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炭酸200502-2

Après des inondations dévastatrices au Japon, 450.000 personnes contraintes d'évacuer
La saison des pluies au Japon a débuté. Les fortes pluies provoquant des inondations et des glissements de terrain ont déjà fait une soixantaine de morts.
Services de secours et soldats au Japon s’efforçaient jeudi 9 juillet d’accéder à des milliers de foyers isolés par des inondations dévastatrices et des glissements de terrain ayant fait au moins une soixantaine de morts et provoqué d’importants dégâts depuis samedi 7 juillet, comme vous pouvez le voir dans la vidéo ci-dessus.
L’agence japonaise chargée des situations d’urgence indiquait jeudi matin que plus de 3000 habitations étaient ainsi coupées du monde, soit par la montée des eaux soit par des glissements de terrain ayant détruit des routes.
Ils se trouvaient pour la plupart dans la région de Kumamoto, dans le sud-ouest de l’archipel, ou de nouvelles pluies étaient attendues.
Une soixantaine de personnes décédées
Des pluies diluviennes se sont abattues sur le Japon en commençant samedi 7 juillet par le sud-ouest puis le centre de l’archipel, déversant des quantités record d’eau qui ont fait sortir rivières et fleuves de leur lit.
“Les précipitations abondantes devraient se poursuivre” jusqu’à dimanche dans de larges zones du pays, a annoncé l’Agence de météorologie japonaise (JMA), en appelant à “une extrême vigilance” face aux risques d’inondations et de glissements de terrain. Elle a émis son deuxième niveau le plus élevé d’ordre d’évacuation pour plus de 450.000 personnes. De tels “ordres” sont toutefois sans caractère obligatoire de par la loi japonaise.
Le porte-parole du gouvernement Yoshihide Suga a confirmé jeudi la mort de 58 personnes, essentiellement dans l’île de Kyushu (sud-ouest), et indiqué que quatre autres se trouvaient en état d’arrêt cardio-respiratoire, un terme utilisé au Japon avant la confirmation d’un décès par un médecin.
Les autorités vérifiaient par ailleurs si quatre autres décès constatés étaient liés ou non aux intempéries, et 17 personnes étaient toujours portées disparues.
Le Covid-19 complique la tache des secours
Dans le centre montagneux du pays, près de 4.000 personnes étaient bloquées après des pluies record mercredi qui ont fait déborder une grande rivière de la région, selon un responsable local interrogé par l’AFP.
La pandémie de coronavirus complique la tâche des secouristes. Le Japon compte moins de 1000 décès dus à la maladie Covid-19 pour 20.000 cas répertoriés depuis le début de la crise sanitaire.
La nécessité de maintenir une distance entre personnes réduit les capacités des refuges prévus en cas de catastrophe naturelle et beaucoup ont préféré s’abriter dans leur véhicule par peur d’être infectés. Selon un responsable des secours cité par la chaîne de télévision publique NHK, le coronavirus pourrait aussi avoir dissuadé les gens de se porter volontaires pour venir en aide aux sinistrés.
Le Japon est en pleine saison des pluies, souvent marquée pendant plusieurs semaines par des inondations et des glissements de terrain dévastateurs.
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巨人の星 「落日の悲しみ」
二軍キャンプ、紅白戦、飛雄馬は美奈の病状が心配で、試合に集中出来ない。マウンド上の飛雄馬は、今にも命の炎を消すかもしれない想い人に語りかける。『手早く片付けて、すぐに行くから…』飛雄馬の大リーグボールは、相手打者を次々と打ち取って行く。 星飛雄馬:古谷徹 星一徹:加藤精三 星明子:白石冬美 花形満:井上真樹夫 伴宙太:八奈見乗児 左門豊作:兼本新吾 ほか
【連続テレビ小説】エール(10)「運命のかぐや姫」関内吟(松井玲奈)
先行きが不透明な馬具店と取引しようとする業者はほとんどなく、関内家は事業継続のピンチを迎える。それでも明るくふるまう光子(薬師丸ひろ子)だったが、心配した三姉妹は知恵をだしあって、あるものを見つけ出す。一方、学校では音(清水香帆)の学芸会が近づいていた。明るく練習する音とは対照的に、かぐや姫を演じる良子(田中里念)はなぜかうかない顔。良子は学芸会当日、思いもよらぬことを言うのだが…。 窪田正孝,清水香帆,本間叶愛,新津ちせ,田中里念,吉原光夫,篠原ゆき子,平田満,薬師丸ひろ子, 津田健次郎 瀬川英史
まる得マガジン 攻めのフリージング術(8)「冷凍フルコース」
冷凍庫、活用していますか?調理が簡単になる冷凍方法や、凍らせることにより、よりおいしく食べられたり、意外な新触感を生む方法、さらに、冷凍がそのまま味付けの工程になる方法など、驚きのアイデアの数々を紹介。 冷凍食品開発コンサルタント…西川剛史, 藤本美貴, 有馬ゆみこ
山崎 雅弘@mas__yamazaki
「安倍首相や小池都知事は『やってる感』ばかり」という批判を見るが、報道サイドが下僕のような「垂れ流しの広報」に疑問を抱かなくなったのだから、そうなるのは当然だろう。発言の事後検証もやらないのだから、言ったら言いっ放しでもOK。「やってる感政治」も「ウソ政治」も支えるのはメディア。
m TAKANO@mt3678mt
紋切り型の言葉で謝罪したフリをする安倍首相。「責任を痛感」している人間は「責任を痛感」などとは口にせず、責任を取ることで痛感していることを証明する。説明責任を果たそうとする人間は、党に説明責任を丸投げしたりしない。首相がいかに不誠実であるかが丸見えである。
盛田隆二Morita Ryuji@product1954
安倍首相は「国民におわび」する前に下記について説明すべき。説明できないなら辞職しかない
_楼罎麓鸛蠅ら渡された1億5000万の一部を買収に使った
安倍首相の秘書5人が県に入り、溝手議員を応援する企業や県議らに「安倍」の名刺を渡し「案里の応援」を依頼して回った

東京新聞政治部@tokyoseijibu
都民は困惑です。小池都知事は他県への外出を「遠慮」するよう呼び掛け、政府側は自粛要請は不要だと。緊急事態宣言が解除された現状では、政府にも知事にも住民の移動を制限する法的根拠はありません #新型コロナ
デルクールP (−x−)@delecour
発熱したらコロナ対応病院だろうが開業医だろうが内科を一切受診できない状態がずっと続いてますよね。発熱の原因を診断する仕事こそ内科医の本分なのに。積極検査すればその状態は緩和できるはずなのに、もどかしい限りです。
憲法かえるのやだネット長野@yadanetnagano
西村さんや百合子さんの「感染者数が増えているのは検査数を増やしているから、だから心配ない」の路線は、そろそろ破綻してきたな。それにしてもPMの姿が見えぬ。
大島堅一@kenichioshima
このまま感染状況を無視して政府と東京都が特攻していくと、アメリカ・ブラジルと同じく、世界の物笑いの種、どころか批判の対象となるんじゃないでしょうか。心を入れ替えて、自分の責任なんだとおもって真面目に対策してください。
Koichi Kawakami@koichi_kawakami
児玉先生「重症化、軽症のまま、はIgMが上がる、上がらないと相関」興味深い。
「新宿エリアは徹底的にPCR検査すべき。感染症研と国立国際医療センターがあってできないはずがない」その通りです。

青木美希@aokiaoki1111
「事故前の10倍の量のトリチウムを、30〜40年流すということだ」
政府は、福島第一原発の処理済み汚染水を海に流す方向で進めているように見えます。政府の小委員会の委員を務めた福島大教授が、問題点を指摘しました。
来週15日が政府の意見募集の締め切りです。
どうぞ声を。


熊本の朝鮮飴食べるときに,片栗粉をこぼしてしまいました.
雨ざあざあなのでカッパを着て出勤.
メールで採血失敗って.どういうこと?
お昼から赤ワイン飲んでしまって疲れました.

藤崎本館建て替えへ 一番町3丁目再開発始動
 仙台市青葉区一番町3丁目の地権者でつくる「一番町三丁目おおまち南地区再開発推進協議会」は8日、藤崎本館の建て替えを含む市街地再開発に向け、具体的な計画を作る事業協力者の募集を始めた。市中心部で進む再開発事業で最大となる約1万7000平方メートルに商業・業務・複合交流拠点の整備を目指す大型計画が始動する。
 再開発区域は青葉通沿いで、藤崎のファーストタワー館、大町館、一番町館は含まない。区域内はビル約20棟を抱え、地権者は16人。協議会は3月30日に設立され、会長には藤崎の藤〓三郎助社長が就いた。区域内には築50年以上の老朽化した建物が複数あり、2018年8月から再開発に向けた勉強会を開いていた。
 事業協力者は単独のゼネコンに限定する。29日に応募を締め切った上で8月20日まで提案書を募り、9月に決定する。拠点整備の具体的な計画を作成した後、施工事業者を改めて募集する。協議会は今後3年をめどに再開発準備組合を設立する予定。
 藤崎は1963年、現在の本館の大部分となる鉄筋コンクリートの建物を建設。増改築や耐震工事を実施し、現在は地上8階、地下3階で延べ床面積3万6900平方メートル、売り場面積2万5000平方メートルとなっている。
 昨年200周年を迎えた藤崎の2020年2月期の売上高は20年前に比べ12.0%減少。ネット通販の拡大で衣料品を中心に伸び悩み、消費税増税、新型コロナウイルスによる客足減も重なり逆風が続く。
 関係者によると、藤崎が単独での建て替えを選択しなかったのは、周辺地域との一体開発で仮店舗などの代替機能を確保し、新店舗建設期間中も営業を続ける狙いがあるとみられる。
 藤崎は取材に対し、「事業者選定に差し支えるのでコメントは控える」と明言を避けた。藤〓社長は昨年12月、本館建て替えについて河北新報社の取材に「売り場面積は現在の4館合計約3万2000平方メートルから2万平方メートル規模になるイメージ」と語っている。
(注)〓は崎の本字


仙台市立小、家庭用エアコン工事急ピッチ 20日まで完了目指す
 仙台市立小学校で家庭用ルームエアコンの取り付け工事が急ピッチで進んでいる。業務用エアコンが未設置の36校が対象で、市教委によると8日時点で6校が完了した。20日までに残る30校への配備を終える計画で、担当者は「何が何でも間に合わせたい」と話す。
 青葉区の大沢小(児童262人)は6日に設置工事が始まった。8日までの3日間、放課後に請負業者が3時間ほど作業し、8教室に1台ずつ取り付けた。9日から早速、稼働させる。
 エアコンは17畳用。教室は広さが36畳程度あり、1台では冷房能力が足りない。同小は窓側中央にエアコンを設置し、その真下に壁掛け式の扇風機を移設。エアコンの冷気を扇風機で循環させ、暑さをしのぐ。
 菅原孝代校長は「本校は近くの沢から湿気を含んだ風が吹いてくる場所にあり、夏は過ごしにくい。家庭用エアコンの配備で、学習環境が改善されることを期待している」と話す。
 市教委によると、市立小119校のうち、27日までに業務用の設置が完了するのは82校(68.9%)にとどまる。今年は夏休みを短縮し、真夏に授業日を設定するため、泉区の根白石小を除く36校に家庭用を1教室に1台ずつ配備する。
 根白石小は市内唯一の木造校舎で建物の強度に問題があり、移動式冷風機と業務用の扇風機を導入する。
 市教委学校施設課の渡辺裕生課長は「20日までに完了するように土日も作業している」と理解を求める。


青森ねぶた代替イベント 市民限定で8月開催
 青森ねぶた祭実行委員会は8月7日、新型コロナウイルスの影響で中止が決まった青森ねぶた祭の代替イベント「青森市民ナヌカ日ねぶた」を開催する。入場者を市民に限定し、観光施設「ねぶたの家 ワ・ラッセ」に展示されている大型ねぶた3台を青い海公園に設置。最大40店の露店が出店し、はやしの演奏も用意する。
 午後4時半からと、6時45分からの2部構成。ソーシャル・ディスタンス(社会的距離)に配慮し、入場者を各2000人に制限する。入り口で検温を行い、マスク着用を要請する。跳ねる行為はしないよう呼び掛ける。
 会場の様子は青森ねぶた祭公式サイトでライブ配信するほか、市役所本庁舎駐車場でパブリックビューイングを実施する。
 応募は10日から受け付け、30日以降に当選者へ通知する。入場希望者は公式サイトや市ホームページの応募フォームなどから申し込む。1組4人まで。事務局担当者は「ねぶたのない夏にショックを受ける市民のため、今できる最大限の工夫を施す」と話した。
 イベント名は、ねぶたを海に流し、けがれを払う祭りの最終日「7日」から付けた。


河北抄
 「熊本県」とプリントされた黄色いビブス姿の女性たちが神々しく見えた。震災の爪痕がまだ生々しい頃、宮城県南三陸町の避難所で見かけた保健師たちだ。
 東日本大震災から間もなく9年4カ月。今も全国各地から大勢の応援職員が東北の被災地に駆け付け、縁の下の力持ちとして尽力してくれている。豪雨に見舞われた九州からも来ているという。
 古里の惨状を伝えるニュースに、胸がつぶれる思いで接していることだろう。幸い熊本県と鹿児島県から宮城県に来てくれた応援職員の家族や自宅は無事と知り、安堵(あんど)する。
 応援職員は当時、罹災(りさい)証明書の発行窓口も担った。「遠くからありがとう」。被災者の発した一言が、殺気立つ周囲の空気を一変させたとのエピソードを思い出す。
 九州の天気を見ると、しばらく雨が続くようだ。私たちに手を差し伸べてくれた人たちの苦境を思う。コロナ禍でボランティアも県内限定という。雨よ、無情の雨よ。「早くやんで」としか今は祈れぬわが身がもどかしい。


