角川新書(oneテーマ21)の新刊で、著者は城南信用金庫の理事長です。異色の金融人として注目されていますが、原発ゼロに積極的なビジョンを描いています。ネットの紹介記事などに「原発ゼロでも……」と「も」を入れている例を見ますが、これは誤りで、原発ゼロだからこそ発展できるとする、積極的な原発ゼロ化提言なのです。
 内容は以下の通りですが、大別して仝業ゼロ構想の提言、⊃用金庫と銀行との違い、人間とっての金融とは何かという三部からなっており、これまでの脱原発論の類型とは一味ちがって、社会、国家、人類の未来を展望する深さと広がりを持っているのが魅力です。著者ご本人の高潔な人がらが感じられる著作です。

はじめに 世の中の「不思議」が見えてきた
第1章 原発ゼロでも日本経済は揺るがない
第2章 なぜ信用金庫が脱原発宣言か
第3章 脱原発宣言を通して見えたもの
第4章 利益か、社会貢献か
第5章 近代社会の思い上がりとお金の暴走
第6章 原発と拝金主義の奇妙なつながり
終章 祖先への感謝、未来への責任
あとがき 勇気が未来を変える

 最初の原発ゼロ提言は、すでに言い古された感さえあって、いまや心ある人々の常識だと思うのですが、最大の不思議は、現実の政治が原発再稼動を当然とするように動いている事実です。冷静に考えれば、原発を無理やり再稼動するための安全対策、避難対策、核ゴミの処理対策などを積算したら、とうてい経済合理性が保たれないことは誰にでもわかります。それでも原発を止められない理由はただ一つ、これまで構築してきた核技術をめぐる利権構造を解体することができないからです。
 貿易収支の赤字も、景気回復の遅れも、原発さえ稼動すればすぐにも改善するかのような宣伝は、すべて現在の利権構造を温存する前提で導かれるものです。それは果てしない経済のアンバランスと、果てしない政治的な対立を日本社会に埋め込むことを意味します。だから脱原発が日本経済再生のために必要なのです。