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三角西港_宇城_180820

Le plus violent typhon depuis 25 ans frappe actuellement le Japon
Le premier ministre japonais appelle les habitants de l'île à ≪prendre des dispositions pour se protéger≫, redoutant de nombreuses victimes. Les gares et les établissements scolaires sont fermés. La plupart des entreprises ont aussi appelé leurs salariés à rester chez eux.
Le pays avait déjà été touché en juillet par d'importantes inondations ayant fait plusieurs centaines de morts. Ce mardi, un très puissant typhon, considéré comme le plus violent depuis 25 ans, a commencé à frapper le Japon. Les transports et l'activité des entreprises sont largement perturbés. Les autorités redoutent que la tempête fasse à nouveau des victimes.
Le typhon appelé Jebi est la 21e tempête tropicale de la saison en Asie. Il a touché la préfecture de Tokushima dans le sud-ouest, sur l'île de Shikoku. Cette dépression est accompagnée de vents très violents, pouvant atteindre en rafales près de 220 km/heure par endroits.
Avec des vents de 160 à 190 km/heure dans la partie centrale, Jebi est classé dans la catégorie ≪très puissant≫, ≪le plus puissant depuis 1993≫, a précisé à l'AFP Ryuta Kurora, responsable de l'agence nationale de météorologie. Jebi voyage rapidement, poursuivant sa course dans la direction nord-nord-est à 45 km/h. Il devrait traverser ensuite la partie ouest de l'île principale Honshu.
Shinzo Abe convoque une réunion de crise

Des pluies diluviennes sont également redoutées et les populations habitant des zones inondables ou susceptibles d'être victimes de coulées de boue doivent suivre les éventuelles consignes d'évacuation, ont insisté les autorités.
Le premier ministre Shinzo Abe a annulé un déplacement dans l'ouest et convoqué une réunion de crise au cours de laquelle il a demandé aux populations de ≪prendre des dispositions pour se protéger≫. Des recommandations de rejoindre des refuges ont déjà été données à quelque 300.000 personnes. Au moins 50.000 foyers sont déjà privés d'électricité.
Magasins, entreprises, écoles fermés
Les compagnies aériennes ont, par précaution, renoncé à plus de 650 vols, et de nombreuses liaisons ferroviaires ont été suspendues. Les grands magasins de la région d'Osaka notamment ont décidé de fermer exceptionnellement ce mardi. Des entreprises des zones qui devraient être les plus affectées ont demandé à leurs salariés de rester chez eux, de même que des établissements scolaires à leurs élèves.
Pour rappel, un typhon est une tempête, ou phénomène tourbillonnaire, qui se déclare dans le nord-ouest du Pacifique et s'accompagne de vents dont la vitesse est supérieure ou égale 118 km/h. De nombreux typhons balayent régulièrement l'archipel en été, mais Jebi pourrait provoquer d'importants dégâts dans l'ouest du Japon. C'est cette même partie de l'île qui avait déjà été dévastée début juillet par des inondations et glissements de terrains, ayant fait 220 morts.
フランス語
フランス語の勉強?
しゅう @cuji118
東淀川区の菅原交差点 信号停電
モリヤンヌ @hallo_moriyanne
震度3はある。(風で揺れてる)東淀川区らへんはあと1.5〜2時間でまだここから酷くなるらしいです。
さっちゃん @sa_chan40
東淀川区やけど風やばい…いっぱい飛んでる
その輝きは死兆星 @starlight_end
こんなに怖いと思わなんだ…
by大阪東淀川区

しげちゃん @shigechan77777
東淀川駅近くの道路の街路樹か倒れてます。家から出ちゃダメですね。
おむすび三角 @omusubi8
大阪市東淀川区で停電中。かれこれ50分経過
究利八 百彪 @Create100Design
昔聴いた話で、大阪は淀川が万が一氾濫するとなれば中心部を守るために北側(右岸)の堤防をワザと決壊させて東淀川、淀川、西淀川に水を流すという恐ろしい計画があるらしい。。。
ぐみ3581 @LDJQ32cJE6BiZvw
東淀川区豊里。木が倒れて車通れない!
#東淀川区#豊里#台風

berry @berry09437025
ニュースでは大阪市ない停電無いみたいに出てるけど
うち東淀川区やけど停電して2時間たってます
#停電大阪

ユーやん @yuyan1997
関西国際空港で非常食の提供が始まりました
安田登 @eutonie
関空。水浸しで再開の目途が立っていない上に連絡橋にタンカーが衝突で空港内にいる人が動けない。携帯電話もつながりにくいし、停電も起っている…って、これは将来、地震と津波が来たら避難もできずに完全にアウトになり得るということが明かになったちゅうことなのでは…。どうするんだろう。
なかのとおる @handainakano
確かに、インフラとしての関空って大丈夫か、という気がしますわなぁ。もともと沈下が見込まれてて護岸工事もおこなわれてるけど、それが不足ということなのでしょうか。空港島という発想自体に無理があったのかも、ということはないのでしょうか。
井川加菜美 @ikawakanami
関西空港担当の時に空港の地震・津波対策の取材してて、確か南海トラフで想定されている最大津波高が約1・7辰如∨苗壁もあり、浸水の危険性は極めて低いというような話だったはず。高潮はそれを軽く超えてしまったのか…。
こたつぬこ @sangituyama
国際空港が当面使用不可、道路、鉄道、電力、道路等に甚大なインフラ被害がでているのに、夕方のわずか数分の災害対策会議出席以降の安倍総理の動向が不明。
本来なら緊急閣議を招集し、事態の把握と補正予算を組む段取りに入ってもおかしくない事態。
野党はただちに災害復興特別委員会の設置を要求すべきでは。全貌が明らかになる前にこの被害ですよ。

目指せ!ケンコウ芸人 笑いより健康が気になる芸人が集まる診療所
40歳以上の日本人なら絶対に共感しまくる!「健康バラエティー」 最近体にガタが来た!!体に悩みを抱える40代の人気芸人が大集結!!物忘れ・老眼・尿もれ・つまずき・睡眠負債…気になる体の症状をみんなで明るく語り合う!「この症状は問題あり?問題なし?」名医が診断し的確なアドバイス!「健康長寿になる為の境界線」さらに(秘)対策&予防法も紹介。▽通勤前のゴミ出しの時、間違ってゴミではなく○○の方を捨ててしまう!? ▽思わぬ残尿でズボンに異変が!? ▽○○の時は大人用のオムツを穿いている!? …ザキヤマ、ひとり、小峠、松嶋尚美も…全員明るく症状を激白!! ▽急性心不全から復活したハチミツ二郎が振り返る「生死を分けた○○」あなたの身にも起こりうる意外な予兆とは何だったのか!? 高島彩 虻川美穂子 伊藤さおり 劇団ひとり 古坂大魔王 山崎弘也 東貴博 飯尾和樹 小峠英二 千原ジュニア 松嶋尚美 有野晋哉 大久保佳代子 光浦靖子 カンニング竹山 ハチミツ二郎 はなわ 伊藤明子 白澤卓二 船山敦 荒井宏幸 梶本修身

台風が来るというので今日は仕事なし.正確にはやるべき仕事はあるけど,出勤しない,ということ.仕事できないのでどこかで矛盾が出てくるかも…
10時前に雨が降り出したと思っていたらだんだん強くなってきました.
スーパーに買い物に行きたいけど,外出ヤバそうなので部屋にあるものでどうにかお昼をすませました.2時くらいに風がすごく強くなってきました.まるで地震みたいに揺れます.震度3くらいの感触です.コワい.すごくコワい.
3時くらいにはだいぶ落ち着いた感じですが,でも外に出れません.
夕方5時くらいに外に出ると皆お掃除しています.なんというかガレキの処理みたいな感じ.
印刷しなければいけないのを思い出して出勤.印刷だけしてすぐ戻りスーパーで買い物.
夜ネットを見ると近くで結構停電しているみたいです.たまたま私のところがラッキーだっただけで停電にショックです.

デスク日誌 亡き同僚へ
 見ているうちに、まるで時が止まったかのような感覚に見舞われる写真が職場に飾られている。
 2011年春、東日本大震災の被災地で生まれた子どもたちを追った「未来へ 笑顔の5歳」。おそろいの制服姿の男の子と女の子が手をつなぎ、「早く幼稚園に行きたい」とはしゃいでいるような写真だった。
 震災の5年後、宮城県南三陸町で撮った。元気に未来へ向かう写真なのに、なぜか時が止まったかのような感じを受ける。撮影した同僚のWさんが、もういないからなのかもしれない。
 2年前の9月、40代で亡くなった。病と闘いながら、およそ2年も現場に向かい続けた頑張り屋だった。
 高校野球が大好きだった。ダルビッシュ投手が甲子園で活躍すると、生まれた子どもに「有」と名付けたほど。「甲子園の土には、球児たちの汗と涙が地層のように染み込んでいる」と口癖のように語り、毎年のように甲子園大会の取材を希望した。
 震災直後から変わり果てた被災地を撮りまくった。どれほど海沿いを歩き、シャッターを押し続けたことか。いつも、どこでも熱い取材をする同僚だった。(写真部次長 及川圭一)


住民に心労申し訳ない 宮城県、気仙沼防潮堤ミスでHPに謝罪文 長引く議論による地元批判で
 気仙沼市内湾地区の防潮堤高を県が誤って施工した問題で、宮城県は3日、地元住民に謝罪する文書をホームページ(HP)で公表した。造り直しを求める地元住民に対し、他地域の住民から議論を長引かせているとの批判が寄せられたことを受けた。
 村井嘉浩知事は3日の定例記者会見で「いわれのない批判は県が県民に誤解を生じさせた」として県の責任を認めた。知事名の文書では「計画通りに造り直してほしいという意見は自然なこと」「非常につらく気まずい思いをさせ、心労をかけたことは大変申し訳ない」とした。
 県によると、内湾地区の住民らが、市内外の住民から「いつまで引きずるのか」などと批判を受けたという。県は「今般の事態を正確に理解してもらいたい」として、施工ミスの原因や同市の住民団体「内湾地区復興まちづくり協議会」との協議経過に関する資料もHPで公開した。


二つの震災風化防ごう 大阪の学生、復興支援イベント計画 来年1月神戸・中華街で気仙沼の現状と魅力発信
 東日本大震災後、気仙沼市内で復興に関する調査を続けている摂南大経済学部(大阪府寝屋川市)の学生が、阪神大震災から24年目となる来年1月17日、神戸市内で復興支援のイベントを開く。気仙沼市の魅力を関西で発信し、震災の風化を防ぐのが狙い。昨年3月に営業を終えた仮設商店街「復興屋台村 気仙沼横丁」を復活させる計画も立てている。
 イベントを企画したのは植杉大教授(48)のゼミに所属する4年生4人。1月17、18の両日、神戸市の中華街・南京町の中央広場で行う。「飲食」「物販」「観光」「歴史」の四つのブースを設け、気仙沼の魅力や被災の状況を伝える。
 飲食ブースでは復興屋台村に出店した飲食店の店主が、人気料理などを提供する予定。当時の雰囲気を再現する計画もある。歴史ブースでは震災の語り部が津波被害の様子などを説明し、観光ブースではサメの歯を使ったキーホルダー作りが体験できる。
 植杉教授のゼミは2012年以降、気仙沼市を訪問。4年生は毎年共同で市内の観光や仮設住宅の生活などを卒業論文にまとめている。今年の4年生4人は復興支援イベントの効果をテーマに決め、実際に催しを手掛けることにした。
 昨年から気仙沼の関係者と協議を重ね、8月27〜29日には3人が植杉教授と市内を訪問し、市や気仙沼商工会議所に協力を求めた。
 背景には風化への危機感がある。昨年11月に神戸市で気仙沼の知名度などを調べると、「知らない」との回答が3割を占めた。高野凌嗣さん(21)は「震災直後なら認知度はもっと高かったはずだ」と話す。
 関西生まれの4人は、阪神大震災を体験していない。二つの震災の風化を防ごうとの思いから、開催日を1月17日に設定した。森俊人さん(21)は「被災地の今を関西方面で伝えるために何とか成功させたい」と意気込む。
<大阪・摂南大植杉教授ら資金協力呼び掛け>
 摂南大の植杉教授のゼミは、気仙沼復興支援イベントへの資金協力を呼び掛けている。経費は約250万円。100万円は大学が負担するが、残額は企業の協賛やクラウドファンディングで調達したい考え。
 植杉教授は「学生たちが考えた、神戸と東北の被災地をつなぐイベントに力を貸してほしい」と訴える。連絡先のアドレスはuesugi@econ.setsunan.ac.jp


遠野からINAKA発信 移住のイタリア人・ピアッツァさん外国人学生招き研修 地域の価値発掘に力
 イタリア出身のレナータ・ピアッツァさん(49)が、NPO法人職員として遠野市で外国人学生の研修に力を注いでいる。東日本大震災をきっかけに2年前に移住した。学生を通じて遠野の風土や文化といったINAKA(いなか)の魅力を世界に広め、地元の人にも地域の価値を再発見してもらおうと張り切る。
 遠野市中心部で8月29日にあった遠野中生の総合学習。地域の魅力を国内外に発信する映像を作る取り組みを、スペインのIESE経営大学院で学ぶ中国出身の斜押淵魯鵐罅次砲気鵝複横検砲見学した。中学生のサポート役のピアッツァさんが爾気鵑鳳儻譴撚鮴發靴拭
 爾気鵑錬厳遑横尭から11日間の日程で遠野に滞在している。研修について「出会う機会がなかったような人々と知り合えている。日本の中学の授業見学も新鮮で、東京や大阪では体験できない」と評価する。
 ピアッツァさんは2017年7月、研修を始めた。「最低2週間程度滞在しないと地域に入り込んで深い関係を築けない」と、長期休暇のある大学院生に対象を絞った。地域づくりに関わり、提案もしてもらう。これまでイタリアや台湾などから6人を受け入れた。
 イタリアのシチリア島出身で、大学で日本語、大学院で日本の政治を学んだ。日本企業での勤務経験もある。震災時はスペイン在住だったが、テレビを見て「力になりたい」と、気仙沼市などの被災地を定期的に訪れてボランティア活動した。
 沿岸被災地の支援拠点となった遠野にも通っているうち、地域で受け継がれてきた食文化、工芸、芸能などに魅了された。色濃く残る伝統を「資源」と捉えたピアッツァさん。「貴重な資源を、東京資本を通すことなく欧州と直接つなげたい」と、16年9月に移住した。
 NPO法人では地域資源の掘り起こしや海外への情報発信を担当する。熱心な仕事ぶりに地域の人たちも信頼を寄せる。遠野市の和菓子店の若おかみ松田希実さん(46)は「街づくりに欠かせない貴重な存在」と話す。
 ピアッツァさんは、研修生の反応や提案が、地域の人たちが自らの魅力に気付くきっかけになることを期待する。「見えなかったものを見えるようにしたい」と、遠野の人たちの「眼鏡」のような存在を目指す。


