一般の国民が裁判に参加する裁判員制度が導入されるとかで、さまざまな問題点が議論されています。もともと裁判は専門の知識と権限を持つ裁判官の仕事であって、だからこそその公正を国民が信頼し、法秩序が保たれるのです。そして裁判官は法律に従いながら「自由な心証」によって判断を下すことを期待され、高度な独立性を保障されています。ですから本来なら素人が口を出す余地はない筈なのですが、その独立性のゆえに独善に陥って、国民の感覚とかけ離れる恐れがあるとも言えます。そこで裁判に庶民の参加を求めようというのが、裁判員制度です。
 ところが素人が突然に指名されて裁判に参加するというのは気が重いことで、進んで参加するという人は、非常に少ないようです。私にも、この制度が今の日本の緊急課題であるとは、とても思えません。それよりも、参加したいのは国会での審議です。裁判員制度よりも先に「国政審議員制度」を作ったらどうでしょうか。その趣旨を、法務省の裁判員制度の広報文書を使って、文言を少しだけ入れ替えて書いてみましょう。
「国政審議員制度は、国民から無作為に選ばれた審議員が、重大な事案の国会審議で、議員といっしょに審議するという制度です。国政審議員制度の導入により、国民の感覚が政治の内容に反映されることになり、国民の政治への参加が大きく進むことになります。」
 この制度が実施されると、有権者名簿から無作為に指名された審議員が、一定の期間、国会議員と同じ資格で国政を調べ、政府や官庁に質問し、現地での調査も行います。もちろん必要な協力をする秘書も国費でつきます。その上で国会の審議に参加して、賛否の投票をすることになります。その人数をプロの国会議員と同数にすれば、これは代議制民主主義と直接民主主義とを1対1の割合で折衷した政治体制を採用したのと同じことになります。今の国会議員がそんなものに賛成する筈がない、荒唐無稽だと言われるかもしれませんが、固定化し沈滞した政治風土に風穴をあける発想の手がかりとして、あえて提案します。要は代議員制度をバイパスする直接民主主義の部分的な導入ができないか、ということです。たとえば有権者の1万分の1を抽出した「ミニ国民投票」のような制度でもいいのです。