志村建世のブログ

多世代交流のブログ広場

2013年07月

火野葦平の「花と兵隊」を電子書籍で読む

 社会批評社から復刻発行された火野葦平の「兵隊3部作」の3冊目、(「土と兵隊」「麦と兵隊」は既刊)の「花と兵隊」を、電子書籍で読みました。
 新刊を電子書籍で買うというのを、初めて経験してみました。アマゾン kindle の端末を使って本を検索し、「ワンクリック購入」ボタンを押すと、即座にダウンロードされて読めるようになりました。購入を決めてから秒単位の操作で完了し、「購入代金」は、紙の本の1500円(税別)に対して900円(クレジット引落し)でした。
 その読後感想文を書こうとしているのですが、ちょっと勝手の違うところがあります。いつもは本を手近において、目次や該当個所を参照しながら書いて行くのですが、電子書籍ではパラパラめくって見当をつけることができません。字の大きさで頁割りが変りますから、ページ数で特定はできないのです。電子書籍ならではの「付箋つけ」の機能もあるようですが、面倒そうでまだ使っていません。
 そこでとりあえず、目次だけを頼りにして、あとはすべて記憶に頼って書くことにします。
 この本は、著者が杭州警備隊として任務についていた時期のことを書いており、戦闘場面はありません。敵地であった町を占領して駐屯し、離散していた現地人もしだいに帰ってきて、日本の占領下で町がそれなりの活気を取り戻す時期のことを書いています。
 軍は既存の建物を任意に接収して軍の宿舎とするのですが、そこには所有者に対する若干の配慮があります。近隣の農家の作物を入手するにも、基本的に略奪せず、金銭を支払おうとします。最初は日本の金が信用されないのでタバコなどとの物々交換ですが、やがて現地人の協力組織もでき、日本の金銭で買い物ができるようになって行きます。
 これらの風景は、戦後の日本で見た「進駐軍」と日本人との関係と、ほぼそのままに重なります。そして暇さえあればタバコと賭け事にふけっている現地人の中でも、心ある青年の中には、日本との協力を通して中国の再建を図りたいと、熱心に語りかけてくる者まで現れるのです。
 日本兵の中にも、現地の娘と恋仲になる者が現われ、一途な勉強でたちまち中国語に上達して周囲を驚かせたりします。平和になったら結婚して中国に住むと宣言して、娘の両親を喜ばせるのですが、軍が故国に凱旋して除隊になるという話は、期待されながらも裏切られ続けます。
 中国の戦線にも、日本がアジアの盟主となって新秩序を作るという夢が、一時的にせよ絵そらごとでない理想と思われた時代があったのでした。これは今は語られることのなくなった、この戦争の一面です。
 その意味で、思ったよりもずっと深い興味で読めました。ご希望の方に貸してあげたいとも思いましたが、電子ブックは借り貸しが簡単にはできませんね。

「つぎつぎになりゆくいきおい」を見ている私たち

 日経新聞7月25日の1面コラム「春秋」に、この言葉が引用されていた。政治学者の丸山真男が唱えたフレーズで、主体的に何かを「する」よりも、自然に次々に「なりゆく」ことの勢いに身を任せるのが、日本人の思考と歴史を解くカギだという。
 そう言われると、思い当ることはある。民主党による政権交代の熱気も、その後のゴタゴタと幻滅の連続も、意外に早かった安倍自民党の政権復帰も、すべてが自分が参加してやってきたというよりも、「次々になりゆく勢い」を眺めていたような気分がある。自分も投票した選挙もあったのに、どうしてそのように感じるのだろうか。
 選挙については、世論調査という名の事前予想に影響されている部分はあると思う。選挙後の議席配分まで予想されてしまうと、投票しても、ただ予想を追認するだけのことになってしまう場合が多い。最近の世論調査は、癪にさわるほどよく当るのだ。「まだ態度を決めていない人もいるので、投票日までに変化する可能性もある」などと言われるのが空々しい。
 かといって事前調査を禁じることも難しいだろう。世論調査を無効にする絶対確実な方法は、サンプルに選ばれてマスコミの質問を受けた人の全員が回答を拒否することなのだが、これも言うは安いが実行は容易であるまい。かくして事前報道は選挙のプロたちの作戦資料となり、集票マシーンは保守革新を問わずフル回転して予想通りへの結果へと導く。
 もちろん選挙のことだけではない。原発の再稼働でもオスプレイの配備でも消費税の増税でも、「次々になりゆく勢い」は威力を発揮する。それらは自然災害でもあるかのように、いつの間にか既定の事実として、この国の現実になっている。なりゆく勢いで世界を相手にする戦争に突入した時代と、少しも変っていないのではないか。
 「春秋」の筆者は歴史意識の「古層」がぬっと顔を出したと弁じて終っているのだが、それではあまりにも進歩がないではないか。現状追認しか知らぬ国民に民主主義による自己決定はできない。それはおよそ「理想」というものを持たない国民でもある。政権にとって、これほど好都合な国民はないだろう。
 われわれは少数派になったことを自覚しようと村雲司氏は書いた。少数派が言論の力で多数派になるところにこそ民主主義の真骨頂はある。「つぎつぎに勝ち取る理想」は、ここから始めるしかないのだ。