希望のソバ 風に揺れて
 東日本大震災で被災した岩沼市玉浦地区に整備が進む「千年希望の丘」の一角でソバの花が満開になり、風に揺れる一面の白い花びらが見物客らの目を楽しませている。
 集団移転跡地で震災の伝承につながる特産物を育てようと、市が昨年度から始めた試験栽培の一環。本年度は面積を1.5倍に増やし、南北約10キロに及ぶ丘の北側のエリアに4カ所、計約1万800平方メートルのソバ畑が広がる。
 収穫は今月末から10月上旬。昨年度同様、市内のそば店などで提供してもらう計画だという。


目撃じわじわ増加 イノシシ警戒 気仙沼・大島のクマに続き情報相次ぐ 市、駆除隊員を倍増
 気仙沼市内でこれまで生息しないとされてきたイノシシの目撃情報がじわじわ増えている。今年は初めて農作物の被害も確認された。生息しないはずの大島で目撃情報が増えたクマに続き、新たに警戒が必要な有害鳥獣の出現に、市は地元猟友会の会員でつくる「鳥獣被害対策実施隊」の隊員を倍増させるなど本格的な対策に乗り出した。
 市は8月31日付で、非常勤特別職の市鳥獣被害対策実施隊の人員をこれまでの20人から39人に増やした。
 市が2015年に設置した実施隊(任期3年)は当初、急増したニホンジカの駆除が目的だったが、新たな体制となった本年度は、初めてイノシシが対象に加わった。駆除した隊員に支払う手当ての増額も検討している。
 市内でのイノシシの目撃情報は数年前から寄せられ始め、昨年度までは不確定な情報も含めて2、3件程度だった。だが本年度は8月末現在ですでに10件の目撃情報が市に寄せられ、実際にタケノコが掘り返された跡や足跡などが確認された。
 県自然保護課によると、かつては県内のイノシシの生息域は県南のみと考えられていたが、最近は県北に拡大している。13年度に初めて2頭が捕獲された栗原市では昨年度、82頭が捕まった。同課は「えさを求めて奥羽山脈沿いに北上している。さらに東部に拡大する可能性はある」と話す。
 イノシシは繁殖力が強く、年1回の出産で平均4、5頭の子を生み、農作物に大きな被害を出す。17年度の気仙沼市の有害鳥獣による農作物の被害額は約980万円で3割はニホンジカによる被害。実施隊発足前の14年度(約3770万円)と比べ減少しているが、市農林課は「イノシシが増えれば、被害額は膨らむ可能性がある」と警戒する。
 8月31日に市役所で実施隊の辞令交付式があり、菅原茂市長から隊員に辞令が手渡された。隊長に就いた菅野克由さん(68)は「大島のクマに続き、イノシシが増えれば、市民の不安はさらに高まる。農作物の被害を出さないよう、できるだけ早く、多くのイノシシを駆除したい」と話した。


仙台市人口が初の自然減 17年統計、終戦直後以来
 仙台市で2017年、出生数が死亡数を96人下回り、戦後の混乱期を除いて初めて「自然減」に転じたことが市の人口動態統計で分かった。東北6県で人口減少が進む中、仙台市は東日本大震災からの復興などに伴う転入者が多く、人口が辛うじて増えている。唯一の100万都市が自然減の局面に突入したことで、東北全体の人口減少は加速するとみられる。
 住民基本台帳によると、17年の出生数は8729人(前年比283人減)、死亡数は8825人(197人増)だった。
 市の自然増減の推移はグラフの通り。年号が昭和になった1926年以降、市が自然減になったのは第2次世界大戦直後の45〜46年だけ。この50年間の出生数は、第2次ベビーブーム(1971〜74年)の73年をピークに、増減を繰り返しながら緩やかな減少基調にあった。一方、亡くなる人は増え続け、65歳以上の高齢者の割合は9割近くに上っている。
 市政策企画課の松田智子課長は「第1次ベビーブーム(47〜49年)に生まれた世代が70〜80歳を迎えている。死亡が出生を上回る自然減の傾向は今後、より顕著に表れるだろう」と推測する。
 市内各区をみると、自然増減は宮城野(408人増)、若林(79人増)、太白(132人減)、青葉(224人減)、泉(227人減)。泉区は高齢化が急速に進む郊外住宅地を抱えることが、自然減の背景にあるとみられる。
 主に転入から転出の数を差し引いた17年の「社会増減」は、2124人のプラス。自然減の96人をカバーし、人口全体が2028人増えた。社会増は震災による避難者の流入や復興事業の従事者の増加で一時、1万人に迫る勢いだったが、復興の進展に伴い、年々減少している。
 国勢調査に基づく17年の市推計人口は108万6377人。市は20年ごろをピークに人口減少局面に入ると予想する。加速する少子高齢化とともに、産業、福祉など幅広い分野に大きな影響を及ぼすのは必至だ。


<米軍タンク投棄>青森・小川原湖漁協 賠償請求額は9323万円 日米両国へ、議案承認
 米軍三沢基地(三沢市)所属のF16戦闘機が今年2月、青森県東北町の小川原湖に燃料タンク2基を投棄した問題を巡り、小川原湖漁協は3日、日米両国への損害賠償請求額を9323万円とする議案を承認したと明らかにした。
 約1カ月間の全面禁漁に追い込まれた同漁協によると、2015〜17年の2〜3月の平均漁獲量などを基に魚介類の損害額を算出。これに漁船の修繕費などを加えて賠償請求額を決定した。賠償請求の対象者は182人になる見込み。
 日米地位協定は米軍が日本国内で単独で事故などを起こした場合、損害のうち75%を米国が、25%を日本が負担すると規定している。今後、請求書を東北防衛局に提出し、防衛省が請求額の妥当性を検討、さらに米国側とも協議を行う。
 同漁協の浜田正隆組合長は「相手がある話なので自分たちの思いだけでは進まないが、組合員から承認を得たので速やかに手続きを進めていきたい」と語った。
 小川原湖では同日、シラウオとワカサギの秋漁が解禁となり、17隻が漁に出た。茨城県の霞ケ浦産シラウオが先に流通した影響などで、1キロ当たりの平均取引価格は平年より400円程度低い1200円だった。
 水揚げされた魚は主に首都圏に出荷される。漁期は来年3月15日まで。浜田組合長は「タンク投棄問題もあったが魚は安心安全なのでぜひ多くの人に食べてもらいたい」と話した。


<金足農>「甲子園準優勝、農業への関心高めた」農水相感謝状
 第100回全国高校野球選手権大会で農業系高校として戦後初となる準優勝を果たした金足農(秋田市)に、農林水産省は3日、「農業への関心を高めた」として農林水産大臣感謝状を授与した。同省によると、高校野球に関連する感謝状の授与は記録が残る限りで初めてという。
 授与は秋田市の東北農政局秋田県拠点で行われた。藤井雅弘地方参事官が「全国に365ある農業系の生徒や農業者に大きな元気と喜びを届けてくれた」と活躍をたたえ、感謝状を渡辺勉校長と中泉一豊野球部監督に渡した。
 渡辺校長は「世の中は工業社会、情報社会と言われるが、人間生活の基本は食であり農業だ。農業高校が注目を浴びて感謝状をいただいたのは夢のようだ」と謝辞を述べた。
 授与の後、中泉監督は「選手には、野球の頑張りを通して農業について(人々に)いろいろ伝えることができたと話したい」と語った。


台風21号/できるだけ早く避難して
 非常に強い台風21号が接近している。きょうにも上陸し、猛烈な暴風雨が想定され、兵庫県内への影響は免れない。刻々と変わる台風情報に注意を払い、自治体から避難情報が出たり危険を感じたりした場合は、命を守るため、できるだけ早く安全な場所へ避難してほしい。
 先月に兵庫県内を縦断した台風20号とほぼ同じコースを通りそうだ。20号では交通機関がストップするなど大きな混乱が生じ、けが人も出た。今回はより厳重な警戒が必要だ。
 その理由は、21号の勢力がさらに強いためだ。上陸寸前の最大風速は45メートルと25年ぶりの数字が予想され、最大瞬間風速は60メートルとされている。
 20号では淡路島で風力発電用の風車が倒壊した。洲本市の最大瞬間風速は38・5メートルだったことからその威力がわかる。不用意に外出することは慎みたい。
 21号は動きが速く、早ければきょうの昼ごろにも四国から近畿にかけて上陸する見込みだ。加速しながら北上し、夜には日本海に抜けるとみられている。いきなり暴風雨となる恐れがある。一時的に風雨が弱まっても油断はできない。
 20号の接近時は、自治体から各種避難情報が出された。「避難準備・高齢者等避難開始」は103万人が、「避難勧告」も39万人が対象となった。神戸市では10万人に「避難指示(緊急)」も発令された。各地で避難所も開設されたが、実際に身を寄せたのは1900人だった。
 課題となったのが、情報を出す時間帯だ。神戸市が避難指示を発令したのは、午前1時前だった。台風が通過するころで風雨が強まり、情報を受けた市民も判断に迷ったと思われる。
 危険と予測されれば、行政は空振りを恐れず早めに情報を提供し、市民も「以前が大丈夫だったから今回も」と思わず、行動に結びつけたい。
 自力では避難が難しい災害弱者への対応も必要だ。西日本豪雨では、避難指示などに従った視覚障害者はわずかしかいなかった。「周囲の補助がないまま外へ出るのは困難」という声もあった。高齢者や体の不自由な障害者を安全な場所へ避難してもらうためには、近隣住民の支援が欠かせない。


電柱が倒れ、各地で停電発生。高架工事の足場も崩壊!?東淀川区の台風21号の暴風により各地で被害が発生しています。
強い勢力を保ったまま大阪を通過していった台風21号。
上新庄駅南口ではプチプランスのテントが飛ばされたり、グルメシティの窓が大きく割れてしまうなどの被害が発生していることを昼の記事でお伝えしました。
雨風が落ち着いた為、そのほかの場所も見に行ってみると、
小松3丁目のダルトンから関西スーパー南江口店の間にある道では電柱が根本から倒れてしまっていました。
警察の方によると電気が通ったままなので通行止めにしているそうです。ここ以外にも電線が垂れてしまっている場所がいくつかありました。
電柱などの電気設備に被害が発生しているため、区内では各地で停電被害が発生。
相川・瑞光1丁目(上新庄駅南口付近)・上新庄・豊新・菅原・東淡路・淡路・西淡路・柴島などで停電している(停電していた)との報告が上がっています。
通常であれば関西電力で停電範囲が確認できるのですが、現在関西電力の停電情報システムに障害が発生しており、細かな範囲が確認できなくなっているようです。
関電の電話窓口も非常に混雑しています。徐々に復旧していくとは思いますが、いつ復旧するのかは不明の状況です。
停電エリアに近い範囲の交差点では信号が消えている場所も。
主要な交差点では警察官による手信号が行われています。
夜になり暗い場所もあるので車で通られる場合は十分にお気をつけ下さい。
13時頃から運転を見合わせた阪急では架線上に飛来物がひっかかっており、これらの除去・確認が終わるまでは運転再開ができない状態。再開までは時間がかかりそうです。
また、阪急淡路駅近くでは高架建設用の足場が崩壊。近くに住む人によると雷の落ちたような音と共に崩落したようです。線路とは反対側にあたるので運行に影響はないとは思われますが、工事の進捗に大きな影響がでないことを願います。
JR京都線では東淀川駅近くにある南宮原踏切の警報機が倒壊。先の記事でもお伝えしましたが、本線上にも多数の飛来物があるようなので、こちらも確認できるまで時間がかかりそうです。
建物への被害も多数発生しています。
下新庄北公園では倒木やどこかから飛んできた足場が道路を塞いだり、
井高野小学校東バス停では待合所の屋根が折れ曲がってしまいました。結構太いパイプがぐにゃりと曲がっている姿が風の強さを物語ります。
はなみずき通りにも木が倒れ、一時通行できなくなっていましたが、近所の方がのこぎりなどでカットし、通れるようになっていました。
豊里のトヨタレンタカーでは看板が無残な姿に。
小松のマンションではエレベーターホールや家の窓が割れている場所もありました。
強い風によって看板やガラスなどが道路に飛び散っている場所が多数あります。
通行されるときには十分にお気をつけ下さい。
暴風によって各地に被害をもたらした台風21号。雨風はおさまりましたが、インフラなど多くの面で影響が続きそうです。
☆ゆうままさん、キー太さん、ゆさゆささん、他多数の情報提供ありがとうございます!☆(あわわ)


台風が上陸中!57年ぶりの記録的な暴風の影響で東淀川区でも被害続出。5m近いテントは飛ばされ、グルメシティではガラスの割れる被害。
今までかつてないほど強い勢力の台風が近畿地方に上陸中で、ここ東淀川区でも被害が出始めてる模様です。
午後2時ごろからの強い風で会社から見える風景でも屋根が飛んだり、自動販売機が倒れるなどの被害が見られました。
さきほどまではバスは運行していたものの、あまりの強風でバス停付近で運転を見合わせています。
あまりの強風に上新庄駅南口ではプチプランスの店頭についていた5m近いテントがファミマ前まで飛ばされてしまいました。
自転車なども道の真ん中まで飛ばされ、看板なども強風で飛び交っていました。
稲荷商店街ではアーケードが破損し、植木鉢なども倒れてしまっています。
その他にもTwitter上で各地の被害がアップされています。
東淀川駅近くのマンションでは上から何かが飛んでいますし、
瑞光4丁目付近では木が折れて倒れているほか、テントやら屋根やらいろんなものが飛んできているという情報が。
そして、上新庄駅近くのグルメシティでは窓ガラスが割れる被害。
1・2階にわたる大きなガラスが粉々になってしまいました。
もちろんお店は営業中止となり、目の前の歩道は通行止めになっています。
情報提供によると新豊里団地では幼稚園から乗り物のようなものが飛んでいる様子も。
豊新4丁目では、新菊水温泉の前にクリーニング店の看板が落ちてきていたようです。
また、東淀川各地では停電が発生し、上新庄駅前のガストやマクドナルドも電気が消えてしまいました。
信号は非常用電源で動いているものの、一部動作がおかしくなっているものもあるようです。
避難所も開設されていますが、強風の中を歩くのは非常に危険です。避難する場合は周囲の状況を確認しながら移動してください。
まだしばらくは予断を許さない状況が続いていますので、命を守る行動をとってください。
☆匿名希望さん 情報提供ありがとうございました☆(ノット)


