国家戦略特区の事業として認められた獣医学部新設に際して、「官邸の最高レベル」が関与したことを示す資料が出てきた。獣医師の不足解消が国家的な緊急課題なのかどうか、その辺の事情は北海道の「そりゃないよ獣医さん」にでも聞いてみたいところだが、内閣府と文科省との間で「『できない』という選択肢はない」と記載した文書の存在がわかったということだ。
 最高権力者の意向に添うためなら、官僚は可能なあらゆる法律解釈と権限を駆使して協力するだろう。そして常識では不可能なことでも合法的な決定にすることができる。ただし事が明るみに出ると「公平であるべき行政を歪めた」という批判を受けるので、「圧力をかけたことは一切ない」「公正な判断によって決定した」と答えることになっている。
 「最高レベル」からこういう見解が示されると、官僚は絶対に「自主的に判断して決めた」という虚構を守らなければならない。口が裂けても本音ではものが言えなくなるから、苦しさに堪えかねて重大事件では自殺者を出したりもする。しかし今回は、「最高レベルの意向」を示す客観的な証拠が出てきたのだから困ったことになった。文書そのものを「怪文書」として「なかったことにする」しかない所に追い込まれている。
 この加計学園問題は、安倍首相にとっては森友学園以上に深刻な問題になりそうだ。そこには森友学園のときに「私(や妻)が関係していたということになれば、これはもうまさに総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきり申し上げておきたい」と言ってしまったことが、言霊のようにエコーしている。あそこで見得を切ってしまった勇み足が、またも首相を苦しめることになる。
 今回は「私は感想を述べただけで、なにも圧力をかけたわけでも、法律に反したことでもない。官僚が勝手にやったことだ」と開き直るだろうか。そして国民はそれを許すだろうか。支持率にはどのような変化があるだろうか。そしてまた誰よりも、安倍首相自身が、自分の発言の重みを、どのように考えるだろうか。この興味ある問題は、これからどのように発展するのだろう。