映画「風立ちぬ」を見て

 昨日、宮崎駿の話題の映画「風立ちぬ」を見てきました。宮崎監督の個人的な思い入れを、そのまま作品化したもので、いろいろな見方ができるでしょうが、人生を総括する映画を作っておきたかったのだと、私は思いました。
 戦闘機の設計も、あらゆる創造的な仕事と同様に、恋に似ています。恋人を抱きしめて妻にしたら、たぶん恋は終ります。それでも人は恋したことを後悔しないでしょう、まして形あるわが子として何ものかが世に残るとしたら。宮崎監督の生涯も、そのようにして終るのでしょう。
 終戦後に日本の空を占領して飛び回ったアメリカ軍機の中に、ひときわ目立つ戦闘機がありました。F4U(コルセア艦上戦闘機)という名を、小学6年生だった私は日記に記録しています。「逆ガル型」と呼ばれる、主翼がW字型に軽く上向きに折れ曲がっている飛行機です。当時最新鋭で、朝鮮戦争でも活躍したとウィキペディアで解説されていました。
 この形の戦闘機の設計図を、日本でも堀越二郎が書いていたとは知りませんでした。ただしその後の主流にはなっていませんから、特にすぐれた性能でもなかったのかもしれません。しかし最先端の新技術を開発し続けた堀越の天才性を示す事例ではあったのでしょう。なお余談ですが、映画に登場する同僚の本庄季郎技師の息子が、武蔵高校尋常科から高校卒業まで私と同期でした。
 この映画は「子供の夏休み向けアニメだと思って見に行くと難しい」と言われるそうですが、理想の戦闘機への夢は、少女への恋と重なります。その理想の戦闘機とは、「これで機関銃を載せなけりゃうまく行くんだが」という言葉で技師たちが大笑いする場面に集約されていました。理想的な戦闘機は美しい、しかし殺戮と破壊を目的とする兵器であるという宿命から逃れることはできないのです。
 いっしょに見に行った妻は、「風立ちぬ、いざ生きめやも」のラブロマンスの部分に引かれたようですが、婚約者が「美しいままの私」だけを見せて療養所へ帰って行く場面に、大いに共感したに違いありません。辛酸を共有する妻になるのと、美しい恋人のままでいるのと、女にとってはどちらが魅力的な人生なのでしょうか。
 そんな感傷にひたる間もなく、映画は終結に向かいます。B29も美しい飛行機です。その大群が無数の爆弾を運んできます。地上は火の海です。堀越の新型機もゼロ戦も、ひたすらに美しい姿を見せながら、煙霧の上を編隊を組んで飛んで行きます。あれは男の中の男たちの夢でした。その夢は、人類に何をもたらしたのでしょうか。そして私たちは、今もどこへ向かって飛んでいるのでしょうか。

マイペース酪農と地球の大きさ(6)観光地と廃墟と



 藻琴峠から見た屈斜路湖です。高いところに立ち、腕を広げると鳥のように飛べる気がして、実際に滑空する夢を見たことが2度あります。それでパラグライダー教室に行き、10メートルほど飛んだことが一度だけありました。
 私が最初に道東へ来たのは昭和49年(1974年)、全繊同盟(現UAゼンセンの前身)の「ノサップで会おう!」青年集会への取材参加で、若い組合員たちと札幌からレンタカーで来たときでした。北方領土返還運動のハシリとなる活動で、屈斜路湖を見下ろす美幌峠でバンザイをした場面が強烈な記憶を残しています。その湖を、ふたたび見ることができました。そのときのリーダー高村仁氏は、すでに故人となりました。



 この日の宿は屈斜路湖ホテルでした。夜は7時過ぎから寝て睡眠不足を解消し、早朝の露天風呂で屈斜路湖の日の出を見ました。4時15分。緯度が高いから朝は早いのです。



 4日目は知床方面を一巡しました。斜里からオシンコシンの滝を経てウトロまで行き、知床横断道路で羅臼岳の下を通過しました。峠の少し前からランドクルーザーの運転をさせて頂いて、この位置に停車しました。晴天に恵まれましたが、高層にきれいな薄雲がかかるのは、北国の空だからでしょうか。



 羅臼から東海岸を南下すると、海の向こうには国後島が横たわります。旧島民で、せめて島の見えるところに居たいと住居を構えている人もいると聞きました。しかしバブル期に観光レストランとして開業し、その後廃墟となって今はカモメと烏の巣になっている施設も並んでいました。



 廃墟は、見捨てられた公共工事や観光施設に限りません。夢破れ、あるいは後継者不在などで廃墟となった酪農施設も少なくはないのです。ただ、いまのところ土地は近隣に買い取られて、放棄地にはなっていないということです。
 北海道にいた間、やはり土地の広さと、相対的な人の少なさが印象的でした。帰りの飛行機が関東地方の上空で高度を下げてきたとき、工場群やゴルフ場、住宅団地、細切れの農地などが複雑に入り組む姿を見て、なにか非常に不自然なものを見るような気がしました。
 マイペース酪農は人を主人公とした理念ですが、地球にとってのマイペースも、やはり北海道に、より多く残っているのは明らかでした。自分はどこで、どのようにマイペースで暮らそうか、そんなことを考えさせてくれた旅でした。

ブログ連歌(324)