九州豪雨で東北整備局、職員16人派遣
 九州で猛烈な雨が降り、河川が氾濫するなど被害が拡大する状況を受け、東北地方整備局は8日、緊急災害対策派遣隊(テックフォース)として職員16人を現地に派遣した。活動は1週間程度の予定。9日にも4人を追加派遣する。
 九州地方整備局(福岡市)で被災地の情報を収集し、他の整備局と連携して活動。被害状況の現地調査、車両の緊急ルートを確保する作業に当たる予定。
 仙台市青葉区の東北地方整備局で出発式があり、佐藤克英局長は「新型コロナウイルスの感染対策にも取り組みながら、しっかりと成果を出してほしい」と激励した。
 隊長の亀井督悦(まさよし)震災対策調整官は「被災者の安心な暮らしを取り戻すため、これまで培った技術、知識、経験を生かしたい」と抱負を述べた。


豪雨広がる 命を守る特別警報に
 九州で大被害を出した豪雨が岐阜、長野両県なども襲った。大雨特別警報が複数の自治体に出たが、気象庁は「発令後の避難は手遅れ」とも言う。特別警報の位置付けが分かりにくいのではないか。
 警報より厳しい特別警報は、二〇一三年に始まった。「大雨」「高潮」など九種類あり、「大雨」の基準は「数十年に一度の降水量が予想される場合」となっている。一八年の西日本豪雨や一九年の台風19号災害などで発令された。
 気象庁のホームページ(HP)によると、東日本大震災の際、危険性の高さが十分に伝わらず、住民の迅速な避難に結びつかなかったことへの反省から生まれたという。「重大な災害の起こる恐れが著しく大きい旨を警告する防災情報だ」としている。
 しかし、一方で同庁は、今回の豪雨に際しての会見でも「特別警報が出てからの避難は手遅れとなる。発表を待つことなく市町村の避難勧告などにただちに従ってほしい」と呼び掛けている。
 昨年の台風19号災害では長野市の千曲川など全国八河川で大雨特別警報が解除された後に氾濫発生情報が出た。国土交通省は「(大雨特別警報の)“解除”が、“安心情報”と誤解された可能性がある」として、「解除」を「切り替え」という言い回しに変更した。
 大同大の鷲見哲也教授(流域水文学)は「一段上の特別警報を新設すれば、それまで一番上だった警報は、住民に注意報のように思われてしまうかもしれない」と指摘する。
 国は昨年、水害時に住民が取るべき行動を直感的に理解できるように、五段階の「警戒レベル」の運用を始めた。「大雨特別警報」は最も高い「5相当」。しかし、高潮特別警報は「4相当」で、台風などによる大雨特別警報(土砂災害)は「3相当」になっているなど、同じ「特別警報」ながらレベルが異なる点も分かりにくさが指摘される。
 市町村が出す避難勧告や避難指示は「レベル4」で、大雨特別警報より一段階低い。
 鷲見教授は「大雨特別警報は、降水量などの『ステータス(状態)』を示す指標で、避難の『基準』ではない」と話す。
 災害時に最優先されるのは、迅速な避難である。しかし一般市民に「(避難指示の上にある)特別警報が出ていなければ大丈夫」と誤解される恐れがある面は否定できない。何より大事なのは、分かりやすさであろう。


高齢者の災害死 早め早めの避難が肝心だ
 確かに未曽有の豪雨だった。それでも、救う手だてはなかったものか。多くの高齢者の痛ましい災害死に、どうしてもそんな思いがこみ上げてくる。
 熊本県南部を襲った豪雨により、球磨村では特別養護老人ホーム「千寿園」が水没し、14人が亡くなった。
 氾濫した川の濁流が押し寄せたのは4日早朝という。施設職員と地元住民らが力を合わせ、入所のお年寄りたちを2階に避難させたが、全員を救うことはできなかった。
 この施設がある地域は最大で深さ10〜20メートルの浸水が想定されていた。このため施設は法定の避難計画を策定し、訓練も実施していたという。
 気象庁も「予測困難だった」という突発的大雨で、球磨川とその支流の水位は4日未明から一気に上昇した。施設職員も驚いたはずだ。一方で、村は3日夕には、5段階の警戒レベルの「3」に当たる「避難準備・高齢者等避難開始」を発令していたという経緯もある。
 今回の被災に至った状況がまだよく分からない現時点で、施設の対応の是非を軽々に判断することは慎むべきだ。ただ、これだけ多数のお年寄りが命を落とした事実はやはり重い。事実関係を検証して教訓をくみ取ることは、亡くなった方々への責務でもあると指摘したい。
 大きな自然災害が高齢者施設に甚大な被害をもたらす例はこれまでもあった。2009年には山口県の特別養護老人ホームに土砂が流れ込み、7人が死亡した。16年は岩手県のグループホームが氾濫した川の濁流にのまれ、9人が亡くなった。
 翌17年に改正水防法が施行され、浸水が想定される高齢者施設などに避難計画策定が義務付けられたものの、実際の策定率は低迷している。施設運営者は危機感を高める必要がある。
 河川の近くや山間部といった自然災害の危険エリアに立つ高齢者施設も少なくない。
 6月に成立した改正都市計画法で、災害危険区域などに病院や社会福祉施設の建設は原則禁止された。国はこうした施設の移転も支援するが、大規模施設だとハードルは高い。移転促進に一段と力を入れてほしい。
 加えて、防災上エレベーター増設や改築が必要な施設への補助金も充実させるべきだ。
 今回の豪雨による犠牲者には独居や病弱、高齢夫婦だけで暮らすといった「災害弱者」の高齢者が数多く含まれる。
 高齢者施設や病院は避難の手順を確認し、早め早めに行動に移ることが肝心だ。市町村や自治会は地域の災害弱者などに目を配り、犠牲者を一人でも減らす努力を重ねてほしい。


豪雨被害 早めの避難で命を守ろう
 繰り返される悲惨な状況に心が痛む。自然災害のすさまじさを改めて突き付けられた思いがする。
 熊本県南部を襲った記録的な豪雨は、河川の氾濫や土砂災害などで多くの犠牲者・行方不明者を出した。その後も九州北部をはじめ各地に被害が広がる状況を呈している。引き続き警戒を強めなければならない。
 こうした事態に、政府は九州の豪雨被害に対処する自衛隊の派遣規模を1万人態勢から2万人態勢に拡大。支援物資の発送では当面、被災自治体の要請を待たずに必要な物資を届ける「プッシュ型支援」を軸に進めるという。国は自治体と連携し、行方不明者の捜索や被災者の支援に全力を挙げてほしい。
 豪雨をもたらしたのは、積乱雲が帯状に連なる「線状降水帯」とされる。局地的に大雨が続くため被害が大きくなる。加えて発生予測が技術的に難しい。2017年の九州北部豪雨や、18年の西日本豪雨も同様だ。もはや常態化しているとの認識で、国土づくりも含めた防災体制を検討しなければならない。
 豪雨は、災害弱者問題も浮かび上がらせた。熊本県球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」では、職員や地元の協力者が入所者を2階に避難させた。だが、エレベーターが無い上に、車いすや寝たきりの人が多いため間に合わず、14人が犠牲になった。
 同園では避難計画を策定して地元協力者も交えた訓練も行っていたと言う。球磨村も防災意識は高かったようだ。それでも痛ましい状況になった。検証で問題点を洗い出し、改善を図ってほしい。
 今回の特徴の一つは、新型コロナウイルスの感染が懸念される段階での避難という点にある。不特定多数の被災者が身を寄せる避難所は密閉、密集、密接の「3密」が起きやすい。感染を防ぐため検温や消毒、換気などはもちろん、人と人の間隔を広げる。さらには発熱者の専用スペースの確保も必要になろう。
 このため、1カ所当たりの収容人数が大幅に制限される。地域に必要な数の避難所を確保できているか。その内容はどうかなどが気になる。
 災害に見舞われたら、何よりも早めに避難するなど自らの命を守る行動を起こすことが肝要だ。親戚や知人の家への避難や、外に出るのが危険なら自宅での“垂直避難”など柔軟な判断も必要だろう。
 被災地では、家屋の後片付けなど重労働が待ち受ける。高齢者だけの世帯もあり、多くの手助けが必要となる。頼みの綱はボランティアだが、コロナ感染の懸念から熊本では当面、県内募集に限定する方針とされる。感染防止と支援活動をどう両立できるかが喫緊の課題と言えよう。
 専門家は、今回と同様の豪雨災害は「どこで起きても不思議ではない」と指摘する。改めて防災と自己を守る意識を高めたい。


豪雨被害拡大 全容把握と避難者の支援が急務
 豪雨による被害は熊本県南部から九州全域へ広がった。広い範囲で記録的な大雨になり河川が氾濫し、浸水被害や土砂災害などが相次ぐ。犠牲者は熊本、福岡両県で計50人を超え、心肺停止や行方不明者も多数出ている。さらに、九州と本州を縦断するように停滞する梅雨前線の影響で大雨の範囲が広がり、岐阜や長野両県などで被害が拡大している。
 政府や自治体は救助や捜索、被害の全容把握とともに、避難住民や孤立した集落への支援を急がねばならない。今後も再び大雨になる恐れがあり、土砂災害などへの警戒を引き続き強める必要がある。
 政府は今回の豪雨を激甚災害に指定する見通し。また、運転免許証の有効期間延長など特例措置が適用できる特定非常災害にも指定する方針だ。被災自治体が財政上安心して復旧に取り組めるよう態勢をつくらねばならない。自治体の要請を待たずに必要な物資を届ける「プッシュ型支援」で、段ボールベッドや体温計などを熊本県に手配した。刻々と変わる現場のニーズにも柔軟に対応したい。
 住居が浸水するなどした被災者は避難生活を強いられる。避難所では「3密」回避など新型コロナウイルス感染対策とともに、熱中症予防など暑さ対策が必要だ。新型コロナの影響は復旧作業でも懸念される。高齢世帯も多く、家屋の被害では泥のかき出しや片付けなどで多くの人手が必要になる。しかしコロナ感染への懸念から甚大な被害のあった熊本県内では当面、ボランティアは県内在住者のみとする方針だ。コロナ対策をしながら被災者の負担をいかに軽減するか。知恵を絞らなければならない。
 今回、気象庁は相次いで各地に大雨特別警報を出した。前線が居座り、局地的に猛烈な雨をもたらす「線状降水帯」が次々と形成されたとみられ、長期の大雨となった。「数十年に1度の大雨」が頻繁に発生していることを強く危惧する。経験のない水害で、従来の河川の排水機能では追いつかない状況がみられ、検証が必要だ。山沿いなど土砂が流れ込みやすい地域、川沿いで洪水や浸水が起きやすい地域では、ためらわずに避難することが欠かせない。
 線状降水帯の大きさは長さ50〜300キロ、幅20〜50キロ程度とされるが、気象庁は発生予測は難しいとしている。ただ地球温暖化などで被害は増加傾向にあり、対策は待ったなしだ。予測精度を上げる技術を早期に確立してほしい。
 愛媛県内でも広い範囲に避難指示や土砂災害警戒情報が出され、西条市では増水した水路で見つかった男性の死亡が確認された。西日本豪雨から2年。教訓を生かし、命を守る行動につなげたかどうか。自治体や住民一人一人が点検し、備えなければならない。大雨で地盤は緩んでおり、早め早めに行動することを改めて肝に銘じたい。


英、「消費税」20%→5%に 飲食店など対象、半年限定 15日から
 英国のスナク財務相は8日、飲食店など新型コロナウイルスの影響が大きい業種を対象に、付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)を現行の20%から5%に引き下げると発表した。同日発表した総額300億ポンド(約4兆円)の追加経済対策の一環。
 英国では飲食店や劇場などが4日に再開したが、客足の戻りが鈍いため、減税によって消費を促し、雇用維持につなげる狙い。15日から来年1月まで半年間の期間限定。減税規模は41億ポンドを見込む。
 新型コロナを受け、ドイツも1日から年末までの期間限定で、VATを19%から16%に引き下げた。食料品などを対象にした軽減税率も7%から5%にした。【ロンドン横山三加子】


コロナ禍と分権改革/地方を感染防止の司令塔に
 難敵に立ち向かうべき時に陣形が乱れていては、はなから勝負にならない。「ワンチーム」の真価が最も発揮されるのは危機においてだろう。ところが、新型コロナウイルス対策をめぐって国−地方の間にさまざまな齟齬(そご)が生じ、先行きに不安を残している。
 背景にあるのは権限や財源を大胆に地方に移す分権改革の不徹底だ。地域の実情をよく知り、機動力に勝る現場の知事の方が感染対策でも着実に実績を積み重ねている。中央集権にしがみつく弊害を改めない限り第2波、第3波の襲来に打ち勝つことなどできない。
 「社長かなと思っていたら(国から)天の声が聞こえ、中間管理職になったよう」。安倍晋三首相が4月7日に初めて緊急事態宣言を出した後、小池百合子東京都知事が記者会見で述べた不満が両者の溝を端的に表していた。
 新型コロナウイルス特別措置法では緊急事態の下、外出自粛や休業の要請は知事が権限を持つと明記されている。だが、国は首相が知事に対し「総合調整することができる」とする対処方針を根拠に「まずは住民に外出自粛を求め、休業要請については国と協議し実施する」との考え方を唐突に示した。
 当時、都内では感染者が急増、外出自粛にとどまらず休業要請に踏み切らざるを得ない緊迫した状況にあった。一刻を争う時に、政府からかかった「待った」の声。結局、都は国との間で数日間の調整を強いられた。
 累計感染者が7000人を超す東京都とゼロの岩手県。国主導の一律の感染防止策が意味をなさないのは自明なはずなのに、国は緊急時でも平時同様の「お墨付き」を与えることにこだわる。小池知事の「中間管理職」発言は、そんな理不尽な支配−被支配関係に対する皮肉だった。
 内閣府がこのほどまとめた今年の地方分権改革に関する自治体からの提案でも、兵庫県が特措法の見直しに言及。知事判断による迅速な対応を可能にするため、事前協議の廃止を求めた。
 国と地方の関係を対等とする地方分権一括法が施行されて20年。国から地方への事務権限の移譲や義務付け緩和は一定程度進んだが、現状は不十分だ。第2次安倍政権以降の分権改革は制度の運用改善にとどまるケースが多く、地方の主体性発揮につながっていない。
 今年の内閣府への提案で、長野県須坂市などは幼児教育・保育の無償化に伴い保育所の入所希望者が増えているとして、保育室の面積基準の緩和を求めた。無償化というアクセルをふかしておきながら、現場には基準というブレーキを踏ませるちぐはぐな対応で不利益を被るのは自治体職員と地域住民だ。
 「住民本位」を目指すべき地方分権改革の本旨がコロナ禍でますます問われている。


