外国人の集客に本当に役立つのか、審議を通じても疑問は解消されない。法案成立後に政令などで決める事項が約三百三十項目にも上る。そんな法案を成立させていいのか。
延長国会の期間中、西日本を豪雨が襲い、二百人以上が亡くなった。猛暑の中、多くの被災者が生活再建を急ぐ。避難生活を余儀なくされている方は依然多い。
生活再建や復旧、復興に向けた策を練り、法の不備を補い、予算を確保することこそが、国会が優先すべき課題ではなかったか。
しかし、会期末の限られた時間は安倍政権が優先した「カジノ法案」の審議に費やされ、寸断された道路や鉄道、堤防が決壊した河川を所管する石井啓一国土交通相が答弁に追われた。災害対策より賭博か、との批判が出て当然だ。
西日本豪雨では、気象庁が厳重警戒を呼び掛けた五日夜、自民党議員が「赤坂自民亭」と題する宴会を開き、安倍晋三首相や小野寺五典防衛相らが参加していた。
豪雨発生時から緊張感を持って災害対応に当たっていたのか、疑問を抱かせる振る舞いだ。
与党は延長国会で参院議員定数を六増やし、比例代表の一部に優先的に当選できる「特定枠」を導入する改正公職選挙法も成立させた。法律が求める抜本改革に程遠く、「合区」対象選挙区で公認漏れした自民党現職議員の救済策にほかならない。こんな制度をつくり、恥じることはないのか。
森友学園をめぐる問題では財務省の公文書改ざんが明らかになり、佐川宣寿前国税庁長官による国会での偽証も指摘されている。加計学園は愛媛県に嘘(うそ)をついたと主張する。国民の多くが疑念を抱くのに、与党はなぜ事実を解明しないのか。政治権力を集める首相や官邸への配慮なのか。
国会で多数を占めれば、何をやっても許される。政権がそんな考えで国会を運営したとしたら、国民を愚弄(ぐろう)するにも程がある。
通常国会が事実上閉会 骨太の議論は乏しかった
安倍晋三首相が「働き方改革国会」と銘打って臨んだ通常国会がきのう事実上、閉会した。
働き方改革関連法は、厚生労働省による労働時間調査のデータに問題が見つかってつまずいたものの、国会提出前に裁量労働制の対象拡大部分を削除して成立にこぎ着け、首相の体面は何とか保たれた。
そのほかにも、受動喫煙対策を強化する改正健康増進法や、成人年齢を18歳に引き下げる改正民法など、国民生活に密接な法律が成立した。
にもかかわらず、活発な議論が行われた印象がないのは、安倍政権のもとで深まった与野党対立の結果だろう。野党の反対を与党の数の力で押し切る強引な国会運営が目立ったことは否めない。
統合型リゾート(IR)実施法を拙速な審議で成立させる必要があったのか。カジノ解禁という賛否の分かれる論点が含まれるだけに、国民の理解を得る熟議がなされなかったことは残念でならない。
野党が多弱化している今なら無理も通せると与党は高をくくっているように見える。そんなおごりが鮮明に表れたのが参院選の「合区救済」を目的とした改正公職選挙法だ。
かつて「国会の華」といわれた首相出席の予算委員会審議は不祥事追及の場となった。政権側は不誠実な答弁を繰り返し、不毛なやり取りが聴く者をうんざりさせた。
森友、加計問題は行政府が立法府にうそをつき続けた、平成史に残る不祥事だ。安倍首相周辺や妻昭恵氏の関与が疑われているのに、関係者の証人喚問などに及び腰の姿勢をとり続けた与党の責任は重い。
首相は国会閉会によって乗り切ったと考えているのかもしれないが、9月の自民党総裁選で3選を果たしてもみそぎにはならない。国会は特別委員会を設置し、真相解明と政治責任の追及を続けるべきだ。
国会の役割は立法と行政監視だけではない。人口減少問題や朝鮮半島情勢などの大きな課題を与野党が論じ合い、国民と政治認識を共有すべきなのにそれが機能していない。
首相と立憲民主党の枝野幸男代表が「党首討論の歴史的使命は終わった」と言い放った場面は象徴的だった。骨太の議論ができる国会に立て直さなければならない。
通常国会閉幕/民主主義支える土台が崩れた
これほど国民との距離が離れた国会があっただろうか。
通常国会が事実上閉幕した。反対の根強い法案が、疑問を解消せぬまま与党の「数の力」で可決、成立した。安倍政権で幾度も見た光景である。
だがこの国会では、これまでより特異と言えることが次々と起きた。官僚が公文書を隠し、虚偽の答弁を繰り返し、あろうことか決裁文書の改ざんにまで手を染めた。そして“疑惑”の核心部分はあいまいにされ、政治家は誰も責任を取らない。
まるで民主主義の土台が掘り崩されたかのようである。強い危機感を抱かざるを得ない。
◇
半年にわたる国会論戦で、安倍晋三首相をはじめ政府側は、疑問には答えず、論点をずらしながら押し切った。
例えば看板政策の「働き方改革法案」だ。首相は「70年ぶりの大改革」と自賛したが、法案の根拠となるデータはずさんなものが使われていた。専門性の高い仕事を時間でなく成果で評価する「高度プロフェッショナル制度」には、過労死が増えるという声が大きかった。
統合型リゾート施設整備法案、いわゆるカジノ法案も、ギャンブル依存症への懸念が拭えないままだった。とりわけ問題なのは、業者が入場客へ金銭を貸し付けることを認めていることだ。これではカジノで借金漬けとなりかねない。
議論は空疎なまま
問題があれば国民の不安を取り除くように修正を重ねていくのが、議会政治である。しかし議論がかみ合わなくても一定の審議時間を経過すれば、採決に持ち込む。選挙結果による議席の数だけで押し進めていくのなら、国会は何のためにあるのか。言論の府の議論は「空疎」でしかなかった。
法案審議以上に注目を集めたのが、「森友・加計(かけ)」学園の問題だった。安倍首相や夫人の関与が疑われるような内部文書が次々と明らかになった。ここでも正面から答えず、ごまかす場面が目に付いた。
参考人招致で柳瀬唯夫元首相秘書官は、以前に加計学園側と会ったと言わなかったことを非難された。柳瀬氏は「今治市職員と会ったかと聞かれた。質問に一つ一つ答え、全体が見えなくなった」とした。丁寧に答えすぎたと言わんばかりだった。
これが批判を浴びた「ご飯論法」である。つまり、朝ご飯を尋ねられた際、「なぜパンを食べたと言わなかった」と問われると、「パンの質問はなかったから」と答えたようなものだ。
誠実さに欠けるこうした手法は、首相も繰り返し使った。いったい国民への説明責任をどのように考えているのか。
さらに驚くべきは、官僚が国会の場で平気でうそをつき、公文書を改ざんしていたことだ。佐川宣寿前国税庁長官は、財務省と森友学園との交渉記録は破棄して残ってないと断言した。実際は決裁文書を改ざんし、都合の悪い部分を削除していた。
財務省は調査の結果、佐川氏らを処分したが、肝心の改ざん理由は分からないままだった。
公文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と公文書管理法に定義されている。改ざんは民主政治を踏みにじる行為にほかならない。
日報隠しが発覚した陸上自衛隊では、再び隠蔽(いんぺい)体質があらわになった。イラク派遣部隊の日報が見つかっていながら大臣に1年間報告されず、国会にも「不存在」としていた。文民統制が危機にひんしている。
あきれるのは、国権の最高機関である国会がこれほど愚弄(ぐろう)されているのに、与党が怒りを見せないことだ。それどころか、自民の都合だけで参院定数を6増する公選法改正案を強引に成立させた。
■国民とずれている
西日本豪雨で政府が警戒を強めていた最中、首相が自民党議員との酒宴に参加したことも批判を集めた。政治不信が一層広がりかねない。
責任の一端は野党にもある。
国会の最終盤、カジノ法案の付帯決議で、立憲民主党と国民民主党の対応が分かれた。
議席数で遠く及ばないのに連携できないようでは、与党ペースを崩すことはできない。来年の統一地方選と参院選に向け、態勢の再構築が求められる。
国会が閉幕すると、首相の意識は3選を目指す秋の党総裁選に向かうのだろう。
「安倍1強」は、党内の不協和音を抑えてきたが、国民とのずれが鮮明になるにつれ、異論も聞こえてくるようになった。
国民の多数は、政府がごり押しした政策に賛成していない。「もりかけ」問題も、首相らの説明にも納得していない。
内閣支持率は底を打ったとはいえ、不支持が急増した。その最大の理由は「首相が信頼できない」である。
国民の声をしっかり聞いて根本的に姿勢を見直さなければ、民意との距離はますます遠くなるばかりだ。悲願の3選戦略も、自身が思い描くように運ぶという保証はない。
ばくちと災害対策を同時に議論とは