6459 そりゃないよ 原発改憲 TPP
6460  自公勝たすな 負けるな護憲 (建世)
6461 留まりし 筑波への道 拓きゆく (みどり)
6462  核の呪縛は なお重けれど (建世)
6463 誘いなく 哀れ民主は 壁の花 (うたのすけ)
6464  冷めし人心 うたかたと消ゆ (みどり)
6465 鎧見た 笑顔の下の チラリズム (うたのすけ)
6466  ぽろり本音で 「われは官軍」 (建世)
6467 経済と 二言目には 言うけれど
6468  先ずは庶民の 財布大事に (うたのすけ)
6469 戦後処理 恨みっこ無しで 切り抜けよ (うたのすけ)
6470  暴走とどめ 和平を軸に (みどり)
6471 牛だって TPPは 願い下げ 
6472  地産地消の 草で長命 (建世)
6473 出たものは 最後まで食べる 戦中派 (そりゃないよ獣医さん)
6474  配給暮らしの 条件反射で (建世)
6475 原発改憲TPP 八割いやでも 賛成票に (そりゃないよ獣医さん)
6476  金の威光が 何よりまさり (建世)
6477 そりゃないよ 死のうとしたが 死にきれぬ
6478  五人も殺して なんたる言い草 (うたのすけ)
6479 細々と 森林守るに 崩れゆく (みどり)
6480  生かせ地球の マイペースこそ (建世)



マイペース酪農と地球の大きさ(5)戦跡と基地問題と



 北海道について忘れてはならないのは、基地問題と戦跡の存在です。根室半島南(太平洋側)の海岸では、2個のトーチカを検分しました。社会批評社の小西誠さんが出した「本土決戦戦跡ガイドPart1」で紹介されていたものと同じでした。アッツ島玉砕後に、アメリカ軍の上陸に備えて築かれたものです。
 入り口がコンクリートで封鎖されており中に入れなくなっていましたが、位置も構造も、どのように使うつもりだったのか理解に苦しむ建造物でした。やたらに頑丈な厚いコンクリート造にもかかわらず、有効そうな方向への銃眼さえありません。第一、敵がわざわざトーチカのある場所を選んで上陸してくる可能性は低いでしょう。机上で考えた員数合わせのように思われました。



 根室周辺には、戦時中に3つの飛行場が作られたということです。その一つには当時の滑走路の幅で舗装が残っており、地元の人たちが魚網の干し場として利用していました。非公式に黙認されて使っているようです。「作るには作ったが、飛行機はひとつも飛んでこなかったよ」という話でした。最大の無駄な公共工事は、やはり軍事施設でした。



 矢臼別の陸上自衛隊演習場は、「パイロット・ファーム」をつぶして作られました。沖縄のアメリカ海兵隊が定期的に実弾演習に訪れ、火砲が根室花咲港に陸揚げされ国道を運ばれるたびに反対デモが起こります。今年も米軍の誤射で民有地に砲弾が落ちる事故がありましたが、治外法権的に処理されました。





 敷地内には、買収に応じなかった人の私有地が残っています。代替わりしても手放すことなく引き継がれており、細い通路の奥に家と畑を維持しています。まだ行ったことはありませんが、原発に反対している大間の「あさこはうす」の立場も、これに似ているのでしょう。



 私有地の入り口には広場があって、中央に舞台が立っていました。毎年ここで「矢臼別平和盆おどり」が行われます。今年は8月9日から11日までです。



マイペース酪農と地球の大きさ(4)マイペースとは



 朝の搾乳を終って、放牧地へ向かう牛たちです。人間の誘導はなく、毎日の習慣として勝手に群となって歩いて行きます。牧草地には、牛が直接に草を食べる放牧地と、飼料になる草を育てる採草地との二種類があります。ちょっと見には同じようですが、放牧地には牛を囲う柵を立ててあるので違いがわかります。北海道では冬が200日と長いので、冬のための採草地のほうが広いのです。
 一頭の牛が食べる草の量は決まっていますから、土地の広さで飼育できる牛の数は決まります。1頭当りおよそ100メートル×100メートルの1ha、昔の農地の単位で「1町」に近いので、今も日常の会話ではよく使われていました。
 そして一家族3名程度の労働力で飼育できる頭数の規模は、50頭から80頭ぐらいになるようでした。ざっと計算すると1平方キロ近い面積になり、この範囲なら、牛の糞尿も敷地内の肥料として消化することができます。



 今は採草地の草刈が多忙な季節でした。採草地には、刈った草を固めてビニールシートでラップした巨大な「サイレージ」が点々と置かれています。昔はサイロに草を入れて発酵させ、冬のための保存飼料(サイレージ)としたものが、今はこの形で作られ、この段階から「サイレージ」と呼ばれているようです。サイレージには、畑の隅に積み上げて覆いをする方式もあります。



 酪農にはトラクターが欠かせません。いろいろな補助具をつけて、草刈り、乾し草集めと固め、そしてラッピング、運搬と活躍します。岡井さんのブログの写真集では、運転に活躍する母ちゃん、ばあちゃんの姿も登場していました。ここだけの話ですが、この人たちは、ほとんど免許なしで運転しているそうです。自分の土地の中だけで、道路には出ないから免許は関係ないのです。





 晩方からは、仲間の高橋獣医さんの家で開かれた「マイペース酪農交流会」を傍聴させていただきました。ふだんは昼から家族ぐるみでの交流になるそうですが、草刈り繁忙期なので夜間になったとのことです。酪農家と獣医師、町役場の職員、研修に来ている現役大学生も交えた多彩な顔ぶれでした。経験の語り合いを中心として、望ましい酪農のあり方を考える場です。
 時代は酪農の近代化と称する大規模化に向かっています。生産性の追求は、輸入穀物飼料と大規模設備投資による濃厚飼育、言わば牛舎の「養鶏所化」に行き着くかもしれません。しかし、人間も牛も無理なく無駄なく生きようというのが「マイペース酪農」です。
 働く中で、本当の人間の幸せを感じたという話が印象的でした。しかし交流は尾ひれをつけた失敗談や自慢話で盛り上がり、私はその内容の半分も理解できないまま輪の中にいました。みんな車での参加なのでアルコール抜き、それでも話し合いは夜の11時40分まで続いたのでした。