東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望! コロナで病院経営悪化も安倍政権は対策打たず加藤厚労相は “融資でしのげ”
 東京都を中心に新型コロナの新規感染者数が増加するなか、ネット上ではある医療機関の対応に注目が集まっている。東京女子医大で夏のボーナス(夏季一時金)を支給しないと労組に回答し、看護師約400人が退職を希望していると言われている問題だ。
 400人という数は全職員の2割を超えるとんでもない数字だ。しかし、東京女子医大組合連合が発行する「組合だより」(2020/6/29)によると、それでも病院側には危機感はなく「深刻だとは思うが、足りなければ補充するしかない」「今後の患者数の推移を見ながら、足りなければ補充すれば良いこと」「このままの財政状況が続けば、冬の賞与も出せない」と回答しているという。
 この「足りなければ補充すればいい」という東京女子医大側の言い草に対し、SNS上では〈しょせん看護師は金で雇えば良いと思ってる ディスポ(使い捨て)みたいな扱いだよ〉〈コロナで普段よりも忙しいうえに、院内感染が起れば世間から袋叩き そのうえ、ボーナスカットって言われたら、続ける方が難しい〉と批判が巻き起こっているのだ。
 さらに、新型コロナに対応してきた看護師がボーナスカットされるという事態に対しては、政府の責任を問う声もあがり、多くの賛同が寄せられている。
〈逮捕された国会議員にボーナスが支給されて、コロナで頑張った看護師さんのボーナスが全額カットされるってどういうことですか?〉
〈バカげたGoToキャンペーンに出す1.7兆円があったら、医療機関に回せ。〉
 東京女子医大の場合は大学当局側の対応にも問題があるが、しかし、医療機関が経営的に切迫しているという問題は東京女子医大にかぎったものではない。新型コロナの患者を受け入れた病院も、そうではない病院も、いま多くの医療機関が深刻な経営悪化の状態に追い込まれているからだ。
 というのも、新型コロナの拡大を受けて感染を恐れて外来・入院患者が減った上、病院にとって大きな収入源となっている手術も減少。実際、日本病院会と全日本病院協会、日本医療法人協会が6月5日に発表した「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(追加報告)」によると、今年4月のコロナ患者を受け入れた病院の医業利益の赤字割合は78.2%、受け入れなしの病院で62.3%、一時閉鎖した病院では79.4%にものぼっている。
 このような赤字がつづけば、ボーナスカットはもちろんのこと、廃業に追い込まれる病院が出てくることは必至。政府はコロナ患者受け入れに対して診療報酬を増やしたり、確保した空き病床の補償などをおこなっているが、コロナ患者を受け入れていない病院も打撃を受けている上、現状の支援策だけでは足りないという声が医療現場からもあがっている。たとえば、東京女子医大の問題を取り上げた『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)でも、岡田晴恵・白鴎大学教授は医療機関の現状に対し、「赤字の損失補填を4月にさかのぼってやらないと、国民の病床を確保できないというふうに私は思います。現場の声もそうでございます」とコメントしていた。
 一方、西村康稔・コロナ担当相は現在の感染拡大に対して「数字が基準以上に増えたとしても、医療体制に余裕があれば心配ない」(神戸新聞8日付)などと述べて緊急事態宣言の再指定は必要ないという姿勢をとっているが、このままでは経営悪化によってその医療体制が崩れかねないのだ。
 しかし、この東京女子医大の問題をはじめ医療機関が経営的に切迫している問題をぶつけられても、政府はいまだに対応をとろうとはしていない。
東京女子医大問題は参院厚労委員会で小池晃が追及するも、加藤厚労相は……
 実際、東京女子医大の問題がSNS上で注目を集めるようになったきっかけは、7月2日におこなわれた参院厚労委員会での共産党・小池晃参院議員の質疑だった。このなかで小池議員は「コロナ感染症対策の先頭に立っている病院が、いま危機に瀕しています」として東京女子医大の問題を取り上げ、その上で新型コロナ患者を受け入れた病院のみならず受け入れていない病院も深刻な経営悪化が見られるとして支援が重要だと指摘。さらに、医療機関の医業利益率は4月よりも5月のほうが悪化しているとし、「7月下旬に振り込まれる診療報酬が6月よりもさらに減額となれば、これは資金ショートの危機に直面する。こういう状況に対する対策は用意されているか?」と加藤勝信厚労相を問いただした。
 だが、加藤厚労相は「資金ショートにならないように当面の資金繰りをおこなうため、二次補正予算においては貸付限度額の引き上げ、あるいは無利子・無担保枠の引き上げをおこない、貸付原資として1兆2700億円を確保しており、しっかり融資がおこなわれるようにする」などと答弁。ようするに、“融資でしのげばいい”と述べたのである。
 言うまでもなく、新型コロナ対応の要のひとつは医療体制の拡充だ。にもかかわらず、医療現場はいままさに要の医療を支えるスタッフに対するボーナスカットというあまりに非情な状況にまで追い込まれ、資金ショートによる廃業が懸念されているというのに、「融資を活用しろ」とは……。これで第二波、第三波に備えた盤石な医療体制など築けるわけがない。
 当然、こんな答弁で納得できるはずもないが、ここで小池議員はある提案をおこなった。それは、自民党の新型コロナ対策医療系議員団本部による「第2次補正予算試算案」を実行しよう、ということだった。この試算案において、新型コロナ対策に伴う医療提供体制等への補正予算額として示されているのは、計7兆5213億円だ。
 まず、小池議員は「これはね、なかなかいいことが書いてあるんですよ」と言い、「コロナウイルス患者を受け入れていない医療機関においても減収している。このような背景を踏まえて減収補償、休業補償をおこなう。すべての医療機関の減収を3割と仮定して、そのうち8割を補償する。期間は3月から8月の6カ月」というこの自民党医療系議員団本部の案を紹介。「診療報酬でやるというのは、ちょっと、このあと患者負担も増えますから」と留保をつけた上で、「これは二次補正の予備費の出番じゃないですか」「これやらなきゃ。医療の『持続化給付金』が必要なんですよ」と提言した。
 すると、委員会室には「そうだ、そうだ」という声があがり、すかさず小池議員は「『そうだそうだ』って、自民党(からも声が出た)。だいたいこれ、自民党の提案ですからね!? 自民党の医系議員が言ってて、共産党の私がこれがいいって言ってるんだから、何も怖いものないじゃないですか!」と畳み掛けたのだ。
 しかし、この「怖いものなし」の提案に対しても、加藤厚労相は医療機関への追加対策について、何ら前向きな姿勢は示さなかったのである。
予算委を開催して医療機関問題を議論すべきなのに「総理はお疲れだから休ませてあげないと」
 安倍政権は10兆円という前代未聞の巨額予備費を計上して国会を閉会させた。本来ならば、この医療機関の経営悪化という問題も、国会を開いて継続的に審議されるべき問題だ。いや、現在の感染拡大状況についても、昨日起訴された河井夫妻の選挙買収問題も、予算委員会で集中審議がすぐにおこなわれるべき案件だ。にもかかわらず、安倍自民党の態度は、〈予算委については「総理はお疲れだから休ませてあげないと」(自民の国対関係者)と応じる気配はない〉(朝日新聞9日付)というのだから、開いた口が塞がらない。災害が起こりつづけるなかでも、安倍首相はしっかり毎日私邸へ帰宅しているのに、である。
 経営悪化によって医療従事者がボーナスをカットされ、このままでは病床確保も難しくなる懸念まで出てきているというのに、「総理はお疲れだから休ませてあげないと」などと寝言を言う安倍自民党……。こうした山積した問題を安倍首相が無視しつづけているうちに、4月や5月以上の医療崩壊が訪れる危険性はどんどん高まっていっているのである。


感染恐れ来院患者5割減も…コロナ禍で病院経営は崩壊寸前
 新型コロナウイルスの感染者が再び増加するなか、コロナ関連の経営破綻が全国で309件に達している(7月3日現在東京商工リサーチ調べ)。業種別では緊急事態宣言の発令で来店客が減った飲食業を最多に、インバウンド需要喪失の影響による旅行・宿泊業、百貨店の休業の影響を受けたアパレル関係など個人消費の業種が目立つ。
 しかし、いま懸念されているのが医療施設の経営破綻だ。コロナの感染リスクから来院患者が激減し、赤字経営の施設が急増しているのだ。東京商工リサーチ情報部の松岡政敏課長が言う。
「感染者を受け入れている病院は多忙を極める一方、ほとんどの病院は赤字経営です。感染を恐れて来院患者が激減する病院が多く、スタッフの雇用見直しなど厳しい対応を迫られています。今後、医療施設の経営破綻は避けられないでしょう」
 東京都で勤務、開業する医師が加入している「東京保険医協会」が行った会員医療機関へのアンケート「新型コロナウイルス感染症による医業経営への影響」では、外来患者数、保険診療収入ともに9割超の医療機関が減少し、前年同月に比べ5割以上減少している医療機関は3割に上った。調査は4月に実施されているため、緊急事態宣言の発令、自粛要請による休業で施設の経営はさらに厳しい状況に追い込まれていると考えられる。
 首都圏で内科と耳鼻咽喉科を専門にするクリニック院長がこう証言する。
「うちも4月から保険診療収入は前年比4割減です。都心の場合、看護師や事務員らの人件費や機材といった固定費が高く、収入の半分以上を占めて利益はほとんど出ていません」
■患者数の5割減も
 首都圏の駅直結ビルにあるナビタスクリニックの医師で、医療ガバナンス研究所の上昌広理事長が語る。
「病院の経営は2月までは黒字でしたが、3、4、5月と赤字が続いています。駅中の施設のため自粛要請で駅ビルが閉鎖し患者は5割減、3月以降は毎月3000万円の赤字です。都心で経営している施設ほど自粛を受けやすく、固定費が高いためぎりぎりの経営状態です」
 上氏はコロナの影響で平年より死亡者が増えた東京都の超過死亡者数の増加にも注目する。
「コロナで来院をやめ、ステイホームした高齢者が体調を崩し持病を悪化させて亡くなっている。3、4月は過去最高の超過死亡者数です。東日本大震災の後に全く同じことが福島県南相馬市でも起きている。医療従事者の手配が遅れ医療崩壊した結果です」
 首都圏の医療崩壊に赤信号がともっている。 (ジャーナリスト・木野活明)


コロナ3カ月で抗体減 集団免疫とワクチンは“風前の灯火”か
 新型コロナの抗体は3カ月しかもたない――。こんな研究結果が明らかになった。スペイン保健省が発表した。
 スペイン保健省は、同国の7万人を対象に3カ月にわたって3回の抗体検査を行った。1回目の抗体検査で陽性、つまり体に抗体ができていた被験者のうち14%は3回目で陰性となった。抗体は3カ月で減少することが判明したのだ。
 中国の重慶医科大学などの研究チームも6月半ば、同様の論文を発表している。それによると、感染後3〜4週間経つと80%の人から抗体が確認された。しかし、いったん抗体が検出された人でも、退院から2カ月後には、症状があった人の96・8%、無症状の人の93・3%は、抗体が減少していた。このことから「コロナ抗体は2、3カ月で激減する」と報じられた。
 新型コロナについては、当初から「集団免疫」が期待されてきた。国民の60%が感染して抗体ができれば、ウイルス感染を無力化できるという考え方だ。スウェーデンなどは集団免疫戦略を取り続け、現在、6%までこぎ着けている。
「今回の結果は重大な意味を持っています」とはハーバード大学院卒で医学博士・作家の左門新氏(元WHO専門委員)だ。
「スウェーデンだけでなく、日本の一部の医師からも集団免疫を期待する声が上がっていました。しかし免疫効果が3カ月しかもたないとなると、はかない夢が打ち砕かれたことになります。抗体が3カ月で消える感染症は、これまで人間の生活の中にほとんどありませんでした」
医師や看護師などの負担も増大
 もっと深刻な問題がある。ワクチン接種だ。現在、日本を含む世界中で100種類以上のワクチンの候補が研究途上にある。だがワクチンも3カ月で効き目を失うかもしれないのだ。
「通常のインフルエンザのワクチンは1回注射すると約6カ月間、効果が持続します。10月に接種すれば翌年の4月まで効くのです。しかし新型コロナは抗体が3カ月しかもたないとすると、たとえば、10月にワクチン接種を受けたら、1月に2度目の接種を受けなければならない可能性が出てきます。費用の負担が増えるし、1度は受けたけど2度目は面倒くさいという人も出てくるでしょう。医師や看護師などの負担も4倍になるので現場が混乱しかねません。ワクチンが予防接種に有効かという疑問の声も上がりそうです」(左門新氏)
 新型コロナは夏になっても消えない。抗体の効き目が3カ月ならば、年間に4回も接種する必要が出てくる。ワクチンが完成しても効果が半減とは絶望的。本当に新型コロナは厄介だ。


