このタイトルは、西垣通氏の近著(岩波新書)の題名です。本来は「『……』を読む」とすべきところですが、書評というよりも、これを読んで自分が考えたことが中心になりそうなので、あえてタイトルをそのまま借用しました。いま2回目を読んでいるところです。
 第1章の「そもそも情報は伝わらない」というのが、まず新鮮でした。私はコンピューターではありませんから、本を読んでも、内容がすべて「入力」されるわけではありません。私が受け取る情報は、脳に直接入るのではなくて、新しい刺激として受け止められるだけです。その刺激によって、何が新しく脳に蓄えられるかは、その脳つまり私のすべての履歴とその時の状況によって決まるのです。このように私が理解したこと自体が、「そもそも情報は(そのままでは)伝わらない」ということなのです。
 これを知っているだけでも、ずいぶん役に立つ知識になります。子供にお説教して聞かせても、伝えた内容が相手に記憶されるかどうかは、神様だけが知っていることです。コンピューターに新しいデータを加えるのとは、まるで違うのです。お役所の広報が、なかなか一般に浸透しないのも、たぶん同じ理屈でしょう。このように、人間の特性をよく考えないと、ウェブ社会に呑み込まれて、人間が住みにくい世の中になってしまうというのが、大事な反省です。
 ここで著者は、生き物にとっての情報は「関係すること」であると言います。自分と他者とが関係することで情報が生まれる、つまり「生きる上で意味のある(識別できる)パターン」が情報だということです。そしてこれは「生命情報」に分類されます。人間の場合は、社会生活を円滑にしなければなりませんから、そこで必要なのは「社会情報」で、その王様は言語です。言語は「記号」であると考えられますから、客観化ができて数値化も可能です。そして「機械情報」の分野が開拓されました。これを扱う便利な機械がコンピューターであることは、言うまでもありません。
 私たちはいま、膨大な知識の量がウェブ上を往来するように感じていますが、それは膨大な機械情報の集積であったのです。