マイペース酪農と地球の大きさ(3)酪農獣医の仕事



 獣医さんの仕事は、無駄なく実質本位でした。車には、手術用具を含む、あらゆる必要品が積んであるということです。依頼の内容は事前にわかっているので、案内を乞うこともなく「患者」の牛のところへ直行します。





牛舎の乳牛は、朝と晩の2回、搾乳します。今はミルカーという搾乳器を装着して吸引し、パイプを通してタンクに集めるのが一般的になっています。タンクは冷却されていて、2日に1回ほどの頻度で集荷のタンク車に移すということです。出荷まで人の手に触れることがなくなりました。その代わりに生産農家の個別ブランドを識別する方法がなく、牛乳のブランド化の難しさという問題もありそうです。



乳牛には周産期のトラブルが多いようです。獣医さんは、腕を牛の体内に入れて、触診や産後の手当てなどもします。「3Kではおさまらない5Kぐらいの仕事だよ」という話でした。しかし牛は意外なほどおとなしくしています。草食動物は概して温和で、切開手術も局所麻酔で可能ということでした。



これは帝王切開した手術跡の手当てです。化膿しているので抗生剤の注射をしました。子牛は死産だったとのこと。
 獣医には、大別して小型動物、大型動物、そして行政関係という三つの進路があるそうです。小形動物は犬猫などペットを扱うので都会的で、最近は女性医師が増えているとのこと。行政関係とは、屠場、畜産防疫、動物園、保健所などの仕事です。畜産業に不可欠な大型動物の医療は、医師不足が続いているということです。
 獣医には、一般の医師とは違うところがあります。岡井さんの著書「そりゃないよ獣医さん」の前半部分には、獣医ならではの奇談・珍談の類が次から次へと出てきます。人間の医療なら生命が第一ですが、牛の延命は「乳牛として役に立つ」という採算が成り立たなければなりません。廃牛として共済金を貰ったほうが得な場合もあるのです。
 医者として誇れる難しい手術を成功させても、それで必ず感謝されるとは限りません。「そりゃないよ」という行き違いは、飼い主からも医師からも起こるのです。人の医療は「仁術」に徹していいけれど、牛の医療には「仁術と算術」がつきまとうのでした。
 この日常の経験が、岡井さんに「生命とは何か」という根源的な問題を突きつけたのではないでしょうか。人も牛も苦しまない「マイペース酪農」の提唱も、反戦・平和の運動への親和も、すべてはここから発しているように私は思います。

マイペース酪農と地球の大きさ(2)奥行臼鉄道遺跡

 別海町の面積は、ほぼ香川県と同じということです。この比較は香川県からは異議を唱えられているそうですが、とにかく広いことは確かです。しかし低温湿地が多いため土地の生産性が低く、酪農が盛んになったということは、牧草以外の作物が育ちにくいことを意味しています。人口は1万6千人に対して牛の頭数は11万を超えていて、牛乳の生産量は日本一ということです。



朝のひととき、岡井さん宅の庭でのコーヒータイム。子育て時代が終ってご夫婦での暮らしですが、手入れの行き届いた庭でこのような時間が持てるというのは、私には絵物語の世界のように感じられました。マイペースで暮らすといっても、自然とのかかわりにおいて、天と地ほどの違いがあります。土を踏まない生活が、人間にとって「自然な」ものであるわけがありません。なお、お連れ合いも民生委員・児童委員などをされていて、いきいきと活動的でした。どこかで写真を撮らせていただくつもりが、最後まで入れ違いで機会を逃したのが残念です。



私のリクエストで、奥行臼の鉄道跡地に立ち寄りました。平成元年に標津線が廃止されて以後、別海町には鉄道駅がありません。しかし奥行臼には明治の開拓期から昭和初年まで「駅逓」が置かれていて、馬を常備して交通と通信の拠点としていました。鉄道以前からの「駅」であったわけです。その駅逓が大切に保存されていました。



そこから遠くない位置に奥行臼駅の遺構があります。昭和初年の駅舎が保存されており、駅の前後には線路も残されていました。線路は貨物引込み線を含む3本があり、ポイントで合流して深い草むらの中へと続いていました。



駅舎の中も昔のまま保存されており、駅逓の案内人を兼ねた担当者が、毎日巡回して管理しているのでした。



さらに少し離れて軽便鉄道の遺構と車両が展示されていました。開拓期に活躍した「殖民軌道」が村営の「風連線」として維持され、昭和46年まで運行していたということです。軌道幅は軽便規格の762ミリと思われましたが、枕木は国鉄規格のものでした。ただし当時のままなのかどうかは、わかりません。手前の大きな円形の構造は転車台跡です。
 予備知識はなかったのですが、奥行臼は、日本の鉄道遺跡の聖地のような場所でした。望外の貴重な経験ができました。