西村大臣の露骨な“庶民イジメ” 罰則付きでも休業補償なし
 連日テレビで見ない日はない西村コロナ担当相。その発言に、国民はカンカンだ。
 問題となっているのは、朝日新聞のインタビュー(7日付、電子版)。西村大臣は自粛要請に応じない店舗などについて、「命令、罰則というのも法体系として十分あり得ると考えている」と発言。この先、コロナ対応の特別措置法を改正し、休業要請に罰則を設ける可能性があると明言したのだ。さらに、休業補償について「どの部分を損失とみて補償していくのか、法律上非常に難しい」と言い放った。つまり、「補償しないけど、休業はしてもらう」ということだ。
 8日の衆院内閣委員会でも、野党議員から地域や業種を限定した補償を提案されたのに、「(緊急事態宣言を出した)4月上旬の状況とはかなり違う」の一点張り。意地でもカネだけは出したくないのがミエミエだった。さすがに、ネット上では〈補償なき休業要請やめろ〉〈補償が先だろ〉などの批判が噴出している。
 西村大臣は朝日新聞のインタビューに答えるだけでなく、米紙「ウォールストリート・ジャーナル」(7日付)にも寄稿。「日本はロックダウンしないで、どのようにコロナウイルスを制圧したか」とのタイトルで、“日本スゴイ”と誇っている。連日会見を行い、米紙に勘違い記事まで寄せているのは、ポスト安倍を意識しているからだという。
「西村大臣はポスト安倍に色気を見せているようですが、内閣府内での評判はイマイチです。会見直前でも、会見で使う『パネルを作ろう』とむちゃぶりしているらしい。府内では、『次の総裁選のために目立ちたいのだろう』ともっぱら。振り回される職員はウンザリしているようです」(霞が関関係者)
 自分さえ良ければいい――。安倍政権はこんな連中ばかりだ。


基地内コロナ感染 情報共有し疫学調査を
 米軍普天間飛行場に所属する軍属5人が新型コロナウイルスに感染したことが確認された。県内は8日、沖縄本島中部保健所管内在住の40代男性と、石垣市在住の50代女性の計2人の感染が69日ぶりに確認されている。
 今回感染した軍属について米軍は感染経路、直近の行動などの詳細を明らかにしていない。命にかかわる問題である。感染拡大を防ぐために、米軍は必要な情報を保健所と共有し、日米でただちに疫学調査する必要がある。
 米海兵隊は感染拡大の予防措置として海外から沖縄に入った隊員を14日間隔離している。今回軍属の感染者が、この隔離措置に置かれていたかどうか不明だ。隔離措置をとっていたとしても、不十分だった可能性もある。
 ジョンズ・ホプキンズ大学によると、日本時間7日午後9時現在、米国の感染者数は293万8625人で、死者は13万306人。米軍関係者は感染者が増え続けている米本国と直接往来できる。
 在沖米軍人は、基地内だけでなく3分の1は基地外で生活している。基地内であれば基地従業員との接触、基地外であれば県民と接触している可能性がある。
 日米は2013年、在日米軍と日本国の衛生当局間における情報交換について覚書を交わしている。感染症などが判明した場合、海軍病院と地元の保健所で相互に通報することが定められている。
 専門医が指摘するように「基地のフェンス一つでウイルスは防げない」のである。米軍の公衆衛生当局に迅速な対応を求める。
 一方、米国からの持ち込みでないとすれば、感染の発生は沖縄であり、県外から持ち込まれている可能性もある。
 県は6月19日以降、東京など6都道県からの来県自粛要請を解除している。国内の新規感染者数は4月中旬をピークにいったん減少し、5月25日に緊急事態宣言が全国で解除されたが、6月下旬から再び増加傾向にある。今後も増える恐れがあり、第2波への懸念が高まっている。
 特に東京都は8日、新型コロナウイルスの感染者が新たに75人報告された。都内の感染者数は今月2日に107人に上ってから6日連続で3桁の高水準が続いていた。累計は7千人を超えた。東京から各地への波及も懸念される。
 新型コロナウイルスは、クラスターを形成することで感染が拡大する。特に初期段階でクラスターを制御できれば感染拡大を一定程度制御できるとされる。
 そのために、感染者の過去の行動を調査し、共通の感染源となった場所を見つけ、その場の濃厚接触者を網羅的に把握し、感染拡大を防止する必要がある。
 疫学調査で実態が把握できれば、救急外来の警戒度をどれだけ高めて対応するかなどの策が講じられる。ことは急を要する。


[米軍基地でクラスター]水際対策の抜け道防げ
 ウイルスはフェンスを難なく乗り越える。水際対策に抜け穴があってはならない。
 米軍普天間飛行場で同じ部署に勤務する5人の軍属が新型コロナウイルスに感染した。在沖米軍基地で「クラスター(集団感染)」が発生した初めてのケースである。感染経路は不明としている。 
 基地内に住んでいるのか、いないのか、どのような職種についているのか。任務によっては毎日のように別の基地へも出入りする。
 県内の米軍基地で働く日本人従業員は9千人近い。従業員は、軍関係者と同じフードコートやジム、トイレなどを使用する。感染のリスクはないのか。
 県に軍属が感染したとの連絡があった7日、米軍は具体的な説明なしに、従業員を長時間基地内に留め置いた。従業員だけでなく、周辺住民にも不安が広がった。
 さらに県民が心配するのは、基地の外での感染者の行動が分かっていない点だ。
 在日米海兵隊は6月中旬、コロナに伴う警戒レベルを示す健康保護態勢(HPCON)を、5段階で3番目の「ブラボー」に引き下げた。海兵隊はモノレール、バスの乗車は許可していないが、基地外のレストランでの飲食など、これまでの活動の規制が大幅に緩和された。
 米軍基地から民間地域へウイルスが持ち込まれる懸念が拭えない。
 日本政府や県は、米軍に対して、5人の基地内外での行動履歴を聞き取るなど徹底的な調査を求め、県民に知らせてもらいたい。
■    ■
 県内では、3月下旬に嘉手納基地で2人の兵士と家族1人の感染が確認された。今月2日にもうるま市のキャンプ・マクトリアスの海兵隊員の家族1人の感染が判明。普天間の5人と合わせ米軍関係者の感染者は計9人となった。
 新型コロナウイルスの感染者は8日現在、世界で1182万人、うち299万人が米国だ。米軍関係者の総数は3万人を超え死者も40人に上る。県民の日常生活の隣に「感染大国」があるといってよい。
 だが、米軍関係者は日米地位協定によって、基地を通じて入国する際には、検疫について、定めがない。
 政府は米国を入国制限対象に指定するが、基地内は権限が及ばない。クラスターの感染経路解明のため米軍の協力と情報提供がなければ、感染防止策は実効性に乏しい。県民の命に直接関わる問題だ。日本側の疫学調査も含め米側は積極的に協力すべきだ。
■    ■
 日米両政府は2013年の合同委員会で、感染症が基地内で発生した場合、米軍が通報することで合意している。今回県に連絡があった際、米軍は当初「複数人」としか知らせなかった。行動履歴や濃厚接触者の数などの報告は、いまだにない。
 政府は新設した感染症対策分科会で、水際対策の徹底を対策の柱とする考えを示している。
 最終的には日米地位協定の改正が必要だが、政府は日米合意による情報開示の徹底を米側に強く求めるべきだ。


新型コロナ分科会 幅広い視点から提言を
 新型コロナウイルス対策の政府専門家会議の後継組織として、新たな分科会が設置された。新型コロナの収束はまだ見通しが立っていない。感染を抑え込むためには専門家らの知見と提言が何よりも重要だ。政府は専門家の声に真摯(しんし)に耳を傾け、その上で責任を持って最終的な判断を下し、国民に分かりやすく説明しなければならない。
 分科会はコロナ対策閣僚会議の下部組織として設置。専門家会議メンバーだった感染症専門家ら8人に経済学者や知事らを加え、計18人となった。政府は、専門家会議が新型コロナ特措法に基づく組織でなかったことを改組の理由に挙げているが、分科会のメンバー構成には経済を重視する政府の姿勢がにじむ。
 感染拡大封じ込めのため、専門家会議は数々の提言を積極的に行ってきた。だが会議自体が政府の対策を決定したような印象を与えたことから、会議メンバーからも「政府と専門家」の線引きをはっきりさせるよう求める声が出ていた。
 専門家会議は感染症や公衆衛生の専門家ら12人で組織。科学的知見から政府に助言するのが本来の役割だった。イベント自粛や緊急事態宣言などの緩和を巡り慎重な姿勢を見せたため、経済への影響を懸念して緩和を急ぐ政府との間で確執が生じる場面もあった。
 緊急事態宣言が5月に解除された後、全国各地で新規感染者は拡大傾向にある。今月に入ってから東京では100人超の日が続いた。この状況に「第2波の入り口に立っている」「非常に危険な状態」などと危機感を募らせる専門家もいる。
 イベントの自粛や全国一斉休校、緊急事態宣言に伴う営業時間短縮や休業などにより、社会はリーマン・ショック以来とされる景気停滞に見舞われている。このため、政府は再度の緊急事態宣言には消極的だ。
 専門家会議がイベント自粛緩和に慎重だったのに対し、分科会は今回の初会合でイベント参加人数の上限を緩和する政府方針を了承。それほど緊迫した状況ではないという判断なのだろう。一方で感染の有無の検査態勢強化などに取り組むことを確認した。
 経済活動に配慮が必要であることは否定しない。移動自粛や休業要請などは私権制限につながる恐れがあることから、行き過ぎにならないように注意を払わなければならないからだ。ただし感染拡大が一定のレベルに達した場合は、その限りではない。
 全国一律の対策よりも、地域や職種、期間を限定した外出自粛や休業要請の方が有効とする意見も専門家の間にはある。急いで議論する価値のある意見だ。分科会の役割は、コロナ対策として必要なことは政府に遠慮せず積極的に提言することに尽きる。多様なメンバーの幅広い視点と専門的知見を生かしてほしい。


河井夫妻起訴 金権選挙の背景解明を
 昨年の参院選広島選挙区を巡る買収事件で東京地検特捜部は、公選法違反(買収)の罪で前法相の衆院議員河井克行容疑者、妻の参院議員河井案里容疑者=いずれも自民党を離党=を起訴した。
 地元の地方議員など延べ約100人に計2900万円余りを配ったとしている。買収額は逮捕容疑から300万円以上積み上げた。
 票をカネで買うという民主主義の土台を崩す罪に、国会議員夫妻がそろって問われた。しかも克行前法相は選挙運動を取り仕切る立場で、連座制の対象となる「総括主宰者」に当たると判断された。
 前代未聞の事件で深刻な政治不信を招いた夫妻の責任は極めて重い。即刻議員辞職すべきだ。
 克行前法相は安倍晋三首相や菅義偉官房長官に近く、案里議員は政権を挙げての支援を受けた。
 その結果が異常な金権選挙だったとすれば問題の闇は深い。
 政権が選挙戦にどう関与したのか、現金がばらまかれた背景は何か。実態解明が欠かせない。自民党は公判と別に独自調査を行い、自浄能力を発揮すべきである。
 自民党は公示前に通常の10倍に当たる1億5千万円の資金を案里陣営に提供した。党総裁の安倍首相や二階俊博幹事長の了解なしには出せない額だとの指摘がある。
 克行前法相は地元の町議会議長に現金20万円を渡す際、安倍首相や菅氏、二階氏も「案里に期待している」と伝えたことが取材で分かっている。
 党本部から巨額の資金提供があったからこそ、政権の威光を最大限に利用した大がかりな買収行為に至ったのではないか―。そうした疑念が拭えない。
 党総務会でも資金提供の経緯や使途について説明を求める声が相次いだ。党の収入には税金が原資の政党交付金も含まれる。党員のみならず国民への責任として徹底調査と説明が欠かせまい。
 改選数2の広島選挙区で案里議員は、現職の溝手顕正氏に続く2人目の新人公認候補として擁立された。ベテランの溝手氏が首相に批判的だったことが背景にあったとの見方もある。
 首相は自身の秘書を案里陣営に送り込み、秘書は克行前法相の現金提供先を訪問し、支援を依頼したことが判明している。
 秘書が現金提供先だと認識して訪れたのかどうかが問われよう。
 首相には克行前法相が閣僚を辞任した際に言及した「任命責任」と併せて、秘書の行動に対する説明責任も求められている。


河井夫妻を起訴 党は1.5億円の経緯説明を
 前法相の河井克行衆院議員と、妻の案里参院議員が公職選挙法の買収の罪で起訴された。
 案里議員が初当選した昨夏の参院選を巡って、選挙区である広島県の首長や地方議員ら100人に計約2900万円を渡し、票のとりまとめなどを依頼したという。
 夫妻は、まれに見る大規模な買収事件で罪に問われた。政治への信頼は大きく損なわれている。克行議員は法相の経験者でもある。直ちに議員辞職すべきだ。
 起訴内容の現金提供は、投票の4カ月前から始まっている。選挙から時期が離れれば、政治活動の一環だとの言い逃れをされる可能性があるが、検察は厳しい姿勢を示したと言える。
 現金を受け取った側は起訴されていない。これには疑問が残る。選挙のためと認識しながら金品をもらうことも違法であるからだ。
 夫妻の逮捕後、首長や地方議員は次々と受け取りを認めた。首長3人らは辞職したが、他の人も公職にとどまるのは許されない。
 「金権選挙」の経緯は、まだ明らかになっていない。とりわけ解明されるべきなのは、政権や自民党の関与である。
 克行議員は、補佐官を務めるなど、安倍晋三首相に重用されていた。法相就任には、菅義偉官房長官の後押しがあったという。
 参院選の案里議員擁立は地元に「総理案件」と伝えられていた。選挙戦では首相の秘書が応援に入った。克行議員に現金を渡された地方議員の1人は、「安倍さんから」と言われたと証言している。
 陣営には、もう1人の自民党候補の10倍となる1億5000万円の選挙資金が振り込まれた。うち1億2000万円は国民の税金から支出される政党交付金だった。
 二階俊博幹事長は当初、党勢拡大のための広報誌配布に使われたと説明した。公認会計士が後でチェックしているとも述べた。ところがその後、使い道は承知していないと前言を翻した。
 巨額の選挙資金が、大規模な買収事件につながった疑いがある。党として、きちんと調査し、説明しなければならない。
 夫妻の逮捕直後、首相は「国民への説明責任を果たしていかなければならない」と述べた。いまだ実行しないのは極めて不誠実だ。