関西空港 滑走路冠水で閉鎖
国土交通省航空局の近畿圏・中部圏空港政策室によりますと、関西空港にある2つの滑走路のうち、標準海面から5メートルの高さにある全長およそ3500メートルの「A滑走路」が冠水していて、空港が運用できないことから、4日午後3時から空港全体を閉鎖したいうことです。
しかし、空港につながる連絡橋が通行止めになっていることから、空港にいる人たちは移動することができないということです。
また、台風の影響で空港の第1ターミナルビルの横にある複合商業施設「エアロプラザ」の中で、ガラスが割れて体を切った人が1人いるということですが、命に別状はないということです。
国土交通省によりますと、滑走路を再開する見通しはたっていないということです。
関西空港を運営する関西エアポートによりますと、空港の施設が浸水しているということです。
関西エアポートによりますと、航空機の駐機場周辺や建物の地下に向かう業務用の搬入通路などで浸水が確認できたということです。
空港に設置されているカメラからは、滑走路や駐機場が広い範囲にわたって浸水している様子がうかがえます。
関西空港は、大阪府南部の沖合およそ5キロを埋め立てて建設された海上空港です。
また、関西空港では、携帯電話がつながりにくくなっているということです。
関西エアポートで被害の状況をさらに調べています。
関西空港のターミナルビルに入っている飲食店の従業員は、NHKの取材に対し「2時間ほど前から台風の影響ですべての交通機関が止まり、滑走路も水浸しになっているが建物の中は平穏だ。先ほどまで食事をしている人が多かったが、今は交通機関の再開を待ってとどまっている人が多い。電気や水道などインフラに支障はなく、今のところ大きな影響は出ていない」と話しています。
関西空港第1ターミナルの1階にある免税店の事務所で働いていた職員は、「午後2時ごろに雨がとても強くなった。店のスタッフから地下が浸水していると連絡があり、見に行くとおしりのあたりの高さまで水がつかっていた。1階にも水が入ってきたので上の階に避難する予定だ。電気はついているが空調が止まっていて、携帯電話もつながらない状態だ」と話していました。


京都 吉田神社 倒木多数で被害
京都市左京区の吉田神社では、台風による強風で神社の建物に被害が出ているほか、参道の階段にも多くの木が倒れて参拝者が歩けなくなる被害が出ています。
神社によりますと、本殿に木が倒れかかって屋根が壊れたり、社務所の横にある高さが10メートル以上ある、ひのきの木が倒れて社務所の屋根のひさしを突き破ったりしているということです。
神社では5日、明るくなってから詳しい被害状況について確認を進めることにしています。


デパートなど休業相次ぐ
大手デパートなどは、4日、関西や四国などにある一部の店舗の営業を取りやめました。
▼「高島屋」は大阪府や京都府にある合わせて5つの店舗を臨時休業とし、岐阜県の1つの店舗で閉店時間を早めました。
このうち、京都市の洛西店では、窓ガラスが数枚割れているのが確認されたということで、5日も終日、休業するとしています。
▼「J.フロント リテイリング」は、大阪府や京都府、それに兵庫県などにある大丸と松坂屋の合わせて8つの店舗を4日、臨時休業にしたほか、愛知県などの3店舗で閉店時間を早めました。
▼「三越伊勢丹ホールディングス」は高松市の1店舗を臨時休業にしたほか、名古屋市にある2つの店舗で閉店時間を早めました。
▼「エイチ・ツー・オー リテイリング」は、大阪府や兵庫県にある阪急や阪神などの合わせて12店舗を臨時休業にしています。
▼「そごう・西武」は兵庫県と滋賀県、それに徳島県にある合わせて3つの店舗を臨時休業とし、福井県と愛知県の合わせて2店舗で閉店時間を早めました。
▼「ファーストリテイリング」は大阪府や京都府などにある合わせて98のユニクロの店舗を臨時休業にしています。
また、▼流通大手の「イオングループ」は、兵庫県淡路市にある店舗が浸水した影響で、午後から営業を休止しています。
さらに、大阪府や兵庫県などにある5つのショッピングセンターで店舗の一部を臨時休業にしたほか、傘下にあるスーパー「光洋」と「山陽マルナカ」の合わせて3店舗で臨時休業にするなどの措置を取りました。
コンビニ大手の「ローソン」は、徳島県美馬市にある店舗の入り口が強風で破損したため営業を休止しています。


関西停電 詳しい状況把握できず
関西電力によりますと、強風で電線が切れたり、電柱が倒れたりする被害が相次ぎ、関西2府4県では、4日午後1時半現在で24万戸余りが停電になっていますが、その後も広い範囲で停電が増えているとみられ、詳しい状況が把握できない事態となっています。
関西電力によりますと、午後1時半時点で、停電しているのは、▼和歌山県でおよそ17万3610戸、▼大阪府でおよそ5万2730戸、▼奈良県でおよそ9790戸、▼兵庫県でおよそ5490戸、▼滋賀県でおよそ1410戸、▼京都府でおよそ240戸、となっています。
その後も、強風で電線が切れたり、電柱が倒れたりする被害が相次ぎ、停電の戸数はさらに増えているということですが、詳しい状況は把握できていないということです。
大阪の岸和田市や能勢町では、災害対策本部が置かれている市役所や町役場の庁舎も2時間以上にわたって停電が続いているということです。
関西電力が復旧作業にあたっていますが、被害が広範囲にわたっていて、現時点で、復旧のメドはたっていないということです。


関西の停電 160万戸余
関西電力によりますと、台風の影響で電線が切れたり、電柱が倒れたりする被害が相次いでいて、大阪府を中心として関西2府4県などで4日午後5時現在、160万戸余りで停電になっています。
関西電力によりますと、午後5時現在で停電しているのは、▼大阪府でおよそ92万戸、▼和歌山県と三重県の一部であわせておよそ19万4000戸、▼兵庫県でおよそ18万戸、▼京都府と福井県の一部であわせておよそ15万戸、▼滋賀県でおよそ11万4000戸、▼奈良県でおよそ5万1000戸となっています。
関西電力によりますと、台風に伴う強風で電線が切れたり、電柱が倒れたりする被害が相次いでいるということです。
各地の自治体によりますと、大阪では岸和田市や泉大津市、それに田尻町で災害対策本部が置かれている市役所や町役場の庁舎が停電していて、住民への対応に影響が出ているということです。
関西電力は復旧作業にあたっていますが、被害が広範囲にわたっていて、すべての復旧には相当な時間がかかる見通しだということです。
関西電力では折れた電柱や切れて垂れ下がった電線は大変危険なため、絶対に近づかないよう呼びかけています。


台風21号 7人死亡 関空に利用客ら3000人以上残る
 台風21号は四国や近畿地方を縦断し、4日夜に日本海に抜けた。広範囲に暴風雨をもたらし、毎日新聞の集計では、大阪、滋賀、三重で7人が死亡した。最大瞬間風速が観測史上最大の58.1メートルを記録した関西国際空港では、強風で流されたタンカーが空港連絡橋に衝突し、橋の一部が破損。滑走路やターミナル周辺が高潮で浸水し、利用客ら3000人以上が取り残されている。
 気象庁によると、台風は4日正午ごろ、非常に強い勢力を保ったまま徳島県に上陸。午後2時ごろには神戸市付近に再上陸し、近畿地方を縦断した。午後5時までに、四国や近畿を中心に全国60地点で最大瞬間風速の記録を更新。日本海沿岸を北上し、5日朝には温帯低気圧に変わる見通し。ただ、台風通過後も西日本から北日本にかけて大気の状態が不安定で、激しい雨が降り続く見込み。
 非常に強い勢力のままの上陸は死者・行方不明者48人を出した1993年の台風13号以来25年ぶり。今夏は台風の発生が例年より多く、6〜8月で18個発生。統計が残る51年以降、94年と並び最多タイとなった。
 関西エアポートなどによると、関空島では午後2時ごろから潮位が高まり、2本の滑走路のうち南東側のA滑走路(全長3500メートル)のほぼ全域と、第1ターミナルビルの地下に浸水。駐機場も海水につかり、飛行機や作業車両にも被害が出ている。商業施設のガラスが割れ、利用客1人が軽傷。B滑走路と第2ターミナルビルは無事という。
 連絡橋は封鎖されており、利用客らはターミナル内で夜を明かす。復旧のめどは立っておらず、同社などが安全確認を進めている。
 交通やライフラインへの影響も相次いだ。JRや私鉄各線は昼ごろから全面運休。東海道・山陽新幹線も広域で運休した。関西電力によると、倒木による断線などの影響で、大阪や和歌山など8府県で最大約204万軒が一時、停電した。
 神戸市東灘区の人工島・六甲アイランドでは、高潮で一部が浸水。積まれていたコンテナ約20個が次々と海に落ち、流された。兵庫県西宮市甲子園浜では、中古車オークション会場の車約100台が燃えた。車が海水につかってショートした可能性がある。
 強風の影響で死者も相次いだ。堺市で、自宅2階のベランダで修理をしていた70代の男性が転落死するなど、大阪府内で計5人が死亡。滋賀県東近江市と三重県四日市市でも70代の男性が亡くなった。
 高速道も各地で通行止めとなり、トラックの横転や足場の崩落なども相次いだ。【蒲原明佳、岡崎英遠、大久保昂】


台風21号 2500トンタンカー流され関空連絡橋に衝突
 日本列島に4日上陸した台風21号の暴風による建物などへの被害が相次いだ。4日午後1時半ごろ、大阪湾でタンカー「宝運丸」(長さ89メートル、2591トン)が強風に流されて関西国際空港と陸地を結ぶ連絡橋に衝突し、橋の一部が破損した。乗組員11人(20〜50代)にけがはなく、全員がボートやヘリコプターで救出された。関西空港海上保安航空基地によると、衝突したのは関空から約20メートル南側。タンカーはエンジンが止まり、自力航行できないという。
 また、大阪海上保安監部によると、大阪湾に係留していた30隻以上の台船やコンテナ十数個が海に流失した。
 午後2時ごろには大阪市住之江区の大阪府咲洲庁舎近くの駐車場で、十数台が吹き飛ばされて窓ガラスが割れたり、ドアが外れたりした。近くの道路でも複数の車が横転。軽自動車2台が吹き飛ばされるのを見たタクシー運転手の男性(59)は「車が高く跳ね上がり10メートル近く飛ばされていた。映画を見ているような信じられない光景だった」と話した。
 JR京都駅ビル(京都市下京区)の中央改札口前では午後2時25分ごろ、天井ガラス4枚が割れて落下。ガラス片が縦横約30メートルにわたって散乱し、通行していた男女3人が頭や指を切るなど軽傷を負った。京都府警下京署によると、天井ガラスに何かが直撃したとみられるという。
 大阪府岸和田市の府泉南府民センタービルでは午後1時25分ごろ、4階建て本館の北西側で工事の足場やフェンスの一部が駐車場などに崩落。大阪市西区では午後2時ごろ、解体工事中の10階建てビルを覆う足場が崩れ、一部は道路を挟んだビルに倒れかかった。別のビルにいた男性会社員(37)は「『ガシャーン』と何かが崩れるような大きな音が聞こえた」と話した。同市西成区では建て替え工事中の6階建てスーパーの足場が崩れ、東大阪市営今米斎場では工事中の煙突(高さ約16メートル)が半分に折れた。
 大阪府阪南市の南海本線尾崎駅では午後1時10分ごろ、駅舎2階から出火し、2階部分約200平方メートルが焼けた。周辺では強風による停電が相次ぎ、府警泉南署は配電盤がショートした可能性もあるとみて調べている。
 また同府によると、南部を中心に午後4時半時点で災害拠点など約25病院が停電。各病院は自家発電で対応し、大きな混乱はないという。【道下寛子、大東祐紀、宮川佐知子、柴山雄太】


台風21号 渡月橋、春日大社・・・京都や奈良でも被害
 台風21号の影響で4日、関西の文化財や観光地にも被害が出た。京都・嵐山の渡月橋(全長155メートル)では午後3時ごろ、東(下流)側の欄干が約100メートルにわたり歩道内に倒れているのを住民が見つけた。京都府警右京署によると、けが人はいないが、東側歩道のみ通行止めとなった。京都市西京土木事務所によると、欄干はヒノキ製の木組みで2000年に改修していた。【菅沼舞】
    ◇
 奈良市の春日大社は、いずれも重要文化財の「板蔵」と「着到殿」の屋根の一部が、倒木などにより破損したと明らかにした。
 滋賀県彦根市によると、国宝・彦根城の佐和口多聞櫓(重要文化財)の外壁のしっくいの一部がはがれているのが見つかった。
 京都市右京区の世界遺産・仁和寺では、いずれも重要文化財の二王門の屋根瓦が落下し、御影堂の扉が飛ばされた。国宝・金堂の金具も損傷した。


台風21号 近畿中心に午後11時でも157万軒停電
 台風21号による停電は近畿中心に8府県で204万軒を超え、4日午後11時現在でも157万軒で続き、市民生活に大きな混乱をもたらした。電柱が倒れるなどして復旧の見通しが立たない地域もあり、都市機能は広範囲にまひした。
 100万軒以上が停電した大阪府。大阪市の一部地域は深夜になっても復旧せず、マンションに住む同市鶴見区の主婦(37)は「冷房が使えず、部屋が蒸し暑い。子どももいるのに、いつになったら復旧するのか」と疲れ果てた様子で話した。豊中市の一部地域も日付が変わっても電気はつかず、主婦(40)は「テレビも冷蔵庫も動かず、キャンプ用のランタンを明かりにしている」と嘆息した。岸和田市の春木泉町も昼過ぎから停電が続き、住人の男性会社員(45)は「まるでゴーストタウン。携帯電話の充電すらできない」とうなだれた。
 兵庫県尼崎市の40代男性は午後7時ごろ、市内の職場から市北部の自宅に自転車で向かった。道中には信号や街灯、家の明かりが消えていたエリアが点々とあったといい、男性は「あちこちが真っ暗で、異様な雰囲気だった」と話した。
 災害対応にあたっていた岸和田市役所も午後2時過ぎから、庁舎(地上4階、地下1階)内が一斉に停電した。午後10時50分に復旧するまで職員らが懐中電灯を手に対応した。自家発電は避難所との防災無線用に充てており、庁舎内の照明やパソコンが使えず、電話も2回線だけの運用を迫られた。
 また、大阪府によると、府南部を中心に午後9時現在で災害拠点など約40病院が停電。各病院は自家発電で対応しているという。
 関西電力によると、停電が同時に多数発生したことから、停電軒数を自動で集約するシステムに障害が発生し、全体状況の把握が遅れたという。通常はこのシステムを利用して、ホームページ上で停電している市町村のエリアを公表しているが、午後1時半以降できなくなった。【山崎征克、土田暁彦、芝村侑美】


