学問的な重要度よりは世間に与えたインパクトや有名度によって7つの人類化石を選び説明した本。
ラ・シャペルのネアンデルタール人、偽造のピルトダウン人、最初に発見された猿人のタウングチャイルド(私の若い頃はタウングベイビーと書いていた)、行方不明になったことで有名な北京原人、発掘の時のエピソードが有名な猿人のルーシー、インドネシアの島でつい1万年前まで生きていた原人のフロー、データをオープン化する試みで有名になった猿人のセディバが挙げられている。
私だったら、ラ・シャペルに代えてシャニダールで埋葬されていたネアンデルタール人、セディバに代えて、化石と言うには新しいが5000年前のアイスマンを選ぶかな。
日本なら、最初原人と言われていたが寬骨等の特徴から新人であることが有力な明石原人、ちと新しいが吉野ヶ里で発見された矢の刺さった弥生人あたりが入るのだろうな。



ナショジオのビジュアルムック。
ところどころ知らない項目があって面白いのだが、やっぱり1項目1ページだと記述が薄いな。


伝説の謎 (ナショナル ジオグラフィック 別冊)
日経ナショナルジオグラフィック社
2019-05-31

ヴィクトリア朝ロンドンの社会風潮を背景に、「吸血鬼ドラキュラ」や「ジキル博士とハイド氏」「洞窟の女王」などを読み解き、さらに現代イギリスの社会問題を背景に「ハリーポッター」を読み解こうという試み。後半部は原作を読んでないので飛ばした。
「そういう見方もあるかもね」程度の記述が多く、いささか説得力に欠ける。
「トリセツ」という題名の本はみんなこの程度なのかもね。


怪物のトリセツ
坂田 薫子
音羽書房鶴見書店
2019-05-30

「帰化人」という言葉はまだ日本が国家として成立していない時代には不適当、ということで「渡来人」という名称になったが、定義としては「帰化人」のものをそのまま流用している。むしろ「渡来人」という名前にふさわしく、日本に骨を埋めた外国人だけでなく、数年滞在して帰国した外交使節や僧侶、日本との交易を行う商人なども含むべきだ、という主張には理がある。いっそ吉備真備や最澄や空海など、外国で技術知識を学んで戻ってきた日本人も含めるといいと思う。
上代の朝鮮半島からの渡来人の受け入れ体勢は、最初は葛城氏や吉備氏のような豪族が主体で、欽明天皇のころから天皇家の王朝が一本化していったらしい。大伽耶の倭府に吉備氏や河内氏がいるのは、豪族時代の名残りかな。
渡来人の伝承形態にも変化があった。はじめは氏族単位で親子の継承が当たり前だったが、やがて仏教伝来。僧侶は子供がいないから氏族と無関係な師弟関係の伝授しかなかった。これが他の技術知識にも影響を与え、学校のような施設での師弟伝授が一般化したという。
日本に帰化した渡来人は初め、最先端の外国の知識技術や元の国での地位を誇るように、高麗王だの百済王だのいった姓か、王や子のような旧国の旧姓を名乗っていたが、やがて朝廷から高倉、石川、江田、吉井などの日本っぽい姓を与えられて同化政策が行われた。しかしその後も、鎌倉の陳和卿、戦国末の鄭氏や沈氏、江戸初期の朱舜水、幕末明治のシーボルト、ポンペ、モース、ボアソナード、亡命者や拉致者やお雇い外国人などの渡来人による知識や技術の伝授は続くのであった。




主に平安時代の戦闘について、武器の特徴を解説し、その使われ方を今昔物語や平家物語などの文書で検証している。元寇や南北朝を経て戦国期への変化を概説してくれたらもっと良かった。



ナショジオのグラビア本。
事項の数は多いが説明文が短くて物足りない。


ビジュアルストーリー 世界の陰謀論
マイケル・ロビンソン
日経ナショナルジオグラフィック社
2019-06-20

なんか秘法でもあるか、と借りてみたが、座薬を入れて温湿布とマッサージするって普通の方法で、あとは在宅介護の経験談。



こういう本は借りるんじゃなく、買って手元に置くべきもんだなあ。
まあ昆虫は、ほとんどが食べられるからキノコみたいなハンドブックは不要という説もあるが。
ちなみに私が食ったことのある虫は、トンボ(羽根むしってるので種類はわからない)、チョウ(羽根むしってるので同左)、コガネムシ、コオロギ、ミールワーム、タケツトガ、ざざむし、イナゴ、クロスズメバチ、タイワンタガメ、カイコガ、クスサン、ツムギアリくらいだ。セミとカミキリムシとタランチュラ(昆虫じゃないけど)はいつかは食ってみたいと思ってる。



この本を読むまで誤解していたのだが、たたら製鉄は今でも岡山の山中で発見される、山中で素朴なカマド作って砂鉄溶かして鉧をこしらえる、原始的な製鉄とは違うのだな。
たたら製鉄は、①砂鉄を使用すること、②天秤鞴(左右にあるシーソーのような板を踏んで風を起こす)があること、③床吊り(炉の加熱により土中の水分や冷気が昇ってこないよう、地下に石や焼き土や鉄くずを敷きつめる)があること、を条件とし、成立は江戸時代の元禄か享保のころだという。
製鉄の原料は最初は鉄鉱石で、やがて鉄鉱石の枯渇により砂鉄を使用することになったというのも意外だったが、まあ製鉄は古墳時代ごろに朝鮮からかなり発達した形で入ってきたわけだから、進んだ鉄鉱石利用が最初からあっても不思議はないか。金は、どうやら平安鎌倉室町まで砂金の採取で、金鉱石を掘りだすのは戦国の武田家あたりからのようだが。今川も砂金だけじゃなかったっけ。
製鉄の現場は、最初は炭の原料である山林の近く(砂鉄よりも木材が重要らしい)だったが、やがて遠方からでも良質の炭や砂鉄など原料を大量に運搬でき、製造した鉄も安価で大量に運搬できる海岸で行うのが主流になったとか。まるで戦後の製鉄日本と同じだなあ。



「武門の棟梁、天下を平定す」ってサブタイは誇大すぎるなあ。
まあ当時の評判はそうなんだが、当時の世評って京都にこもりっきりのお公家さんと、その公家の家から出て、実家と自分の寺しか知らないお偉い坊さんの日記や書簡だからなあ。当時の天下が近畿という狭い範囲であるとともに、当時の世評には三河の百姓や駿河の漁師や伊予の海賊や博多の商人は参加してない。
この本で六角定頼の歴史をたどってみても、しょっちゅうクーデターが起こる将軍家と、力関係でコロコロ変わる管領家のバカバカしいコップの中の闘争で、あるときは戦力として利用されあるときは敵を討つ名目として利用した、戦上手と言うよりは世渡り上手のイメージしか出てこない。
定頼の息子が、織田信長に即刻近江から追い出されたことで有名な承禎入道(名は義賢)なのだが、その経緯を見ても六角家が近江国人の掌握もできてなかったことがよくわかる。

あと個人的には、あとがきとはいえ「あえて言おう、カスであると」とかガンダムのセリフを書くのはげんなりだなあ。歴史家はもっといかめしい顔していてほしい。この著者は45歳くらいなんだが、30代の歴史学者なら論文の中にも「だが断る」とか書いているのかなあ。



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