アメリカはシリアにミサイルを撃ち込み、シリアと並ぶ「ならずもの国家」の北朝鮮へ向けては、空母とミサイル艦隊をさし向けているということだ。シリア政府軍が化学兵器を使ったというのが武力行使の理由だが、ネット情報では確証がなく、シリアにとっては非難されるのが確実で何の得にもならないことをするのは不自然だとしている。イスラム国がらみのアメリカ謀略説につながるのだが、真偽のほどはわからない。
 アメリカは軍事力では押しも押されもしない最強の国だから、軍事力を使って世界の秩序が保たれるなら、それが一番いいに決まっている。それも、戦闘を実行せずに威嚇効果だけで済ませられれば都合がよい。今回のミサイル攻撃でも、軍事施設に向けた59発の1回だけで止めている。シリア政府は損害は軽微だったとして、イスラム国への空爆を再開して見せた。シリアは世界をイスラム国によるテロの脅威から守っているのだとアピールしている。こうなると、どちらが「正義の味方」なのかわからない。
 おそらく世界にはいろいろな「正義」が存在していて、私たちは結局のところ、自分にとって都合がよいものを正しいとしているのだろう。ただし世界のどこで武力行使があっても、ほぼ確実に、無関係な子供たちや住民の中から犠牲者が出る。その姿を見ると、誰でも理屈抜きにそれは「絶対悪」だと思うことができる。世界を平和にする力というものは、そこを出発点とするしかない。
 だが、そこにも「裏」はあり得る。1枚の写真が有名になって世界に拡散しても、あとで捏造とされたこともあった。そんな困難はあるが、武力行使が常に無関係の人間を傷つけ殺す可能性があることは誰にでもわかる。武力とは、そもそも殺人と破壊を目的として開発されているからだ。その意味では「人を殺さない武力」とは、それ自体が矛盾した存在になるのだ。
 そこで「瀬戸際外交」という場合の「瀬戸際」の意味を調べてみた。岬が迫って海流が急になる「瀬戸」の「際」だそうだ。際まで行ってもそこで止まるということだ。実際に武力を行使したらどうなるか、世界はもう充分に学習したのではないか。北朝鮮は、核兵器を開発したのは正解だったと思っているだろう。アメリカも安易には攻撃できなくなった。瀬戸際まで行って引き返せれば上出来である。
 日本の自衛隊も、他国からの侵攻を瀬戸際で思い止まらせる実力があれば充分である。アメリカの核の傘も、アメリカ駐留軍も、引き取っていただいて一向に差支えない。あとは日本の憲法9条が守ってくれる。日本の自衛隊は、世界で唯一の「国防の瀬戸際」でのみ働く実力組織なのだ。そのことを誇りにしていい。
 今の世界で、軍隊は「瀬戸際まで行って戦争を抑止する」ものに変質した。世界の保安官を自任するアメリカは、そのことをよく知っているだろう。それはアメリカにとっても幸せなことなのだ。