台風21号 関空から救助求めツイッター投稿 停電写真も
 台風21号の影響で浸水した関西空港では4日、ターミナルビルに取り残された利用客から、救助を求めたり、出られないことへの不満を訴えたりするツイッターの投稿が相次いだ。停電した空港内の写真や、「クーラーも効かず蒸し暑い」などと苦境をうかがわせるメッセージもあった。
 「停電して空調もなく自販機も動かない。コンビニも長蛇の列」との投稿があったのは午後5時半ごろ。明かりが消えたファストフード店などの写真を添えて「関空、こんな状況。いつになったら帰れるの?」と不満げな声や、「自衛隊呼んでください!」との訴えが続々と投稿された。


概算要求が過去最大/膨張予算まだ続ける気か
 財政再建を先送りにして際限のない予算要求がいつまで続くのか。不安を拭えない。
 2019年度予算の概算要求がまとまった。一般会計の総額は102兆円台後半で過去最大を更新する見通しだ。
 来年の消費税増税に備えた景気対策費が別枠で上積みされる。絞り込んでも年末の編成段階で初の100兆円超えの可能性が高い。財政規律の緩みはもはや覆い隠せない。
 国債の償還に充てる国債費は3年ぶりの増額になった。1千兆円超の借金があるのだから返済や利払いは当然。その分、政策経費を削るのが財政収支の基本なのに、この国はそれを無視し借金をし続けてきた。財務省は歳出削減に毅然(きぜん)として取り組むべきだ。
 重い負担感を覚えるのは5兆2986億円(18年度当初比2.1%増)と、過去最大となった防衛費である。米軍再編関連経費などが額を示さない「事項要求」で処理されさらに膨らむ公算が大きい。
 北朝鮮のミサイル脅威への対応を目的にした地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」2基の取得費は2352億円。現在は小康を保つ北朝鮮情勢が再び緊迫化するとしても運用開始は23年度。遅れる恐れもある。有事即応の装備と言えるのかどうか。秋田市など配備候補地の理解が進まないのは当然だ。
 米国側が価格や納期を主導する対外有償軍事援助(FMS)という契約が増えていることが増額の背景にある。米国言いなりの調達の構造から脱しなければならない。
 もう一つの焦点は要求総額の3分の1を占める社会保障費だ。厚生労働省の29兆8241億円(2.1%増)に他省庁分を加え32兆円に上る。
 高齢化に伴う自然増6千億円をどう圧縮するかが論点だったのに、今回は数値目標を設けなかった。来年の参院選を控え、国民負担増を避けたい与党サイドの思惑も働いている。攻防の行方は厳しい。
 国民の不安を解消するには社会保障制度の将来像をきちんと示すことであり、それは予算節減とは対立しまい。
 大事なことは、本当に必要な課題に視点が及んでいるかだ。待機児童解消対策に1170億円、豪雨など水害対策に5273億円を関係省庁が要求した。人手不足対策、学校のブロック塀改修、エアコン設置などは十分な額だったか。現場の声を聞き優先順位を厳しく見極め、より手厚く配分する判断があっていい。
 特別会計で管理する東日本大震災の復興予算は20.7%減の1兆8707億円。地域再生の長い工程に見合ったものか絶えざる検証が必要だ。
 財政健全化の達成目標を棚上げし成長路線に活路を求める安倍政権は、この予算の編成で結果責任を問われよう。
 消費税増税で見込まれる5兆円強の追加税収より、影響緩和の対策費の方が上回る大盤振る舞いが懸念される。それでは国民が苦しむだけだ。


概算要求100兆円/誰が歯止めをかけるのか
 政府がまとめた2019年度予算の概算要求は、総額が102兆円台後半と過去最大を5年連続で更新した。当初予算案の段階で史上初の100兆円に達する可能性が強い。
 安倍政権は財政健全化の達成目標を20年度から遅らせた。歳出拡大に歯止めをかけようとする強い姿勢がうかがえない。これでは国債の発行額は増えるばかりだ。
 国と地方で抱える借金は1千兆円を超す。その現実を直視して、予算編成で要求額を大胆に絞り込む必要がある。
 安倍政権は消費税率の10%への引き上げを19年10月に実施する予定だ。予算案には増税による景気失速を防ぐための施策を盛り込むが、政府は概算要求と別枠での要求を認めた。
 各省にばらまきを奨励するようなものだ。来年の参院選などを控え、自民党の若手議員グループには10兆円規模の対策を求める声すらある。実効性を厳しく見極めねばならない。
 社会保障費の要求額は32兆円を超し、過去最高を更新する。高齢者の増加など自然増だけで6千億円にのぼる。今後の高齢化の加速を考えれば、無駄の削減や予算の上限設定など政策全体の見直しが急務である。
 防衛費も5・3兆円と過去最高だ。第2次安倍政権が発足して以来7年連続の増加となる。
 地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の取得などを挙げる。米朝首脳会談など東アジアの安全保障環境に変化の兆しが見られる中、従来通り北朝鮮の脅威を掲げても、国民の理解が得られるだろうか。
 国債の返済費は5%以上伸びて24・5兆円に達する。借金が増えればその額はさらに伸びる。社会保障の自然増も重なり、政策に充てる財源のやりくりはますます困難になっていく。
 一方で人命に関わる猛暑や自然災害など、国を挙げて取り組むべき課題は山積する。今回の概算要求でも、水害対策や公立小中学校のクーラー設置などに8千億円近くが計上された。
 環境変化に対応した政策を行うには、予算編成の自由度を高めることが不可欠だ。後世の債務負担を軽くするためにも、歳出拡大に歯止めをかけ、財政健全化を進めねばならない。


防衛費概算要求 過去最大 いつまで続く
 安倍晋三政権下で、防衛費の増額が歯止めなく続いている。
 防衛省が決定した来年度予算の概算要求額は本年度当初予算比2・1%増の5兆2986億円で、5年連続で過去最大を更新した。
 北朝鮮の核・ミサイル問題は米朝交渉が続いている。日中関係も改善への動きがある。ことさらに脅威を強調して防衛費を無原則に膨張させる姿勢は看過できない。
 押し上げ要因となっているのは、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」など米国から購入する高額の装備品である。
 背景にはトランプ米大統領が貿易赤字削減のため、軍事品の購入を繰り返し迫っていることがある。米側は自国の雇用増に結びつける狙いも明らかにしている。
 このような要求に応じるのは、あまりに対米追従が過ぎる。
 地上イージスは攻撃的要素を含むとの指摘もある。専守防衛政策の下で、各装備の必要性を徹底的に検証すべきだ。
 問題の一つは、米政府から購入する際の有償軍事援助(FMS)の仕組みである。価格は米側の提示を日本側がほぼ受け入れる「言い値」となっているのが実態だ。
 その調達額は本年度より約2800億円増え、過去最大の6917億円になった。複数年度に分けて支払う装備も多く、翌年度以降の予算を縛る弊害が顕著だ。
 装備品の中でも高額なのが地上イージスで、2基の取得経費は2352億円に上る。大半がFMSの対象である。
 配備予定地の山口、秋田両県では電磁波などへの懸念から、住民の理解は得られていない。
 予算要求以前に、導入ありきの政府の姿勢は疑問である。
 見過ごせないのは、例年1千億〜2千億円規模で計上する米軍再編関連経費を、金額を示さない「事項要求」としたことだ。
 通常は予算規模が不明な事業に適用する手法である。要求額を小さく見せるための数字操作と見られても仕方あるまい。
 政府は、防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画の年末の改定に向け、作業を進めている。焦点になるのは米国、中国、ロシアが開発を進める宇宙、サイバー、電磁波といった新領域への対処だ。
 防衛費はこれまで国内総生産(GDP)比1%程度に抑えてきたが、首相は目安設定に否定的だ。
 新領域への支出が、防衛費のたがを緩めることにつながってはならない。予算膨張に歯止めをかける慎重な議論が求められる。


概算要求 無節操な姿勢どこまで
 消費税率引き上げで国民に負担増を求めるのに、歳出を抑えようという姿勢は相変わらず見えない。
 2019年度予算の概算要求が8月末で締め切られた。一般会計の要求総額は過去最大の102兆円台後半に膨らんでいる。今後の編成作業で切り込む必要がある。
 概算要求は、省庁が行いたい事業の経費などを見積もって財務省に提出するものだ。年末に向けて財務省と各省庁が折衝して絞り込み、政府予算案を決める。
 一般会計の要求総額は5年続けて100兆円を超えた。社会保障費は32兆円超、防衛費は5兆2986億円で、ともに最高額を更新している。借金返済に回す国債費も全体を押し上げた。
 予想された展開である。政府が7月に閣議了解した概算要求基準は、6年続けて歳出の上限を示さなかった。予算編成に当たってのルールが甘い設定では、各省庁が切り詰めようとしないのは当然ではないか。
 看板政策に手厚く配分するため4兆円超の特別枠も例年と同様に設けている。公共事業などの経費を18年度予算額から10%削ったりした上で、削減額の3倍まで計上できる。各省庁は特別枠を使って増額要求を掲げた。
 膨大な借金を抱え、財政状況は先進国で最悪の水準なのに、節操がない。
 加えて見過ごせないのは、別枠での上乗せ措置だ。来年10月に予定する消費税率10%への引き上げに伴う景気対策や、幼児教育無償化などの費用を予算編成の過程で上積みする。一般会計の当初予算額が初めて100兆円の大台に乗ることも考えられる。
 来年春の統一地方選、夏の参院選を控え、自民党は歳出拡大圧力を強めている。増税対策で10兆円規模を求める声もある。有権者にアピールしようと、ばらまき型の予算編成が進みかねない。
 安倍晋三首相は財政健全化目標を5年先送りし、基礎的財政収支の黒字化を25年度とした。今月の自民党総裁選で連続3選を果たしても任期は21年9月までだ。はるか先の目標達成にどこまで努力するつもりがあるのか、予算編成で改めて本気度が問われる。
 借金頼みの状況で大盤振る舞いを続けるわけにはいかない。財政規律を重視し、めりはりの利いた予算を編成する必要がある。不可欠な事業なのか、費用に見合う効果が期待できるのか、財務省は各省庁の要求内容を一つ一つ精査する責任が重い。


【防衛費の膨張】脅威の強調は妥当なのか
 装備増強ありきではないのか、疑問がわく。東アジアを巡る安全保障や外交の局面、装備の費用対効果を分析した妥当性が冷静に問われなければならない。
 防衛省は2019年度予算編成に向けた概算要求で、過去最大となる5兆2986億円を求めた。18年度当初予算と比べ2・1%増となる。
 18年度当初予算で2千億円を超えた米軍再編関連経費などは金額を示さない「事項要求」とした。これらを除くと18年度当初比で7・2%という大幅な伸びになる。防衛費は第2次安倍政権が発足してから7年連続の増加となる見通しだ。
 要求では、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の取得関連費2352億円をはじめ、海空領域の能力強化に重点配分した。敵の射程圏外から反撃できる長距離巡航ミサイルなども盛り込まれた。
 巨額装備を導入する理由としては東アジアの危機が強調されている。
 年末の新防衛大綱や今後5年間の中期防衛力整備計画の策定をにらんで、防衛力強化を既定路線とする思惑が透ける。
 18年版の防衛白書は、北朝鮮の核・ミサイルを巡って「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」とし、17年版より表現を強めている。
 6月の米朝首脳会談で北朝鮮が非核化の意思を示した点は、白書も「意義は大きい」と評価した。停滞しているとはいえ米朝の対話局面が続く中、ことさら危機を強調する姿勢には矛盾も帯び始めている。
 中国に関しても、白書は「日本を含む地域・国際社会の安全保障上の強い懸念」と明記した。
 しかし、米国との通商摩擦なども絡み日中関係は改善の流れにある。今年5月には不測の衝突を回避する「海空連絡メカニズム」の運用開始に合意している。
 北朝鮮にせよ中国にせよ、「先の読みにくい国」であることは確かだろう。その上で、こうした脅威の強調は今の外交局面で妥当なのか。国会でも議論が必要だろう。
 「巨額」の中身も議論が要る。
 弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備は04年度から始まった。18年度までの整備費は累計2兆円を超えている。イージス・アショアの取得費も導入決定時より膨れ上がった。今後、BMDにどれだけの予算を投入するつもりなのか。
 米政府の提示額を受け入れる対外有償軍事援助(FMS)、いわば「言い値」での調達も過去最大の6900億円余りとなる。背景には、米国製武器の購入圧力をかけるトランプ米大統領の影がちらつく。本当に必要な装備の精査や価格低減の努力は喫緊の課題になる。
 社会保障費が膨らみ、来秋には消費税増税という国民負担増が視野に入る中で、防衛費だけが聖域化することは許されない。
 防衛費増強に頼る安全保障政策にはおのずと限界もあろう。冷静な情勢把握に基づく外交努力が先になければ、国民の理解は得られまい。


取り調べ録画 不当捜査を排すために
 刑事事件で取り調べを録音・録画する本質は、捜査官の威圧や利益誘導など違法・不当な捜査を排除するためだ。「自白」の場面だけを裁判員に見せては判断を誤らせかねない。慎重さがほしい。
 刑事裁判には白か黒しかない。もし裁判員が「灰色だ」と思ったら、白とせねばならない。無罪推定の大原則が働いているからだ。
 被疑者・被告人と犯罪事実を結び付ける直接証拠がなく、間接証拠しかない場合は、確かに裁判員は大いに悩む。その際、取り調べ段階で被疑者の「自白」場面を裁判員に見せたらどうなるだろうか。
 「黒だ」という心証を強く与えることになろう。実際に検察側はそんな立証方法を用いている。それを全否定するわけではないが、裁判官は録音・録画の再生を法廷で認めることには、慎重であるべきである。
 そもそも逮捕から自白、取り調べ終了までの間の全過程が録画されているかどうか。あるいは任意捜査の段階で、違法な取り調べがないかどうか。そんなチェックの目も持つべきなのだ。
 日本の刑事司法では取り調べは、弁護士の立ち会いを排除した「密室」で行われる。だから、捜査官の威圧や利益誘導なども行われ、冤罪(えんざい)の温床とされる。意に反する供述を強いられ、調書が作成されることも少なくなかった。
 だから、「自白」した調書に署名があっても、公判段階で否認に転ずることも多い。実際に足利事件や布川事件など、不当な取り調べによる冤罪も起きた。
 二〇一六年には裁判員裁判の対象事件や検察独自捜査事件について、全過程を録画する改正刑事訴訟法が成立した。だが、それでも対象事件は全事件の3%にすぎず、全く不十分だといえる。
 先月の栃木小一女児殺害事件で東京高裁が一審を破棄し、あらためて無期懲役としたのは、違法捜査のチェック機能だったはずの録音・録画が、検察側の武器として使われることへの警鐘であろう。判決理由では、録音・録画で犯罪事実を認定した一審判決を「違法」と強く批判した。
 一六年五月からの二年間、全国の地裁で判決があった刑事裁判で、検察側が録音・録画を証拠申請し、認められたのは55・7%。裁判官の判断は割れている。
 だが、あくまで取り調べ録画の目的は、密室でのチェック機能だったはずだ。冤罪をなくす−その原点は忘れてはいけない。


