(熊さん)ご隠居、ゆうべの「集団的自衛権」ってやつ、見てたんでしょ。
(ご隠居)ああ、ちょっと出かけてたが、テレビも見たし新聞も読んだよ。
(熊)やっぱし、周辺が物騒だから備えておけってことですかね。
(隠)お前さんもそう思うかい。でもなんか変だと思わないかい。海外で紛争があって日本人を助けてくれたアメリカの船が攻撃を受けたら、日本の自衛隊が反撃できないのはおかしいだろう、みたいな議論をしてるんだ。あるかもしれない事態をあれこれ想像で作り上げて、それに対処するにはどうするってやってるわけだよ。これは丸っきり軍人の発想なんだな。軍人は戦うことが本業だから、敵がこう出てきたらこっちはこうするとか、図上演習でいつも考えてるわけだ。その軍事オタクの議論を、日本中に広げてやってるわけだよ。これって、かなり宣伝臭くないかい。
(熊)そうですね。備えてないと大変だぞって、国民の意識を変えたがってるのかな。
(隠)この議論の元になったのが安倍政権お抱えの安全保障懇談会ってやつだが、これからいろんな脅威が増えてくる、それでアメリカとの同盟が強化されるって前提で対策を考えたわけだ。その用意された土俵に国会も国民も乗っけて、さあどうぞ議論して下さいったって、前提条件を変えたら、何でいまそんなことを議論しなくちゃいけないんだって立場もあるわけだよ。その冷静さを、みんながなくしてしまうのは危ないと、わしは思うな。だいたい自衛隊が武器を使うとか使わないとか、あらかじめ決めておくことが日本の利益になるのかな。抑止力というのは、相手からわからない部分を残しておくことで効果がある場合も少なくないんだよ。日本が平和国家ということは世界に知れている。その自衛隊は、文字通りに自衛の実力はあるが、国際紛争に参戦する軍隊ではないという原則を守った方が、よほど信用されるだろうよ。
(熊)うーん、その方が日本らしくて格好いいですよね。
(隠)そこで、集団的自衛権ってものの危険性を考える必要があるんだ。どんな理屈をつけようが、自衛隊が同盟国に同調して第三者との戦闘を始めたら、それは相手にとっては日本が「敵国」になったことを意味する。敵国になったら、相手からどこを攻められても文句が言えなくなる。海外の戦闘で日本の本土が危険になることも考えなくちゃいけなくなるんだ。軍人の頭で考えたら、日本はどんどん重武装しなければならなくなるだろうさ。
(熊)それって日本の憲法の正反対ですね。
(隠)そうだよ。だから原則が、第一歩が大事なんだ。軍事将棋の盤面ばかり見てたら国を誤るぞ。