マイペース酪農と地球の大きさ(1)これぞ北海道

 今月16日から20日まで、別海町を中心とする北海道の東部、根室半島から知床半島までの地域を、「そりゃないよ獣医さん」で知られる岡井健さんの活動に同行しながら旅してきました。獣医さんにもいろいろあって、犬猫などの小型動物を扱うのも獣医ですが、牛馬など大型動物を扱う獣医は、酪農には欠かすことができません。そして獣医の仕事は、患者が来院するのではなくて、すべてが「往診」なのですから大変です。
 岡井さんは長年にわたって獣医として牛たちや酪農家たちを見ているうちに、日本の「食と農」についての考察を深めて行きました。その結論をまとめたものが「そりゃないよ獣医さん―酪農の現場から食と農を問う」(新風舎2005年)です。この本を事前に読んで置きたかったのですが、版元が倒産していて、中古品には4万円以上の値がついています。結局、岡井さんの自宅で読むことができました。このシリーズの最後に紹介しますが、電子書籍としての再刊も考えてみる、ということでした。



 東京羽田から根室中標津空港へ、毎日1便の飛行機があり、14時少し前に到着しました。早速「診療車」を兼ねるランドクルーザーで走り出します。見渡すかぎり車も人も見えない直線道路。これぞ北海道の風景と感激したのですが、何のことはない、道東のごく日常の風景なのでした。



直線道路が多いのは、道東の開拓の歴史と関係があります。寒冷な海霧から農地を守るために、一定の間隔で「格子状防風林」を作り、その区画ごとに開発を進めて行ったのだそうです。開陽台という展望施設で見たビデオによると、防風林による保温効果は、上空150メートルにも達するということです。木立に囲まれた牧場という北海道らしい風景は、こうして作られたのでした。写真は帰路の飛行機からのものです。



観光目的ではないと言っていたのですが、基本的に岡井さんの案内にお任せして、野付半島の先端近くまで行きました。途中でオジロワシが岸壁に止まっているのを発見し、岡井さんは望遠カメラを取り出しました。機材は私のものより数段上等です。野鳥の会の会員でもあり、植物にも造詣が深くて、地元の観光事業に提供する写真家でもあるのでした。野付半島の内陸側は、おだやかな内海です。ここではハマナスの花が立ち木として咲いていました。バラ科の木だから条件さえ良ければ大きくもなるのだそうです。



湖畔の草地に子連れのエゾシカがいました。親の足のかげですが、後ろに子がいます。車が近づいて窓を開けても少しも動じることなく、カメラにポーズをとるかのようでした。天敵がいなくなり、人を怖がることもなくて異常に繁殖し、冬季に樹皮を食べて木を枯らすので、問題になっているということでした。



初日の宿泊は別海町の郊楽苑でした。露天風呂もある温泉つきの宿泊施設です。写真は翌朝の出発前のものです。岡井さんは獣医の手術着で、足にも防具をつけています。私とは、ちょうど10年の年齢差ということでした。

開票速報を聞きながら、骨たちは怒っていた

 さきに小説「阿武隈共和国独立宣言」を書いた村雲司さんからメールをいただきました。メールには「二等兵の恨」と題した9枚の絵が添付されていました。開票速報を聞きながら、これらの絵を描くことに没頭していた、彼らの怒りが描かせたのではないかということでした。
 130万の未帰還兵の骨は、アジアの各地に散乱し、その多くは今は土に埋もれているでしょう。でも彼らが国家の行為として動員され、現地に棄てられた事実は消すことができません。
 あの開票速報を聞きながら、私も半ばはあきらめの気持でいました。そして永久にあきらめることのできない骨たちがいることを忘れていました。村雲さんの絵は、大事なことを思い出させてくれました。
 村雲司さんは、これらの絵を八月十五日に丸木美術館の付属施設に飾り、その前で朗読するということです。



(追記・村雲司さんから、以下のメールをいただきました。私信ではあっても、作品の解説文でもあると判断して掲載させていただきます。)(以下引用)

この画を描きながら、頭に浮かび続けていた詩があります。
武田美通さんの「戦死者からの伝言」と言うものです。

“再び日本が、愚かにも戦争への道を歩もうとするなら、
南の島に散乱する我が骨片を拾い集め、白骨の鬼となって
決起する。戦争やめよと決起する。九条は私たちの祈りなのだ。
愛する後世の人々よ、私たちの死を無駄にはするな”

武田さんは鉄のオブジェ作家で、この詩はひしゃげた鉄兜を
被った骸骨が、三八銃を構えて、よろよろと立ちあがった姿でした。
自民が圧勝した今、例えばミンダナオ島のジャングルの奥で、
白骨の手が蠢き、周りに散る骨片を集め、つなぎ合わせている様が、
私には目に浮かぶのです。(引用終り)

「永久抗戦」なるものを強いられた兵士たちは、自分が仲間の食糧と
なることを覚悟していたとも伝えられています。
「おまえの肉体が生きて日本に帰れるなら、おれもおまえの肉体と一緒に
日本に帰れるのだ」。
戦争は絶対にいけません。こんな悲惨の中に没して行った、先輩たちの
「戦争はならぬ!九条は私たちの祈りなのだ」という呻きが響いて来るのです。
今度の選挙で私たちは少数者であることがはっきりとしました。
少数者としての覚悟と気概をもって、これからの正念場に向かわなければ
ならないと感じています。


まだ投票に行っていない人、これからでも行きましょう

 きょうの参議院選挙、まだ投票に行っていない人は、今からでも行きましょう。情報によると、投票率は低そうです。投票率が低ければ低いほど、これからの投票の効果が出てきます。
 ただし、自民党に投票するつもりだったら、現状追認の無意味な死票を増やすだけですから行かなくて結構です。
 ぎりぎりのタイミングですが、こんな関連記事があります。