★結局与党は今まで許されなかったばくちを中身はこれからだがやらせて欲しいと、国民の反対を押し切って進めたということになる。16年12月13日の参院内閣委員会で自由党共同代表・山本太郎は「私たちを食べさせてくれてるのは、国を回せているのは税金ですよ。誰の声を聴いて政治をやるんですか。国民の中にカジノ・賭場を開いてくれって声、どれぐらいありました?」と問うても政府から明確な回答はない。国交相・石井啓一の答弁はそっけなく「私としては山本議員の要請に、真摯(しんし)に対応してきた」と繰り返した。 ★「誰の声を聴いて政治をやるのか」に応えられない閣僚を初めて見た。ましてギャンブル依存症への懸念も大きい。山本は続ける。反対派の医師は「推進派はギャンブル依存症が本人の人生ばかりか家庭をも破壊してしまうほど深刻な病であることを理解していない。そもそも医療で最も重要な課題の1つとなっているのは病気を予防することである。人々が病気にならない政策を実行するのが国をはじめとする行政機関のすべきことであり、我々専門家の仕事である。この法案に賛成する皆さんにお聞きしたい。依存症を作り出さない最大の予防策とは何でしょうか」と問い、「何の必要性があって今国会でカジノを通す必要があるんだ。国会の要請ではなく官邸の命令じゃないか」と指摘した。 ★19日にも山本は同委員会でカジノ法と災害対策でもそっけない対応をする石井にいら立ちを見せた。党の手柄や内閣の手柄を優先し打ち出したい石井の薄っぺらな対応に対して山本の怒りは「本気を出して欲しい」。ばくちと災害対策を同時に議論し、両方に応える石井の答弁は議会史に残る“滑稽な様子”と記しておきたい。
通常国会閉幕 「国権の最高機関」なのか
延長を含め182日間と約半年に及んだ通常国会があす閉幕する。存在感の低下が指摘されて久しい国会だが、これほど空虚な国会も近年珍しかった。
憲法が規定する「国権の最高機関」の名が泣く体たらくだ。少数意見も尊重して徹底的に議論を尽くし、よりよい結論を導く言論の府はどこへ行ったのか。国会改革は待ったなしだ。
事実上の会期末だったきのうの参院本会議で自民、公明の与党と日本維新の会の賛成多数で可決、成立したカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法の審議が今国会を象徴した。
IRとは分かりにくい名称だが、要は刑法が禁ずる賭博罪の適用対象からカジノを除外する法律だ。カジノ解禁でさまざまな影響が懸念されている。
ギャンブル依存症の拡大▽犯罪資金の流入や暴力団の介入▽入場客への金銭貸し付けをカジノ事業者に認めること▽国会審議の対象にならず政令などで決める内容が331項目もあること−などだ。
共同通信社の世論調査でも、整備法について「通常国会で成立させる必要はない」との回答は69・0%に達した。
ところが政府は曖昧な答弁に終始し、国会審議は全く深まらなかった。最後は与党が「数の力」で押し切った。
西日本豪雨で200人以上が亡くなっているのに、国土交通相は災害対応に専念せずIR法案審議で国会に張り付いた。
延長国会では、働き方改革関連法も参院定数6増の改正公選法もほぼ同じ経緯をたどった。
野党の質問に正面から答えようとしない安倍晋三首相や加藤勝信厚生労働相の姿勢を、法政大の上西充子教授が「ご飯論法」とツイッターに投稿して話題になった。
「朝ごはんは食べたか」と聞かれた際に、パンは食べたが、ご飯は食べていないので「食べなかった」と答えた−ということだ。言葉が命とされる政治家がこんな話法を使って恥ずかしくないのか。
私たちは延長国会の課題として、森友・加計(かけ)学園問題など「政権に絡む疑惑の解明を優先すべきだ」と指摘した。
「信なくば立たず」の格言通り、政治と行政への信頼を取り戻さないと、どんなに立派な政策であっても、国民の理解は得られないと考えるからだ。
しかし疑惑の解明はまたも、うやむやになった。政府と与党は「追及から逃れた」とほっとしているかもしれないが、そうだとすれば勘違いも甚だしい。
相次ぐ問題の先送りで、政治や行政に対する国民の不信はもちろん、怒りまで蓄積されたと受け止めるべきだろう。
[通常国会閉幕]まん延する数のおごり
「官邸1強」とも呼ばれる権限の集中、衆参両院とも3分の2を超える与党勢力、小党分立でまとまりを欠いた非力な野党…。
この三つがそろったとき国会はどういうことになるか。それを露骨な形で示したのが第196通常国会だった。
国会が本来果たすべき「少数意見の尊重」も「政権の監視」も、「熟議」による合意形成も、すべて数の力に押しつぶされてしまった。
国会そのものが専制的な政治にのみ込まれ、その舞台になってしまったのだ。
カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法は20日夜、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数により可決、成立した。
自民党が提出した参院選挙制度改革に関する改正公職選挙法は18日の衆院本会議で可決、成立しており、22日に会期末を迎える国会は、事実上20日で閉幕したことになる。
IR整備法はカジノを賭博罪の適用対象からはずし合法化するもので、当面、全国3カ所を上限に整備する。
ギャンブル依存症対策や治安対策に関する議論は深まらず、国民の不安はまったく解消されていない。
政府が期待する税収を生み出すためには、相当数の人が相当の額をギャンブルに投じなければならない。ギャンブル漬けの人が増え、借金問題が深刻化するおそれがある。
西日本豪雨の災害対応に全力投球しなければならない国土交通省の大臣が、カジノ法案を通すために国会にくぎ付けになる−健全な「常識」が働かない現状は危うい。
■ ■
選挙制度は民主主義の土台であり、主権者である国民の意思が適切に反映されるような内容でなければならない。 憲法改正による「合区」解消をもくろんできた自民党は、国会終盤になって唐突に独自案を持ち出した。
成立した改正公選法は、有権者を置き去りにしたつぎはぎだらけの内容で、複雑な制度をいっそう分かりにくくしてしまった。
比例代表の定数を4増(3年ごとの改選では2増)し、各党の名簿に従って当選者を決める「特定枠」を設けたことが大きな特徴だ。
「鳥取・島根」「徳島・高知」の合区で、公認からもれた現職議員を「特定枠」で救済する狙いがある。
抜本改革にはほど遠い、究極の党利党略改革である。
今国会は、「官邸1強」政治の弊害がさまざまな形で露呈した国会でもあった。
■ ■
森友・加計学園問題に象徴されるように、与党は安倍晋三首相に火の粉が降りかかるのを防ぐため、国民が求める疑惑解明には終始、消極的だった。
公文書の改ざん問題やセクハラ問題が表面化しても、麻生太郎財務相は、その職にとどまり続けた。森友・加計問題がこのまま尻すぼみになれば、官僚の忖度(そんたく)はますます強まるだろう。
国会は行政権力の暴走やおごりをチェックする役割を担っている。国会の本来の機能を取り戻すことが急務である。そのためにはまず自民党が変わらなければならない。
通常国会閉幕 審議空洞化が止まらない
通常国会は22日の会期末を待たずに事実上、閉幕した。今国会はまさに「スキャンダル国会」だった。森友学園への国有地売却と決裁文書の改ざん、加計学園の獣医学部新設を巡る疑惑や前財務事務次官のセクハラ発言問題など不祥事が続発。野党の反発で国会は長期間空転した。
その影響で法案審議日程は窮屈となり、政府、与党は会期を大幅延長し、働き方改革関連法やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法などをどうにか成立させた。だが、森友・加計学園の疑惑は今もくすぶったまま。働き方改革関連法やIR整備法も審議が尽くされたとは言えないのが実情だ。
与野党の対立ばかりが目立ち、議論が一向に深まらなかった責任は安倍晋三首相、麻生太郎副総理兼財務相ら政権側の国会軽視姿勢にある。
首相は議論に真正面から向き合わず、触れられたくない問題では論点をずらして長広舌を振るう場面が幾度も見られた。
麻生財務相は決裁文書改ざんについて、財務省の組織ぐるみを否定。「白を黒にするような悪質なものではない」などと開き直った。また「セクハラ罪という罪名はない」とした発言が国会で追及されたが、反省の色はなかった。
異論に耳を傾けようとせず、最後は「数の力」で押し切るという巨大与党のおごりが露呈したと言える。政権の姿勢がこんなでは、国会論戦は意味を失い、審議の空洞化は止まらない。選挙結果で全てが決まるなら、議会制民主主義は成り立たないだろう。
森友学園を巡っては、大阪地検が財務省幹部らを不起訴処分にし、財務省も調査報告を公表済みだ。だが、国有地の大幅な値引き売却がなぜ行われたか、森友学園に肩入れしていた安倍首相夫人への配慮があったのではないかなどの疑問は氷解していない。