河井夫妻起訴 金権選挙の図式、解明を
 昨年7月の参院選を巡る買収事件で、前法相で衆院議員の河井克行容疑者(広島3区)と、妻で参院議員の案里容疑者(広島)が公選法違反の罪で起訴された。
 現金のばらまきは広島県内の首長や地方議員、選挙スタッフ、後援会関係者ら100人に上る。参院選広島選挙区で案里被告を初当選させるため、克行被告が主導して計2900万円余りを配り、票の取りまとめを頼んだという。
 文字通りカネで票を買うもので、事実なら民主主義の根幹を揺るがす言語道断の犯罪だ。しかも法務行政トップであった前法相と、その妻の国会議員が手を染めた前代未聞の事件だ。 これほどの「カネまみれ」に、なぜ誰一人も公然と異を唱えなかったのか。公判などを通じて金権選挙の図式を明らかにしてほしい。
 一方で、検察当局は夫妻から現金を受け取った疑いのある地方議員や首長らの立件を見送った。本来なら罪に問うべきものを、大半が一方的に現金を渡されていたことなどを勘案して判断したとみられる。
 ただ刑事処分が見送られたからといって、受け取った側の道義的な責任まで消えるわけではない。とりわけ地方議員ら政治家に対しては、「広島のイメージを傷つけた」と有権者から厳しい目が注がれていると自覚すべきだ。
 これまでに現金受領を認め、安芸太田町長と三原市長、安芸高田市長の首長3人が辞職している。現金を受け取った地方議員は約40人いるとされるが、辞職は1人にとどまる。
 公の場で事実関係を告白した人もいれば、だんまりを決め込む人も。中国新聞の取材に「脇の甘さを反省している」「無理やり押し付けられ、返せなかった」と答えた議員もいる。
 公判が始まれば、事件関係者全員の名前が公表される可能性が高い。政治家として有権者に説明責任を果たすのはもちろんだが、身の処し方でもけじめを付けるのが筋である。
 検察当局の調べに対し、克行被告は現金の一部の配布を認めながらも「党勢拡大に必要な経費や陣中見舞い」と供述し、買収目的を否認しているという。現金を渡した趣旨の立証が裁判の焦点となりそうだ。
 だが普段から地元の有権者と接触し、支持を広げる活動の一環と称して、陣中見舞いなどを渡すことが当たり前になっていたとしたら、それこそが金権選挙の温床と言える。透明で公正な政治資金制度をつくる必要がある。
 どうしても見過ごせないのは買収に使われた資金の原資である。自民党本部から振り込まれた1億5千万円である可能性が指摘されている。うち1億2千万円は税金で賄う政党交付金だったことも分かっている。
 公選法には買収をさせる目的で金銭を交付した場合、交付した側も罰せられる規定がある。ばらまける金がなければ買収もできなかったはずだ。国民の政治不信を深め、広島県政に大きな混乱をもたらした。
 破格の資金提供はなぜ行われ、公金はどう使われたのか。党本部の管理責任は大きく、総裁の首相には説明責任がある。問われているのは党と政権の自浄能力である。


河井夫妻起訴 政治の信頼も問われる
 昨年の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反(買収)罪で前法相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員が起訴された。
 広島県議や首長ら延べ108人に計2900万円余りを渡したとされる前代未聞の選挙違反疑惑の解明は今後、法廷の場に移る。
 裁判は起訴から100日以内に結論を出す「百日裁判」で審理される見通しで、有罪が確定すれば夫妻は国会議員を失職する。
 夫妻は買収目的を否認しているといい、公判でも同様の主張するとみられている。
 夫妻とも逮捕前、疑惑について説明していない。政治家として起訴事実にどう向き合うのか、法廷で真実をしっかり語ってほしい。
 事件では、カネを巡る政治家の倫理が改めて問われた。
 夫妻から現金を受け取ったとされる県議や首長は40人に上り、その半数近くが受領を認めている。すでに首長職を辞した人もいる。
 驚かされるのは現金の授受が極めて安易に行われていたことだ。
 違法な現金であると認識しながら受け取ったケースもあったが、市議選などの「当選祝い」や「ガソリン代」などと解釈して受領していたと告白する人もいた。
 金銭を受け取ることへの倫理的感覚が鈍すぎないだろうか。数十万〜数百万円もの金額を手にした議員らもいる。政治に対する住民の信頼を大きく傷つけた。
 検察当局は現金を受け取った議員らの刑事処分を見送る方針だというが、有権者の納得を得られるだろうか。過去には少額の受領で起訴された例もある。処分見送りの理由を示してもらいたい。
 刑事責任を問われなくても、政治家としての道義的責任は免れない。現金を受け取った議員らは、そう肝に銘じてほしい。
 夫妻が配布した現金の出どころについての解明も不可欠だ。参院選前に自民党本部から入金された1億5千万円が買収の資金になったかどうが焦点となっている。
 これに関する党本部の説明は不明確だ。二階俊博幹事長は当初、「広報紙に充てられた」としながら、後に「(使途を)細かく追究していない」と後退させた。
 党として調査はしないとの姿勢を示したようなものだ。だが、入金金額のうち1億2千万円は税金が原資の政党交付金だとされる。使い道について、国民への説明責任があることは言うまでもない。
 党所属国会議員の疑惑に対し、頬かむりしたままでは、政権に対する信頼回復も望めまい。


河井夫妻を起訴 買収原資の解明欠かせず
 東京地検特捜部が前法相の衆院議員河井克行容疑者と、妻の参院議員案里容疑者を公選法違反(買収)の罪で起訴した。
 案里氏が初当選した昨年7月の参院選広島選挙区を巡る事件である。
 起訴状によると、配布金額は計2900万円余で、対象者は108人に上る。このうち地元政治家約20人が記者会見などで現金受領を認めている。首長3人は辞職し、町議も1人が辞めた。
 買収は民主主義の基本である選挙をゆがめる。規模も大きく、自民党の体質も問われる。
 裁判は公選法に基づき、起訴から100日以内に判決を出すよう努める「百日裁判」で審理される見込みだ。短期間で真相を全て明らかにしなければならない。
 争点は多い。まず現金授受の目的だ。夫妻は「統一選の当選祝い」などとして容疑を否認している。受領側には選挙がなかった議員や、公示日に開いた案里氏の演説会場で現金を渡された元議員もいる。買収の疑いは濃厚だ。
 重要なのは買収原資の解明だ。案里氏の陣営に自民党本部から入金された計1億5千万円の一部が使われた疑念が拭えない。
 このうち1億2千万円は税金を基にする政党交付金である。献金を通じた特定の企業や団体と政治家の癒着を防ぎ、政治資金の透明化を図る目的だ。買収に使用されたのなら言語道断である。
 自民党の二階俊博幹事長は当初は「広報紙に充てられた」と説明した。その後、「細かく追究していない」と発言を後退させている。うやむやにはできない。
 同選挙区から出馬し、落選した党現職候補には党本部は1500万円しか支出していない。この格差の理由も不明確だ。
 案里氏の擁立は党広島県連が反対したのに党本部が押し切った。党現職候補は安倍晋三首相との確執が取り沙汰され、克行氏は首相や菅義偉官房長官に近い。
 選挙戦では首相の秘書が広島に派遣され、首相や官房長官も応援演説に駆け付けた。強引な選挙戦の背景に、案里氏に肩入れした官邸の思惑はなかったのか。克行氏が直後に初入閣した理由も論功行賞だった可能性がある。
 動機は事件の性格を浮き彫りにする。詳細に追及するべきだ。
 現金を受領した議員らの刑事処分を検察が見送る方針を固めたのは認められない。一方的に渡された議員もいるものの、買収目的を認識していたケースもある。事案に応じ、罪を問うべきである。


河井前法相夫妻 起訴 党資金の説明責任果たせ
 昨年7月の参院選広島選挙区を巡り、東京地検特捜部は公選法違反(買収)の罪で前法相で衆院議員の河井克行容疑者と、妻で参院議員の案里容疑者を起訴した。これで買収事件の舞台は公判に委ねられる。民主主義の土台である公正な選挙が巨額の現金でゆがめられたのか、真相解明が求められる。
 起訴状によると、克行被告は案里被告を初当選させるため、昨年3〜8月に地元県議や市議、後援会関係者ら延べ108人に票の取りまとめを依頼するなどして計2900万円余を渡し、案里被告はうち5人に対する170万円の提供を共謀したとしている。
 併せて、克行被告は案里被告陣営の選挙運動を取り仕切った「総括主宰者」と認定。裁判で認められれば、通常の買収の法定刑より重い「4年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金」が課せられる。
 裁判で克行被告は、昨年4月に統一地方選があり、「陣中見舞い」や「当選祝い」だったと買収目的を全面否定。これに対して特捜部は▽参院選前の6月に現金を渡したケースが集中している▽統一地方選と無関係の議員らにも提供されているーなどから、そうした主張は成り立たないとし、全面対決となるもようだ。
 問題は、選挙前に自民党本部が案里被告側に、同じ公認候補の10倍もの党資金1億5千万円を送金。これが買収資金の原資になったとの疑念に対して、党総裁である安倍晋三首相や党執行部が支出の経緯や使途について曖昧にしたままにしていることだ。
 首相か二階俊博幹事長の判断との見方が専らだが、首相は法相への起用については陳謝したが、党資金に関しては「問題ない」と強調。一方の二階氏は当初「党勢拡大のための広報紙の費用に充てられた」と述べたものの、陣営の法定報告書に使途が記載されていないことが分かると「細かくは承知していない」などと発言を後退させた。
 1億5千万円の8割に当たる1億2千万円は政党交付金で国民の税金で賄われている。こんないいかげんな説明で国民が納得するはずはない。調査を尽くし説明責任を果たすべきだ。
 一方、夫妻から現金を受け取った県議や市議らの刑事処分を見送るとの検察側の方針にも批判の声が上がっている。責任を取って辞職した首長や議員もいる中で、全員「無罪放免」でいいのかとの指摘がある。
 検察側が、克行被告から一方的に渡されたり、既に返金したりしている状況を考慮したとみられる。広島県民の失望の深さをおもんぱかるなら、刑事責任の有無は別にして、関わった全ての人が改めて襟をたださなければならない。


河井前法相夫妻を起訴/首相や党は説明尽くせ
 昨年7月の参院選を巡り、東京地検特捜部は公選法違反(買収)の罪で、前法相で衆院議員の河井克行容疑者と、妻で参院議員の案里容疑者を起訴した。広島選挙区から立候補した案里被告を初当選させるため、克行被告が主導し、票の取りまとめを図る目的で県議や市議、首長ら100人以上に計2900万円余りを配ったとしている。
 併せて、克行被告を案里被告陣営の選挙運動を取り仕切った「総括主宰者」と認定した。公選法によると、買収の法定刑は「3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金」だが、総括主宰者や候補者本人の場合は「4年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金」と刑が加重される。
 昨年4月には統一地方選があり、克行被告は「陣中見舞い」や「当選祝い」だったとするなど買収目的を全面否定。これに対し特捜部は参院選前月の昨年6月に現金授受が集中している、統一地方選とは関係のない議員にも提供されている−などから、そうした主張は成り立たないとみる。
 選挙前には、自民党本部から案里被告側に1億5千万円の党資金が送金された。それが買収資金の原資となったとの疑いは根強い。だが党総裁である安倍晋三首相や党は支出の経緯や使途について曖昧にしたままだ。民主主義の土台を大きくゆがめたという結果を重く受け止め、調査と説明を尽くすべきだ。
 党本部は昨年3月、地元県連の反対を押し切り、改選2議席の広島選挙区で元閣僚の自民現職に加え、案里被告を公認。翌4月から6月にかけて案里被告陣営に計1億5千万円を送金した。落選した現職と10倍もの開きがあり、党内から「桁が違う」「不公平」と説明を求める声が上がった。
 首相か二階俊博幹事長の判断との見方が専らだが、首相は選挙後に克行被告を法相に据えた任命責任は認める一方で、党資金については「問題ない」と強調。二階氏は「党勢拡大のため全県に配布した広報紙の費用に充てられた」と述べた。
 ところが克行被告らの政党支部から提出された法定の報告書に党資金の使途が記載されていないことが分かると、二階氏は「細かく追究しておらず、承知していない」と発言を後退させた。党資金の8割に当たる1億2千万円は国民の税金から捻出された政党交付金だ。いいかげんな説明では誰も納得しない。
 克行被告は党資金を一連の現金授受には使っていないと周囲に話しているという。だが党資金を直接、買収に使っていなくても、それによって浮いた分を買収に回せば同じことだ。潤沢な資金が引き金となり、首相の側近で後に法相となる克行被告が県議や市議、首長から後援会幹部や陣営スタッフに至るまで現金入りの封筒を配って回ったとの事実は動かない。
 さらに首長3人が受領を認め辞職するなど地元政界には混乱が広がっている。両被告による離党の意向が伝えられた先月16日、二階氏は「党に影響を及ぼすほどの大物議員でもなく、大騒ぎするような立場の人の発言でも行動でもない」と述べた。本当にそう思ったのか、平静を装うためだったのかは分からない。
 だが首相も党も、軽く受け流して責任を免れることはできず、通り一遍の対応では国民の信頼を取り戻せないことを肝に銘じる必要があろう。


