子供の頃、雪女という絵本を読んだことがある。
大雪の晩に、モサクとミノキチの親子が山小屋で夜を明かしていると、雪女が入ってきてモサクに息を吹きかけて死なせてしまう。ミノキチは命をとられなかったが、その晩のことを他言すると命をもらうと雪女に言われる。
しばらくして、ミノキチは縁あってオユキ(雪女)と夫婦になり、子宝にも恵まれる。ところが、ある雪の晩に、ミノキチはオユキにモサクが死んだ晩の出来事を話してしまう。
オユキは、ミノキチの命をとらなかったが、ミノキチのもとを去ってしまう。

自分がミノキチの立場になったとしたら、雪女のことをオユキに話さずにいるだろうか?

常識的には、夫婦は一心同体なのだから、妻であるオユキに全てを話すことは当然のことだと思う。ミノキチが雪女のことを自分に話してくれたことを、オユキは当然のことだと受け止めるべきだろう。
裏を返すと、オユキは、ミノキチが雪女のことを自分に話してくれなければ、妻として寂しいのではないか。

夫婦にあって隠し事はいけない。ただし、夫あるいは妻を傷つける可能性のある過去の事実については、死ぬまで自分一人だけで背負い込まなければならないこともあろう。傷つけられる事実であれば、永遠の嘘をついてくれ、と言いたくもなるのだ。

ミノキチがオユキにあの晩のことを話したからといって、オユキの素性がバレたわけでもないから、オユキがミノキチのもとを去る理由はあるまい。