加計学園疑惑でも、首相と学園理事長との面会に関し、首相の説明と愛媛県の記録文書の食い違いが表面化している。
政権からは、世論調査で落ち込んでいた内閣支持率が持ち直し始めたのを受けて「世論も森友・加計学園問題に飽きたのだろう」との声も漏れるが、疑惑の幕引きを許してはならない。
野党側では、安倍政権への対立姿勢を鮮明にする立憲民主党と、「対決よりも解決」を掲げる国民民主党の足並みの乱れが顕在化した。政権を脅かす野党がなければ、国会は緊張感を失う。国会活性化には野党陣営の再構築も急務だ。
国会会期末 道理がかすむ1強政治
会期が約1カ月延長された今通常国会は、法案への国民理解を置き去りに、与野党の怒号が飛び交う中で手続きが進み事実上閉幕した。
参院定数を6増やす公選法改正の審議時間は、衆参合わせても10時間に満たない。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法も、ギャンブル依存症の増加や治安悪化などの懸念は棚上げ状態。各マスコミの世論調査では、今国会での成立を望まない国民が大多数を占める。
特に最終盤は西日本豪雨の発生と重なり、対応が急を要する中で法案成立にこだわる政府、与党の姿勢が疑問視された。気象庁が「記録的な大雨」を警告する異例の会見を行った5日夜、安倍晋三首相ら政権首脳も交じって宴会に興じていたことも、野党の政権批判に輪を掛けた。
翌6日にはオウム真理教の元代表ら7人の死刑執行を控え、後継団体などの動きに警戒を徹底する必要もあった。国民生活の安全が脅かされるタイミングでの宴会に、「1強」の緩みや緊張感の欠如を指摘されても仕方あるまい。
この状況で成立を急いだ改正公選法は、参院議員1人当たりの人口が最多の埼玉選挙区の定数を2増して1票の格差を是正するにとどまらず、比例代表も4増やして「特定枠」を新設する内容だ。
現在の比例代表は、候補者個人の得票順に当選が決まる非拘束名簿式だが、特定枠は票数に関係なく名簿最上位に位置づける拘束名簿式。しかも対象者は選挙運動が認められない。運動して得票が少数にとどまれば、上位当選の正当性が失われるからだろう。
つまり選挙によらず当選が約束されることになる。定数増が4ということからして、眼目は前回参院選で鳥取と島根、徳島と高知で導入された「合区」で公認されない自民現職の救済策に他ならない。
特定枠の数に制限はなく、使い方次第では民主的な選挙が成り立たなくなる懸念すらある。野党の批判は当然だ。
だが野党は連携もままならない。衆院野党第1会派の立憲民主党は政権と対決色を強めるが、延長国会の主戦場となった参院で野党筆頭の国民民主党は原則、審議拒否はしない方針。カジノ法案でも、慎重な運用へ付帯決議を付けるのを条件に委員会採決に応じるなど、溝が深まっている印象がある。
森友、加計学園問題など一連の疑惑や政権不祥事に国民の目は依然厳しいが、国会で解明が進んでいるとは言い難い。その主因は誠実さを欠く政権の対応にあるにせよ、追及の足並みがそろわない野党側の問題も大きい。
無理が通って道理がかすむ1強政治の弊害は、一方で多弱政治の結果でもある。
通常国会閉会へ 独善と内向きが際立った
政権や与党には、国民の思いを真摯(しんし)に受け止める気がないのではないか。強い危惧が残る。
通常国会が20日、事実上閉会した。1カ月超の延長を含む半年間にわたる会期を通じて際立ったのは、政府・与党の独善と内向き姿勢だろう。
審議は、最後の最後まで荒れ模様だった。最終盤の焦点となったカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法は20日夜の参院本会議で、自民、公明両与党などの賛成多数で可決、成立した。
国民の懸念を背景に野党はギャンブル依存症対策や経済効果など疑問をただしたが解消されぬまま、与党が押し切った。
IR整備法を巡っては、来年の統一地方選、参院選への影響を避けたい公明党が早期成立を望んでいた。
カジノ解禁について安倍晋三首相は雇用や地域振興などのメリットを強調した。だが、国民不安より優先しなければならないとは思えない。
平成最悪となった西日本豪雨の被害に苦しむ被災者にも、違和感があるはずだ。
政権、与党の自己都合が目立ち、異論に耳を傾ける態度がうかがえない。これでは国民との距離は開くばかりだ。
首相が最重要と位置付けた働き方改革関連法、自民党が主導した参院定数を6増する改正公選法も、野党が猛反発する中で与党は成立に突き進んだ。
首相や与党が成立にこだわったこれら三つの法律に共通するのは、「なぜいま」の疑問が拭えないことだ。
働き方改革法では、「過労死が増える」との懸念が絶えない高度プロフェッショナル制度の導入がセットにされた。誰のため、何のための改革か。参院議員を増やす改正公選法は、身内救済の意図があからさまだ。
政府、与党は多くの国民にとって必要性、緊急性の乏しい法律を、会期を延長してまで成立させた。その熱意とは裏腹に、森友、加計問題を巡る野党の審議要求には冷淡だった。
加計学園の愛媛県今治市での獣医学部新設を巡り、野党が求めていた加計孝太郎理事長の証人喚問は、結局たなざらしのままだった。
森友学園問題に関する財務省の決裁文書改ざんを巡り、証人喚問で佐川宣寿前国税庁長官に偽証があったとして野党が議院証言法違反容疑で告発するよう求めたが、与党は消極姿勢に終始した。
森友、加計問題については国民の疑念が解消されたわけではない。いずれも、行政の公正性や公平性に疑念を招かせるものだ。国会が閉じたからといって幕引きにはできない。
会期中、自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)や前財務次官のセクハラとほかにも不祥事が相次いだ。
これらの問題は政策論議の時間を奪った。にもかかわらず、首相は「働き方改革国会と銘打ち、70年ぶりの大改革を成し遂げることができた」と成果を誇った。こうした姿勢こそ、独りよがりの象徴に見える。
通常国会閉幕 「1強」の劣化が目に余る
改ざん、ねつ造、虚偽、隠蔽(いんぺい)…こんな言葉が飛び交った通常国会が事実上、閉幕した。ごまかし、はぐらかし答弁が横行し、世論調査などで反対の声が大半を占めていても、政府・与党は耳を貸すことなく、数の力で法案を成立させていった。これが「言論の府」と称される立法府なのか。
安倍晋三首相の「1強」の下で与党は無論、官僚まで劣化が目に余る事態となった。財務省の文書改ざんでは、与党議員もこの1年余り、だまされていたことをもっと重く受け止めるべきだ。不祥事にしろ法案にしろ、政府は説明責任を果たしたといえるのか。それを容認した与党の罪も重いといわざるを得ない。
森友学園問題で発覚した文書改ざん。決裁文書の改ざんという民主主義の根幹を崩す、あってはならない事態なのに、内部調査で処分を済まし、動機を問われた麻生太郎副総理兼財務相は「それが分かれば苦労しない」と開き直る始末。
加計学園問題では、首相の「腹心の友」が理事長を務める学園に対して、国家戦略特区への申請を官邸が主導していたことを示す文書が愛媛県から出された。そこには首相と理事長の面会がきっかけとなった経緯も記されていたが、学園事務局長のうそ発言で解明はストップしたままだ。
二つの問題に、首相は真正面から向き合おうともせず、与党も関係者の国会招致を拒み続けている。加計学園の理事長は会見で「お待ちしています」と言っているではないか。政治や行政の公平性に対する国民の不信を増幅させる重大な事案でありながら、核心部分は今なお、解明されていない。
首相が「働き方改革国会」と評した中で、ねつ造まがいのデータが発覚し、裁量労働制の対象拡大は削除に追い込まれた。一方で高度プロフェッショナル制度(高プロ)の創設では、ずさんなヒアリングが判明しながら、なりふり構わず押し切った格好だ。
「おごり」の最たるものが参院定数6増の成立だろう。合区選挙区の現職議員を救済する目的であり、首相でさえ「臨時的な措置」と答弁。「抜本改革だ」と強弁する自民党議員の姿には、党利党略むき出しとの批判は免れない。
カジノを含む統合型リゾート(IR)整備法も、国民の7割が今国会での成立に慎重姿勢を示している中で強行突破。西日本豪雨対応の先頭に立つべき石井啓一国土交通相が審議に張り付いた。参院定数増もそうだが、ブレーキ役となるべき公明党が、政権や自民党に体よく利用されているかのような構図が透ける。
国会審議が不要な政省令などに委ねている項目がIR法では約330、働き方改革関連法でも60以上ある。これでは国会軽視といわれても仕方がない。
