昨日、共産党の志位委員長が、戦争法廃止の国民連合政府をつくるという「国民的な大義」で一致するすべての野党が、来るべき国政選挙で選挙協力を行うことを心から呼びかけると声明したと伝えられる。共産党からの公式な呼びかけとしては初めてとも言われるが、実際に効果を発揮したのは初めてではない。
 2009年総選挙で民主党が大勝利をおさめたかげに、共産党の協力があったことを覚えている人は少ないかもしれないが、目ざましい威力を発揮したことは厳然たる事実である。あの選挙では、いつもは300の衆議院小選挙区のすべてに候補者を立てる共産党が、約半数の選挙区で立候補を見送って自主投票とした。民主党には小沢一郎が健在でいた。
 これをモデル的に考えれば、じつに簡単なメカニズムなのだ。ある選挙区に実力の拮抗する自民党と民主党の候補者がいるとしよう。この二人が選挙戦で互角の戦いを展開した場合に、自民党の候補には公明党の票が足し算される。その一方、民主党の候補からは共産党の票が引き算される。結果としては自民党候補が当選するわけで、このパターンは首長選挙でもよく見られるところである。
 このパターンを破って成果をあげたのが、直近の衆院選での沖縄だった。共産党が主導した選挙協力で、全4区の小選挙区から共産党、社民党、生活の党、無所属の候補者をそれぞれ当選させ、自民党候補全員を小選挙区では落選させたのだ。この場合は基地反対の共通の目標があったから協力しやすかったのだろうが、参加したすべての党にとって利益があったことは誰にでもわかる。
 しかし今回の呼びかけは全国に及ぶ国政選挙についてであり、しかも「戦争法廃止の国民連合政府」をつくるという目的だから、難しさはあるだろう。選挙に勝って内閣を組織し政府を形成したら、戦争法廃止は第一の仕事になるとしても、政府の仕事はそれだけでは終らない。単一政策の短期政権で終るとしたら、あとはどんな政党の組み合わせで政府をつくるのか、そこには議会で安定多数の支持が集まるのか、いろいろな課題や疑問が出て来そうである。民主党の瓦解を思い出す人もいるかもしれない。
 それでもこの提案は試みる価値がある。選挙協力を話し合う中で、既成政党の垣根が取り払われる可能性もある。要は各党の議員と議員候補者たちが、国民の期待に応えるためにはどんな政治が必要なのかを、虚心に考えて行動することだろう。共産党は、見返りを求めない「自主投票」以上に、積極的な政権参加に踏み切れるだろうか。
 新聞報道は決まり言葉のように「他の政党には共産党への拒否感も強く、実際に機能するかどうかは不透明」と書いているが、共産党も他の政党も変らなければ、新しい未来を開くことはできない。「やってみなはれ」である。