河井夫妻起訴の闇 特捜部1.5億円不問の裏切りで幕引きか
 昨年7月の参院選を巡る買収事件で、東京地検特捜部は8日、前法相の河井克行容疑者(57)と妻の参院議員案里容疑者(46)を起訴した。起訴から100日以内の判決に努める「百日裁判」で審理される見通しで、有罪が確定すれば失職する。
 起訴状によると、案里容疑者が立候補した広島選挙区内の首長や地方議員など延べ108人に、票の取りまとめの対価として計約2901万円を渡したという。これまでの取り調べで、2人とも容疑を否認しているそうだ。
■1億5000万円に切り込まず
 最大のポイントは買収の原資だ。参院選前、自民党本部は河井夫妻の政党支部に破格の1億5000万円を送金している。当時の河井夫妻の懐事情から、買収は党の拠出金が充てられたとみるのが自然だ。原資に切り込めば、党本部や安倍首相の関与も明らかになり、“交付罪”で刑事責任が生じる可能性もある。安倍首相は案里陣営に自分の秘書を送り込むなど熱を入れていた。
 ところが、特捜部は1億5000万円を不問にし、「河井夫妻の買収事件」で幕引きを図るつもりだとの見方が強まっている。
「検察はこれ以上、官邸とケンカする必要がない。人事も当初のシナリオに戻りましたからね。“官邸の守護神”だった黒川弘務の退任後、後任として林真琴名古屋高検検事長が東京高検検事長に栄転し、今月には検事総長に就任する見通しです。紆余曲折があったにせよ、予定通り林検事総長が実現する。また、検察庁法の改正も撤回され、検察としては思い通りになった。河井夫妻を逮捕した森本宏特捜部長も、地方の検事正に栄転する予定です。もし、捜査を続けるなら、特捜部長は交代しないでしょう」(司法担当記者)
 先月、選挙区の有権者に香典を配っていた菅原一秀前経産相を検察が起訴猶予としたのも、検察と官邸が“手打ち”した結果だとみられている。
 しかし、1億5000万円を不問にしていいのか。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)が言う。
「1億5000万円の提供は党内からも説明を求める声が上がっています。ところが安倍自民党は、党大会を結党以来初の中止にしてまで逃げています。河井事件は安倍案件。特捜が河井夫妻の問題で片付けるのは、真相の解明を願う国民への裏切り行為です」
 幕引きは許されない。


河井夫妻買収起訴、首相の責任重く
強引に擁立、現職の地盤切り崩しへ次々現金
 昨年7月の参院選広島選挙区(改選2)を巡る公選法違反(買収など)の罪で、衆院議員の河井克行被告(57)=自民離党=と、妻で参院議員の河井案里被告(46)=同=が8日に起訴された事件は、東京地検特捜部などの捜査で、夫妻が案里被告への支持を固め、さらに自民党現職の地盤を切り崩すため、県議や広島県内の自治体首長や議員らに現金をばらまいた構図が明らかになった。また安倍晋三首相と党本部が強引に擁立した案里被告を、党県連は支援せず、夫妻は報酬を払って運動員を確保していたことも分かった。案里被告が当選すると、首相はその論功行賞のように、昨年9月の内閣改造で克行被告を基本法整備や法秩序の維持を任務とする法相に登用し、法相経験者の逮捕、起訴という前代未聞の事態を招いた。首相の責任はとても重い。(共同通信編集委員=竹田昌弘)
■首相の悪口言った溝手氏への「刺客」か
 起訴状によると、克行被告は案里被告を当選させる目的で、昨年3月下旬から8月上旬までの間、県議や県内自治体の首長・議員、両被告の後援会関係者、選挙スタッフら計100人に案里被告への投票や票の取りまとめなどの選挙運動を依頼し、その報酬として計128回にわたり、総額約2900万円の現金を供与したとされている。案里被告は100人のうち5人に対する5回の現金供与計170万円について、克行被告と共謀したとして起訴された。
 また起訴状では、昨年7月4日の参院選公示後、克行被告を選挙区全域に関し、継続して選挙運動に関する事務を総括指揮した「総括主宰者」と認定。公選法によると、買収の罪は3年以下の懲役か禁錮または50万円以下の罰金だが、候補者本人や総括主宰者などは4年以下の懲役か禁錮または100万円以下の罰金に加重される。重罰となる公示後の現金供与は11回計約295万円。
 事件が起きた参院選広島選挙区について、自民党本部は2018年7月に6選を目指す溝手顕正元国家公安委員長(77)を公認。しかし、広島選挙区では、自民党候補が過去2回、50万を超える票を獲得し、2位当選の野党候補にダブルスコア以上の差をつけているなどとして、首相と党本部は2人目の候補擁立を模索。県連は強く反対したが、昨年3月13日、県連の頭ごなしに、当時県議だった案里被告の公認を発表した。案里被告は出馬会見で「2議席独占が党の責務」と訴え、それが「総理のご判断」「総理の強いお考え」と強調した。
 ただ溝手氏は、第1次安倍政権時の07年参院選で自民党が大敗した際、続投しようとした首相に「責任がある」と指摘したほか、民主党政権下の12年には、首相を「過去の人」と言い放った人物。地元では、側近として首相補佐官や党総裁外交特別補佐を歴任してきた克行被告の妻である案里被告は、溝手氏を快く思っていない首相が送り込んだ「刺客」に見えたという。
 県連は1998年の参院選で2人を擁立し、大半の県議が推した候補が敗れたトラウマがあり、甘利明党選挙対策委員長(当時)が案里被告の公認を伝えた際、県連会長の宮沢洋一参院議員は「県連として了解というわけにはいかない」と反対の意思を改めて表明した。公認発表の3日後、県連は組織的な支援は溝手氏に一本化することを決めた。県連幹事長の宇田伸県議は「案里被告から出馬の相談は全くなかった。東京の党本部が勝手に決めるのは極めておかしい」と不快感を示し、県連のある幹部は「案里(被告)には1票もやらない」と息巻いた。
■公認間もなく現金供与、期待に応えるプレッシャー?
 河井夫妻は危機感を募らせたのだろうか。安倍首相の期待に応えるという強いプレッシャーがあったのかもしれない。現金供与は案里被告の公認から間もない昨年3月下旬、県議の児玉浩氏や三原市長の天満祥典氏、安芸高田市議会議長の先川和幸氏、北広島町議会議長の宮本裕之氏らから始まった。翌4月に入ると、県議の奥原信也氏、広島市議の谷口修氏、安芸太田町長の小坂真治氏らが続き、現金を渡された県議や自治体首長・議員(元職を含む)は40人を超えた。1人当たり10万〜200万円で、総額は約1800万円となっている。
 克行被告は広島市安佐南区、安佐北区、安芸高田市、安芸太田町、北広島町からなる衆院広島3区の選出で、児玉氏は安芸高田市選出の県議から今年4月に安芸高田市長へ転じた。6月26日に記者会見し、昨年3月30日に県議の無投票当選が決まり、その直後に30万円、同年5月末の地元行事の際にも30万円の計60万円を克行被告からもらったことを明らかにした。丸刈りにして反省の姿勢を示し、続投に意欲を見せたが、市には6月29日夕までに200件以上の抗議が寄せられ、児玉氏は翌30日に辞表を提出、7月3日付で辞職した。
 安芸太田町長の小坂氏は昨年4月下旬ごろ、自宅を訪れた克行被告から封筒を渡され、一度は断ったものの、押し問答の末に受け取り、今年3月28日ごろに中身を確認したところ、20万円が入っていたと、翌4月2日に公表。その後、町長を辞職した。谷口氏も広島3区の安佐南区選出。谷口氏の説明によると、昨年4月の市議選投開票日直前、自宅に来た克行被告が帰り際に50万円の入った封筒を「まあまあ」と言いながら渡した。「やばい金だと思ったから、手を付けずに保管していた。事情聴取の際、検察に預けた」と話している。
 ともに広島3区内の地方議会議長の先川氏と宮本氏も昨年3月下旬、議長室や自宅で克行被告から20万円を受け取ったことを認め、先川氏は「7期も国会議員を務める相手に『ばかにするな』と言えなかった」と振り返る。宮本氏によると、現金授受の際、克行被告は「安倍総理や二階(俊博)幹事長、菅(義偉)官房長官も案里に期待している。広島県に密着した議員になる。案里には、それなりの考えがある」と話していた。克行被告はまず自らの選挙区内の県議と自治体首長・議員への現金供与で、案里被告への支持を固めようとしたとみられる。
■溝手氏の地元市長も買収、報酬払って選挙運動
 一方、奥原氏は元県議会議長で、呉市選挙区の県議。両被告の逮捕・勾留容疑では、昨年4月上旬と5月下旬にそれぞれ50万円、6月下旬には100万円を供与された。奥原氏は取材に対し、計200万円を受け取ったことを認め、50万円は使い、残る150万円は自らの政治団体の政治資金収支報告書に寄付として記載したと説明。参院選では、溝手氏を支援したと強調した。
 2013年から三原市長を務める天満氏は、克行被告の逮捕・勾留容疑では、昨年3月下旬に三原市内のビルの一室で50万円、同6月上旬には広島市内の鉄板焼き店で100万円を供与された。今年6月25日に記者会見し、150万円の受け取りを認め、同30日付で辞職した。三原市は溝手氏の出身地で、溝手氏は元三原市長でもある。奥原氏や天満氏ら衆院広島3区以外の県議や自治体首長・議員への買収工作は、溝手氏の地盤切り崩しを狙ったものとみられる。
 このほか、昨年4月下旬に克行被告から現金30万円を渡されたことを認めた府中町議の繁政秀子氏は「案里被告の事務所で『安倍さんから』と言われてもらった」と取材に答えた。繁政氏は参院選で案里被告の後援会長を務めた。今回の事件では、これまでのところ、安芸高田市長、安芸太田町長、三原市長の首長3人に加え、この繁政氏が辞職している。
 現金供与は自治体首長・議員だけでなく、元広島県職員の男性(案里被告陣営の車上運動員違法報酬事件で逮捕、不起訴処分)に対し、昨年4月下旬に50万円を渡したのをはじめ、参院選投開票後の8月上旬にかけて、選挙スタッフや両被告の後援会関係者らにも相次いで現金が供与された。5万円、10万円、30万円など人によって金額は異なり、供与場所も選挙スタッフや後援会関係者の自宅や勤務先のほか、ホテルのトイレ、神社、自動車内、路上、口座振り込みとさまざまで、これらは選挙運動の報酬とみられる。
 事情を知る関係者は「克行、案里両被告は個人に人気があるわけではなく、自民党だから衆院議員や県議を続けてこられた。自民党県連が支援を溝手氏に一本化したので、選挙運動を手伝ってくれる人も少なく、報酬を払ってやってもらうしかなかったようだ。無理な選挙だった」と振り返る。
■首相秘書が支援、党から1億5千万円
 昨年3月の公認決定後、案里被告の陣営には、山口県下関市の安倍晋三事務所から複数の秘書が駆け付け、選挙運動を支援するとともに、首相秘書の名刺を持って地元の企業や団体、自治体首長・議員を回った。秘書の訪問先には、克行被告が現金を供与した人も含まれていた。首相は今年1月27日の衆院予算委員会で、秘書の派遣について「(案里被告は)候補者として非常に厳しく、知名度もなく、突然立ったということで、そちら側にうちの秘書を入れた。そうすることがバランスを取ることにつながると考えた」と答弁している。
 党からの選挙資金が溝手氏は1500万円なのに対し、案里被告には1億5千万円と10倍の差があったのも「バランス」だったのだろうか。関係者によると、1億5千万円のうち1億2千万円は税金が原資の政党交付金で、昨年4〜6月、案里被告が支部長の党広島県参院選挙区第7支部に3回に分けて計7500万円、克行被告が支部長の党広島県第3選挙区支部に4500万円が入金された。残る3千万円は党費収入など党本部の自主財源で、昨年6月に克行氏の政党支部に振り込まれている。起訴状によると、克行被告が現金供与を始めたのは昨年3月下旬とされ、少なくとも当初は党の資金は使われていないが、関係者によると、克行被告が起訴された選挙スタッフらへの報酬の中には、党広島県参院選挙区第7支部から振り込まれたものもあった。
 二階幹事長は6月16日の記者会見で、党が提供した1億5千万円について「そのお金がどう使われたか詳細は承知していない」と述べたものの、翌17日に「党内の基準と手続きを踏んで支給した。買収の資金に使うことができないのは当然だ」と説明。ところが、23日の会見では「(夫妻が)受け取ったところまでは分かるが、その先どうなったかは細かく追及していないので承知していない」と再び説明を後退させている。
 なお溝手氏の公認発表後から参院選までの「首相動静」(共同通信配信)によると、克行被告は18年10月3日、15日、11月8日、12月10日、27日、19年1月15日、2月15日、28日、3月20日、4月17日、5月23日、6月20日の計12回、安倍首相といずれも1対1で面会。案里被告の擁立、選挙資金、秘書の派遣などについて話し合ったのかもしれない。
■溝手氏を2万5千票上回る、公明票が勝敗左右か
 参院選広島選挙区での自民党本部対県連の対立は先鋭化していく。昨年5月、溝手氏の選挙事務所開きで、宮沢氏が「(案里被告の擁立は)党本部による溝手さんいじめ。2人当選は大変高いハードルだ。まずは溝手氏の当選を期することこそ、最も大事なこと」と言えば、翌6月に案里被告の政治資金パーティーで、塩崎恭久元厚生労働相が「いじめられているのは河井さんだ」と言い返した。
 参院選の公示前後、案里被告の陣営には、菅官房長官や二階幹事長らが応援に駆け付けた。公明党の山口那津男代表は、溝手氏には盤石の地盤があるとして「どうか新人を押し上げて欲しい」と呼び掛けた。一方の溝手氏の陣営には、所属する岸田派領袖の岸田文雄党政調会長(衆院広島1区)をはじめ、克行被告を除く広島県選出の国会議員や県議、県内の自治体首長・被告が勢ぞろいした。広島入りした安倍首相は案里被告だけでなく、溝手氏の応援にも立った。
 参院選は昨年7月21日に投開票され、結果(投票率44・6%)は立憲民主党、国民民主党、社民党が推薦する無所属現職の森本真治氏が32万9792票でトップ当選、29万5871票の案里被告が2位当選、溝手氏は27万183票にとどまり、落選した。2013年(投票率50・0%)は溝手氏が52万1794票、森本氏は19万4358票だった。
 中国新聞社の電話世論調査(昨年7月14〜16日)では、公明党支持層の5割超が案里被告を支持し、溝手氏支持は2割強と水をあけられていた。17年の衆院選比例代表で、公明党が広島県内で獲得したのは約16万票。公明票が案里被告と溝手氏の勝敗を左右した可能性もある。
■論功行賞で法相、絶頂期に「文春砲」
 克行被告は昨年9月11日の内閣改造で、法相に就任した。自民党内では「参院選の論功行賞」(中堅)と言われた。法務省設置法によると、法務省は民事、刑事、司法制度に関する基本法制の維持・整備、法秩序の維持、国の利害に関係する訴訟の適正な処理、出入国管理などを任務とし、検察に関する事項や裁判で確定した刑の執行、恩赦、仮釈放、保護観察、犯罪の予防、国籍・戸籍、登記、外国人の在留、難民の認定などを担当する。その長が法相であり、死刑執行の命令も発出するし、検察庁法では、個別事件の取り調べや処分について、検察総長を指揮できるとされ、非常に大きな権限を持つ。
 克行被告は昨年9月23日、広島市内で開いた政治資金パーティーで、時折声をうわずらせながら「社会と秩序を守り抜く」と法相としての抱負を語り、万雷の拍手を浴びた。一緒にステージに立った案里被告も、満面に笑みを浮かべていた。この日が両被告の絶頂期だったのかもしれない。
 法相就任から1カ月半余りが過ぎた昨年10月30日、週刊文春はウェブサイトで、案里被告陣営が車上運動員(ウグイス嬢)に法定上限の2倍に当たる報酬(日当)3万円を支払っていたと報道。克行被告は翌31日、法相を辞任した。広島地検は今年1月15日、河井夫妻の関係先を家宅捜索し、3月3日には、車上運動員の報酬を巡る公選法違反(買収)の疑いで、案里被告の公設秘書ら3人を逮捕した。うち2人が起訴された。一連の捜査の中で、現金供与先のリストなどが見つかり、河井夫妻の買収容疑が浮上する。
■克行被告、現金供与は「日常的な政治活動」と否認
 買収に当たる現金供与について、最高裁の判例では「供与とは、供与の申し込みだけでは足りず、申し込みを受けたものが、その供与の趣旨を認識してこれを受領することを要する」(1965年12月21日の第2小法廷決定)とされている。合同で買収の捜査に当たった東京地検特捜部と広島地検は、捜索で見つけた現金供与先リストや両被告から押収したスマートフォンの衛星利用測位システム(GPS)解析などにより、供与先と金額、供与場所を絞り込み、供与先の県議や自治体首長・議員、選挙スタッフ、後援会関係者らから相次いで事情聴取。大半が買収の趣旨を認識していたことを確認し、容疑が固まったとして、通常国会が前日閉会し、国会議員の不逮捕特権がなくなった6月18日、河井夫妻を逮捕した。
 関係者によると、克行被告は調べに対し、現金供与は自らの支持を拡大するための日常的な政治活動の一環だとして、参院選との結び付きを否定。供与時期は昨年4月の統一地方選と重なり「当選祝い」や「陣中見舞い」とも説明しているという。案里被告も「違法な行為をした覚えはない」と容疑を否定している。
 河井夫妻の主張に対し、特捜部は▽公認決定直後の昨年3月下旬から現金の供与が始まっている、▽現金供与先が領収書を発行しようとしても、克行被告は拒否した、▽参院選前月の昨年6月には、800万円を超える多額の現金が供与されている、▽統一地方選に無関係の議員にも現金が供与されている、▽河井夫妻から過去に当選祝いなどをもらったことがない議員もいる―などの事情から、案里被告を当選させる目的の買収だったことは明らかとみているもようだ。
■ 被買収処分見送り、事実上の司法取引か
 公選法違反の買収などで国会議員本人が起訴されたケースとしては、。隠坑沓糠10月の衆院選旧千葉2区で当選した宇野亨氏(故人)、■坑暁10月の衆院選比例北関東で当選した中島洋次郎氏(故人)、2003年11月の衆院選愛知4区に立候補、比例東海で復活当選した近藤浩氏、て噂葦〜埼玉8区で当選した新井正則氏―などがある。4人はいずれも選挙当時、自民党公認。
 4人の買収額と確定判決(⊇く)は、〔鵤渦円、懲役4年¬鵤伽號円、二審懲役2年で上告中自殺100万円、懲役2年、執行猶予5年ぃ毅娃伊円、懲役3年、執行猶予5年。克行被告の買収額は△鮠絏鵑詭鵤横坑娃伊円で「実刑判決もあり得る」(元検事の弁護士)とみられている。ただ△漏ぞ綣衛隊の救難飛行艇開発を巡る受託収賄罪や政策秘書給与の詐欺罪などにも問われていた。
 公選法は買収された側(被買収)にも罰則を設け、これまで被買収の罪で処罰された人は多い。ところが、関係者によると、克行、案里両被告から現金を供与された県議や自治体首長・議員、選挙スタッフ、後援会関係者らは一方的に現金を渡されたり、既に返金したりしていることなどを考慮し、東京地検特捜部と広島地検は刑事処分を見送る方針という。被買収をの訴猶予や不起訴処分にもしないのは極めて異例。買収の趣旨を認識していたと認める代わりに、被買収を不問に付す、事実上の「司法取引」ではないかという批判の声が上がりそうだ。
 刑事訴訟法で認められた協議・合意制度(日本版司法取引)は、検察官と容疑者・被告、弁護人が協議し、容疑者・被告が捜査や公判に協力するのと引き換えに、自分の事件を不起訴や軽い求刑にしてもらうことで合意するが、贈収賄や詐欺、業務上横領、独禁法違反、金融商品取引法違反など対象が特定の犯罪に限定されている。公選法違反は対象犯罪ではなく、協議・合意制度は利用できない。
■「法相の任命責任は痛感する」と言うだけ
 参院選広島選挙区への2人擁立を主導し、自らの秘書を支援に行かせ、1億5千万円という多額の資金を送った首相は8日の両被告起訴後、官邸で記者団に「かつて法相に任命した者として責任を痛感する。国民におわび申し上げる。批判を真摯(しんし)に受け止め、緊張感を持って政権運営に当たる」と述べた。
 自らの「責任」言及したのは、今年に入ってからだけで、。桶嬶宗焚楼翹〜蠅反原一秀経済産業相)の辞任⊃慌躬卷〜蠅亮左性森友学園問題の公文書改ざんす川弘務前東京高検事長の定年延長問題タ祁織灰蹈淵Εぅ襯稿段盟蔀嵋,亡陲鼎緊急事態宣言の期間延長拉致被害者有本恵子さんの母嘉代子さんと横田めぐみさんの父滋さん死去―の6回。今回が7回目だが、言うだけで有権者に分かる何らかの形で責任を取ったことはない。
 自民党が提供した1億5千万円の一部が買収の原資になったとの見方についても、首相は「自民党は政治資金を厳格なルールで運用しているが、襟を正し、党として国民に説明責任を果たさなければならない」と他人事のようにコメントした。しかし、自民党のトップは総裁である首相であり、自らが率先して説明を尽くすべきだろう。