昨年の通常国会は「共謀罪」法を、委員会の中間報告という禁じ手で採決を強行し閉幕。「森友、加計隠し」と揶揄(やゆ)された。まずは閉会中審査で両問題の解明を図るべきだ。
通常国会閉幕へ 熟議を欠いた「言論の府」
熟議への誠意も、西日本豪雨の対応への熱意も感じさせないまま、相変わらず巨大与党の強引さが目立つ国会だったと言えよう。
カジノ解禁を含む統合型リゾート施設(IR)整備法がきのうの参院本会議で可決、成立し、半年間にわたった第196通常国会が事実上閉幕した。
カジノに反対する立憲民主など野党6党派は衆院に内閣不信任決議案を提出し、最後の抵抗を見せたが、否決された。今国会では問題点の多い法律が数の力で次々と成立した。野党の力不足もあるとはいえ、国民への丁寧な説明を軽視したかのような政府・与党のやり方は、国会への不信を増すだけだ。
中でも西日本豪雨により深刻な浸水被害や土砂災害が続発し、被災者支援と復旧に全力を挙げなくてはならない時期にIR法案の審議に傾注したことは、甚大な被害が出た被災地としては極めて残念でならない。
野党は災害対応を優先するため国会審議を中断する「政治休戦」を求めた。なぜ、それよりもIR法の成立を急ぐ必要があるのか。政府や政治家の姿勢を被災者や国民はどう見ただろう。
民間によるカジノ解禁はもともと、疑問点が多かった。政府は外国人旅行客の増加をにらみ、観光立国の原動力になると強調するが、誘致する自治体の方は客の7〜8割が日本人と想定している。
心配されるギャンブル依存症に対しては、日本人の入場を最大「週3回、月10回」とする規定を設けた。だが1回の入場で24時間滞在でき、日付をまたげば週6日カジノに通うことも可能になる。富裕層に限定するとはいえ、カジノ業者に入場客への金銭貸し付けも認めた。
こうした数々の懸念から、世論調査でも国民の理解は進んでいない。地域振興の経済効果も未知数だ。それを衆参40時間あまりの審議で成立させたのはいかにも拙速だ。今国会では継続審議にし、さらに議論を尽くすべきだった。
これ以外にも安倍政権は、最重要法案と位置づけた働き方改革関連法を、高収入の一部専門職を労働時間規制の対象外とする高度プロフェッショナル制度への懸念が拭えないまま成立させた。
参院の議員定数を6増やす公職選挙法改正は、合区によって選挙区から出馬できない議員の救済が目的とされ、抜本改革を先送りした自民党の「ご都合主義」と批判されても仕方ないものだ。
陸上自衛隊のイラク派遣日報問題や学校法人・森友学園に関する文書改ざん、加計学園の獣医学部問題などが国会論戦の多くを占めたのも異例である。ここまで不祥事や疑惑が噴出しても、安倍晋三首相の政治責任はうやむやのままだ。これも「1強」体制だからだろう。
熟議を求める国民の声を決して侮ってはならない。
通常国会閉幕/存在意義が問われている
通常国会が事実上閉幕した。182日間から浮かび上がってきたのは、改ざん、虚偽、隠蔽(いんぺい)に、はぐらかし答弁…。不備があったり、世論調査などで慎重・反対論が多くても、政府、与党が決めた法案を数の力で通していく。これが「言論の府」の実像でいいのだろうか。
言うまでもなく、立法府の主要な役割の一つが行政府の監視だ。ところが、政府は国会を欺き、国会は政府に十分な説明をさせることもできないまま機能不全が進行した。三権分立が揺らぎ、国権の最高機関の存在意義が喪失しかねない危機と言えよう。
振り返れば、歴史に禍根を残す出来事が続出した。森友学園問題では、財務省の公文書改ざんという民主主義を脅かす極めて重大な事態が発覚。加計学園問題でも、安倍晋三首相の「腹心の友」が理事長を務める学園に対して、首相秘書官らが国家戦略特区の申請前に”指導”していたことを示す文書が愛媛県から見つかった。政治や行政の公平・公正・信頼性に明らかな疑義が生じたのである。
しかし安倍首相は「丁寧な説明」を繰り返すものの、野党の追及に真正面から向き合おうとしない。与党も関係者の国会招致を拒み、疑惑は払拭(ふっしょく)されるどころか膨らんだ。あってはならない公文書改ざんでも、監督する政治家は責任を取らなかった。
森友学園になぜ破格の値引きで国有地を売却したのか、公文書を改ざんした理由は何なのか、加計ありきではなかったのか、など問題の核心部分は依然として解明されていない。
長期政権の「おごり」も際立つ。民主主義の土台である選挙制度を巡っては、自民党が合区選挙区の現職議員の救済目的が明らかな党利党略むき出しの参院定数6増案を強引に成立させた。
共同通信の世論調査で7割近くが今国会の成立に慎重論を示していたカジノを含む統合型リゾート(IR)整備法の成立も強行突破。担当の石井啓一国土交通相は西日本豪雨の対応の陣頭指揮を執るべき場面で、IR法の審議に張り付いた。ギャンブル依存症対策の詳細な仕組みをはじめ331項目が、国会審議の不要な政省令などに委ねている以上、疑問解消のために十分論議を尽くす必要があった。
この国会の看板でもあった働き方改革関連法は、不適切データが表面化し、裁量労働制の対象拡大は削除に追い込まれた。高度プロフェッショナル制度の創設でも、ずさんなヒアリングが判明したが、押し切った。
こうした中、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長らが国会改革の提言をまとめ、超党派の会議も発足した。党首討論の頻度を増やして定例化、スキャンダル解明は特別調査会、法案・政策審議は各委員会と”車線”を分けることなどが柱だ。
検討に値する内容だが、どんなに制度をいじっても、政府に真摯(しんし)に説明する気がなければ、また与党がそれを許すならば、何も変わらない。政府に説明責任を果たさせるのが改革の大前提。与党議員もこの1年余り、だまされていたのである。まず与野党が閉会中審査を利用して森友、加計両問題の解明を実践すべきだろう。国会の存在意義が問われている。
[通常国会閉幕] 政権の不誠実さ際立つ
通常国会は22日までの会期を残し事実上閉幕した。
32日間の延長を含めて182日間の会期中、重要法案がめじろ押しだった一方で、森友・加計学園問題や、公文書改ざんなどの不祥事が相次いだ。
安倍晋三首相は「うみを出し切る」と言ったが、はぐらかし答弁に終始。野党の主張に耳を傾けず、政府・与党が決めた法案を数の力で強引に押し切った。不誠実な姿勢が際立ち、長期政権のおごりと言わざるを得ない。
これに対し、国会は政府に十分な説明をさせることができなかった。行政府を監視する国会の重要な役割を果たせず、その存在意義が揺らいでいる。
森友学園問題で発覚した財務省の公文書改ざんは、民主主義の根幹を脅かす極めて重大な不祥事である。
加計学園問題でも、安倍首相の「腹心の友」が理事長を務める学園関係者らと首相秘書官が面会し、「本件は、首相案件」と話したことが愛媛県の文書に記されていた。政治や行政の公平・公正・信頼性に疑義を生じさせる事態に違いない。
それなのに、首相は野党の追及に真正面から向き合おうとせず、与党は関係者の国会招致に消極姿勢をとり続けた。文書改ざんについても、監督する立場の政治家は責任をとっていない。
森友学園になぜ破格の値引きで国有地を売却したのか、公文書を改ざんした理由は何か、「加計ありき」ではなかったのか。さまざまな疑念が晴れないままでの幕引きは許されまい。閉会中審査を利用して解明すべきだろう。
安倍首相が今国会の目玉に据えた働き方改革関連法は、厚生労働省の不適切データ問題が表面化し、裁量労働制の適用拡大は削除に追い込まれた。高度プロフェッショナル制度の創設でも、ずさんなヒアリングが明らかになったが押し切った。
自民党の党利党略むき出しで参院定数6増とする改正公選法や、共同通信の世論調査で7割近くが今国会での成立に消極的だったカジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法も会期末が迫る中、性急な強行突破で成立させた。
とりわけIR法はギャンブル依存症対策の詳細など331項目を、国会審議が不要な政省令に委ねている。疑問を解消するために議論を尽くすべきだった。
安倍政権が長期化する中、行政府が国会を軽んじるような事態が続いている。国権の最高機関としての機能を果たせるよう、思い切った国会改革が求められる。
政府の公文書管理改革 形式の整備では不十分だ
森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざん事件などを受け、政府が再発防止策をまとめた。
求められているのは、あらゆる文書を公文書として、きちんと保存する体制を作った上で、二度と改ざんを起こさせないようにすることだ。