96歳の遺言ーーーおけいさんから聞き書きした話
http://hisakobaab.exblog.jp/18126416/

『熱風』2013年7月号特集「憲法改正」(852KB)
宮崎駿・スタジオジブリの緊急配信
http://www.ghibli.jp/10info/009354.html

知らずにいて選挙を棄権したら、後悔しますよ。

明日は投票日

 選挙戦最終日の東京へ、根室中標津から帰ってきました。今回の旅は5月に計画したのですが、期せずして終盤の盛り上がりを駅頭で横目に見ながら帰宅して、明日の投票に臨むことになります。
 優勢を伝えられる自公与党と、対照的に共闘もままならぬまま乱立する野党の現状を見れば、大筋の帰趨は動かしがたいようにも思われます。投票率が低いという予想は、なるようにしかならないという、諦めの心理を反映しているのでしょうか。
 しかし、戦わずに負けたのでは負けたことにもなりません。無関心の白紙委任は、どのような政治的決定にも、無条件に従うことを意味します。それは自分の運命を他人の裁量に任せることと同じです。
 私は原発からは速やかに撤退し、平和憲法は変えるべきでないと思います。その観点から、今の政権与党を支持することはできません。そして以前から民主党のサポーターであり、昨年からは緑の党にもサポーター登録をしました。いずれも今の日本に必要な政党と思うからです。
 ですから明日は、東京地方区では山本太郎に、比例区では民主党に投票することとします。まだ決めていない方がおられましたら、参考になさってください。

北の宿からこんばんは

 北海道へきて1泊目は別海町の温泉、2泊目は「そりゃないよ獣医さん」こと岡井健さんのお宅、3泊目は屈斜路湖温泉、そして最後の4泊目がまた岡井さんのお宅になりました。涼しくて、ほとんど汗をかかない4日間でした。
 獣医さんについて、「マイペース酪農」を実践している牧場を巡回しました。話し合いの会にも参加させていただきました。自衛隊・米軍の演習場の門前や周辺にも行ってみました。獣医診療車のランドクルーザーの運転も、少しだけですが、させて貰いました。
 いろいろなことのあった4日間でした。こちらでも選挙はやっています。
 明日、帰京してから順次ご報告します。
 まずは、無事にやっていますというお知らせまでに。

「日本が拉致問題を解決できない本当の理由」を読む

 「日本が拉致問題を解決できない本当の理由(わけ)」(荒木和博・草思社2009年)を読みました。著者とは、彼が民社党の教宣担当者だった時代に、党の解党にいたるまで、長期にわたって仕事上のおつきあいがありました。この本の存在を知ったのは最近のネット情報を通してですが、どういう経過だったかはもう思い出せません。私も不思議に思っていたことの一部が、この本で少しわかるような気がしました。
 結論を最初に言ってしまえば、日本の官僚に任せておくかぎり、拉致問題は解決しないということです。「北朝鮮の態度が変って自主的に拉致者を返してくれるようになるのを待つ」ことに決めているからです。著者は「北朝鮮に拉致された日本人を救うための全国協議会」(救う会)の事務局長を経て、現在は「特定失踪者問題調査会」の代表ですが、政府認定の拉致被害者と、北朝鮮による拉致の可能性を否定できない「特定失踪者」との間には、大きな人数の違いがあります。「官民一体」の運動では、情報が充分に生かされない面があるようです。
 そもそも拉致問題には幅の広いグレーゾーンがあります。戦後の「帰国運動」によって北朝鮮に渡った「日本人妻」を始めとして、自分の意思で北朝鮮に入ったまま帰れなくなった人たちもいます。さらに朝鮮戦争以来、北朝鮮も韓国も、互いに建前としては朝鮮の全土を「わが国土、わが国民」と思っている「内戦の停止状態」であるに過ぎないのです。そして北朝鮮にとっては「必要な人材を連れてくる」ことは当然の工作の一部で、それを警戒の薄い日本の領域にも拡大したのが拉致問題という文脈も成り立つのです。
 しかし拉致が犯罪行為であることは明らかで、北朝鮮が国際的な孤立を打開するために、拉致問題を手がかりとして日本との関係を改善したい動機を持っていることも事実です。小泉訪朝による謝罪の表明と5名およびその家族の帰国が実現したのは、当時の政府認定者の「これで全部」の全面解決になる筈でした。しかし双方の思惑の違いと日本の世論の硬化によって政府は約束を守れなくなり、中断して今に至っています。
 現体制の北朝鮮に援助を与えて拉致問題の解決を図る方式については、著者は否定的です。中立国を含む民間の情報能力をフル活用して、生存者の居場所まで特定した強い要求を北朝鮮に突きつけ、合わせて軍事独裁政権に揺さぶりをかけ、北朝鮮の民衆を解放するという「正論」を述べています。

(追記・本日から20日土曜日まで、北海道野付郡別海町の「そりゃないよ獣医さん」のところへ行ってきます。「羽田から根室中標津空港へ、ポンと来てください」とお誘いがあったので、本当にポンと行くことにしました。旅先でブログの更新をするかどうかは未定です。) 

