昨夜の老人党護憲プラスの例会で、「旅するジャーナリスト」大芝健太郎氏の話を聞きました。1986年生れの好青年です。前半で2008年にドイツで作られた「シェーナウの想い〜自然エネルギーを子どもたちに」を上映しました。シェーナウはドイツ南西部の国境近くにあり、フランスの原発から30キロ圏内にあります。この小さな町の住民が自前の自然エネルギー電力会社を成功させるまでの記録で、大芝氏はそこを中心に滞在して取材してきたのでした。
 住民がこの問題に取り組んだきっかけは、チェルノブイリ原発事故でした。最初の運動は、町の電力供給を独占していた電力会社との長期契約を打ち切ることでした。この住民投票を成功させた運動は、家庭内の議論や戸別訪問を無数に積み重ねて行われました。この町の人たちにとっては、こういう問題で議論をするのは、ほとんど「娯楽」になっているという大芝氏の感想が、とても印象的でした。
 次の大きな難関は、従来の会社に代わる自然エネルギーの電力会社を自前で立ち上げることでした。安心できる方法は、それしかなかったのですが、素人集団には荷の重い仕事です。しかしシェーナウの事例は全国的に話題となり、多くの専門家が協力してくれました。たぶんドイツ全体としてのエネルギー政策も後押しになったのでしょう。町の議会は新会社との契約を承認しました。
 しかし旧勢力の巻き返しも激しく、新会社では停電が頻発するなど不安を煽る宣伝も行われました。差し止めの住民投票が提起されて、この2回目の住民投票が最後のヤマ場となりました。結果としてはこれも乗り越えて新会社は順調に発展して今に至っています。町にとっては納税額第1位の優良企業となり、全国的な自然エネルギー電力会社としても有数の位置にあるということです。
 ドイツと日本では、さまざまな事情が違うでしょう。たとえば送電線の買取りを含めた地域の電力事業の譲渡などは、ドイツだからできたことでしょう。住民投票で大事なことを決めるという習慣も、私たちにはまだありません。しかし根底にあるのは、住民が自分たちの関心事を議論して、自分たちで決められるところには、前向きの明るい人間関係がある、ということだと思いました。
 町を二分する大論争の記録であるのに、この映画にはデモ行進も人々の押し合いも出てきません。活発な会話と、時々インサートされるポスターや宣伝グッズが出てくるだけです。「頭を叩き割らないで、頭数を数えろ」という、民主主義の基本教材のようでした。
 「シェーナウの想い」が結実するまでには、10年の時間がかかっています。民主主義を育てるには時間も必要なのです。それでもいいから、日本にも民主主義がほしいと思いました。大芝氏は、この9月に行われる「スコットランドのイギリスからの独立の可否を問う住民投票」の取材に、現地へ行くということです。

告知 コメント欄の広告・宣伝目的での利用を固くお断りします。発見しだい削除します。