これに対し政府が示したのは、電子決裁システムへの移行で改ざんした際は痕跡が残るようにすることと、内閣府や各省庁に公文書管理を監視するポストや組織を設け、管理体制や研修を強化する対応だ。
だが、省庁が恣意(しい)的に公文書の範囲を決めている現状では、内容の乏しい文書だけが残され、電子決裁を進めても効果がない。
監視ポストを設けても膨大な量の公文書をチェックするのは難しく改ざんを防止する保証にはならない。
文書改ざんなど悪質な行為には、免職など重い懲戒処分を科すという。人事制度を厳しくすることで一定の抑止効果はあるかもしれない。
だが一方で、公文書管理法の改正や刑事罰の新設は見送った。財務省の決裁文書改ざんでは大阪地検が佐川宣寿前国税庁長官を不起訴とした。改ざん文書で1年間国会を欺いた重大さを考えれば、刑事罰の適用について引き続き議論すべきだ。
これらの点を考えると安倍政権は形式的な対策で問題の幕引きを図ろうとしていると思わざるを得ない。
残された課題には、メールなどの電子的な文書の扱いもある。
政府内では、情報共有や連絡にメールが使われる。行政文書になりうるが、大半が廃棄されている。
今回の防止策では、省庁で共有するメールの選別・保存の支援などにとどまっている。米国の多くの政府機関では、幹部が送受信するメールは全て自動的に保存される仕組みになっている。メール保存のルール作りに本腰を入れるべきだ。
官僚が正確な記録を残して公開することで、国民は行政機関の仕事を点検できる。民主主義の根幹であり、公文書管理法の理念でもある。
制度や人事で官僚を締め付けても法の精神の実現には限界がある。
意識改革とともに、業務上作った文書はすべて公文書とする。省庁の裁量で決めているメールや文書の保存期間も見直す。そうした本質に迫る改善策に踏み込むべきだ。
カジノ法成立
刑法で禁じている賭博を行うカジノを、なぜ、いま解禁しなければならないのか。
その根本的な疑問がまったく解消されていない。
にもかかわらず、与党は主要野党が求めた十分な審議時間確保に応じることなく、西日本の豪雨災害対策に当たるべき石井啓一国土交通相を国会に張り付けてまで、強引に押し切った。
カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)整備法がきのうの参院本会議で自民党、公明党、日本維新の会などの賛成により可決、成立した。
安倍晋三首相によると、IRは外国人観光客を呼び込む成長戦略の目玉なのだそうだ。
だが、カジノの入場客の大半は日本人になるとみられる。思うような経済効果は上げられまい。
「世界最高水準」と胸を張るカジノ規制も、実効性に疑問符がつく。ギャンブル依存症増加の不安は消えない。
そもそも賭博のもうけを経済活性化や地域振興に利用する発想が不健全だ。
このままカジノ解禁に踏み切れば、日本の将来に大きな禍根を残すことになる。
■不十分な依存症対策
これまで指摘してきた通り、依存症対策として法律に盛り込まれた日本人向けのカジノ規制は、あまりに不十分だ。
参院の審議では、それがあらためて浮き彫りになった。
入場回数は週3回、月10回までに制限される。しかし、政府は答弁で、24時間営業のカジノに最大72時間も居続けることが可能となると認めた。
これでは入り浸りを許容するようなものだ。有効な対策にはなり得ない。
衆院に引き続き大きな論点になったのが、カジノ事業者が客に賭け金を貸せる制度である。
賭けを取り仕切る胴元が資金提供できる仕組みは、客を借金漬けにする恐れがあるため、競馬や競輪といった公営ギャンブルでは認められていない。
負けを取り戻そうとのめり込み、借金地獄に陥って生活を崩壊させかねないばかりか、依存症の危険性が増す。
この貸金制度の詳細をはじめ、カジノ面積の上限といった根幹に関わる内容を含む331項目が、国会審議を経ずに政令などで事後に定められることも問題だ。
規制がなし崩しに緩められる可能性は否定できない。
政府は賭博を合法化する要件として「目的の公益性」「(公益性にかなう)収益の扱い」など8項目を挙げる。
確かに収益の3割は国と自治体に入るが、残りの7割は設置・運営する民間事業者が得る。これに「公益性」があるだろうか。
逆に、暴力団などの反社会的勢力を引きつけるのではないか。そうした心配の声があることも忘れるわけにいかない。
■成長戦略とは言えぬ
政府は2030年に訪日外国人客を6千万人、訪日客による宿泊などの旅行消費額を15兆円まで増やす目標を掲げ、その誘客の柱にカジノを据える。
しかし、政府のもくろみは安易で楽観的に過ぎる。
道内で誘致に名乗りを上げる苫小牧市、釧路市、後志管内留寿都村を対象に道が行った試算では、来場者の約8〜9割が日本人になるとはじき出した。
誘致への期待が高い大阪府の試算でも、約7割が日本人と予想している。
アジアにはシンガポールや中国、韓国などにカジノがあり、既に飽和状態と言われている。たとえ、日本にカジノが開設されても、思惑通りに外国人を呼び込めるとは限らない。
政府はIRの外国人客の割合や経済効果を明らかにせず、疑問に正面から答えようとしなかった。
まっとうな成長戦略とは到底言えない。
北海道に似合うのか
法の成立を受け、道は誘致の是非を判断するため、専門家懇談会を月内にも設置する方針だ。
法律ではIRの設置箇所は全国3カ所と定められ、大阪府や長崎県などが誘致に手を挙げる。
高橋はるみ知事は態度を明確にしておらず、誘致自治体や道議会の一部からは早期の判断を求める声も出ている。
だからといって、知事は決断を急ぐのではなく、くれぐれも慎重に対処すべきだ。
依存症などの影響は、カジノの地元自治体だけにとどまらず、道内全体に及ぶ。知事は道民の安全と平穏な生活を守る大きな責任があることを忘れてはならない。
専門家懇談会では、カジノ誘致の負の側面を徹底的に検証する必要がある。
カジノ法成立 負の側面に冷静な目を
カジノ解禁を柱とする統合型リゾート施設(IR)整備法案が、衆院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。
刑法が禁じる賭博を合法化し、ギャンブルで観光や経済の振興を図ろうという法である。それ自体がまっとうな成長戦略とは言い難い内容だが、とりわけギャンブル依存症拡大への懸念などを払拭(ふっしょく)しないまま、数の力で強引に成立させた政府・与党の責任は重い。
今後、政府は規制機関「カジノ管理委員会」を設置し、国会での審議が不要となる政令、省令、委員会規則で331項目にも及ぶ詳細なルールを定める。だが国会の監視が届かなくなるからといって白紙委任されたわけではない。目指すものが野党の言う「人の不幸を食い物にして成り立つ経済」でないというなら、国民が納得のいく実効性のある規制にすべきだ。
法案をめぐる国会審議で最も問題にされてきたのは、ギャンブル依存症対策である。
IR整備法は日本人客の入場を「週3回、28日間で10回」に制限する規定を設けており、安倍晋三首相は「世界最高水準の規制」としているが、早くもほころびが目立っている。
採決間近の審議で、1回の入場で24時間滞在できることが判明したからだ。これだと日付をまたげば1回の入場で2日間カジノを楽しめ、最大で週6日、28日間で20日間の滞在が可能になる。依存症の防止どころではない。
加えて胴元であるカジノの民間事業者に入場客への金銭貸し付けを認める規定もある。競馬など既存の公営ギャンブルでは認められていない制度だ。一定の預託金を事業者に納めた客に、貸し付けることができる。
政府は対象を富裕層に限定し顧客の返済能力に応じて限度額を決めるというが、富裕層の定義が不明であり、ギャンブルで負けた分をギャンブルで取り返そうとする心理をあおりかねない。そうなればまさに依存症の助長だろう。
安倍首相は「世界中から観光客を集める」としているが、韓国では依存症患者が増える一方で、外国人観光客からの売り上げは増えていないという。
現在、北海道や大阪府など複数の自治体がIRの誘致を目指しているが、カジノ設置の負の側面にも冷静な目を向けてほしい。カジノがなくても昨年は過去最高の2800万人を超える外国人観光客が日本を訪れた。賭博に依存しない観光振興の道はあるはずだ。
政官財が利権狙い…カジノ管理委は新たな天下り組織になる
安倍政権が西日本豪雨災害の被災者そっちのけで国会審議を強行した「カジノ法案」が20日、参院本会議で自民党や公明党などの賛成多数で可決、成立した。あらためて政府が旗振り役となって国民にバクチを推奨する意味がまったく分からないが、ハッキリしていることは、この先、強大な権力とカネを牛耳る新たな「天下り組織」がつくられ、血税が投じられる可能性があることだ。
