鹿児島からの帰りに見た風景は、座席が翼の真上になったので、空中をすべっている感じになりました。翼の先は柔らかく上方に曲がって、はばたいています。鳥も飛ばぬ1万3千メートルの成層圏を、自由に飛んでいるかのようですが、人も荷物も載せた重い機体が、もちろん空中に浮かんでいられるわけがありません。大量のジェット燃料を消費する推力に支えられて、危ういバランスの上に高度を維持しているのです。
 空中は人間の住処(すみか)ではありません。にもかわらず、この心地よさは何でしょうか。私は飛行機で飛んでいるのが大好きです。小型飛行機の操縦免許を、本気で取りたいと思ったほどです。
 このぜいたくな浮遊が、長時間は許されないのを知っています。でも子供のときに、何度も夢に見たのです。高い所に立つと、不思議に飛べそうな気がするのです。そして実際に手を広げて足を蹴ると、グライダーのように飛んで行けるのでした。
 私はどこへ行きたかったのでしょうか。地に足をつけなくても、生きて行けると思いたかったのでしょうか。目が覚めてから、妙にさびしかったのを覚えています。 
 やがて、やさしい口調の機内アナウンスが流れます。飛行機は私を、よく知っている人たちの所へと運びます。