相続税といえば以前は富裕層が悩む問題で、いわゆる中流階級には無縁だったが、最近の相続税改正で一般庶民でも無縁とはいえなくなってきた。
相続税は法律に基づいて課税されるから、相続税申告に直面してため息はついても、感情的になる人はあまり多くないのではあるまいか。ところが、相続人間での遺産分割に直面すると、ため息をつく間もなく、気持ちが乱れてくる人もいるのではないか。

遺産相続のトラブルに第三者として関わっていると、経済的な損得を超えた感情のもつれが解決を長引かせているのではと感じる事例もある。
その1つには、相続で自分が得したいというのではなく、相手が自分よりも得するのが許せないという気持ちがあるのだろうと思う。これは相続人の常識感覚、公平感、正義感に基づくともいえる。例えば、亡父の生前に相手は自分よりも父の財産でいい思いをしてきたのに、自分は父に何もしてもらえなかった、だから相続では今までのことも含めて清算したい、もうお金の問題ではないのだ、といったことだ。

ここで弁護士は相続人間の公平な解決へ向けて、これまでの生活歴を詳細に相談者から聞き取る必要が出てくる。そして、相談者の主張する事実が、遺産相続の解決に反映されうる事情なのかを検討することになる。つまり、相談者の主張が、法的な常識感覚、公平感、正義感にかなっているのか、ということだ。

いずれにしても遺産相続は、相続人の親子間、兄弟間の生活歴にかかわるデリケートな問題を含んでいることがある。また相続人の人生観や哲学が解決方針に大きく影響を及ぼすことがあるように思われる。