カジノ事業は、施設の管理運営はもちろん、関連機器の製造など、幅広い分野で高い透明性の確保が求められる。マネロン対策などを行う警察庁や法務省、観光振興を担う観光庁など、関係するとみられる役所は幅広い。法案では、カジノ施設関係者を規制するための「カジノ管理委員会」を内閣府の外局に新設する、としている。
この委員会が、カジノ事業免許の審査や違反行為時の免許取り消しといった行政処分の権限を持ち、事業者の監督などを行うわけだ。しかし、国家公安委員会や原子力規制委員会など、こうした委員会で度々、問題視されるのが、天下りと多額の交付金(税金)投入の問題だろう。何せ、数兆円規模のカネが動くとされるカジノ事業だ。利権を狙っているのは民間事業者だけじゃなく、政治家や官僚の中にもゴロゴロいるだろう。
カジノ管理委員会の委員長や委員は衆参両院の同意を得て、総理大臣が任命するとなっているが、今の政権であれば任命権者は希代のペテン師である安倍首相。とてもじゃないが、マトモな人選になるはずがない。そうなれば政官財が一体となって、カネも権力もやりたい放題だ。ジャーナリストの若林亜紀氏はこう言う。
「カジノ管理委員会をわざわざ外局でつくる必要はないでしょう。カジノ法案を成立させ、運用していくには官僚の協力は不可欠。そのためにつくられる『天下り団体』と言ってもいい。カジノは利権の裾野が広く、将来、『カジノ振興センター』などの名称で関連の天下り団体ができる可能性もあります」
国民もよ〜く監視する必要がある。
ビキニ被ばく それでも国の責任重い
1954年、太平洋・ビキニ環礁での米国による水爆実験の周辺海域にいたのは、第五福竜丸だけではない。
高知県の元漁船員と遺族ら45人が、国に総額約6500万円の賠償を求めたが、高知地裁は判決で請求を棄却した。
「被ばくを認めてほしい」という切実な願いを受け止め、被ばくを認定したのは評価できよう。
しかし一方で、国は被ばくを隠すために支援や調査を放置したとは言えない、として賠償責任を否定したのは大いに疑問だ。
長い間、被ばくの有無をうやむやにされ、不安を抱えてきた原告は納得していない。被ばくとの関連が疑われる白血病やがんに苦しみ、亡くなった元船員もいる。
第五福竜丸以外の漁船も被ばくした事実や調査結果を、国は隠し続けたと原告は主張している。判決は退けたが、国の対応をふり返ると疑念は拭えない。
80年代以降に国会質問や情報開示請求がなされ、国は「文書を保有していない」などと回答していた。ようやく2014年に当時の調査結果を開示したところ、水爆実験の周辺海域に漁船延べ556隻がいたことが記載されていた。それは元船員らの聞き取り調査を続ける元高校教諭の請求によるものだ。
判決は、国は文書の所管部署がさまざまで継続的な放置ではないとした。さらに損賠請求の期間を過ぎているとした。しかし、訴えようにも長く調査結果は明らかにされていなかった。国の姿勢は問われてしかるべきではないか。
そもそも、ビキニ水爆をめぐり日米の政治決着があったことを忘れてはならない。
広島、長崎の原爆投下に続き、第五福竜丸が放射能の「死の灰」を浴びた衝撃は大きい。機関長の久保山愛吉さんが死亡し、国内に原水爆禁止運動が広まるなかで、米国が「見舞金」として日本側に7億2千万円を支払っていた。
久保山さんの死因を含め、水爆実験による被害調査は、米国への配慮から不十分だったと言われる。
当時、周辺海域に千隻以上の漁船がいたと見られるのに、第五福竜丸を除いて船員らの追跡調査はなく、隠された存在のようになった。国の責任は重い。
一審の判決が出たからといって、これで決着ではない。水爆実験による被害の全容は今も分かっていない。国は歴史の真実に向き合うべく、調査し直すべきではないだろうか。
ビキニ訴訟で請求棄却 それでも国は救済急げ
長きにわたり顧みられなかった核被害者の救済をいつまで放置し続けるのか。米国による1954年の太平洋・ビキニ環礁での水爆実験で、周辺海域にいた漁船の元船員や遺族ら45人が日本政府に国家賠償を求めた訴訟の判決で、高知地裁は原告の訴えを全面的に退けた。
「解決済みの問題」との姿勢を貫く国の主張に沿った判決だ。被曝(ひばく)による被害自体が「なかった」ことにされかねない。到底承服できない。
ビキニ水爆実験で被害を受けたのは、静岡県の第五福竜丸だけではない。この時期に周辺海域で操業していた日本漁船は約千隻に上る。「死の灰」は広範囲に降り注ぎ、汚染された魚の廃棄を余儀なくされた。
今回の訴訟では、それらの漁船の被害に関する調査結果を、日本政府が長年隠して開示しなかったため、米国への賠償請求の機会を奪われたとして、元船員1人当たり200万円の慰謝料を求めていた。
当時、「死の灰」を浴びた第五福竜丸は日本中に大きな衝撃を与えた。無線長が死亡し、原水爆禁止運動のうねりを起こした。だが、問題は間もなく埋没してしまう。その背景に反米、反核感情を抑える「政治決着」があったのは間違いない。
日本政府は、米国の法的責任を問わないまま「見舞金」として200万ドル(当時で7億2千万円)を受け取り、幕引きを図った。第五福竜丸元乗組員の継続調査以外は封印し、他の漁船の船員らの被害は放置した。
漁船や船員の被曝線量に関する検査資料も「見つからない」と言い続けていたが、元船員を支援する市民団体が粘り強く請求した結果、2014年になって延べ556隻分の資料公開にようやく応じた。12隻に一定量の被曝が認められた。水爆実験から60年たっていた。あまりにも遅過ぎて不誠実だ。原告らが「意図的に隠していた」と非難するのも無理はなかろう。
地裁はきのうの判決で「元乗組員のうち1人を除いて被曝した事実は認められる」としながらも「国が資料を意図的に隠したとは断言できない」との判断を示した。さらに「国家賠償を請求できる20年の期間も超え、救済は困難」と結論付けた。
原告らが求めていたのは国の責任を明らかにし、第五福竜丸以外の被害者の救済を実現することだ。国がなぜ長年にわたり情報開示しなかったのかさえ分からないままでは、到底納得できまい。
被曝の事実があっても病気との因果関係を立証するのは難しい。裁判と並行して、原告の元船員ら11人は「労災認定」に当たる船員保険の適用を求めて集団申請していたが、昨年末に全国保険協会から不承認とされた。健康に影響が出るほどの被曝は確認できないとの理由だ。
ただ元船員への直接の聞き取りはなかったという。元船員らが訴える被害の実態をしっかり踏まえた判断とは言い難い。
周辺海域で被曝した元船員は全国に埋もれている可能性が高い。水爆実験から60年以上が過ぎ、いずれも高齢だ。被曝の事実を知らずに亡くなった人も多いはずだ。国は長く被害実態の把握を怠り追跡調査さえしなかった。その「不作為」の責任は重い。司法判断とは別に、一刻も早く救済に乗り出すべきだ。
ビキニ被ばく 救済の道を閉ざすな
核実験による元漁船員たちの被ばく被害を政府は長く隠し、放置してきた。その重い責任に正面から向き合おうとしない、納得できない司法判断だ。
1954年に米国が太平洋のビキニ環礁で水爆実験をした際、周辺海域で操業していた高知県の元漁船員と遺族ら45人が国に賠償を求めた裁判である。高知地裁が請求を退ける判決を出した。
原告側は、日本政府が米国の法的責任を問わずに政治決着させ、漁船の検査記録を長い間開示しなかったことで、米国への賠償請求の機会を奪われたと訴えていた。判決は、国が意図的に記録を隠したとは断言できないなどとして賠償責任を否定した。
判決は一方で、水爆実験による原告らの被ばくを認定している。それでいて政府の責任に目をつむり、救済の道を閉ざすのは、司法の責務を果たしていない。
ビキニの水爆実験は、「死の灰」と呼ばれる放射性降下物を広範囲に降らせた。静岡のマグロ漁船「第五福竜丸」は、乗組員23人が被ばくし、無線長の久保山愛吉さんが半年後に亡くなっている。
ほかにも日本の漁船およそ550隻が周辺海域に入ったとされる。けれども、第五福竜丸の陰に隠れて、多くの漁船員の被害が置き去りにされてきた。偏見や差別を恐れ、被ばくしたことを語れない人もいたようだ。
日米両政府は55年、米国が200万ドル(当時で7億2千万円)の「見舞金」を払うことで合意した。漁業の損害補償に充てられたほか、第五福竜丸の乗組員に分配されたが、そのほかの漁船員に補償は何もなされていない。健康状態の追跡調査も行われなかった。
被害を掘り起こしたのは、高知の元高校教諭らによる地道な調査だ。30年に及ぶ聞き取りで、多くの元漁船員が、被ばくと関連が疑われるがんや白血病に苦しんでいることが分かった。歯を調べ、広島の原爆を爆心から1・6キロで浴びたのに相当する被ばくがあったとする研究者の分析もある。
