パレスチナ自治政府が、国連に加盟申請書を提出し、アッバス議長の国連総会演説では、大多数の加盟国代表が立ち上がって熱烈な拍手を送ったという。アメリカの代表は苦りきった顔をし、日本の代表は着席のまま拍手だけはしたとのことだ。
 この加盟申請は、手順として安全保障理事会で審議されるから、そこでアメリカが拒否権を発動するので、実現の可能性はないと言われている。しかしアメリカがパレスチナ問題の調停者としての立場を弱めることは確実だろう。
 パレスチナは今回直ちに加盟が実現しなくても、次善の策として、オブザーバー加盟の資格を「組織」から「国家」へと格上げする方法も考えているとのことだ。これは国連総会で2分の1以上の賛成が得られればよく、アメリカは拒否権を使うことができない。これが実現するとパレスチナはバチカンと並んで国連のオブザーバー加盟国となり、表決権はないが国連で国として発言できることになる。
 もともとイスラエルは国連の承認により誕生した国家なのだから、独立後の行動を指導監督する役目は、国連が担うのが本筋というものだ。アメリカはイスラエルのスポンサー兼後見人なのだから、公平な調停者になる資格を欠いている。せいぜい国連が決めた約束を守らせる「なだめ役」を期待されるのだが、それさえも果たしてはいない。
 パレスチナ地図の無残な現状を見れば、国際正義がどちら側にあるかは、はっきりしている。ヨルダン川西岸地区の中にも、無数の「入植地」をガン細胞のように増殖させているのだ。これを放置し、凍結さえもせずに既得権を前提とした交渉を進めるのは間違っている。アメリカが退場しなければ、永続的な平和は得られないだろう。
 これからますます激しくなるのは、国連とイスラエル・アメリカとの対立だろう。イスラエルは国連敵視政策に出てくる可能性もあるが、そのときアメリカは国際的に孤立してもイスラエルの側に立つだろうか。国連とアメリカとが世界の覇権をかけて争うような最悪の未来は見たくないものだ。アメリカの良心は目ざめるだろうか。