コロナ分科会/政府の意向にとらわれず
 政府が新型コロナウイルス感染症対策分科会の初会合を開いた。医学的見地からの助言などを受けてきた専門家会議を廃止し、新型コロナ特別措置法に基づく後継組織として新設した。
 緊急事態宣言の解除から1カ月が過ぎ、東京を中心に新規感染者数は再び増え始めている。感染拡大の封じ込めに向け、適切な対策の道筋を示してもらいたい。
 2月に発足した専門家会議は、「3密」の回避や人と人の接触の8割削減などの提言を打ち出し、会見などで直接国民に呼びかけた。
 社会活動を大きく制限する内容だけに、助言の域を超え、政策を決める立場にあるような印象を国民に与えたことは、会議メンバーも認めるところだ。
 その背景には、科学的な知見に基づいて政策を練り上げ、国民に分かりやすく説明する役割を、政府がきちんと果たさなかったことへのいらだちがあったのではないか。
 例えば安倍晋三首相は2月末、専門家会議に諮らずに一斉休校を要請したが、国民から批判を浴びると一転、「専門家の見解」を強調した。一方で、早期の外出自粛や休業要請の緩和に専門家は難色を示し、経済への影響を重視する政府側との間できしみが生じた。
 専門家会議を都合よく利用したと受け止められても仕方ない。分科会発足に際して、政府は客観的政策立案の重要性と自らの責任を改めて認識しなければならない。
 新設の分科会には医療だけでなく、自治体首長や経済学者なども加わった。初会合では各種イベントの入場制限緩和を了承した。
 感染症対策をとりながら社会経済活動をどう軌道に戻すか。分科会の顔ぶれからは、そうした政府の意向がうかがえる。
 しかし政府が経済活動再開に前のめりになれば再び感染が急拡大しかねない。そのことは海外の事例を見ても明らかだ。分科会は政府の意向にとらわれず、公正中立な立場から議論を重ねてほしい。
 初会合では、専門家会議では作成しなかった詳細な議事録を作る方針も決めた。発言者を明記した議事概要も速やかに公表するとした。後世の検証のためには当然といえる。
 ただ、政府は詳細な議事録を約10年間非公開とする案を示したが、これでは長すぎる。分科会は早期の全面公開を検討すべきだ。
 政府内には分科会のほかに、クラスター対策班、有識者会議、諮問委員会など新型コロナ関連の組織が乱立する。政策決定の過程や責任の所在を明確にするためにも、整理統合を考える必要がある。


商業捕鯨1年 将来展望のモデル示せ
 日本が31年ぶりに国内の商業捕鯨を再開して1年がたった。
 通年操業となる今年は、秋口にかけ、釧路、網走沖などでの捕獲も本格化する。
 反捕鯨国との歩み寄りを断念し、昨年6月にクジラの資源管理を行う国際捕鯨委員会(IWC)から脱退して2年目となる。
 とはいえ、全国的な盛り上がりには欠けると言わざるを得ない。
 水産庁が定めた年間捕獲頭数の上限は383頭と、かつての調査捕鯨の約6割にすぎない。これでは需要も増えない。
 政府は、資源管理から消費まで自立可能な商業捕鯨モデルを示さなくてはならない。
 商業捕鯨といっても捕獲は自由ではない。日本が批准する国連海洋法条約は、資源管理を「国際機関を通じて行う」と定めている。
 このため、IWCにオブザーバー参加し、南極海などで目視調査も継続する。捕獲上限もIWCが認める計算式で設定した。
 鯨肉は調査捕鯨では副産物扱いだが、商業捕鯨では品質も高く、再開初年の昨年は高値を付けた。
 だが、もともとは安価な“国民食”である。高級路線で生き残れるかは疑問だ。今年は新型コロナ禍で外食需要が激減し、価格も下落しているという。
 クジラは十分な資源量を確保しており、反捕鯨は動物保護のみを重視しているというのが日本のIWC脱退理由だ。
 「国際社会の支持を拡大する」としたが、日本の立場に理解を示したり、同調して問題提起したりする動きは広がっていない。
 政府は2020年度当初予算で、捕鯨関連に51億円を計上した。限られた捕獲量では採算ベースに程遠く、国の支援による実証事業として操業しているのが実態だ。
 これでは、IWCにとどまり南極海などで調査捕鯨を続けていた方が良かったという声も出よう。
 政府は、捕鯨文化は日本に深く根差したものと強調してきた。それなのに鯨食が普及しないなら、商業捕鯨の根拠は怪しくなる。
 途絶した食文化を復活させるのは難しい。市場任せでは困る。
 昨年12月に超党派の議員立法で改正された関連法では、学校給食への導入などを盛り込んだ。
 ただ、外食やスーパー業界などとも連携し付加価値を高め、広く流通する仕掛けまでは見えない。
 需要底上げの道筋を示し、科学的データを積み重ねて捕獲量を管理する。そうした明確な工程表を策定するべきだ。


「おくりびと」全国3000人の半数は副業 では1回の収入は?
 総務省の予測では日本の65歳以上の人口比率は2025年に30%、60年には40%に達する見込みだ。今回取材したのは高丸慶さん(37歳)だ。
 高丸さんは看護師でもあり経営者でもある。訪問看護事業を本業として行うかたわら、納棺師を養成する「おくりびとアカデミー」にも取締役として参画運営している。
 なおアカデミーの卒業生たちには、納棺師を副業としている人もいる。
「納棺師は、故人の遺体を洗い清めて、お化粧や衣装などの身支度をして、棺に納めるまでを担います。火葬まで遺体の腐敗を防ぎ、適切な状態で保つ技術や、故人とのお別れの時間を適切なものにするための所作などが必要です」(高丸さん)
 納棺師の存在は映画「おくりびと」でも世間に広まった。学校の概要を聞いた。
「東京都港区三田で、毎年4〜9月の6カ月間、木・金・土曜日が授業となっています。募集人数は10人程度、学費は120万円です。納棺師としての心構えや所作を教える概論、感染症の予防、死者へのメーク、宗派による違いなどさまざまなことを学びます」
訪問介護で知ったさまざまなニーズ
「おくりびとアカデミー」を始めたきっかけは?
「2000年に始まった介護保険の基本理念は『人の尊厳を支える』なのですが、実際には個人の尊厳性はそれぞれです。ですから、介護保険に関わる事業者は医療と違ってニーズに応えるために保険外のサービスを提供してもよいことになっています。特に在宅ケアをする訪問看護は地域の高齢者との関係が深く、生活の様子がわかり、相談を受ける機会が多い。保険外のニーズとして、食事、旅行、美容、運動、移動、出会いなどの要望はさらに増えると予測しています。そして『おくりびとアカデミー』とも関係する『葬儀』の領域ですが、お別れの方法は多様化しながらも死者を弔う気持ちや儀式の形式は残り、少人数で納棺師だけがセレモニーを行うケースも増えると思います。葬儀では小さくても数十万円かかりますが、納棺師が行うケースですと、より安価な金額ですむこともあります。看護師が在宅や施設で『看取り』をして、同じ看護師が看取り後に納棺師としてセレモニーを行うなんてことも増えるでしょう」
 高丸さんの収入とアカデミー卒業後の収入について聞いた。
「アカデミーに入学してくる人たちは半分が葬儀会社の方で、残りは医療従事者、介護従事者、高校を卒業してそのまま入ってくるケースが多いです。現在、日本全国に納棺師は約3000人いて、本業と副業にしている人たちは半々くらいではないでしょうか。1回のセレモニーの収入は都内の相場が1・5万〜3万円程度です。月に数回の依頼をこなして、副業として月に10万円以上の収入を得ている人はそれなりにいると思います。本業で評判になった納棺師には月に100万円以上の収入になっている人もいます」
 緩和医療、看取り、エンディングノート、生前葬など自分の死に方に関することが自覚的に扱われるケースが最近は増えてきた。日本では03年に年間の死者数が100万人を超え、19年に137万人、そして予測では40年にピークを迎えて160万人になる。人が目を向けにくい市場であるからこそ、仕事のチャンスも眠っている。


