オペラシアター「こんにゃく座」の一般公演「想稿・銀河鉄道の夜」を見てきました。世田谷パブリックシアターにて(5日(日曜日)まで・11時、15時30分の2回公演・当日券あり)。お薦めの、すぐれた舞台です。じつは2010年9月にも同じ演目の公演があったのですが、今回は大石哲史の演出で、同じ作品とは思えないほどの説得力を発揮する舞台になっていました。
 「銀河鉄道の夜」は、宮沢賢治の代表作のように言われながらも、初稿から10年近くたっても決定稿とならずに作者の死後に残されたという因縁の作品です。それだけに後世の作者の意欲をそそるのでしょう。台本は北村想の「想稿・銀河鉄道の夜」をベースとしています。教室の先生が生徒に銀河の説明をするところから始まって、最後も同じ場面で終るのですが、その間に観客は登場人物とともに無限の宇宙空間を旅するのです。たった一つのキーワードは、「本当のことを知りたい」のです。でも、本当のこととは、何なのでしょうか。
 この地上で「本当のこと」がわからないとしたら、銀河の輝く宇宙まで行ったら、何かわかるのでしょうか。それを象徴するのが銀河鉄道です。でも、宇宙を旅しても、そこは人間のいとなみを反射する空間でしかありません。悲劇は悲劇なりに、日々の仕事や祈りはそれなりに、銀河鉄道に沿った星座に散りばめられて行くのです。そんな中では、人間の命さえも固定したものではありません。「ぼくたちは星のかけらで、一生を終ったらまた星のかけらに帰って行く」のです。
 「ぼくはいったい何で、どこへ行くの?」という問いは、3歳の幼児でも感じる人間の根源的な疑問でしょう。だからこのオペラは、子供といっしょに見てもいいと思いました。「どこへ行くんだろうね」と、あとで話し合うことができるでしょう。そして、それがわからないからこそ、今いる友だち、今いる家族を大切にしたいという思いを深めることができるに違いありません。
 出演者は、こんにゃく座としては多いと思われる12名が登場します。教室の場面で盛り上げ、机と椅子を自在に配置して場面を転換する手ぎわの良さはいつもの通りですが、今回は正面に投影する星座の美しさと、悠久の時間を象徴する大時計のような大円の輝きが印象的でした。