松戸市民劇団35周年公演「流れ星」を見る

 「うたのすけ」さんの古巣、松戸市民劇団の公演を、昨日見てきました。松戸駅に近い松戸市民劇場は、超満員の盛況でした。松戸の市会議員や市役所職員、消防職員、現役の大学生、高校生まで含む純アマチュアの劇団です。最初は市民オーケストラの演劇部だったそうですが、それを現在のNPO法人にまで継続した中心人物は、座長の石上瑠美子さんでした。ここまでつぶさずに来られただけでも、大変な苦労がなかった筈がありません。
 「流れ星」は作・宅間孝行の現代劇で、2006年から公演記録があります。これを石上瑠美子の演出で、登場人物13名の市民劇団「総力戦」の舞台に仕上げていました。魔法使いが登場してタイムスリップの願いを叶えたり、背景に安保闘争と内ゲバの時代があったりする珍しい作品ですが、中心テーマは夫婦の倦怠と愛の再発見です。「あのとき一言こういえばよかった」という後悔を、魔法使いが救ってくれるのです。それで結果が少しも変らないとしても。
 細かい人物設定が追い切れなくなって少し眠くなる時間もありましたが、団員の真剣さは伝わってきました。稽古の時間は土曜日曜休日の夜間だけという厳しい条件下で演劇を続けている、その原動力は何なのだろうということも考えました。大半の団員はプロの役者としての出世を目指しているのではなさそうです。演じることの楽しさと、クラブ活動的な親密な連帯感が支えになって継続しているのでしょう。
 プログラムに掲載の公演記録によると、市民劇団は松戸市「すぐやる課」40周年記念事業に参加したり、震災復興支援のチャリティー歌謡ショーなども開催しています。私の知るかぎり、このような市民劇団の存在をほかに知りません。一時は全国的に有名になった「すぐやる課」が、今も健在であるらしいのも心強く思いました。かつて松戸市議選を取材して、政治活動の教材スライドを制作したことがあるのを思い出しました。
 東京のすぐ隣り、江戸川を渡ったらすぐ松戸市です。寅さん映画の帝釈天や矢切の渡しもすぐ近くです。この9月8日にも、松戸市民劇団の主催、松戸探検隊ひみつ堂の共催で「第2回震災復興支援・チャリティー歌謡ショー」があります。

ブログ連歌(323)

6439 原発は ゼロへと発す 候補者を
6440  「現実知らず」 誹るを厭う (みどり)
6441 現実を 知っても隠す 無恥の顔 (建世)
6442  見事ひな壇 いけしゃあしゃあと (うたのすけ)
6443 原子炉の 実態隠し どこまでも (みどり)
6444  地球の反対 抜けて出るまで (建世)
6445 国民に 優しい国が 強い国
6446  護憲九条  原発廃止 (霞) 
6447 花畑 ええじゃないか 砂漠よりは (パープル)
6448  野の花とやら 数多けれど (建世)
6449 オレオレは マツケンサンバ だけでいい (パープル)
6450  名を連呼のみ 選挙カー行く (建世)
6451 再稼働 傳馬表かよ 順位決め (うたのすけ)
6452  国を賭けての 大博打とは (建世)
6453 碧き海 本気で守れ 汚染から (みどり)
6454  水際作戦 荷は重くとも (建世)
6455 百万の 署名始めた 福島の
6456  県内原発 ゼロへの悲願 (みどり)
6457 最低でも 県外国外 地球外 (建世)
6458  日本の明日 想えば納得 (うたのすけ)
6459 そりゃないよ 原発改憲 TPP
6460  自公勝たすな 負けるな護憲 (建世)   

沖縄との温度差は原発でも同じ、本土のマスコミは情報管制されているのか

 今は沖縄に在住されている高江洲瑩(あきら)さんは博士号を持つ化学の先生で、そのブログ「読谷の風は、沖縄の新聞の論説を頻繁に引用・紹介してくださるので参考になることが多い。基地問題はもちろんだが、原発についても、本土の新聞が報じない情報を知ることができる。私は沖縄の新聞を購読する代わりにもなると思って重宝させていただいている。
 周知のように沖縄には原発がない。電力会社の中で、抱えている原発がゼロなのは沖縄電力だけである。だから書けるのかもしれないが、昨日の「『世界最高』は欺瞞だ」は衝撃的だった。原子力規制委員会が決めた新しい審査基準は、世界最高レベルの厳しさどころか、現在の世界基準では穴だらけの甘さだというのだ。
 原発にもいろいろあって最新は第4世代だそうだが、日本の原発は古いものが多い。最新基準を適用したら合格できるものは一つもなくなってしまう。そこで基準を緩めるのだが、第2世代の基準さえも猶予期間を設けたりして妥協しているというのだ。
 これらの論拠として佐藤暁(さとし)という人の名が出ている。アメリカのGEで働いていた原発コンサルタントということだが、検索してみると、以前は福島のメルトダウンを早期に指摘するなどテレビにも活発に登場していたようだ。しかし最近では本土のマスコミでは見かけないような気がする。原子力規制委員会の新しい基準づくりからは、遠いところにいる人ではないだろうか。
 沖縄と本土との間にある「温度差」とは何なのだろう。基地問題が典型だが、日本全体では小さな問題(にしておきたい)が、沖縄では切実な問題だということは、裏返せば、沖縄だけが偏向しているのではなくて、沖縄にだけ真実の報道が存在しているのに、本土では「日本全体のため」の情報管制がかかるということではないのだろうか。
 もちろん、あからさまな規制ではなく、硬軟とりまぜた「空気」による自主規制なのかもしれない。しかし同じ日本語の新聞の中でこれだけの差が出てくると、原発安全基準の「世界最高」説は、ますます怪しくなってくる。もしかすると「世界最高」は公式な説明では全然なくて、私たちが勝手に思い込むように仕向けられていただけなのかもしれない。本当に怖いのは、たぶんその点だ。

