「さらば財務省」(高橋洋一・講談社)を読みました。「官僚すべてを敵にした男の告白」とサブタイトルがついています。かつて天木直人氏は「さらば外務省」を書いて小泉政権との絶縁を宣言したのですが、政権との距離のとり方は違っていました。小泉・竹中「構造改革」の実務者として働き、志半ばにして省内に居場所を失った元官僚が、日本の政・官の現状を、広く国民に知らせようとして書いたレポートです。
 官僚の組織も発想も、国益ならぬ「省益」を至上の価値として出来上がっている現状は、これを読むとよくわかります。その意味では、内部告発の資料でもあります。たとえば学識経験者を集めて設置される各種の審議会が、事務局を握る官庁の意のままに運営されて、あらかじめ決められた政策を具体化するための手続きにすぎなくなっていることが、なまなましく語られています。委員の人選から始まって、審議の日程、時間の配分まで操作して、反対意見を封じるのです。
 しかし小泉・竹中改革は、官僚組織との戦いでもありました。政策は政治家が決めて、官僚は示された政策を実現するために働くという、当り前の原則が通るようにするための改革でもあったというのです。そのハイライトは郵政の民営化でした。郵政選挙という奇策まで用いて意志を通した小泉首相は、とにもかくにも官僚組織に一つの風穴をあけたのでした。改革路線は現在の福田内閣にも継承されて、国家公務員制度改革基本法の成立を見ました。しかし昨年の参議院選挙以来、政治情勢は激変しています。もはや今の政権に改革の成果を期待するムードは全くなくなって、すべては次の総選挙後をにらんでいます。
 この本のおかげで、小泉・竹中路線の「改革の志」が少しわかりました。しかし大きな疑問は、保守政権党の力で、本当の改革は可能なのかということです。ただし収穫は、日本の行政を官僚支配から政治主導に正常化すべきだという共通の認識です。
 法律というものは、運用の仕方で効果が変るものです。それは憲法9条を見てもよくわかります。政権が交代して、公務員制度改革基本法を民主党が運用したらどうなるか、その成果を早く見てみたいものです。