麻生内閣が成立した同じ日に、アメリカの原子力空母が横須賀に入ってきました。長さ333メートルの巨体に70機の戦闘爆撃機を搭載し、5800人の兵員を乗せています。原子力発電所なみの強力な原子炉を動力源として、25年間も燃料の補給なしに航海が可能ということです。1隻で1個師団を上回る戦力が、自由に海上を動き回るわけです。
 この入港に、神奈川県知事は「日本の安全保障のために必要と考える」とコメントしていました。現在の日本政府も、もちろん同じ見解でしょう。その安全とは、誰を何から守るための安全なのでしょうか。
 アメリカの世界戦略からすれば、日本はアメリカ軍の前進基地の一つであるに過ぎません。あり余る軍事力を世界中に展開して、地球上のどこでも絶対優位の軍事バランスにしておかないと安心できないのです。その警戒心の対象は、国際テロであり、それを支援する「ならずもの国家」です。日本の近くにも北朝鮮という実例がありますから、アメリカの空母がいてくれれば安心だと思う人もいるかもしれません。日本はアメリカの庇護がなければ平和でいられないと思う人たちは、長く続いた自民党政治の支持層と重なります。
 しかし、アメリカ軍が撤退したら、北朝鮮は日本にミサイルを撃ち込み、侵略軍を上陸させてくるのでしょうか。北朝鮮は領土の拡大を要求しているわけではありません。そのような想像は非現実的だと私は思います。むしろ、世界を悪と善との単純な2分法で引き裂き、武力で悪を根絶させるというシナリオを描いたアメリカの世界戦略こそが、現在の世界に混乱を招いているのではないでしょうか。世界の平和と安定のために、武力が万能ではないという事実は、アメリカ自身が学ばなければならないことです。
 日本はこのままアメリカとの同盟を強化して、運命を共にして行くのか。アメリカがもしも本当の危機に見舞われたとき、アメリカ軍は本国の防衛よりも日本の防衛のために戦ってくれると本気で信じているのか。それよりもアジアで自主独立の平和外交を展開して国の安全をはかる方法はないのか。そのためにアメリカからの自由を獲得する方向へ政治を変えるか。次の選挙では、その選択もかかっていると思います。