猛暑も電力余力 節電、融通、再エネで
 エアコンを夜通し動かしておかないと、命が危うい猛暑の夏−。それでも電気は足りていた。3・11の教訓を生かした賢い省エネ、そして電力融通の基盤整備が、エネルギー社会の未来を切り開く。
 七月二十三日。埼玉県熊谷市で国内観測史上最高の四一・一度を記録した猛暑の中の猛暑の日。東京都内でも史上初めて四〇度の大台を超えた。
 冷房の使用もうなぎ上り。午後二時から三時にかけての電力需要も、この夏一番の五千六百五十三万キロワットを記録した。
 それでも最大需要に対する供給余力(予備率)は7・7%。“危険水域”とされる3%までには十分な余裕があった。
 その日中部電力管内でも3・11後最大の二千六百七万キロワットに上ったが、12・0%の余力があった。
 東電も中電も、震災後に原発は止まったままだ。この余裕はどこから来るのだろうか。
 最大の功労者は省エネだ。計画停電を経験した3・11の教訓を受け止めて、家庭でも工場でも、一般的な節電が当たり前になっている。これが余力の源だ。
 そして、再生可能エネルギーの普及が予想以上に原発の穴を埋めている。猛暑の夏は太陽光発電にとっては好条件とも言えるのだ。
 むしろ最大のピンチに立たされたのは、昨年から今年にかけて四基の原発を再稼働させた関西電力ではなかったか。
 七月十八日。火力発電所のトラブルなどが重なって供給率が低下し、予備率3%を割り込む恐れがあったため、電力自由化を見越して三年前に発足した「電力広域的運営推進機関」を仲立ちとして、東電や中電、北陸電力などから今夏初、計百万キロワットの「電力融通」を受けた。
 3・11直後、東日本と西日本では電気の周波数が違うため、融通し合うのは難しいとされていた。だが、やればできるのだ。
 震災当時百万キロワットだった周波数変換能力は現在百二十万キロワット。近い将来、最大三百万キロワットに増強される計画だ。
 北東北では、送電網の大幅な拡充計画が進行中。地域に豊富な再生可能エネルギーの受け入れを増やすためという。
 地域独占からネットワークへ、集中から調整へ、原発から再エネへ−。電力需給の進化は静かに、しかし着実に加速しているのではないか。
 猛暑の夏に、エネルギー社会の近未来を垣間見た。


東京電力「トリチウム水海洋放出問題」は何がまずいのか? その論点を整理する
牧田寛
 去る8月30日から31日にかけて、東京電力福島第一原子力発電所(福島第一:1F)で貯まり続ける「トリチウム水」の海洋放出について社会的同意を求めるための公聴会が福島県と東京都の三会場で経済産業省(経産省:METI)により開催されました。
 その7日前に当たる8月23日に河北新報により、8月27日にフリーランスライターの木野龍逸氏により「トリチウム水」には、基準を超えるヨウ素129などの放射性核種が含まれていることが報じられました。
(参照:処理水の放射性物質残留 ヨウ素129基準超え60回 17年度 | 河北新報 2018年08月23日木曜日トリチウム水と政府は呼ぶけど実際には他の放射性物質が1年で65回も基準超過(木野龍逸) – Y!ニュース 2018年08月27日月曜日
 これら報道への反響はたいへんに大きく、30日からの公聴会は全会場、全日程で大荒れとなり、市民からは反対の声が多勢を占める結果となりました。
 一体何が起きたのでしょうか。
トリチウムは大きな害が起こりにくい?
 よく耳にする「トリチウム水」問題とは何でしょうか。福島第一原子力発電所は、枯れた川や沢といった地下水脈の上に建設されています。建設前後の地図を照合しますと、すべての原子炉が地下水脈をせき止める形で建設されており、事実、事故前から地下水のくみ上げに力が入れられていました。また、建設中には海抜25m以下(福島第一は台地を海抜10mまで掘り下げている)になると地下水の湧水が始まり、ホイルローダーやトラックの走行に支障を来し、井戸からの汲み上げによって地下水を枯らすことで対策していました。(参照:「福島原発土木工事の概要(1) 佐伯正治「土木技術」22巻9号1967年9月
 そのため福島核災害(Fukushima Nuclear Disaster:福島第一原子力発電所事故のこと)後、構内のウェルポイント(地下水汲み上げ井戸)が機能を失い、建屋地下構造物の損傷もあって一日あたり500〜800tを超える地下水の流入に悩まされることとなりました。流入した地下水は原子炉炉心由来の放射性物質で汚染され、放射能汚染水(汚染水)となり、放射性物質の除去を必要とします。また、作業のたいへんな妨げとなりますし、深刻な被曝の原因となります。
 この地下水対策は、スリーマイル島原子力発電所事故(TMI-2)やチェルノブイル原子力発電所事故では必要とされなかったもので、福島核災害の大きな特徴の一つといえます。結果、凍土壁や汚水処理装置、多くの地下水汲み上げ井戸、大量のタンク群が現れました。
 この汚染水には、当初、見たこともないようなありとあらゆる炉心物質が含まれていましたが、主としてトリチウム(三重水素)、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131といった放射性核種が多く含まれていました。強い放射能を持つ短寿命核種は、時間とともに消滅し、2013年以降は多核種除去装置(いわゆるALPS)などによりトリチウム以外の核種を告知濃度限度(法律で定められた放出のための濃度限度)以下にまで除去し、ほぼトリチウムだけ残った廃水がタンクに増え続けてゆくことになっていました。
 トリチウムは、溶融炉心デブリ(瓦礫)冷却水の水とそれに含まれるホウ素が中性子照射されることによって発生するため、溶融炉心を水で冷却するかぎり発生し続けます。実際には地下水の浸入によっても発生しています。
 トリチウムは、水素の放射性同位体で、水素とほぼ同じ化学的、物理的性質を示しますので、水から分離することがたいへんに難しく、結果として放射能を帯びた「トリチウム水」が増え続け、タンクが年々増えてゆくことになります。
 トリチウムは放射性核種で、半減期は約12年です。非常に低いエネルギーのβ線を出して安定元素のヘリウム3に変わります。
 しばしばトリチウムは「遺伝子を破壊する悪魔の放射能」などと呼ばれますが、実際には生物濃縮せず、水として体内に摂取した場合の生物学的半減期は約10日、有機物として摂取した場合は40日で、多くは水として取り込まれますので、「体に取り込みやすく出て行きやすい」放射性物質です。また水ですので、体の特定の部位に集まって滞留すると言うことは起こりにくいです。この点がセシウム137やストロンチウム90、ヨウ素131とは大きく異なります。
 従って、大量のトリチウムを摂取する、常時微量のトリチウムに晒されるといったことがない限り、大きな害は起こりにくいです。
 一方で、長年の原子力施設からの放射能漏れにより定常的にトリチウムに晒された結果、周辺住民に大きな健康被害が出たとしていまだに争われているNY州ロングアイランドのような事例もあります。(参照:NHK BS世界のドキュメンタリー『原子力大国 アメリカ(原題:The Atomic States of America)』Suffolk Closeup: Brookhaven National Laboratory to be tested in court, Shelter Island Reporter, 2016/01/17 8:00am
 福島第一の場合、大量の「トリチウム水」の存在は、職員のトリチウム被曝の可能性につながり、また増え続けるタンクのために敷地の余裕が数年内になくなります。結果、何らかの形で「トリチウム水」を処分することが急がれています。
 もともとこの「トリチウム水」は、2013年内には海洋放出によって処分することが考えられていましたが、ALPSの開発の大きな遅れやトリチウム以外の核種の残留などで延び延びになり、2018年の現時点では敷地の余裕がわずかとなり切羽詰まった状態にあります。
 結果、国と東電は、福島県内で数年間にわたりトリチウム海洋処分に関するPA(パブリックアクセプタンス:社会的受容)活動*を精力的に行っており、8/30,31の公聴会はその総決算といえるものでした(*筆者注:「社会的受容を求める活動」といえば字義通りならばよいが、ほとんどの実態はカネと権力をつかった強権的詐術と言ってよいもので、極めて強い批判を浴びている。玄海原発九電やらせ事件などが記憶に新しい。福島核災害などの原子力重大事故の根本にもPAによる原子力従事者の自己暗示=安全神話の一種が見られる)。
 私は、このトリチウム水については、トリチウム以外の核種が基準以下に抑えられていることを条件に、PWR(加圧水型)原子力発電所の90年代の実績相当*での海洋放出はやむを得ないだろうと考えていました(*筆者注:PWRは、一次冷却水にホウ素とリチウムを添加するためにBWR(沸騰水型:福島第一はBWR)に比して、100倍近いトリチウムを発生させる。結果、年間放出量もBWRに比べ10~100倍ほど多い。近年、リチウム添加剤の改良によって大幅にトリチウム発生量を減らしている)。
結論ありきの政府・東電の公聴会
 これまで政府と東電は、一般向けにはALPSなどでトリチウム以外の核種は除去しており、「トリチウム水」には他の核種は検出限界以下、または基準以下しか含まれていないと説明してきました。
 そのためあらゆるPA活動や公聴会が「トリチウム水の海洋放出」への理解を求めるものでした。
 ところが、23日の河北新報での報道では、その「トリチウム水」から、告知濃度限度を超えるヨウ素129が2017年の1年間で60回検出されたこと、さらにルテニウム106、テクネチウム99を加えると2017年だけで65回、告知濃度限度を超えていたことがわかりました。加えてその後、ストロンチウム90の告知濃度限度超過もわかりました。
 さらにヨウ素129とルテニウム106は、昨年から今年にかけての84回の分析のうち45回と過半数で告知濃度限度を超えていたと報じられています。(※前出木野氏の記事による)
 これまで東電は、ルテニウムを除き、トリチウム水ではトリチウム以外の核種は検出限界以下であると説明し、30日31日の公聴会は「トリチウム水」にはトリチウム以外の核種は含まれない(検出限界以下である)ことを大前提として行われました。
 実際問題として、PAのセレモニーとしての「公聴会」はシナリオが決まっていますから、前提が覆されるような事実が出てきても「トリチウム水」の海洋放出というシナリオの書き換えができません。結果、公聴会当日は海洋放出への反対意見が相次ぎ、大荒れとなりました。
 結局、公聴会2日目の8月31日が締め切りだった市民への意見募集は、9月7日消印有効と延長されるなど、PAとしては惨憺たる結果に終わっています。(参照:経産省
まっとうな手順を無視した政府・東電
 今回、なぜこのように経産省、東電の目論見は崩れたのでしょうか。委員の発言にあったように、政府、東電は、大型タンクでの長期間保管は議論の俎上に上げないという内々での申し合わせをし、海洋放出を唯一の現実的解にして公聴会を締めるつもりでした。これはいつものPAの手法で、公聴会の形骸化そのものでした。
 そもそも、「トリチウム水」という説明が事実と異なっていたことが第一の問題です。「トリチウム水」ならば、放射性核種はトリチウムのみであり、総量規制、濃度規制を遵守し、経過と結果について情報を誠実に公開すれば、市民の合意のもとにロンドン条約との整合性をとった上で海洋放出処分ができるはずでした。
 ところが実際にはトリチウム以外に告知濃度限度を超えるヨウ素129、ルテニウム106、テクネチウム99、ストロンチウム90が過半数の測定で検出されていました。東電はそのことを認識していましたが、生データを公開していたものの、事実を説明していませんでした。生データは膨大であり、精査しなければわかりません。そうした上で、東電はこれまで、「測定している62種類の放射性物質は、他核種除去装置によって告知濃度限度以下まで除去でき、残るはトリチウムだけである」と説明してきたのです。
 これでは、放射性物質の海洋放出処分の大前提である市民の同意は得られません。同意を得るための大前提である信頼が崩れてしまったのです。
 生データはそこに置いてあるとして、事実と異なる発表をし、不都合なことは説明しないというのは極めて不誠実ですし、例えば学会でこのようなことをすればバレて袋だたきに遭い、その後は恥ずかしくてその分野では出られなくなります。実際に時々そういう騒動が大規模な学会では起きますし、身近で起きたこともあります。
 実業界でも自動車の性能偽装など、この手の行為は破滅的な信用失墜を起こし、企業にとっては自殺行為となります。
 そのような「やってはいけないこと」を長年やってきて、それがバレたのが去る23日から31日までの一連の事件といえます。
 こうなると最大の当事者である漁業従事者、漁協、漁連は怒ります。トリチウムだけならば濃度と総量を守り、情報を公開しながら事故を起こさないように海洋放出を実施すれば影響はまずありません。ところが、生物濃縮性が強く、半減期が極めて長いために事実上減衰しないヨウ素129が混ざっていたとなれば、海のブランドは深海の底に失墜します。いくら濃度が低くても放出による総量が長年の蓄積によって無視できない量になれば何が起こるかわかりません。
 食品、口に入るものの価値の大部分は「信用」です。その信用をこういった裏切りにより破壊されることは看過できるわけがありません。元々海を破壊したのは国と東電です。その国と東電がまたやらかしたとなればもはや聞く耳すら持たれないでしょう。
 私には直接の利害はありませんが、過去7年間、トリチウムについては基準を守る限り、海洋放出はやむを得ないという考えでした。ただしそのためには次の条件が必須と考えていました。
1)トリチウム以外の放射性核種は、検出限界以下または基準値を下回っていること
2)トリチウムは総量、濃度ともに基準厳守(1990年代のPWR発電所程度)
3)厳密かつ正確かつ公正かつ透明な管理と情報公開が行われること
 このたった三つの当たり前の、実はとても甘い条件のうち二つが破棄されたことになります。こんなことで海洋放出を認められるでしょうか。私は「否」と答えます。
 これは福島第一の地震と津波による被災をほぼ正確に予見していたにもかかわらず、コストダウンのために握りつぶし、結果として福島核災害を引き起こした東電と政府の過去の行為と何も変わりません。
今後、「トリチウム水」(ALPS処理水)はどうなってしまうのか?
 ここで福島第一の「トリチウム水」の現状を見てみましょう。
 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会説明・公聴会説明資料pp.5によれば、構内のALPS処理水の平成30年3月時点での状況は以下のようになっています。
タンク貯蔵量:約105万m3
タンク建設計画:137万m3(2020年末)
ALPS処理水増加量:約5〜8万m3/年
ALPS処理水のトリチウム濃度:約100万Bq/L(約0.02μg/L)
タンク内のトリチウム量:約1000兆Bq(約20g)
 そして、この発表資料にはありませんが、報道されたように「トリチウム水」(ALPS処理水)には、トリチウム以外のベータ核種が含まれており、全ベータ核種合計(トリチウムを除くベータ核種合計)は100Bq/Lとされてきています。しかし、実際には100〜1000Bq/Lでかなりの揺らぎがあるようです。
 先にも申し上げたように、この全ベータ核種合計を表に載せないこと自体がきわめて不誠実です。
 次にALPS処理水とSr処理水のタンク容量の推移の実績と予測を示します。
 これらから、2年後にはALPS処理水は130万トン、トリチウムの全放射能量は1.3PBq(ペタ=千兆)と見積もられます。
 福島第一原子力発電所は、事故前にはトリチウムを年間で2TBq(テラ=1兆)放出していましたので、通常運転時の500年分のトリチウムがタンクの中に存在することになります。現在も事実上の目安とされている福島第一の事故前のトリチウム放出管理目標値は、22TBqでしたので、この管理目標を遵守すると単純計算で約60年、実際にはトリチウムの半減期が約12年ですので、2020年以降の増加量も勘案して環境放出には約25〜30年かかることになります。ただし、地下水などの経路からのトリチウム放出の分を加えなければいけませんので、実際には30〜40年かかることになります。
 国と東電は、7年間で海洋放出を完了するつもりですので、これもつじつまが合いません。
 また、トリチウム以外の全ベータ核種(全ベータ核種)の濃度を保守的に500Bq/Lと仮定すると、全ベータ核種の放射能量は、0.65TBqとなります。福島第一の事故前のトリチウム以外の液体廃棄物の放出管理目標値は、1年あたり0.22TBqでしたので、こちらは地下水経路も含めて10年程度で十分でしょう。
 結局、ALPS処理水を事故前の環境放出基準を遵守して海洋放出する場合、40年程度の期間を要し、結局今の小型タンクでは耐久性や管理の煩雑さから維持できなくなると考えられます。
 トリチウム放出管理目標値を変更するのならば、それは別に審査と市民による合意の手続きを経ねばなりません。また、放射性物質を生産を行わない陸上施設から海洋に放出しますので、ロンドン条約との整合性をとる必要があり、条約締結国からの合意を得る必要があるでしょう。この環境基準を大きく緩和するという手続きについて政府、東電はたいへんに軽く見込んでいると思われます。過去の公害、鉱毒などによる環境破壊と被害の歴史を省みれば、とても考えられない行為です。
 もっとも、PWR発電所では、年間200TBq前後のトリチウム放出管理目標値を設定していますので、正規の手続きを経て市民の合意を得るのならば、トリチウム放出管理目標値の変更は不可能ではありません。
 巷に見られる、薄めて捨てれば無問題という意見にも公害防止という観点から、貯めた汚染物質を薄めれば捨ててよいという考えには強い違和感を持ちます。軽々に行えば、たいへんな悪しき前例となるでしょう。
 私は身近に土呂久鉱毒事件と水俣公害、カネミ油症事件を見て育ちましたので、21世紀にもなってこのような身勝手なことを公害発生企業とその共犯関係にある国が行おうとすることには恐怖すら感じます。
「公害防止」の観点からまっとうな対応をせよ
 国と東電は、公聴会では恒久タンクによる保管を排除して、
1)海洋放出
2)地中への圧入
3)大気への拡散
4)地下埋設
を提案しました。
 2)はデンヴァー群発地震の前例が示すように、地層中に大量の水を圧入すると群発地震が発生します。そもそも結果として何が起きるか不明です。これは明らかに当て馬です。3)は、すでに住民の帰還を実施しているのに、その有視界範囲で放射性物質を大気放出するなど論外です。これも当て馬です。4)は立地点さがしから始まります。埋めた先で地下水を再び汚染するわけで論外です。これも当て馬提案です。公聴会などで当て馬提案によって結論を誘導するのも原子力PAで使い古された手法です。
 ほかにトリチウムを水から分離する技術をカナダが実用化していますが、処理速度がALPS処理水の増加速度に比して一桁から二桁遅く、焼け石に水です。
 現状では、現実的な方策は、石油備蓄基地に準じた大型タンクによる長期保管か、海洋放出しかないと考えられます。
 長期保管の場合は、石油国家備蓄基地に使われている10万キロリットル級の大型タンクを予備を含めて15基建設する事になります。石油国家備蓄基地では25〜50基のタンクが並びますので比較的小規模なものとなります。120年保管するとトリチウムの濃度は1000Bq/Lに、240年間の保管で1Bq/Lになりますので、この時点で天然の雨水とほぼ同濃度になります。このとき全ベータ濃度も1Bq/L程度に減衰しています。ここまで減衰すれば捨てることへの異論は少ないでしょう。
 長期保管は、維持費、建て替え費(式年遷宮のように定期的に新しいタンクに詰め替える)を含めて240年間で2000〜4000億円程度ですから、不可能な費用ではありません。良いことずくめのようにも感じられますが、石油備蓄基地と違い、経済的に無価値なものを100年単位という世代間管理をすることが可能であるかという問題があります。これは見落としがちですが、合衆国のハンフォードや英国のセラフィールドで世代間管理されている核廃棄物は、50年で著しく管理状態が劣化しており、一部はたいへんに危険な状態に陥っています。わたしは楽観視できないと考えています。
 一方で、海洋放出も国と東電が見込む7年での完了は困難で、やはり大型恒久タンクで安全に保管しながら25〜50年ほどで環境汚染防止を最優先に行うことになると考えられます。また放出作業に伴う職員の被曝防止、放射線防護の費用は予想外に嵩むと考えられ、国と東電が見込むような格安での処理は、公害防止と放射線防護に常識的に留意すれば不可能でしょう。私は5百〜1千億円程度は見込む必要があると考えています。
 なお、どちらの方法も7号炉、8号炉建設予定地の敷地面積を活用してやりくりできるでしょう。
 この「トリチウム水」=ALPS処理水問題の本質は公害です。公害対策を最優先にすることを考えれば安易に格安な手法を選べば却って高くつきます。市民の合意を得るにしても原子力PAのような卑劣な手法は論外です。
<文/牧田寛 Twitter ID:@BB45_Colorado photo/USMDA via flickr(CC BY 2.0)
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題についてのメルマガを近日配信開始予定