地裁判決は、長く省みられなかった元乗組員の救済の必要性はあらためて検討されるべきだと付言した。救済、援護の手だてを何も講じてこなかった政府が責任を免れるわけではない。
被ばくした元漁船員はいずれも高齢だ。亡くなった人も少なくない。司法判断とは別に、救済を急がなくてはならない。高知のほか各地にいる人たちの健康状態や死因を調べ、被害の全容を把握することが欠かせない。
【ビキニ訴訟】司法は本質に迫ったのか
1954年に米国が太平洋のビキニ環礁で実施した水爆実験を巡る重い事実に、司法はどこまで向き合ったのだろうか。
当時、周辺海域で操業していた県内外の元漁船員らが、被ばく線量などを記した文書を開示しなかったのは違法だとして国に損害賠償を求めた訴訟で、高知地裁はきのう、訴えを棄却した。
厚生労働省が故意に文書を隠したとは認めず、国家賠償請求権が消滅する20年の除斥期間も過ぎているとした。
ビキニ水爆実験は日本にとって、広島、長崎に続く第三の被ばくとも呼ばれる。最大の責任はもちろん米国にあるが、問われ続けてきたのは日本の姿勢と言ってよい。
当時、第五福竜丸(静岡県)の被ばくと船員の死亡に世界的な関心が集まった。日米両政府は、米側が見舞金を支払うことで法的な責任を不問にする政治決着を図った。
これが、周辺海域で漁をしていた高知県船籍を含む多くの船の被ばくを放置することになる。国は86年の国会で、第五福竜丸以外の船の調査文書などの存在を否定。存在が確認できたとして厚労省が開示したのは2014年だった。
文書には当時の船の検査結果などが記されている。多くの元船員が事実を知らされず、救済もされてこなかったことを物語る。既に亡くなった人も多い。元船員や遺族らが国は故意に文書を隠したと訴えたのも当然のことだ。
ビキニ被ばくを巡る初めての国賠訴訟だったが、司法は問題の本質にどれだけ迫ったのだろうか。
裁判や、提訴に至るまでの支援団体の活動などから改めて浮き彫りになったのは、60年にわたる政府の無責任ぶりだ。
政府は国民の生命や尊厳を守る使命を怠った。文書も、故意に隠したかどうかによらず、事実上、闇に葬ってきた。
最近の一連の公文書を巡る問題にも通じるものがある。存在する文書を「ない」「廃棄した」と強調し、報道機関や国会の追及を受け、後から「見つかった」と報告する。
公文書は、国民の「知る権利」が保障されるために不可欠な財産である。情報公開制度は最近になって整ってきたが、肝心の公文書に対する官僚の認識が改まっていないというしかない。
高知地裁は判決で「漁船員の救済の必要性については改めて検討されるべき」だとの考えを示した。現行法では司法的救済は困難とし、「立法府および行政府による一層の検討に期待するほかない」と指摘した。
法の解釈を巡っては議論の余地があり、司法の逃げとの批判もあるだろう。一方で、政府がこれまでの経緯をしっかりと踏まえ、救済に力を入れるべきなのも確かだ。
原告団が訴えるように、ビキニ事件は終わっていない。立法府や司法、国民も引き続きこの問題に向き合う必要がある。
元復興相の松本龍氏が死去 旧民主党政権で担当
旧民主党政権で復興対策担当相などを務めた元衆院議員の松本龍(まつもと・りゅう)氏が21日午前0時55分、肺がんのため福岡市の病院で死去した。67歳。福岡市出身。葬儀・告別式は23日午後1時から福岡市中央区古小烏町70の1、ユウベル積善社福岡斎場で。喪主は妻珠美(たまみ)さん。
全国水平社の中心的人物で「部落解放の父」と呼ばれた松本治一郎元参院副議長を祖父に持つ。1990年の衆院選で旧社会党から旧福岡1区に出馬して初当選し、2012年に落選するまで連続7期務めた。
東日本大震災を受け新設された復興対策担当相に就任したが、任命から9日目で引責辞任した。
再審開始、当事者ら喜びの声 大津、支援団体が大会
冤罪(えんざい)事件などを支援する「日本国民救援会」の第59回全国大会が21日、大津市内のホテルで始まった。昨年末以降、裁判をやり直す「再審」開始を認める決定が相次いだ滋賀県内の「日野町事件」と「湖東記念病院事件」の当事者が、決定を聞いた喜びを報告した。
日野町で1984年、酒店の女性経営者が殺害され金庫が奪われた日野町事件は、大津地裁が11日に再審開始決定を出したばかり。強盗殺人罪で無期懲役が確定した元受刑者の阪原弘さん=2011年に死亡=の長男弘次さん(57)ら遺族や支援者が、特別報告を行った。弘次さんは「何度も心が折れそうになったが、その度に全国の皆さんの言葉に支えられた。おかげでこの場に立ててうれしい」と深々と一礼すると、会場は大きな拍手に包まれた。
03年に勤務先の湖東記念病院(東近江市)で患者の人工呼吸器チューブを外して死亡させたとして殺人罪で服役した元看護助手西山美香さん(38)も登壇。昨年12月に大阪高裁で再審開始が認められた後、検察側が特別抗告したため現在は最高裁で審理している。「救援会の支援を受け、刑務所でも頑張ることができた。引き続き支援をお願いします」とあいさつした。
全国大会は隔年で開催しており、滋賀では2006年以来。23日までで、会員ら約400人が、支援する各地の裁判について意見交換などを行う。
祇園祭・花傘巡行、酷暑予想で中止
24日に京都市内で開催予定の祇園祭の花傘巡行について、八坂神社(東山区)は21日、酷暑が予想されるため参列者の体調を考慮し中止を決めたと発表した。
花傘巡行は1966年、前祭(さきまつり)と後祭(あとまつり)が合同巡行となったのを契機に始まった。例年は花街の芸舞妓や子どもたちの神輿(みこし)など約850人が八坂神社を出発し、四条、寺町、御池、河原町の各通を経て再び四条通を通って同神社までの約4キロを練り歩く。
今年の京都市は、7日連続で最高気温38度以上を観測するなど酷暑が続いている。熱中症で死亡する事例も全国で相次いでいることから、21日に関係者が協議し、巡行自体を取りやめることを決めた。花傘巡行の中止は前日の雨の影響で準備ができなかった2003年以来。
くりぃむ上田晋也が安倍首相の赤坂自民亭を一刀両断!「えひめ丸事故の森首相と同レベル」「大阪の地震でも食事会」
高プロ、参院定数6増に続いて、国民の大半が反対しているカジノ法案も今国会で成立してしまった。豪雨被害そっちのけでカジノ法案まで強行するとは……その国民不在の姿勢にはもはや言葉もないが、こんな暴挙が許された最大の原因は、マスコミがこの間の安倍政権の災害対応をほとんど批判しなかったからだ。
とくに、今月5日、安倍首相と小野寺五典防衛相が対策をほったらかして「赤坂自民亭」のどんちゃん騒ぎに参加していた問題は、数日間、TBSの一部の番組をのぞいて、全く報道されなかった。
野党が国会で追及し始めた10日頃からようやく、他局も報じ始めたが、申し訳程度に「野党が批判している」とか「ネットで非難を浴びている」と紹介しただけ。メディアがきちんと批判する姿勢は全く見せなかった。
モリカケで一時弱まったかに見える安倍政権忖度が完全に復活している印象だが、そんななか、安倍首相に対して、敢然と批判の声を上げた大物芸能人がいる。それはくりぃむしちゅーの上田晋也だ。あまり政治的な話に踏み込むイメージのない上田だが、7月14日に放送された『上田晋也のサタデージャーナル』(TBS)でこう語った。
「以前、えひめ丸の事故のとき、森喜朗首相がゴルフやってて退陣まで追い込まれたじゃないですか。僕はまったく同レベルの話だと思うんですよ」
この日の『サタデージャーナル』は、「政治家としての“感覚”を問う 災害対策は? 豪雨の夜に“赤坂自民亭”」と題し、ジャーナリストの龍崎孝、元衆議院議員の金子恵美、脚本家・CMディレクターの大宮エリーをパネラーに迎えて安倍首相らの赤坂自民亭参加について議論が行われた。
批判の口火を切ったのは、大宮エリーだった。
「気象庁が発表した時点で動いてなくちゃいけないわけじゃないですか。リーダーシップをとって。国が一番最初に情報を掴んでなくちゃいけないのに、結局その時点ではこんなになるとは思わなかったって発言があったりとかして、怒りを通り越して呆れているというか悲しい」
「全然学習してないし、どんどんひどくなってる。信じられるか、られらないかだと、もう信じられないし、辞めてほしい。首相って、国を守る人じゃないですか、普通はあの時間にもっと打ち合わせしてなくちゃいけないじゃないですか、もしくは、もう打ち合わせ終わって飛び散ってなくちゃいけないのに、宴会してるっていうのが、もう言葉がない」