『資本主義がインターネットを民主主義の敵にする』という警告

 「マスコミに載らない海外記事」さんの最新記事は、『資本主義がインターネットを民主主義の敵にする』という不気味な警告を紹介している。日本ではインターネットは今回の選挙で初めて解禁されて、民主主義の進展に役立つのではないかという期待感がある。ところがインターネットが一歩先を行っているアメリカでは、資本主義がインターネットを変質させ、権力支配の道具にするという悲観的な見方が論じられているのだ。
 紹介されている議論は必ずしも全部が説得的ではないが、インターネットが独占資本の重要な収入源であることは理解できる。その利益を最大化しようとすれば、利用者を好ましい方向へ誘導したくなるのは当然の成り行きだろう。好ましくない傾向を抑制するためには、特許を設けて法的な圧力を加えるなど、いろいろな方法を開発することができる。
 インターネットは今や公共財になっていて、誰でも自由に使えるという先入観があるのだが、たとえばこれは「出版・言論の自由」と全く同じものなのだろうか。インターネット空間の利用について私たちは使用料を払っていないが、これは誰が費用を負担して維持されているシステムなのだろうか。考えはじめると疑問は尽きない。
 私はこれまでそんな問題意識を持っていなかったから、まだ意見というほどのものはまとまっていない。ただ、インターネットの上で読んだり書いたりするだけで世の中が変るほど簡単でないことは承知している。私としては、仲間を見つけたり行動の予定を知ったりして、リアルの行動の参考にするのに使っているという実感がある。
 今回の選挙で、インターネットを利用した影響が、どれほど現れるかに興味がある。少しでも投票率が上がったり、有権者の自由な意思が表現しやすくなったと見られるような結果が出るといいとも思っている。政権側も、インターネット解禁が自分たちにとって有利に働いたか、その逆だったかを仔細に検討することだろう。
 もちろんインターネットを民主主義の敵にしてはならないのだが、どうしたら民主主義のツールとして育つのかも未知数だ。いずれにしても一般的な表現・言論の自由と同様に、インターネットも「国民の不断の努力」によらなければならないのだろう。

東京は山本太郎で決まりだな

(熊さん)ご隠居、東京で山本太郎が有望だって話ですよ。
(ご隠居)わしも聞いたよ。つまらん選挙になりそうだったのが、少し面白くなってきたな。
(熊)偶然だけど政見放送ってやつを見たんですよ。しっかり前を向いて、まっすぐ言いたいことを言ってる感じで、ありゃ原稿読んでるんじゃないね。本音を言ってるのが伝わりますよ。
(隠)まあ、役者だからしゃべるのは本職だ。だがな一時の人気取りで出てきたタレントとは違う気がするな。ホームページに「新党・今はひとり」と書いてる。扱いは無所属だが、今はひとりというのがいい。ちょっと調べたら去年の衆院選では、杉並区から出て小選挙区だから当選はしなかったが、7万票あまりを集めて次点になってた。
(熊)ただの泡沫候補じゃないんですね。
(隠)フェイスブックで突撃インタビューというのも見つけたんだが、なかなか良かったよ。脱原発一本槍で突っ走る姿勢だが、底抜けに明るいのがいい。誰でもいらっしゃい、目的が同じならいいじゃんかってわけだ。これならいつまでも一人じゃない。議員になっても言いたいことを言いつづけて、一仕事やるだろうと思ったよ。
(熊)ご隠居は山本太郎のこと、前から知ってたんですか。
(隠)緑の党にサポーター登録してるから、提携の話をしてるのは知ってた。結局無所属で、緑の党は推薦で応援することにしたんだよ。ついでだから言っとくけど、「緑の党」は「みどりの風」とは違うんだ。だから比例で「みどり」と書くと混同される。「緑の党」または「グリーン」と書かなくちゃいけないんだよ。
(熊)ご隠居は民主党のサポーターでしょ。両方のサポーターだったら、投票はどうするんです。
(隠)そこはむにゃむにゃ、わが軍の秘密だ。緑の党は育てたい、民主党も沈没してもらっては困る。そういう二股で考えてるのは、わしだけじゃないと思うがな。でもな、底が見えててつまらん選挙になりそうだったのが、これで急に面白くなってきた。東京で山本太郎がトップ当選したら、これは確実に既成政党への痛烈な批判になる。日本の選挙に新しい風か吹くよ。
(熊)へぇー、そりゃいいや。想田監督の「選挙」映画も、無駄じゃなかったってことになりますね。

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プロフィール
志村 建世
著者
1933年東京生れ
履歴:
学習院大学英文科卒、元NHKテレビディレクター、野ばら社編集長
現在:
窓際の会社役員、作詞家、映像作家、エッセイスト

過去の記事は、カテゴリー別、月別の各アーカイブか、上方にある記事検索からご覧ください。2005年11月から始まっています。なお、フェイスブック、ツイッターにも実名で参加しています。
e-mail:
shimura(アットマーク)cream.plala.or.jp
著作などの紹介
昭和からの遺言 少国民たちの戦争 あなたの孫が幸せであるために おじいちゃんの書き置き
「少国民たちの戦争」は日本図書館協会選定図書に選ばれました。
詳細はこちらをご覧ください
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