安倍政権の世論調査「国民の7割以上が生活に満足」っておかしくないか? 佐藤健も古市憲寿との対談で疑問を
 内閣府が先月24日に公表した「国民生活に関する世論調査」のデータに疑問の声が高まっている。すでにマスコミが盛んに報じているが、この調査において、現在の生活に満足していると答えた人が、全体の74.7%と過去最高を記録したというのだ。
 アベノミクスなるまやかしの経済政策の効果を庶民は一向に感じられず、格差が広がり、また安倍政権による公文書改ざんや“お友だち優遇”に政治・行政への不信感がつのるなか、国民の7割以上が「現在の生活に満足」と思っているとの数字は、直感的に理解に苦しむ。
 そんなことから、この調査に懐疑的な声がネット上を中心に広がっているのだが、実際、内閣府がホームページで公開している調査結果に目を通してみたところ、たしかにここ数年、同調査で生活の満足度が微増しているのは事実だが、首を傾げたくなる点がいくつかもみられた。
 まず、「『現在の生活に満足』74.7%、過去最高更新」(読売新聞)、「現在の生活『満足』74.7%で過去最高 内閣府調査」(産経ニュース)など、新聞やテレビが見出しに掲げる「74.7%」という数字だ。そもそもこの報じ方が正確ではない。
 内閣府の調査では、〈あなたは、全体として、現在の生活にどの程度満足していますか。この中から1つお答えください〉との設問に対して、「満足している」という回答が12.2%で、「まあ満足している」が62.5%となっている(「やや不満だ」19.5%、「不満だ」4.8%)。つまり、「満足している」と「まあ満足している」の合算が例の74.7%という数字なわけだ。
 これはちょっと変だろう。データを普通に読めば、回答の大半は「まあ満足」(62.5%)なのである。「まあ」という日本語表現を普通に解釈すれば「一応は」とか「十分とは言えないが」とか「どちらかというと」というニュアンスであって、「満足している」と言い切るのとは満足の程度がかけ離れているだろう。逆に言えば、「現在の生活」に「満足している」回答者はたかが1割強でしかなく、「やや不満だ」より少ないのだ。
 しかし、それ以上に考えねばならないのは、この調査における回答者が、特定の層に偏っているのではないかという疑念だ。
 そもそもこの「国民生活に関する世論調査」は今年の6月14日から7月1日にかけて18歳以上の日本国籍保有者10000人に対して実施し、5969人から回答を得たもの(回答率59.7%)。回答者がどのような人たちであったかについては、公開されている調査結果を見ればわかる。
 調査によれば、回答者の72%が「既婚(有配偶)」で、かつ、実に77.4%が「子どもがいる」。また、子どもがいる回答者のうち68.5%について、その子どもは「学校教育修了」であった。一方、親子や夫婦で暮らしていない「1人世帯」は11.4%だった。
 注目したいのが、回答者が住んでいる家の分類を答える項目だ。なんと、81.7%が「持ち家」(その内訳として「一戸建て」が82%)だというのである。ようするに、賃貸ではなく所有する家に住んでいる回答者が全体の8割を上回っているわけだが、この持ち家率は他の政府統計と比べると極めて高い数字なのだ。
 実際、総務省が5年ごとに実施している『住宅・土地統計調査』によれば、住宅全体に占める持ち家の割合は61.7%であった(前回2013年調査より。2018年調査は10月実施予定)。なお、総務省によれば、持ち家率は1967年から概ね60%前後を推移しており、その増減はプラスマイナス2%程度であることから、2018年現在もおおよそ2013年調査と同程度ではないかと推測できる。
 ようするに「国民生活に関する世論調査」における持ち家率(81.7%)は、「住宅・土地統計調査」と比べて20%も高いのだ。実際、「国民生活に関する世論調査」によれば「持ち家」と「賃貸住宅」を比較した場合、「満足している」「まあ満足している」と答えた比率において、ともに「持ち家」の回答者のほうが高かった(「満足している」で2.5ポイント、「まあ満足している」で8.4ポイント上)。同調査で生活の満足度が高くなるのは当然だろう。
回答者になぜこんな偏りがあるのか。背景には調査方法の問題が
 しかし、だとしたら、問題はなぜ、「国民生活に関する世論調査」では回答者がこんな風に偏ってしまっているのか、だ。一般的に、世論調査は調査方法や調査数、回答率、あるいは設問の表現によって結果が大きく異なることで知られるが、ポイントは「国民生活に関する世論調査」が個別面接聴取法を採用していることだ。
 調査員が訪問・聴取するこの方法は“満足度”などの質問においてバイアスが生じることで知られる。実際、NHKが2008年に行った調査方法の違いに関する実験調査によれば、「生活全体についての満足感」について「満足している」との回答が面接法では27.6%であったのに対し、対象者が自分で記入する配布回収法(18.4%)や郵送法(19.8%)ではかなり低くなった。
 これら調査方法等によるバイアスを指摘している『世論調査とは何だろうか』(岩波新書)の著者・岩本裕(元NHK放送文化研究所世論調査部副部長)は、同書において〈調査員という他人に尋ねられたとき、本音を答えるよりも、「こう答えた方が他の人には格好がつくだろう」という答えを選びがちだということです〉〈突然訪ねてきた赤の他人に「生活に満足していない」と答えるのは、なかなか難しいものです。それが結果に表れているのでしょう〉と分析している。
 実は、意外な人物も同様の指摘をしている。それは俳優の佐藤健だ。
佐藤建も古市憲寿の「若者の七割が今の生活に満足している」に反論
 佐藤は2012年、古市憲寿の著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)の対談に登場。そのなかで、古市がまさに「国民生活に関する世論調査」をもちだして「今の二〇代の生活満足度はだいたい七割くらい。一見、不幸な時代なのに若者の七割が『生活に満足している』と答えている。(中略)この数字をどう思いますか?」と聞くと、佐藤はこのように語ったのだ。
「今の若者は『満足してる』って答えちゃうと思うんですよ。でも満足してるって言っている中で、ああだこうだ不満を毎日言ってると思うんです」
「僕も欲しいものとか色々あるけど、満足してるかって聞かれたら満足してるって答えちゃう」
「あとその『満足してます』って人たちは、周りがみんな同じくらいなところにいるのかなとも思います。もしかしてすごく近くに、明らかに自分より幸福だったりとか、そういう人がいたら満足してないって答えるのかもしれないですね」
 いみじくも佐藤が指摘している通りなのだろう。現在の政治や社会状況に不安や不満をもっていても、漠然と〈全体として、現在の生活にどの程度満足していますか〉と問われ、そこに「まあ、満足している」なるふんわりとした選択肢を見つければ、人はなんとなくそれを選んでしまいがちだ。
 内閣府がそうした結果を見込んで、意図的に個別面接聴取法を採用しているどうかはわからないが、いずれにしても、内閣府の「国民生活に関する世論調査」における「現在の生活『満足』74.7%」という数字は明らかにまやかしが含まれており、これをもとに「日本国民の4分の3は満足している!」と主張してもなんの意味もないことは明らかだろう。
 ところが、マスコミは冒頭で紹介したように、この内閣府調査をやたら喧伝するのだ。いや、メディアだけではない。ほかでもない安倍首相もしばしばこの調査結果をもちだしている。
 たとえば2017年1月25日の参院本会議では、共産党の小池晃議員が、OECDも使用する厚労省の「国民生活基礎調査」を取り上げ、「この20年間、生活が苦しいと答えた人が42%から60%となる一方で、普通と答えた人が52%から36%になりました。普通に暮らしていた人々が苦しい生活に追い込まれています。今や、リストラ、病気、介護などで、誰もが貧困に陥ってしまう社会になってしまいました。こうした社会の立て直しが政治の最大の責任なのではありませんか」と質した。
 すると、これに対して安倍首相は「昨年8月に公表された内閣府の国民生活に関する世論調査によれば、満足と回答した割合は1995年以来の70%を超える水準を2013年以降、つまり政権交代して以降、4年連続で維持しております」と答弁。自分にとって都合が良い「国民生活に関する世論調査」のデータにすりかえて、ごまかしたのだ。
 少なくとも、政権に都合のよいデータが示されたときには、それとは別の調査も考慮するというリテラシーが必要だろう。(小杉みすず)