もう信じられないし、辞めてほしい──。まさに大宮の言う通りだろう。さらに、番組では、赤坂自民亭の様子を説明するくだりで、岸田文雄政調会長が地元広島の日本酒「賀茂鶴」を差し入れ、また、安倍首相は地元山口の「獺祭」を差し入れたため、参加者は「どっちを飲むんだ?」とプレッシャーをかけられながらも、どちらの酒も美味しく飲んだという解説がなされる。すると、その言葉を受けて上田はこう切って捨てた。
「どうでもいいですしね、本当に。そんなどころじゃないよっていう話なんですけれども」
そして、上田は大阪の地震のときの対応も引き合いに出しながら、こう語ったのである。
「先日の大阪の地震のときもね、安倍総理と岸田さんお食事会してらしたわけでしょ。で、今回のコレでしょ。僕はね、以前、えひめ丸の事故のとき、森喜朗首相がゴルフやってて退陣まで追い込まれたじゃないですか。僕はまったく同レベルの話だと思うんですよ」
えひめ丸の事故というのは、2001年2月、愛媛県立宇和島水産高等学校の漁業練習船えひめ丸が、浮上したアメリカ海軍の原子力潜水艦グリーンビルと衝突して沈没。この事故により、えひめ丸に乗っていた高校生ら9名が死亡したが、森喜朗首相(当時)は事故の連絡を受けたにもかかわわらず、休暇中に訪れていたゴルフ場から動かなかったことで猛批判を浴び、退陣に追い込まれた。
上田は国民の命が危険に晒されているのにも関わらず、自民党の仲間内で宴会を優先させる安倍首相の姿勢はこのときの森首相と同じ、つまり、安倍首相の行為も退陣に値すると批判したのだ。この間、さまざまな評論家やコメンテーターたちが「赤坂自民亭」についてコメントしていたが、ここまで踏み込んで正論を吐いたのは、上田だけだろう。
くりぃむ上田が安倍政権の言い訳に「国民に響くものはなかった」「誤解じゃないし」
しかも、上田の批判は、赤坂自民亭が問題になった後の、安倍首相ら参加者の言い訳にも向けられた。
「いろんな釈明がありましたけれども、我々国民に響くようなものはないと言いましょうかね。いつもそうですよね。世間が怒ったから、取り敢えずかたちだけ謝っておこうっていうような、芯から感じているというふうには思えないんですよね」
そのうえで、番組が取り上げたのが、赤坂自民亭の様子をツイートした西村康稔官房副長官の「誤解を招いた」発言だった。
これについても、上田は番組のなかで「えっ? 我々が誤解してたの? 誤解じゃないと思うんですけどね。間違えて解釈したこっちが悪いんだといわれてる気もするし」とコメントした。
ふだん、政治的な発言をあまりしない印象のある上田がここまで辛辣な安倍批判をしたというのは、やはり、今回の安倍政権の対応について相当な怒りを抱いたということだろう。
実際、それも当然で、安倍政権の対応は本当に酷いものだった。安倍首相は気象庁が異例の会見を開いて「厳重警戒」を呼びかける中、赤坂自民亭の宴会に率先して参加しただけでなく、被害がどんどん拡大し始めたその翌日もたった15分しか会議をせずにさっさと私邸に帰ってのんびり過ごしていた。
しかも、ひどかったのが言い訳だ。安倍首相は宴会の直後、自らマスコミに上機嫌で「和気あいあいだった」と答えておきながら、国会で追及されると、西村同様「ツイートが誤解を招いた」などとまるで宴会がなかったかのような嘘を吐いた。また、小野寺防衛相は「赤坂自民亭からずっと指示を出していた」と言い張ったが、防衛省内部の証言で「指示がなかった」ことが明らかになっている。
これらは、上田が引き合いに出した「えひめ丸事故」のあとの森喜朗と同じく、即刻、退陣につながってもおかしくない失態だろう
しかし現実は、そうはならなかった。それどころか、本来であれば豪雨災害に専念させるべき石井啓一国交相にカジノ法案の審議に出席させ、被災者おざなりを続けたのである。そして、そのまま冒頭で言ったように、カジノ法案を成立させてしまった。
もはや、やりたい放題であり、民主主義が死に瀕しているともいえる異常事態ではないか。
上田は番組終盤、「こういった時こそね、本当に政治家としての資質が問われるんじゃないかと思うんですがどうでしょうか」と言っていた。
これまで目立って政権批判をしていなかったくりぃむしちゅー上田までが怒りの拳をあげた、安倍首相の暴挙。これでも他のマスコミは黙ったままでいるのだろうか。(編集部)
LGBT 「生産性なし」自民・杉田議員の寄稿が炎上
自民党の杉田水脈(すぎた・みお)衆院議員(比例中国ブロック)が月刊誌への寄稿で、性的少数者(LGBTなど)について「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり生産性がないのです」などと書き、ネット上で炎上している。杉田氏はツイッター上で<全文を読んでから批判してほしい>と反論したが、性的少数者のみならず高齢者や子のない夫婦も否定するかのような内容で、批判が広がっている。【大村健一/統合デジタル取材センター】
「ナチスの優生思想と同じ」
杉田氏の寄稿は「新潮45」(新潮社)8月号の「『LGBT』支援の度が過ぎる」。同誌の特集「日本を不幸にする『朝日新聞』」の1本。冒頭に「朝日新聞や毎日新聞といったリベラルなメディアはLGBTの権利を認め、彼らを支援する動きを報道することが好きなようですが、違和感を覚えざるをえません」と執筆動機を書いている。
寄稿を読んだ立憲民主党の尾辻かな子衆院議員(比例近畿ブロック)が18日、自身のツイッターで「生産性」のくだりに対し「LGBTも納税者であることは指摘しておきたい。当たり前のことだが、すべての人は生きていること、その事自体に価値がある」と杉田氏を批判。これをきっかけに炎上した。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)上では
<独身者、子供のいない夫婦、さまざまな事情で子供が作れない人も、すべて生産性がないので税金を使うなということか>
<国民を生産性の有無で分別し、後者を抑圧するのはナチスの優生思想と同じことではないか>
などとの反感が広がった。
毎日新聞は杉田議員の事務所に寄稿の趣旨を問い合わせたが、「期限内での返答は難しい」との回答だった。杉田議員は批判を受け、19日に公式ツイッターアカウントで<ちゃんと新潮45を購入して全文を読んでから批判していただきたい>と反論している。
同性愛者は不幸なのか
とはいえ、全文を読むと性的少数者を蔑視する指摘が目立つ。
杉田氏は女子中高一貫校に在籍した自身の経験を基に「女子校は女性が疑似恋愛の対象になる。ただ、それは一過性のもの、成長するにつれ、みんな男性と恋愛して、普通に結婚していきました」と紹介。多様な性を認める報道により「普通に結婚できる人まで『これ(同性愛)でいいんだ』と不幸な人を増やすことにつながりかねません」と、同性愛者を異性愛者に比べ「不幸」だとするかのような記述がある。
さらに、寄稿の終わりの方で「なぜ男と女、二つの性だけではいけないのでしょうか」「多様性を受けいれて、様々な性的指向も認めよということになると、同性婚の容認だけにとどまらず、例えば兄弟婚を認めろ、親子婚を認めろ、それどころかペット婚や、機械と結婚させろという声も出てくるかもしれません」と記述する。
そして「朝日新聞がLGBTを報道する意味があるのでしょうか。むしろ、冷静に批判してしかるべきではないのかと思います」と性的少数者への批判をあおるような主張を展開。「『常識』や『普通』であることを見失っていく社会は『秩序』がなくなり、いずれは崩壊していくことにもなりかねません。私は日本をそうした社会にしたくありません」と、性的少数者が「非常識」で「社会の秩序を乱す」と受け取れる一文で結ぶ。
杉田氏は安倍晋三首相の出身派閥の細田派に所属。6月に英国の公共放送BBCで放送されたドキュメンタリー番組内のインタビューで、性暴力被害を訴えたフリージャーナリストの伊藤詩織さんについて「女として落ち度があった」と答え、批判を浴びている。
「自民党を含む各界の努力を否定するに等しい」
性的少数者を支援する団体の全国組織「LGBT法連合会」の神谷悠一事務局長は、杉田氏の寄稿について「LGBTの当事者を悲しませるというだけでなく、自民党を含む与野党、人事院、経団連など、政官財を挙げて多様性のある社会の実現に向けた対策を立てている中で、こういう論文を発表することは、その努力を否定するに等しい」と憤る。
内容については「さまざまな俗説のパッチワークのような印象。『日本は昔から同性愛に寛容』としつつ『多様性を認めると社会の秩序が乱れる』というならば、日本の秩序はすでに乱れていることになる。論理の破綻が目立つ」と分析した。
「生産性」の観点については、「ハラスメントや解雇など差別で退職せざるをえないLGBTは現実にいる。現状を見ずにそうした方々への対策を怠ることは、結果的に生産性の損失になるのではないか」と訴えた。