あまり目立たないニュースでしたが、JT(日本たばこ産業)がイギリスのたばこ大手ギャラハーを買収することで合意したと、15日の夕刊に出ていました。総額で2兆2千億に達する見込みで、日本企業による外国企業の買収としては、過去最大の規模になるとのことです。目的は国内市場の減少を見越して海外に進出する世界戦略だという解説ですが、今後の需要増加が予想される東ヨーロッパとロシアに強い関心を示しているというのに、ちょっと引っかかるものを感じました。
 たばこは人間にとって百害あって一利もないという事実は、医学的に結論の出た問題だと思っていたのですが、JTのホームページでは、依然として「嗜好品」としてのみの位置づけです。「たばこ産業の健全な発展」という言葉も堂々と使われていて、厚生労働省の「健康日本21」の中間報告で喫煙率減少の数値目標を掲げていることに対しても、反対を表明しています。
 JTは1985年に旧専売公社の業務を引き継いで発足しました。官営から民営への移行という点では、国鉄が分割されてJRになったのに似ていますが、JRは東日本、東海、西日本の3社がすでに完全民営化されているのに対して、JTは今も政府が株式の半分以上を所有する特殊会社です。民営化したのは合理的な経営をするためだから、思い切った世界戦略に打って出るというのかもしれませんが、巨額の資本を投じてまで、たばこ産業の延命をはかり、先進国では衛生思想が高まって売れなくなったから、後進地域へ売り込もうという思想には、非常に違和感を覚えます。この件について、たいした議論も起こらず、JTからの説明もないのは残念です。大株主である政府には、何の意見もないのでしょうか。
 たばこが、人間の文化の一部として長い歴史を持っていることは認めますが、肺癌を始めとする健康被害を引き起こすことが明らかになった以上、産業としては撤退に向うのが健康な感覚というものでしょう。JTに「たばこが消えた後」の戦略があるのなら、ぜひ聞きたいと思います。
 一方で、いま喫煙の習慣を持っている人が、非常に肩身の狭い思いをしているのは、気の毒に思います。禁煙のできずにいる人たちを、一種の病人または障害者と考えて、長距離の飛行機でトイレ1個分ぐらいの喫煙スペースを設けてあげる程度のことは、してもいいのではないでしょうか。それと平行して、一定年齢以下では、麻薬なみの厳しい禁制をかけるべきだと思います。禁止年齢を毎年上げて行けば、その下の年代からは中毒者をなくすことができるでしょう。