河北春秋
 「偽ニュース賞」。トランプ米大統領が先ごろ、得意のツイッターでこんな発表をした。「偏向的、不公平な取材ばかり。その受賞者は−」と、自身の政治を批判したCNN、ニューヨーク・タイムズなどの報道を列挙した▼「記事にされたくないことをするのが報道というもの。それ以外は広報だ」。英国の作家ジョージ・オーウェルの名言。裏を返せば、「メディアは国民の敵」と公言するトランプ氏ら、不都合な報道を「不公平」と嫌うのが政治家の常か▼7日に総裁選告示を控えた自民党。「公平・公正な報道」を求める文書をマスコミに配った。記事や写真を載せる面積、内容、名前など「必ず各候補者を平等・公平に扱って」と。公党の選挙だ。事細かなご教授は無用なのだが▼安倍晋三首相に石破茂元幹事長が挑む構図。3選を狙う首相を挑戦者が批判的な主張で攻めるのは当然だろう。多くの人が未解決と考える森友、加計学園の問題など、首相の政治姿勢を問うのもまた当然▼結局、それらの報道を恐れて「挑戦者の露出を目立たせるな」というのが「公平・公正」の真意か。石破さんに同党幹部が「(首相へ)個人攻撃となる発言は控えて」とくぎを刺したとも伝わる。不都合を隠す政治ショー。トランプ氏はそう語られるが、さて。

マケイン氏と米国政治 広く世界を考える大切さ
 1人の政治家の死を悼むにも対立が噴き出してしまう。今の米国が、かつてないほど不安定で特異な状況に置かれているからだろう。
 ワシントンで営まれたマケイン米上院議員の葬儀にはクリントン、ブッシュ(息子)、オバマの歴代大統領をはじめ超党派の政治家や有名人が顔をそろえた。
 だが、共和党内でマケイン氏と対立し、氏への弔意を示すのも渋ったというトランプ大統領は参列せず、ゴルフ場へ向かった。トランプ氏は故人の遺志によって招かれなかったとされる。その意趣返しとして葬儀の日にゴルフをしたのだろうか。
 ベトナム戦争で捕虜になり拷問にも耐えたマケイン氏は米国で英雄視されてきた。大統領にはなれなかったものの、人権など普遍的な価値観を重視する同氏の人気は高かった。
 これに対しトランプ氏は、捕虜になった者は戦争の英雄ではないと言い放ち、マケイン人気を切り崩そうとした。感情的な対立とも見えたが、その根底にはマケイン氏が代表する伝統的な保守政治と、米国の利益を強引に追求するトランプ主義のせめぎ合いがあったのは確かだ。
 だが、命を懸けて戦ったマケイン氏が英雄でないなら米国の軍事も政治も成り立つまい。トランプ氏の意向の反映か、ホワイトハウスの半旗が早々と元に戻され、議会などの批判を浴びてまた半旗にされたのも子供っぽい行為と言わねばならない。
 葬儀でオバマ前大統領は、マケイン氏が民主的討議にとって重要な報道の自由を擁護していたことを称賛し、ブッシュ元大統領はマケイン氏が権力の乱用や尊大な圧政者が嫌いだったと述べた。いずれもトランプ氏への皮肉だろう。
 だが、最も味わうべきはマケイン氏の言葉だ。死の直前に残したという米国民へのメッセージの中で、同氏は世界に憎悪や暴力をもたらす「部族的な対抗心」と愛国心を混同してはならないと述べた。壁の陰に隠れるよりも、むしろ壁を壊さないと米国は弱くなるとも警告した。
 世界の分断や同盟国との対立も恐れず強引な外交・通商政策を推進するトランプ政治への痛烈な批判だろう。マケイン氏の言葉は「部族的」ではない、広く世界のことを考える米国政治の大切さを教えてくれる。


総裁選報道への介入 不当な圧力は許されない
 7日に告示される総裁選を前に、自民党が「公平・公正な報道」を求める文書を新聞・通信各社に送付した。記事や写真の掲載面積で候補者を平等に扱うよう注文している。新聞社や通信社は独立した報道機関であり、記事や写真の取り扱いで権力側からあれこれ指図される筋合いは全くない。
 自民党は、民主主義に不可欠な「言論の自由」の意味を理解しているのか。長く政権を握っているうちに、慢心が頂点に達した感がある。
 文書は総裁選管理委員会委員長から各社政治部長らに送られた。「内容、掲載面積などについて必ず各候補者を平等・公平に扱ってくださるようお願いいたします」と記している。
 そもそも総裁選は一政党の党首を決める組織内のイベントにすぎない。ニュース価値によって、一方の候補者を大きく扱うこともあれば他方を小さく扱うこともある。各社が判断することであり、何ら制約を受けるものではない。
 自民党は新聞・通信各社を機関紙化したいのか。公権力が新聞記事の内容を検閲した戦前・戦中の言論統制をほうふつとさせる。
 安倍晋三首相に近い議員が報道への働き掛けを総裁選管理委員会に求めたといわれる。政権に批判的なメディアをけん制し排除したいとの思惑を指摘する向きもある。
 放送局に対しても、候補者の出演交渉の際に同様の申し入れを行うという。
 報道機関を萎縮させる狙いがあるとすれば悪質だ。国民の「知る権利」を脅かすメディアへの不当な介入であり、決して看過できない。
 2014年の衆院選の際にも自民党は、選挙期間中の報道の公平性を確保し出演者やテーマなど内容にも配慮するよう求める文書を、在京テレビ各局に渡している。
 出演者の発言回数や時間、ゲスト出演者、テーマの選定を中立公平にし、街角インタビューなども一方的な意見に偏ることがないようくぎを刺した。「報道の自由は尊重する」と言いながら、やっていることは露骨な圧力だ。
 総裁選ではおかしなことがほかにもある。安倍首相に挑む石破茂元幹事長が「正直、公正」のキャッチコピーを前面に打ち出したのである。「正直、公正」を心掛けるのは政治家に限らず、常識人として当たり前のことだ。それをわざわざ言い出さなければならないほど今の政権党は劣化してしまっている。
 驚くべきなのは、石破氏のキャッチフレーズが首相への個人攻撃とみなされたことだ。首相を「正直、公正」と考える人が党内に少ないことを図らずも露呈した。
 総裁選報道への介入は自民党政治の劣化の一端を示す。このようなやり方は間違っていると表立って発言する政治家が党内から出てこないことが問題だ。自浄能力が欠如している。


アベノミクスのツケ…エンゲル係数が“最悪”視野に急上昇中
 ここにきて、エンゲル係数の上昇が再び話題になっている。
 2016年(年間)に29年ぶりの高水準となる25.8%を記録。このとき安倍首相は、「(エンゲル係数の上昇は)生活スタイルの変化が含まれている」とトンチンカンな話をしていた。
 もちろん、エンゲル係数というのは「消費支出に占める食費の比率」で生活水準を表す指数。数値が高いほど生活水準は低くなるのが一般的だ。
 直近統計の6月家計調査(総務省)では26.6%まで上昇した。
■2016年の25・85%を上回る
 第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏によると、直近1年間(17年7月〜18年6月)のエンゲル係数は25.88%で、16年(25.85%)を小数点の単位で上回ったという。
 驚かされるのは食料品の物価上昇率だ。10年前と比較(07年と17年)すると、何と11.8%も値上がりしている。この間の消費者物価は3.3%の上昇に過ぎないので、食料品がいかに高くなったかが分かる。
 株式評論家の倉多慎之助氏は言う。
「安倍政権は経済界に対し、賃上げ要請を続けていますが、食費が10%以上も上昇したら、エンゲル係数は上昇して当然でしょう。サラリーマンの生活水準は低下しているのです」
 エンゲル係数の推移を調べると、06年から12年までは23%台で安定していた。ところが、第2次安倍政権が発足(12年12月)した以降に急上昇している。13年は23.6%、14年24.0%、15年25.0%、16年25.8%……。17年は25.7%と前年を下回ったが、現状は再び上昇傾向だ。
「海外のエンゲル係数は、米国15%、ドイツ18%、英国20%といったところです。日本は本当に先進国なのかと疑いたくなるような数値です」(市場関係者)
 アベノミクスは官製相場をつくり出し、一部の富裕層こそ潤っただろうが、庶民生活はいっそう苦しくなった。このままだと、今年は過去30年間で“最悪”のエンゲル係数になりかねない。


安倍首相またも小心露呈 細田派に“血判状”強要のデタラメ
 安倍首相が圧勝3選を狙う自民党総裁選は前代未聞のデタラメだらけだ。連続2期6年までだったルールを3期9年に延長。さらに、安倍出身派閥の所属議員に“血判状”を強要したという。さすがに党内からも反発の声が上がり始めている。 
 安倍出身派閥で党内最大の細田派(94人)は、所属議員に安倍を支持する誓約書に署名させ、3日発足した合同選挙対策本部に提出。文面は〈全力を尽くして応援するとともに、必ず支持することを誓約する〉などと露骨だ。安倍支持の麻生派と二階派がすでに所属議員の署名付き推薦状を作成していたことから、細田派幹部は「他派閥と足並みを揃える必要がある」と説明しているというが、いかにも取ってつけたような理由だ。
 政治評論家の本澤二郎氏は言う。
「首相の出身派閥が所属議員に“血判状”を迫るなんて聞いたことがない。ヤクザまがいの脅しですよ。裏を返せば、細田派ですらバラバラで、国会議員票7割確保なんていう報道はインチキだということ。締め付けないと、どう転ぶか分からないのです。ところが、かえって派閥内の不協和音は高まっている。首相側近の西村康稔官房副長官や萩生田光一幹事長代行あたりが、論功行賞欲しさで主導したのかも知れませんが、ここまでやるかと呆れる声が広がり、むしろ逆効果になっています」
■選対発足式は全員参加の至上命令
 合同選対本部の発足式を巡っても、陣営議員は全員参加の至上命令。その意図は圧倒的な力を見せつけ、対抗馬の石破茂元幹事長に流れる地方票を引きはがすためだ。現職有利が選挙の常識なのに、安倍陣営が過剰拘束に走るのはワケがある。
「強権政治を振るう安倍首相ですが、実は人の目を見て話すのが苦手なほど気が小さい一面がある。実直に戦う石破の姿に焦りを感じ、勝利が確実視されても、不安で仕方がないのでしょう。そうした心理を側近らが忖度して、異常な総裁選に拍車を掛けている」(自民ベテラン議員)
 過ぎたるはなお及ばざるがごとし――。マトモな感覚を持ち合わせていれば、ファッショ丸出しの“安倍気質”は鳥肌モノ。潮が引くように地方票が離れていく展開もあり得る。


“血判状”強要が裏目…安倍陣営の船出に漂ったお寒いムード
 総裁3選を狙う安倍首相の陣営が3日、東京・千代田区のホテル「ニューオータニ」で決起集会を開催。合同選対本部の発足を発表した。安倍首相は出席者346人を前に3選への決意を語ったが、会場は寒〜い雰囲気。講演では5年8カ月の成果を振り返った一方で“謝罪”とも取れる発言を連発していた。
 講演で安倍首相は申し訳なさそうに、3回も「至らぬ私ではありますが」と繰り返し。さらに、モリカケ問題を念頭に「私の不徳の致すところからさまざまな批判があり、それを(議員の)皆さんにかぶっていただいた」と釈明した上で、「大変だったと思う」とポツリ。何を今さらだが、国会での居丈高な態度と打って変わって、気持ち悪いくらいの低姿勢に終始した。
 声には張りがなく、いかにも自信なさげ。そんな空気を感じ取ってか、一部の聴衆は冷ややか。出席者の3分の1は議員の代理出席者ばかりで、気乗りしないのか後方席に固まりスマホをイジったり、コソッと電話したりと「心ここにあらず」の状態。最終盤の「ガンバロー!」コールでも、恥ずかしそうに拳を上げる程度で、タイミングは皆、バラバラだ。
 見かねた事務局次長の木原稔衆院議員が、「告示日の9月7日の出陣式は、秘書の方でなく必ずご本人に出席いただけますようお願いいたします」とハッパをかける始末。お寒い状況の原因はハッキリしている。各派閥幹部が所属議員に安倍支持の意思を署名させた“血判状”のせいだろう。
■「いかにも“上から”という雰囲気」
 安倍首相の出身派閥の細田派議員も〈必ず(安倍首相を)支持することを誓約する〉などと記された誓約書に一筆書かされ、発足式での提出を求められていたのだ。
 発足式に出席した議員も「ここまで一丸となってやってきたのに、なぜ今さら誓約書など書かせるのか」「もっと謙虚であるべきなのに、いかにも“上から”という雰囲気だ」といった反発の声を日刊ゲンダイに打ち明けたほどだ。
「“血判状”を迫るなど、ヤクザまがいの脅しで、常識では考えられません。中には『ここまで信用されていないのか』とショックを受けた議員もいるでしょう。安倍支持の引き締めが狙いだったのでしょうが、出席者の3分の1が代理だったことを見ても“血判状”強要は裏目に出ました。もともと細田派内はバラバラだと聞いていますが、今回の一件でさらに拍車がかかるでしょう」(政治評論家・本澤二郎氏)
 毎日新聞の世論調査では次期自民党総裁としてふさわしい候補として、安倍首相は32%。対立候補の石破茂元幹事長に29%と僅差に詰め寄られた。いよいよ安倍首相も焦りの色が濃くなってきた。