今卑弥呼サマ「五輪開催は都民の民意じゃない」ってご存じ
 小池都知事が再選された途端に、五輪組織委員会の森喜朗会長が駆けつけてグータッチして、「これまで一緒に準備を進めてきた大会の成功に向けて、東京都と一層の協力体制ができることを心強く思う」。
 一緒に準備を進めてきた割には、あてつけがましいやりとりがあったのは忘れたんだ? マラソンと競歩が札幌に会場移転する時のいがみ合いは何だったん?
「私聞いてないわよ。何よ、今さら!」
「だって主催者が言えば逆らえないんだもん」
 再選の翌日、安倍総理も面会して「来年にはオリンピック・パラリンピックにおいて、何としても感染症に打ち勝たなければいけませんので、これからもよろしくお願いいたします」。
 すごいねえ、「これからもよろしくお願いします」だよ。
 勝ち馬に乗って少しでもおこぼれをいただきたいのは崖っぷち総理のほうだもんなあ。みどりのおばさん鼻高々だねえ。
 ついにはIOCバッハ会長まで祝意。
「再選されたことは、困難な時における知事のリーダーシップに対して、東京都民が大きな自信を抱いていることの表れである」
 どうよ、ごらん、これが私の底力よ。男どもをみんな侍らして目尻下がりっぱなし。いやあよかったよかった、もはや女帝通り越したね、ヨッ今卑弥呼!
 でも今卑弥呼サマ。今回の都知事選挙で「都民の民意は五輪開催!」だなんて勘違いしないでね。
 そもそも争点にならなかったもの。山本太郎が「開催中止!」と力み返って票が伸びなかったわけはね。
「中止って言わなくても、どうせできないでしょ」
 だって、来年の7月までにコロナいなくなる? ワクチン間に合う? 特効薬間に合う? 無理でしょ?「ウィズコロナの時代でございます」って、あんた宣言したんだよ。ってことはサ、「東京でコロナと一緒に五輪やりましょ」ってことなんだよ。コロナと一緒の東京に人が来るかね? そんな所に選手を派遣する国があるかね?
 都民の本音は「開催賛成」じゃなくて「どうせ無理」。


多数派になびく国民性 都知事選は最悪の厄災でも変わらず
 まずは今回の九州地方を中心とする豪雨の被害に遭われた皆さまにお見舞い、お悔やみ申し上げます。
 まだまだ梅雨は続き予断を許さない状況、どこぞの「コメンテーターを批判するコメンテーター」の方が「危険な場所には住まない、移動してもらう」というようなことをおっしゃったらしいが、そんなこと簡単にできるわけがない。
 しかも最近の災害、とくに豪雨の災害は予期せぬ場所に直撃する。どこにやってくるかわからない。それも予想しない速さと量で降ってくる。さらに避難場所のコロナ対策まで考えなくてはならない、となれば自治体の長は本当に大変だろう。
 いや、東京も同じこと。また今年も猛暑に台風、40年も前から来る来ると言われ続けている地震だって心配だ。コロナさえもまともに対処しきれていないのに、まさかそれすらも自衛しろと言われたらもう地獄絵図だ。
 そんな中の都知事選。現職に完敗。うーん、なんともモヤモヤする。
 いや、あまりの票数の差も確かに驚いた。もう少し取れるかと思った。
■SNSの盛り上がりもコップの中の嵐
 だがそれよりも投票率である。いや、コロナ禍とはいえ前回よりも下回ってしまうとは。SNS上の盛り上がりはかなりあったように思ったのだが、悔しいことに、まだまだコップの中の嵐であった。
 組織票というものは、上から言われて嫌々ながら書かされるものだと感じていた。そんなの投票所でいくらでも自分の好きに書けるのに、嘘つけばいいだけでしょ、と思っていた。
 しかしどうも組織票というのは、自分がその組織に所属しているという確証のようなものであるようだ。どうやらこの国の多くの人は「多数派につく安定感」や「勝ち馬に乗る」ことを望んでいるらしい。都知事に小池氏がふさわしいか、ということよりも、都知事は小池氏でいい、という何か大きな力に任せておいた方が正解だ、と考えている。
 私が若い頃は、おじいちゃん、おばあちゃんが「自民党に入れとけば間違いないでしょ」とニコニコ言っていたものだ。さすがにもうそんな時代ではないと思っていたが、実は何も変わっていなかった。
 コロナが蔓延してから、グローバリズムも多様性も、変わったと思っていたことが何も変わっていなかった、と知らされる。まだまだ闇の中でもがいていかなければいけないのか。


「学歴社会」なのに「教育を軽視」する日本の問題
世界的にも特殊な矛盾
厚生労働省が公表した「2017年賃金構造基本統計調査」によると、大卒・院卒の男性の平均賃金は約40万円なのに対し、高卒は約29万円であった。一方、大卒・院卒の女性の賃金は約29万円で、高卒は約21万円であった。つまり、男性と女性の間、また大卒・院卒と高卒の間で、それぞれ約4割もの収入格差があるのだ。
性別による収入格差を生む原因としては、東京商工リサーチによる「2019年3月期決算上場企業2,316社『女性役員比率』調査」で報告された女性の役員比率5%という数字や、5割を超える女性の非正規雇用比率(男性は約2割)に代表されるように、雇用に関する性差別が深く関わっていることが明白である。
また、雇用が学歴に大きく依存していることが、学歴による収入格差を生んでいることは言うまでもないだろう。総務省が公表した「2017年国勢調査」では、大卒・院卒の正規雇用比率は約7割なのに対し、高卒は5割を下回っている。国会議員に至っては、高卒は5%を下回る。このように日本は、雇用や社会的地位の確立に学歴が深く関わる、いわゆる「学歴社会」だ。
だがここで、性差別は確かにおかしいが、高学歴者はそれ相応の教育を受けているのだから収入格差は当然だと、学歴社会を肯定的に捉える人もいるだろう。
しかし私は、残念ながら今の日本では「相応な教育」はなされておらず、日本における学歴社会は社会を維持・発展させるための機能を果たしていないと考えている。問題はどこにあるのか、研究者として日本・アメリカ・オーストリアで働き国内外の高学歴者を多く見てきた経験から考察する。
日本の学歴は「受験歴」
「学歴」とは文字通り学業上の個人の経歴のことである。例えば大学院修士卒という一般に高学歴と呼ばれる経歴の持ち主は、義務教育を終えた後に高等学校・大学・大学院という3つのステージで合計10年近くも学業に取り組んでいる。
日本においてこのような高学歴を得るには、受験という関門を何度も突破しなければならない。近年では中学受験も珍しくないため、高学歴を目指す多くの子供は、小学校高学年、場合によっては低学年から中学受験の準備を始める。私立小学校に通うために幼稚園の時から受験を経験する子供も少なくない。その後、中学に入学したらすぐに高校受験の準備を始め、高校に入学したら今度は大学受験の準備を始める。
このように、日本における高学歴者の多くは、その学歴を「受験歴」と言い換えてもいいほどに、異常なまでの時間と労力を受験に費やしている。
公平性が欠如した受験システム
だが、この受験を前提にした日本の学歴社会は不完全性が高い。中でも私が特に問題視しているのが、受験を前提にした学歴社会を国づくりにおいて意義のあるものとして機能させるのであれば絶対的に必要な3要素、「受験の公平性」「受験の先にある教育の充実」「高学歴者の社会への視野」が全て欠如している点である。
まず「公平性」についてであるが、これは誰もが平等に教育を受けられるという人権に関わる観点からだけでなく、多様な人がチャンスを得ることで社会の多様性が育まれるという観点からも重要である。しかし残念ながら、今の日本の受験システムはこの公平性を著しく欠いている。そこには様々な原因があるが、私は受験で出題される問題に偏りが強いことが大きな要因の一つだと考えている。
学校によって違いはあるが、基本的に受験問題の多くは「学校で教科書を勉強するだけでは解くのが難しいが、塾に通ったり家庭教師をつけるなどして学校では行わない特別な対策をすると解ける可能性が高まる」という種類に偏っている。つまり、この特別な対策が出来る環境にある子供が圧倒的に有利なわけである。
そして多くの場合、この特別な対策にはお金がかかる。例えば、もし受験を突破できれば奨学金なども利用して大学に通えるという場合でも(学費や奨学金制度の公平性の欠如もまた大きな問題だが)、受験のための特別な対策の費用が出せなければ、そこに辿り着く可能性は大きく低下してしまう。
このように、今の日本の受験システムでは、学びたい子供に公平なチャンスを与えることができておらず、学費だけでなく受験対策にもお金をかけられる環境下の子供に偏ってチャンスが与えられている。
大学で教育が軽視されている
だが問題はもっと根深い。日本では、受験を突破した先にある教育が、あろうことか軽視される傾向にあるのだ。学歴社会は日本以外の国でも見られるが、学歴社会において教育を軽視するという不可思議な傾向は世界の中でも極めて特殊である。象徴的なのが、大学における教育の惨状だ。
「教育」には広義にも狭義にも様々な意味があり、日本ではこの言葉を勉強をさせたりしつけをするという意味で用いる場合が多いが、私がいま問題にしている「教育」とは、人を教え育てるという文字通り広義の教育のことである。
この広い意味での「教育」は、個人のためだけでなく、社会を構成する人を育て持続可能な社会作りをしていくという観点からも重要である。そして大学とはこの「教育」の国としての方向性、つまり国づくりの方向性を象徴する高等教育機関であり、だからこそ、大学における教育を軽視する国などほとんどないのである。
国内外の大学生・大学院生を多く見てきた私の経験から言えるのは、こういった「教育」を受けることへの日本の学生の突出した自主性の欠如だ。大学に通う喜びが学び成長することになく、受験からの解放や就職における有利性にある学生が日本にはとても多い。
そして教える側にも、毎年同じ内容の講義を無気力に繰り返す教員や、大学院生を自身の研究を進めるための駒としてしか扱わない教員など、教育に無関心な教員が少なくない。もちろん意欲に満ちた学生も教育に熱意を持つ教員もいるが、新しい時代を見据えた教育環境を整えようとしない文科省含め、日本のあらゆるレイヤーにおける教育軽視の姿勢を嫌というほど目の当たりにしてきた。
高学歴者の狭い視野
教育軽視の結果と捉えることもできるが、学歴を重視する今の日本社会におけるもう1つの大きな問題が、高学歴者の社会への視野の欠如である。
例えばフランス語には「Noblesse oblige(ノブレス・オブリージュ)」という「貴族(Noblesse)」と「義務を負わせる(Obliger)」を合わせた言葉がある。この言葉は、元々は文字通り貴族は貴族としての振る舞いをすべきという意味として使われていたが、今日では富裕層や高学歴者など社会的に力のある立場の人はそれ相応の社会的責任や義務を負うべきという考え方を示す言葉として使われている。
このような考え方は、私の知る範囲でも欧米だけでなくアジアを含め世界の多くの地域に当り前のように見られる。国際学会などで研究者が集まれば、世界情勢や自国の政治や社会の問題を当り前のように話題にするし、例えばジョージ・フロイド氏が殺害された事件に端を発した世界に広がる人種差別への抗議行動においても、私の所属する国際学会は署名と共に声明を発表している。
一方日本では、研究者が集まれば、〇〇大学の次の教授は誰か、〇〇が結婚したらしい、といった内側への視野に限った話題が多く出る。ネットを見ても高学歴なエリート達が、COVID-19後に求められる人材になるために、といった自分の立場をいかに守るかという視野の話題で盛り上がっていたり、日本の高学歴者は世界でも突出して社会への視野を持たない傾向にある。
このように日本では、社会を維持・発展させる上で学歴を意義あるものにする要素がことごとく欠如している。つまり、高学歴者が社会をリードする土台が全く整っていないのだ。それにもかかわらず日本社会は、会社でも政治でも高学歴者が社会を動かす力を持つ紛れもない学歴社会である。
この一見すると矛盾に満ちた状況はなぜ生まれているのか。
変化に脆弱な日本社会
私はそれは、高学歴を獲得できる偏った層が、充実した教育を受け社会を維持・発展させることよりも、その地位の保持に興味が偏っているからだと考える。医学部不正入試問題などは、上述した3要素の欠如と性差別が相まった、この保守思想の極みと言えないだろうか。
だがこの保守思想は、変化しない社会を前提に成り立つものであり、社会の変化に対して極めて脆弱だと私は考えている。そもそも、社会とは望む望まないにかかわらず、内的・外的要因で時代と共に変化するものである。教育に無関心で社会への視野を持たない日本のリーダー達が、国際社会の中で起こる激しい変化に的確に対応し、日本社会を維持・発展させていけるとは私にはとても思えない。
実際に、今回のCOVID-19の感染拡大という未知の変化を前に日本の政治家や官僚達が打ち出す対策はことごとく後手に回っている。また現在、多様性や環境保全などSDGsの要素を政治やビジネスが前向きに考慮する方向に世界が急速にシフトしているが、それに対して日本の政治や企業、またメディアが見せる対応は驚くほど遅い。
時代の変化に対して個人としても国としても柔軟に対応し、日本社会を自立した社会として維持・発展させていくためには、学歴社会が抱える問題に向き合い、教育を根本から見直す必要があるのではないだろうか。