アベノミクスの失敗証明 石破公約と日銀リポートの共通点
 石破茂氏が総裁選の公約に掲げた「石破ビジョン」。経済政策の柱は、<中小企業と地方の成長力の引き上げ>と<社会保障制度改革>の2つだ。会見では「大企業だけでなく、中小企業や地方の潜在力を伸ばし、経済成長の中心とする」「国民が信頼できる社会保障制度を確立し、消費を喚起する」と訴えた。
 アベノミクスの欠陥を突いたのは明らかだが、意外にも黒田日銀の情勢分析とほとんど同じなのだ。金融関係者の一部で話題になっているという。日銀は1月、4月、7月、10月と年に4回、「経済・物価情勢の展望」を公表している。最新の7月号で<経済の中心的な見通し>について、こう記述しているのだ。
<先行きの経済成長や社会保障制度に関する慎重な見方が根強いことも、値上げ許容度の高まりの遅れにつながっている>
 要するに、5年間も「異次元緩和」を続けているのに物価が上昇しないのは、政府が、先行きに希望が持てる「成長戦略」を打ち出さず、国民の将来不安を解消する「社会保障制度」の改革に手をつけなかったからだ、と訴えたいらしい。
 驚くのは5年前、前任の白川方明総裁時代も、ほとんど同じ分析をしていることだ。これも、金融関係者の中で話題になっているという。2012年10月の「経済・物価情勢の展望」はこう記述している。
<成長力を強化する取り組みや社会保障制度の持続可能性を高める見直しが十分に進まなかったことが(略)物価の下落要因として作用してきたと考えられる>
 5年前も現在も<成長戦略>と<社会保障>。一体、どういうことなのか。経済評論家の斎藤満氏が言う。
「黒田日銀が、物価が上昇しない理由として<先行きの経済成長や社会保障制度>を挙げたのは、責任は安倍政権にもあると防波堤を張ったのでしょう。いずれも政治マターですからね。問題は、5年前と同じ分析をしていることです。どこに問題があるのか、何をすればいいのか分かっていたのに、安倍政権は5年間も手をつけなかったということですからね。恐らく、石破茂さんも、そこを突くつもりなのでしょう」
 5年間のアベノミクスは、何だったのか。


MOX燃料処理  電力会社は責任免れぬ
 これも核燃料サイクルの行き詰まりを象徴する事態といえよう。
 プルトニウムとウランを混ぜた混合酸化物(MOX)燃料を一般の原発で燃やすプルサーマルを巡り、原発を持つ電力会社10社が使用済みMOX燃料の再処理に向けた費用計上を2016年度以降、中止している。
 再稼働した関西電力や九州電力の原発でプルサーマルが行われている。国は使用済み核燃料から抽出したプルトニウムを減らすために、今後もプルサーマルを推進する方針だ。
 使用済みのMOX燃料をどうするかという課題は解決どころか、さらに大きくなる可能性がある。しかし、電力会社が主体となって再処理工場を造る道は事実上、なくなった。
 国が中心となり、再処理か廃棄物処理を進めることになるが、原発を保有する電力会社が本来負うべき負担を免れるようなことがあってはならない。監視が必要だ。
 電力会社が費用計上をやめたのは、MOX燃料も含めた核燃料再処理を国の責任で進める方向に制度が変わったためだ。
 政府は16年、使用済燃料再処理機構を設立し、各電力会社が資金を拠出する法改正を行った。10社が外部の資金管理団体に積み立てていた約2300億円は同機構に移管された。
 背景には、核燃料の再処理が今後どの程度まで膨らむかが不透明なことがある。同機構の運営には税金も投入される。MOXも含めた核燃料再処理過程の国有化といえる。電力会社の負担を一定にとどめる狙いがある。
 だが、経営判断として原発を選んできた電力会社は相応の費用負担をすべきだ。制度変更が電力会社の救済策であってはならない。
 青森県六ケ所村で建設中の核燃料再処理工場では、使用済み核燃料からプルトニウムとウランを抽出するとともに、MOX燃料も製造することになっている。
 一方で国は新しいエネルギー基本計画で使用済みMOX燃料を廃棄することにも言及している。
 MOX燃料は高コストで、再処理、再利用を前提に使用しなければとても引き合わない。廃棄をすればそのつけは国民負担になる可能性がある。
 政府や電力会社は「原発は比較的安いエネルギー」とPRしてきたが、使用済み燃料の扱い一つをとっても、そんなことはとても言えない。とりわけ核燃サイクルでは弥縫策(びほうさく)が過ぎる。もはや撤退しか道はないのではないか。


埋め立て承認撤回 対話の道を探るべきだ
 沖縄県は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先である名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回した。撤回方針は、8月8日に死去した翁長(おなが)雄志知事が生前に表明していた。国と県の対立は解決の糸口さえ見えない状況といえる。
 移設を巡っては、2013年に当時の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事が出した承認を、法的に瑕疵(かし)があるとして翁長氏が15年10月に取り消した。取り消し処分は16年12月、最高裁で違法と結論付けられ、沖縄県の敗訴が確定した。今回の撤回は、承認の条件となる環境保全対策を示さないなど国が事業者の義務に違反したことが理由。謝花(じゃはな)喜一郎副知事は「工事の違法状態を放置できない」と主張している。
 政府は埋め立ての土砂投入を8月17日に行うと通知したものの荒天を理由に延期した。ただし投入の構えは崩しておらず、沖縄県にとっては投入前に撤回する必要があった。工事は中断されているが、防衛省沖縄防衛局は効力停止を求めて法的対抗措置を講じる方針で、再び法廷闘争となる可能性は大きい。
 国と県の溝が深まっているのは、健全な国づくりを進める上でゆゆしき事態だ。安倍晋三首相は「沖縄の思いに寄り添いたい」と強調してきたが、住民の話を聞く機会は設けても民意を尊重することはなかった。
 重要なのは、政府と県が改めて対話を重ねることだろう。政府には「辺野古移設が唯一の解決策」という硬直した姿勢を改めることが求められる。
 確かに安全保障政策は国の専管事項である。だが地方自治の精神をないがしろにしていいはずがない。1999年の地方自治法改正は国と地方が「対等な関係」であることを明確にしている。
 沖縄県が敗訴した訴訟で国は「知事に、国防や外交に関する重大事項の適否を判断する権限はない」と主張している。こうした強権的な言動はその後も一貫しており、民主主義本来の姿から懸け離れている。このままでは第二、第三の沖縄が国内各地に生まれてしまうことも危惧される。
 95年の沖縄少女暴行事件後、沖縄の基地負担の軽減が県民共通の願いである。たとえ「世界一危険」と言われる普天間飛行場の移設が実現しても、基地負担軽減に関しては何ら前進しない。辺野古移設が本当に必要なのかも含め、政府、沖縄県が協力して基地問題を検証するべきではないか。
 承認撤回は、9月30日投開票の知事選に影響を与えることは必至だ。翁長氏の後継として辺野古移設反対を訴える自由党衆院議員の玉城デニー氏と、安倍政権が支援する前宜野湾市長の佐喜真淳氏による事実上の一騎打ちの公算が大きく、辺野古移設の是非が最大の争点となる。移設について自らの考えを表明するのはもちろん、沖縄の未来像を県民に示してほしい。


辺野古の承認撤回 政府は説明尽くすべきだ
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、沖縄県は2013年に当時の仲井真弘多知事が出した辺野古の沿岸部の埋め立て承認を撤回した。政府は法的な対抗措置を講じる方針で、国と県の対立はまたしても法廷に持ち込まれることになる。
 政府と沖縄県の間ではこれまでも法廷闘争が続き、県の敗訴が続いている。国と地方自治体の間で対話が行われず、対立が激化している事態が残念でならない。
 撤回は承認後の事情変化を理由に許認可の効力を失わせる措置で、県が取り得る最大の行政権限とされてきた。8月8日に死去した翁長雄志知事が生前、撤回の手続きに入る意向を表明していた。
 撤回理由として県は、承認後に埋め立て予定地の軟弱地盤が発覚したことや、希少なサンゴを含む環境保全措置が不十分であること、承認時に県が条件とした「留意事項」に反し、工事の進め方について県との事前協議に応じなかったことなどを挙げている。
 軟弱地盤の存在は今年3月、市民が情報公開請求で入手した資料で判明した。承認後に行われた防衛省沖縄防衛局のボーリング調査に基づく報告書で、海底地質の軟弱性が指摘されていた。専門家は大幅な地盤改良が必要となり、工期も延び、日本政府が全額負担する工事費も膨らむと指摘する。当初の設計や工法を大幅に変更する場合、知事の変更承認が必要となる。県は工事を停止するよう再三にわたって求めたが、政府は応じなかったという。
 県の主張の通りなら、国の対応は極めて不誠実と言わざるを得ない。そもそも政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返すだけで、県が疑問を呈しても十分な説明をしてこなかった。軟弱地盤など新たに判明した事実についても政府は説明を尽くす姿勢を見せるべきだ。
 政府は辺野古沿岸部で昨年4月に護岸工事に着手。今年8月17日以降に護岸で囲った海域に土砂を本格投入すると県に通知していたが、天候などを理由に延期していた。県の承認撤回で工事は中断するものの、裁判所が政府の主張を認めれば再開は可能になる。土砂を投入すれば海の環境回復は難しくなるという重大な局面を迎えている。
 翁長氏の死去を受け、沖縄県知事選は13日告示、30日投開票の日程で行われる。与党が推薦する佐喜真淳・前宜野湾市長と、翁長氏の支持団体や野党が支援する玉城デニー衆院議員の事実上の一騎打ちになる見通しだ。
 安倍政権が支援する佐喜真氏は「普天間飛行場の危険性除去と一日も早い返還」を主張するが、辺野古移設への賛否は明らかにしていない。知事選の論点は辺野古移設だけでないにしろ、「争点隠し」をすることなく、各候補者は自らの主張を有権者に示すべきではないか。


辺野古承認の撤回/不信の対立断つ対話を
 沖縄県は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、前知事が許可した辺野古沿岸部での埋め立ての承認を撤回した。
 撤回によって、移設工事は即時に止まるため、政府は効力停止の申し立てなど法的な対抗措置を取る方針だ。政府と県は再び法廷闘争に入る。
 撤回の方針は、8月に急逝した翁長雄志知事が亡くなる直前の7月末に表明していた。後継を決める県知事選は9月30日に投開票される。辺野古移設の是非がやはり最大の争点となろう。
 承認の撤回は、本来ならば選挙後に新しい知事が判断すべきだろう。だが、政府は埋め立ての土砂投入を8月17日に行うと通知。荒天を理由に延期したが、投入に踏み切る構えは崩していない。
 埋め立て海域の原状回復が不可能となる土砂の投入を止めるには、投入前に撤回する必要があった。政府と県が相手の出方に不信感を募らせた結果の事態と言えよう。
 県知事選は、翁長氏の後継として辺野古移設反対を訴える自由党衆院議員の玉城デニー氏と、安倍政権が支援する前宜野湾市長、佐喜真淳氏との事実上の一騎打ちとなる。激しい選挙戦が想定され、どちらが当選してもしこりが残るだろう。
 安全保障政策は国の専管事項だとしても、県民を分断する形で基地建設を進めていいのか。不信の対立を断つには安保政策上、辺野古移設が本当に必要なのかを再検証し、政府と県が改めて対話を重ねるべきだ。打開の道を探るよう、政府に求めたい。
 沖縄県は、翁長氏の方針表明後、防衛省沖縄防衛局から聴聞を行い報告書をまとめた。謝花喜一郎副知事は、防衛局の工事に違反行為があり、行政指導をしても是正しなかったと指摘。「違法状態を放置できないとの行政の原理の観点」から判断したと説明した。
 防衛局は再反論の機会を求めるとともに、知事選後まで撤回を延期するよう要請していたが、土砂投入の構えを取り続けたのでは県の不信を解くことはできまい。
 知事選に出馬を表明した玉城氏は「翁長氏の遺志を引き継ぐ」と強調、県による承認撤回も支持するとしている。保守と革新の壁を越えた「オール沖縄」の枠組みをアピールするが、立憲民主や共産、社民など野党各党が支援する態勢は革新色が強くなるだろう。元々自民党幹部だった翁長氏のように、保守層の支持を得られるかが課題だ。
 普天間飛行場のある宜野湾市の市長を務めた佐喜真氏は、自民党と日本維新の会に加え、前回知事選は自主投票だった公明党が推薦する態勢だ。「普天間飛行場の危険性除去と早期返還」を訴え、国との関係改善を主張する。ただ辺野古移設への賛否は明確にしていない。「争点隠し」の戦略ではないか。
 普天間飛行場について政府は、2019年2月までの運用停止を県に約束している。早期返還は県民の一致した要求で、その先の辺野古移設への賛否を明確にすべきだ。
 選挙戦で、与野党は国政選挙並みの支援態勢を取る構えだ。だが問われるのは沖縄の将来像をどう描くのかである。何よりも尊重すべきは県民の選択であり、各党には節度ある対応を求めたい。


公文書巡る指示 経産省の「保身」が透ける
 政策決定過程を残すことこそ公文書の役割だ。それに逆行する指示は到底許されない。役所の「保身」が透けるようだ。
 経済産業省が3月、政治家らと折衝した際の記録の作成時に「議事録のように個別の発言まで記録する必要はない」と職員に指示していた。
 政府は森友学園を巡る財務省の決裁文書改ざんや陸上自衛隊イラク派遣部隊の日報発見を受け、公文書管理の新たなガイドラインを策定した。
 経産省はこれに沿って省内規則を改正し、説明用の内部文書も作った。
 内部文書には「記録はいつ、誰と、何の打ち合わせ」をしたかが「分かれば良い」とした表現があり、配布当日の文書廃棄を求める記述もあったという。
 記録は最小限にとどめなさいと促しているようだ。文書をすぐに廃棄するよう求めたことと合わせ、疑問ばかりが膨らむ指示である。
 野党からは批判の声が上がっている。当然だろう。このところ安倍政権下で相次いだ公文書を巡る不祥事への反省がうかがえないからである。
 新ガイドラインは、政策立案などに影響する省内外との「打ち合わせ記録」を行政文書として扱い、情報公開の対象にすることとした。
 だが「個別の発言まで記録する必要はない」と定めれば、内容は薄くならざるを得まい。第三者が見た時、政策決定の経緯を十分に検証できる文書になるとは思えない。
 森友、加計学園問題やイラク日報隠蔽(いんぺい)問題では、ずさんな公文書管理が明らかになり、行政の姿勢が厳しく問われた。課せられた国民への責務を放棄していたに等しいからだ。
 公文書管理法1条は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」と、公文書を規定する。公文書はいまの国民だけでなく、後世に伝えるべき歴史資料でもある。
 今回の経産省の指示は、こうした公文書の本質的価値をないがしろにするものに見える。
 さらに、詳細な記述を避けることで不都合を回避しようとでもするかのような「自己保身」の意図さえ感じられる。
 公文書管理の不祥事を受けて7月に政府が決めた再発防止策では、文書管理の監視体制強化や悪質事案に対する処分の厳罰化などが打ち出された。
 これらによって、逆に職員が文書を作成しなくなり「個人資料」として行政文書に登録しなくなるのではないかといった懸念が上がっていた。
 経産省の指示は再発防止策の決定前とはいえ、そうした議論とも符合しているようだ。
 菅義偉官房長官は経産省の対応について「公文書管理法を逸脱することはない」との認識を示したが、甘すぎよう。
 不祥事防止のためのガイドラインや再発防止策が、省庁による新たな隠蔽につながっては本末転倒だ。強い危機感を持ち、政府全体を徹底的にチェックしてもらいたい。